北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

牛の診療

乳房からの出血(六たび!)

朝の往診の準備をしていると、

「乳房から血が噴き出しているのですぐ来て欲しい・・・」 

という電話、

£牧場からだった。

 「乳房から血が・・・」

という言葉で、

すぐピーンと来るのは

カラスの突っつきである。

私はこの約一年間で

カラスに突っつかれたことによる

乳房からの出血を

5回も経験している。

過去の5回の乳房出血の記録は

以下の通りである。


 2月24日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月8日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月17日の乳房からの出血(♯牧場にて) 


 8月20日の乳房からの出血(∩牧場にて)


 10月1日の乳房からの出血(♯牧場にて)


♯牧場での症例が4回

∩牧場での症例が1回

今回は初めて£牧場だったが

「乳房から出血・・・」 

という言葉 で

きっとカラスによるものだろうという事が

容易に想像できたのだった。

£牧場に着いて

繋がれている牛を見ると

IMG_3174案の定

乳房の側面の

乳静脈の

お決まりの位置からの

IMG_3176出血だった。

これはカラスの突っつきによる出血に

間違いがなかろうと思った。

牛が横臥をしている時に

乳房が後ろ脚の脇からはみ出して
IMG_3177
乳静脈が露出される。

その乳房に走っている乳静脈が

脚に止まったカラスから

突つきやすいような

IMG_3178乳房の真上に露出された時

カラスが突っついて

出血させるのだ。

過去5回とも

IMG_3181出血する位置が

見事に一致している。

「これは間違いなくカラスだね。」

「・・・そうですか。」

IMG_3186私は従業員君に

牛を保定してもらい

ここ1年間の

過去の5回の症例と

全く同じように

出血している部分の縫合処置をした。

「最近カラス多いでしょ?」

「・・・はい、追い払ってるんですけど。」

「一度覚えたカラスは、何度もやるみたいだから注意してね。」

「・・・はい、わかりました。」

過去に

この症例が

4回も繰り返し起こった

♯牧場のようなことに

ならないことを願いつつ

私は£牧場を後にした。
 

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春寒(はるさむ)の診療所の風景

「立春」はとっくに過ぎているので、

暦の上では、

IMG_3155今はもう春、

少なくとも早春、

の頃である。

確かに日中は、

どこかしら春らしい陽光が、

戸外を包み始めて、

明るい春の日脚が伸びてきたという実感がある。

しかし

ひとたび夕日が落ちて 

暗い夜になると

春の気配は

すぐさまどこかへ消え去ってしまい

外気温は一気に下がり

周囲は冬の姿に戻ってしまう。

春なのに寒い。

これを歳時記では

「春寒(はるさむ)」あるいは「余寒(よかん)」などと言い

早春の季題となっている。

特に

1日の気温差(日較差)の激しい内陸性気候の

我が十勝地方では

この時期の夜の寒さは半端ではなく

真冬の寒中の気温と

ほとんど変わらない程に冷え込む。

「春寒」「余寒」どころではない(笑)

昨日の

宿直当番の時もそうだった。

日中の気温は

そこそこ温かく

氷点下から抜け出しそうな気配だった。

ところが

夜になり

また厳しい冷え込みがやってきた。

私はつい、うっかりと

診療車に積んでいたリンゲルなどの

液体の薬品を

車の中に入れっぱなしにして

そのまま寝てしまった。

そのままにしておくと

IMG_3152翌朝には

凍ってしまう。

翌朝

起きてすぐそれに気づき

IMG_3149慌てて

夜明け前の寒さの中で

診療車内に積みっぱなしだった薬品を

診療所内のパネルヒーターの上に乗せて

IMG_3148凍りかけた薬品を「救出」した。

夜明け前だったので

何とか凍結は免れることができた。

一連の写真はその時に撮っもの。

うちの診療所の

冬から春にかけての風景は

IMG_3150リンゲルなどの補液剤がパネルヒーターの上に置かれ

その他の薬品も凍らないように

準備室の片隅に

邪魔にならないように

IMG_3151あちらこちらに置いてある。

この診療所内の風景は

私共には

全く当たり前の風景なのだが

九州や四国などの暖かい地方の

家畜診療所では

決して見られない風景

なのだろう。



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子牛の耳下腺(?)の腫脹

「子牛の喉が腫れている・・・」

という稟告で診たのは、

生後3ヶ月のホルスタイン♀ 。

なるほど、

左の喉というか耳下腺付近が、

大き目のみかんのように腫れている。

IMG_2349触診してみると、

かなりの硬度で、

波動感はない。

「耳下腺炎だろうか?」 

「昨日くらいから急に腫れが大きくなってきたんだけど・・・」 

「かなり硬いね。」

「耳下腺炎といえば・・・」

「オタフク風邪。」

「えっ、マジ?、俺オタフク風邪まだやってないんだけど・・・」

「それは気をつけないと。」

「牛にもオタフク風邪ってあるの?・・・」 

「いや、無い(笑)」 

飼主の★君に冗談を飛ばしつつ 

私はこの腫れの正体を

色々考えていた。

普通よく経験するのは

子牛の奥歯から黴菌が入り

アメ玉をしゃぶったように

ピンポン玉くらいの大きさの腫れが

上顎や下顎にできるパターンなのだが

今回のように

耳の下が大きく腫れるのは

ちょっと珍しいと思った。

この腫れは

耳下腺の組織なのか

唾液が溜まっているのか

血が溜まっているのか

化膿しているのか

それとも腫瘍なのか

確定診断する必要がある。

「針を刺してみよう。」 

IMG_2351私は穿刺検査をすることにした。

注射器につけた18Gの長針を

硬い腫れ物の半ばまで

差し込むと

白く濁った液体が

IMG_2352注射器の中に入ってきた。

「あ、膿瘍だね。」

「オタフクじゃなかった(笑)」

「切開しよう。」

「お願いします。」

 IMG_2353確定診断ができたところで

あとの治療は一本道である。

子牛の頭を動かぬように保定して

膿瘍の最下部を

メスで

IMG_2354切開排膿

創は大き目に3〜4センチ

膿汁を中に残さぬように

創は開放したままにして

後は

IMG_2356抗生物質の数日投与を指示し

治療を終えた。

後日

この膿汁の

細菌培養結果が来た。

BlogPaint菌は2種類

Streptcoccus agalactiae(無乳性レンサ球菌)

Pasteurella multocida (パスツレラ)

が検出された。

今まで私がよく経験した

E.coli (大腸菌)や Pseudomonas (シュードモナス)は

検出されなかった。


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どの牛乳にしようかな?

今日もいつものように、

近所のスーパーマーケットで買い物。

妻から渡された買い物リストを見ながら、

買うものを次々とカゴに入れてゆき、

乳製品のコーナーにさしかかった。

そういえば牛乳がなかった・・・

1リットルパックを買おうとして、

IMG_2359ちょっと思案した。

さて、今日はどれを買おうか・・・

最近、とても嬉しいことに

近所のスーパーの牛乳コーナーに

私の母校である帯広畜産大学の

「畜大牛乳」が売られるようになった。

それも、特別のキャンペーンではなく

常時、何時もの場所に一定量の

IMG_2361「畜大牛乳」が売られているのだ。

この「畜大牛乳」は

私が学生の頃は

帯広畜産大学の校内の

生協の店頭でしか買うことができないという

幻の牛乳だった。

そんな牛乳が

数年前からは

私の家のすぐそばのスーパーマーケットでも売られるようになった。

売られ始めて間もない頃は

値段が高く

一般的な1リットルパックの牛乳の5割り増しくらいの値段だったので

美味い牛乳であることはわかっていながらも

買うのをちょっと躊躇ったりしたものだった。

ところが

昨年から今年にかけて

この「畜大牛乳」が

他の1リットルパックの牛乳と

あまり変わらない値段で買えるようになったのだ。

その理由はよくわからないのだが

とにかく私にとっては

母校の懐かしい牛乳のパッケージそのままに売られている「畜大牛乳」に

愛着がわかない理由はなく

値段もそこそこになったということで

最近は、頻繁にこの牛乳を買うようになった。

BlogPaintこの「畜大牛乳」の

さらに大きな魅力の一つは

「北海道HACCP(ハサップ)認証」

を受けていることである。

HACCP(ハサップ)認証というのは

食品の製造工程において

一定の衛生レベルがクリアされて

BlogPaintしかも

そのレベルが変わらず維持されている

ということに対して

お墨付きを与える認証である。

すなわちこの「畜大牛乳」は

HACCP(ハサップ)認証のされていない酪農家で生産された牛乳は

1滴も混ざっていないということになる。

IMG_2361前回の記事で書いたような

疲れ切った牛たちから搾った牛乳は

おそらく1滴も混ざってはいない牛乳であろう。

そんな「畜大牛乳」が、1リットル218円

IMG_2362それ以外の「特選よつ葉牛乳」が、1リットル215円

さらに安売りの「十勝牛乳」が、1リットル175円

どれも同じような

成分無調整乳ではあるのだが

私が毎日通っている生産現場で

IMG_2363感じていることをよく考えれば

1リットル218円の「畜大牛乳」に

どうしても

手が伸びてしまうのだった。


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「不自由」な過密「フリー」牛舎

酪農業界で導入されてきた、

牛の飼養形態の中で、

ここ30年くらいで、

急激に増えてきたのは、

フリーストール、

あるいはフリーバーン、

という乳牛たちの飼養形態である。 

乳牛の首を繋いで飼うことがないので

「フリー」という言葉が使われて居る飼い方である。

BlogPaintしかし

私に言わせれば

この飼養形態の「フリー」ほど

不自由な飼養形態はないのではないかと思う。

一見矛盾するような言い方だが

これが私の実感である。

フリーストールやフリーバーンというのは

じつは本当のフリーではなく

BlogPaint一定の面積だけに囲われて

その中に閉じ込められた

牛たちにとっては実に不自由な場所なのである。

閉じ込められた牛たちは

一生涯その囲いの中で過ごす。

「フリー」すなわち「自由」と呼ばれて居る牛群の

その実情は

強い牛たちだけが自由な天下であり

弱い牛たちの居場所がない

IMG_2338不平等な社会

すなわち

「格差社会」でもある。

フリーストールやフリーバーンは

本来そのような事態にならないために

一定の面積に入れる頭数を制限している。

例えばフリーストールであれば

「ストールの数よりも10%少ない頭数を入れる。」

フリーバーンであれば

「親牛1頭あたり2.4平方メートルを確保する。」

ところが

この2つの制限は

私が過去から現在に渡って往診してきた

どこのフリーストールやフリーバーンでも

まず

ほとんど守られてはいない。

どこへ往診に行っても

牛が「過密状態」で飼われている。

その結果

「フリー」と言われる飼い方が

「不自由」な飼い方に変わってしまう。

そして牛たちの「格差社会」はとどまることを知らず

限度を超えると

弱い牛から次々と体調を崩し

弱い牛から次々と病気になり

我々が治療を施しても焼け石に水で

結局は廃用にするか死亡するかで

牛群全体の頭数が調節されてゆく。

弱い牛たちの多くはまだ若く

短命に終わる。

IMG_2339牛にとってはまことに過酷な社会である。

過密の牛舎の床は

当然のように

糞尿も過密に垂れ流されることになる。

本来ならば過密に排泄される糞尿も

回数を多くして掃除しなければならないが

ほとんどの牛舎でそのような衛生意識がない。

その結果

牛が汚れて不衛生になるのも

過密なフリー牛舎の特徴である。

IMG_2340さらに

そこへ追い打ちをかけるように

今は

冬の厳しい寒さが襲いかかる。

不衛生と寒さによって

牛はますます病状が悪化し

次々と死んでゆく。


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雪しまく夜の往診

前回の夜間当番の日は、

日本列島を低気圧が通過して、

北日本ばかりではなく、

東日本や西日本まで、

まんべんなく雪が降った日だった。

十勝地方は夕方から雪が降り始め、

夜になってその雪が、

だんだんと本格的に降り始めた。

当直で事務所に泊まっていた私は

今日の往診はもう無いかな・・・

と、たかをくくっていた。

大きな低気圧が通過するときの

緊急往診の傾向として

何となく感じているのは 

天気これから悪くなり始める頃は

緊急往診の依頼が多いが

天気がいよいよ悪くなった最中には

緊急往診の依頼はぱたりと止んで

落ち着いてくるものだ ・・・

ということを

長年の経験から感じていた。

そこで、勝手に

今夜はもう往診はないだろう・・・

と、たかをくくっていたら

夜の10時近くに電話が鳴った。

酪農家の◎さんの牛の産後起立不能だった。

私の長年の経験など

全くあてにならず・・・(笑)

私は雪の激しく降っている夜道を約18キロ

診療車で◎さん宅へと向かった。

IMG_2323雪が激しくフロントガラスに迫り

視界が不良だった。

風はないので

地吹雪のようなホアイトアウトこそないものの

視界はずっと不良だった。

IMG_2321今どの辺りを走っているかは

長年同じ所を何度も走っている経験から

だいたい判るのだが

曲がらなければならない十字路が

いつ、目の前に現れるか

IMG_2319だんだんと不安になってくる。

またたどり着くまでに

積もる雪の深さが増して

深い雪でハンドルを取られて

途中で立ち往生してしまうのではないか

IMG_2311という不安も出てきた。

それでも何とか

長年の勘を頼りに

◎さんの牛舎の前まで

迷わず立ち往生もせずに

IMG_2308たどり着いた時は

正直ホッとした。

目的の牛には

産後の低カルシウム血症を中心の

ありふれた診療内容をこなし

IMG_2309また同じ道を約18キロ

往路にできた自分の車の

ワダチをたどるように

復路を運転した。

降る雪の勢いは

IMG_2313幸いにも

少し落ち着いていた。

対向車は

1台も来なかった。



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牛が欲しがる寒の水

今年の二十四節気(にじゅうしせっき)の、

「小寒」が1月5日だったので、

その日から「寒の入り」となり、

「大寒」が1月20日、

すなわち今日からが、

1年のうちで最も寒くなり、

その寒さが2月3日の「立春」まで続き、

「寒の明け」を迎えることになる。

厳しい寒さの中で

春が最も待ち遠しく感じられる

「待春(たいしゅん)」の頃でもある。

この時期に

野外で仕事をする人々の代表として

私が筆頭として挙げたいのは

都市部では「ガソリンスタンド」であり

農村部ではやはり「畜産農家」である。

この2つの仕事は

どんなに寒い日であろうとも

室内だけで仕事を済ますことができない。

ガッツリと防寒服を着込んで

白い息を長々と吐きながら仕事をしている姿には

本当に頭が下がる。

特に、私の仕事相手の畜産農家さんは

身近な人たちなので

お寒い中、お仕事ご苦労様、と何度も言いたくなる。

そして、その畜産農家さん達の働く場所には

人よりももっと大きな白い息を吐く牛や馬たちがいる。

彼らにもご苦労様というほかはない。

その中でも特にご苦労様なのは、

毎日毎日乳を搾られながら働く乳牛である。

私には、寒中の乳牛こそ

最も尊敬に値する姿に見えてくる。

彼らは毎日毎日何十キロもの乳を搾られる。

乳汁の9割以上は水分である。

彼らはその水分を補給するために

泌乳量の何倍もの水を飲まなければならない。

何十頭何百頭の乳牛が

IMG_22781日に飲む水の量は相当なものだ。

それは夏でも冬でも変わらない。

しかし極寒の低温の中では

水は千切れるほど冷たくなり

凍結してしまうことも頻繁に起こる。

ぬるま湯にすると牛の飲水量が増し

泌乳量も増加するといわれるが

BlogPaint厳しい寒さの中で

常にぬるま湯を給与することは

至難の技である。

ぬるま湯どころか冷たい水さえも

凍ってしまえば

牛たちは飲むことができなくなり

BlogPaint一気に体調を崩し

泌乳量は激減する。

北海道の酪農家をはじめ

畜産農家の方々には

とてもたいへんな作業だとは思うが

どうか牛たちの飲む水には

細心の注意を払って頂いて

飲水量の落ちないよう

万全の注意を持って

対処して頂きたいと思う。


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ツチノコの正体はコレだ!(新説)

ツチノコといえば、

ヒバゴンやクッシーと並んで、

日本の謎の3大珍獣の1つであり、

まだ誰も、

その正体を暴いたことがないという、

摩訶不思議な、

伝説的な、

動物である。 

これだけスマホが普及している現代人でさえ

その正体を

画像に捕えることができないのだから

これはまさに

珍獣中の珍獣である。

あまりにも珍らしく

目撃者もごく少数に限られているので

近頃は

その存在自体を

疑問視する人も多くなっているようだ。

しかし

先日

なんと

私は

そのツチノコの正体を

自分の携帯で

写真に捕えることができた!

その日時は

平成30年1月9日午後12時10分頃。

その場所は

北海道中川郡幕別町S地区の♭牧場

追加の仕事で呼ばれて

IMG_2268駆けつけた

育成牛舎。

未経産の牛の

産道から

頭が出かかっていたので

その部分を従業員2人と一緒に

IMG_2266引っ張り出した

出てきたものがこれ。

いったいなんだろう?

これは

流産胎児であるが

まるで

ツチノコ!?

IMG_2267生きているかと思ったが

残念ながら

すでに死亡しており

鼻の曲がるような

悪臭を放つ

気腫胎だった。


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黒毛和種の第四胃変位

先日助手をした手術は、

黒毛和種の4ヶ月齢の、

第四胃左方変位(いわゆるヨンペン)の手術だった。

IMG_2276四変(ヨンペン)の手術といえば、

ホルスタインの搾乳牛が圧倒的に多く、

その中でも特に、

産後数ヶ月以内に頻発する、

というのが、

我々十勝の獣医師たちの常識であり、

おそらく誰も異論を挟まないだろうと思われる。

四胃変位の主な原因の1つとして

IMG_2274産後の乳牛の泌乳量を

できるだけ速く生産レベルまで引き上げるために

カロリーの高い飼料を急激に増給することが挙げられる。

その結果

搾乳牛の胃がその要求に応えることができず

胃に大きなストレスがかかり

胃内のガスを処理しきれなくなり

第四胃の変位を引き起こす。

IMG_2273この発病機序は

ホルスタインの搾乳牛の典型的なパターンである。

我々十勝の酪農地帯では

その発病パターンで引き起こされる

搾乳牛の

産後の

第四胃変位がほとんどなのだが

たまには

産後とは関係のない泌乳期に起こる四変もあるし

搾乳をしていない育成牛や乾乳牛に起こる場合もある。

そういうパターンでは

産後以外に胃が弱るような要因がある。

その最たるものが

肢の痛みであろう。

また過密飼いのような群のストレスも

関係しているようだ。

さらには

ホルスタインではなく

黒毛和種で

第四胃変位が起こる場合もある。

IMG_2272その中には

今回の症例のように

生後まだ4ヶ月ほどの黒毛和種が

第四胃変位になってしまうことも

稀にある。

稀にある、と言っても

我々十勝の獣医師が遭遇する頻度から

そう感じるだけのことである。

黒毛和種の多い地域

例えば九州地方の獣医師は

黒毛和種の第四胃変位に遭遇する機会は

きっと我々より多いに違いない。

黒毛和種の多い地方の獣医師の方々に

第四胃変位の発症パターンを

聞いてみたいと思う。

IMG_2271また

ホルスタインに比べて

黒毛和種の場合には

子牛にも多いように感じるのだが

どうなのだろう?


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超・過大児!

酪農家の⌘牧場からの電話で、

稟告は、

「数日前から尻尾を上げて、産気づいているようなのだが・・・」

というものだった。

朝の往診の振り分けをしていた我々獣医師たちは、

皆それを聞いて、

共通した病名をを頭に思い浮かべていた。

「(子宮)捻転ですかね・・・」

「気腫胎かも・・・」

⌘牧場にはK獣医師が往診することになった。

「昼からの帝王切開も、ありですね。」

「そうですね。」

午前中の

自分の往診を終えて

診療所に戻ってみると

手術室には手術の準備がされていた。

「やっぱり手術ですか?」

「ええ。捻転ではなかったんですけど、全然出なくて。化け物かも・・・」

「奇形ですか?」

「尾位なんだけど、何だかおかしいんですよ。」

牛が運ばれてきて

K獣医師とT獣医師が手術室に入った。

昼の弁当を食べ終えた私は

準備室で

午後からの往診の用意をしていると

隣の手術室で助手をしていたT獣医師が来て

「安田さん、ちょっと手伝ってもらえますか?」

「・・・出ないの?」

「何だかおかしいんで。」

「・・・やっぱり奇形?」

急いで手術用の手袋を履いて

牛の腹腔内の

子宮を探り

胎児の前足らしきものを掴み

T獣医師のメスが

子宮を切りやすくなるまで引き上げた。

「重いですね・・・」

子宮の創口から

前肢を1本出して掴んでも

もう1本の前肢がなかなか掴めなかった。

K獣医師の手がようやくもう1本の前肢を掴み上げ

2本の前肢が創口に現われたが

「なんだか曲がってませんか・・・」

「奥に頭があるんですけど・・・」

「デカイですね・・・」

「眼窩には指がかかるんですけど・・・」

「鈍鈎(どんこう)使いますか・・・」

我々の後ろで見ていたS獣医師に

IMG_2240鈍鈎を用意してもらい

それを胎児の眼窩に掛けて

術創を鋏でさらに開大して

前肢と同時に引いてゆくと

ようやく

IMG_2241子熊の頭のような

巨大な頭部が現われた。

前肢を縛り付けたロープを

チェーンブロックのフックに付け替えて

さらに胎児を吊り上げてゆくと

IMG_2242巨大な胸部が現われ

さらに巨大な臀部が続いて現われ

最後に太い後肢2本が現われ

見上げるほどの

過大児の全貌が現われ出た。

IMG_2243「・・・。」

あまりの大きさに

我々は一瞬言葉を失った。

「・・・うわー、で・・・っかい。」

「生きてますよ・・・。」

IMG_2244床に降ろされた巨大な胎児は

鼻で大きな呼吸を開始した。

しばらくすると

頭を上げようとしては

その大きな頭部を

床に投げ打っては四肢を動かし

とうとう頭を上げた。

IMG_2248「・・・何キロありますかね。」

「80キロ、いや90キロ・・・」

「これだけ太くてデカかったら100キロあるかも・・・」

「ところで、この牛の分娩予定日は?・・・」

「来年の1月7日だそうですよ・・・」

IMG_2245「えっ?・・まだ予定日来てなかったの?・・」

「まだ2週間も早い・・・」

「そんなことあるのか・・・」

我々はあまりの胎児の大きさと

その異常さに

ただただ

驚くばかりだった。


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ユニークな従業員

先日はまた、

隣のI田町の診療の応援だった。

今度の応援内容は一般診療ではなく、

JAと役場の農林課の職員と一緒に各農家さんを巡回して、

牛の予防接種とヨーネ病検査のための採血をする、

というものだった。

飼主さんたちも

我々のすることは事前に知らされているので

注射と採血をする牛たちは

既にしっかりと捕まえて繋がれてあり

私はそれらの牛たちに針を刺すだけ。

単純作業の連続で頭を使わずに

IMG_2232体だけを使うという

小手先の技術だけの仕事である。

自分で診療車を運転して回る一般診療と違って

予防接種と採血の時は

役場の職員が車を運転してくれるので

大変ありがたい。

行ったことのない家ばかりの地区を

IMG_2231巡回していると

新しい景色が目に飛び込んで来て

小旅行をしているような気分になり

楽しくなってくる。

そんな中

先日巡回した和牛農家さんで

実にユニークな従業員のいる家があった。

IMG_2224牛舎の中の飼槽の前で

いつまでも立っている。

声をかけても反応がない。

立っているだけで手足を動かさない。

作業着を着ているが

その着こなしがイマイチ。

よく見てみたら

マネキン人形だった。

その1人は少年だった。

IMG_2225また別の牛舎には

艶かしく唇を開き帽子を斜めにかぶった

若い女性が居た。

カラス対策として立っているらしい。

「でもね。カラスはすぐ慣れちゃって・・・」

「・・・あーやっぱり。」

「カラスよりもね。うちに来るセールスの人とかが声をかける・・・」

「・・・人が騙される?」

「そう。で、返事しないから、なんて無愛想なやつなんだろーって・・・(笑)」

「(笑)」

あまりにユニークなので

写真を何枚か撮らせてもらった。

IMG_2226カメラを向けたら

母さんがマネキンに寄って行き

帽子の角度を直しておめかしをしてくれた。

マネキン人形たちは

まるで家族のように

可愛がられているのだ。


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ワインの町へ往診応援

我が診療地区の西隣にある、

I田町の家畜診療所のスタッフが、

さらにその北隣にあるH別町の家畜診療所の人員不足で、

頻繁に、往診の応援に借り出されている。

その人員の穴を埋めるために、

我が町の家畜診療所のスタッフが、

月に何日か往診の応援に行くことになった。

先日はその応援役を私が承り、

朝から1日間、

I田町の畜産農家の牛の往診に回った。

どの農場でも

飼主さんたちとは初対面であるから

往診車から降りたら

「初めまして。」

という挨拶から始まることになる。

十勝NOSAIが広域合併されてからは

こういうことは茶飯事になっている。

どの家でも初対面は少し緊張するものだが

飼主さんも獣医師も、今はもう

お互いに心得たもので

緊張の空気はたちまち消えて

すぐに普通の診療作業に入ることが出来た。

先日もそんな感じでスムーズに1軒目を終えて

2軒目の牛の診療へと進み

そこで治療する牛の首に

ペニシリンの筋肉内注射をしようと針を刺した

その瞬間

牛が予想外な方向に動いて

私の手元が狂い

注射針の根元がポキッと折れて

中の注射液が私の顔面に飛び散った。

私の上半身と顔面は

ペニシリンの注射液で

真っ白いまだら模様が出来てしまった。

とりあえずそのまま

何食わぬ顔で残りの仕事を終えて

濡れタオルで顔を拭いて

車のルームミラーを覗いてみると

IMG_2212私の顔と帽子には

やはりまだ

真っ白いまだら模様が残っていた。

(2件目の農家の奥さんはきっと笑いをこらえていたに違いない・・・)

そんな事を考えつつ

3件目に向かう途中で

いったん車を止めて

私はもう1度ぬれタオルで

念入りに顔を拭いて

帽子を脱いで帽子も念入りに拭いて
 
さらに上半身に飛び散った真っ白いペニシリンの

まだら模様を丹念に消していった。

(3件目以降もみんな初対面なのだから、白いまだら模様の顔では恥ずかしい・・・)

思いもよらぬ失態を

空しく1人で拭いながら

往診時間は刻々と過ぎていった。

3件目を終えた頃には

焦りと動揺はしだいに消えて

普段のペースに戻ってきた。

往診の途中ではさらに

IMG_2210気を取り直すために

しばしばこの町の

美しい雪景色を眺めたりして

いつもと違う往診途中の雰囲気を

楽しむ余裕が戻ってきた。

IMG_2209I田町は

全国的にも有名なワインの町である

往診の途中には

いたるところで

ワインの町らしい看板や

IMG_2211標識や建物がみられ

ちょっとした旅心を味わうことが出来た。

前半のトラブルを

忘れさせる楽しい景色だった。

その日の夜は

IMG_2206I田町の特産品のひとつ

町民還元用のロゼワインで

1人反省会をすることにした。

このワインの近頃流行の飲み方

「ロゼロック」の爽やかな酸味が

ことのほか喉に沁みた。


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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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牛の捻転式去勢の比較

今月の「家畜診療」誌の、

C3281B64-D7C0-4B1B-AE27-AEC7216C3B5Bワンポイント質問のコーナーに、

捻転式去勢の注意点、

と題して、

左右両精巣の同時捻転去勢法(いわゆるニコイチ捻転法)と、

片精巣ずつの捻転去勢法(電動ドリルの捻転法)とを、

比較して考察した記事が掲載された。

筆者は(株)Guardianの伏見康生氏。

C37C2DBC-5637-4094-8404-1242AC041DC6牛の精巣の解剖学から始まり

旧式の結紮法と新式の捻転法の比較を述べ

それから本題の

ニコイチ捻転法(両側同時)と電動ドリル捻転法(片側法)の

比較考察が書かれている。

掲載誌の文章を写真に撮り

33E60A22-FD5B-4A31-80B4-A29DB901CA33ここに転載させて頂いたので

クリックして大きくして

是非読んでいただきたいと思う。

ニコイチ捻転法と電動ドリル法の

それぞれのメリットとデメリットと思われることが

図や写真を通して比較考察されている。

A8725DFC-5957-4C28-B8F2-E7AC8EF22BEE二つの方法の紹介と

実施する際の注意点が

詳しく述べられている。

ただし、今回は

科学的な数値データーによる

客観的な比較検討までには至っておらず

どちらの方法が優れているか

という処までは

残念ながら言及されておらず

両者の去勢法の紹介というところで止まっている。

まだ両者を客観的に比較するデーターは

蓄積されていないようだ。

客観的なデーターがなかなか蓄積できない理由としては

一人の獣医師が

両方の手技を同時に使うということはせず

どちらかの手技を習得してしまえば

それだけを熟練して

日々の診療に用いているからだろう。

私は、いうまでもなく

普段はニコイチ捻転法ばかりをやっており

電動ドリル法の経験は一度もない。

そして

この記事の筆者の伏見氏は、逆に

普段は電動ドリル法を採用されているようだ。

今後

両者がどのように普及してゆくかは

それぞれの獣医師諸氏の手に委ねられるが

今回の記事のような比較検討が

さらに進んで

より良い去勢法が普及してゆくことを願っている。

掲載記事の文末には

以下のような記述があった。

「最後に、従来から鉗子による子牛の捻転去勢を実施する獣医師は存在していたが、ごく限られた範囲の特殊な手技に過ぎなかった。そこへ両側同時捻転去勢専用ツールを開発し、個人でweb発信を行い、手技の一般化と普及をさせた十勝農業共済組合の安田峰獣医師の功績は大きく、獣医療界のこれまでの情報と技術の浸透のあり方に変革をもたらしたケースといえる。」

BlogPaint最近は

俳号の豆作ばかりだったので

本名が活字になるのは

なんだか恥ずかしい(笑)

筆者の伏見氏には

心から感謝を申し上げたい。


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何かが変わった!?

牛の産後起立不能症における、

低カルシウム血症と、

それに関連する、

低リン血症に対する治療薬として、

グリセロリン酸カルシウム製剤(商品名・ネオニューリン)がある。

私はこの業界に就職してから、

30年以上にわたって、

この薬品を使い続けている。

それだけお世話になっている薬品なのであるが

近頃、このネオニューリンに

なにやら異変が起こったようである。

先日、同僚の獣医師2名から

ネオニューリンが白く固まってしまった

という話を聞いた。

極寒の1月ならばともかくも

まだ寒くなり始めの11月に

この薬品が白く固まるというのは

初耳だった。

気になったので

私が診療車で持ち歩いている自分のネオニューリンが

白く固まっていないかどうか確認したところ

IMG_2184それは白く固まってはいなかった。

同僚の白く固まったネオニューリンと

私の白く固まらないネオニューリンと

何かが違うということで

その製造番号(ロット番号)を見ると

前者は

製造番号  110916

使用期限  2019.11

後者は

製造番号  110425

使用期限  2018.12

IMG_2183であった。

私の持っていたものはずいぶん古いロットで

ラベルがずいぶん汚れてしまっていた。

使用上の注意をあらためて読んでみたら

「本剤は寒冷時、白色沈殿物を生じることがあるので、なるべく温暖な場所に貯蔵することが望ましい・・・」

と、ある。

この薬は本来

寒いと白濁沈殿が出来る薬剤であったようである。

それを今まで数十年間

私は全く気にも止めずに

この薬を使っていたのだ。

それも、ただの一度も

白く固まることなく使い続けてきたのだった。

いくら寒くても

何の問題も無く

ネオニューリンは透明のままだった。

ところがそれが

今年になって

何か変わったことが起こったようだ。

私の汚れたラベルのネオニューリンを

公開するのはちょっと恥ずかしいけれども

それはさて置き

ネオニューリンの製造過程で

最近

何か変わったことが有ったのは

間違いないようである。

皆さんがお持ちの

ネオニューリンは

いかがでしょうか?


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17ヶ月齢の牛の上腕骨骨折

稟告は「起立不能」、

酪農家の★さんの、

生後17ヶ月齢の育成牛だった。

初診をした同僚獣医師のカルテには、

起立不能に加えて、

右上腕部の腫脹、硬結、熱感と書かれており、

原因は不明だが転倒か?

という記載があり

消炎鎮痛剤が投与されていた。

翌日

私がこの牛を診に行った時

A1275439-3DF0-4463-BF0D-3043DE5C330Bこの牛は起立していた。

状態が少し良くなったのか

と、思いきや

その歩く姿は

3本足での痛々しいものだった。

E2C99B72-49C1-4CE9-9D40-5FCEC25C1ECB右前肢は全く着地することができず

ブラブラと肩から垂れ下がっている感じで

肘から肩にかけて

大きく腫れていた。

上腕骨の骨折が強く疑われる症状だった。

E1CE1D36-92F7-4CDB-ABED-7A026B7899A8「昼からレントゲン写真を撮りましょう。」

「はい。」

「それで、腕の骨(上腕骨)あたりが折れていたら、もう・・・」

「あきらめた方がいいですか?」

「・・・うん、そう、だね。」

「この牛、17ヶ月でまだ種付けもしてないし、しょうがないです。」

午後から

X線装置を持って来て

★さんの牛の上腕部を撮影した。

しかし

17ヶ月齢の牛ともなれば

体重は500kg程度あり

3本足といえども

走り出したら手に負えない。

かと言って

鎮静剤をかけて

横臥してしまった時

どういう体位で上腕部を撮影するかという

経験が私には無かった。

結局、鎮静剤を打たず

立位のまま

4人がかりで

患肢を前方に牽引して

上腕部にX線を当てて撮影したのが

D212BDC3-6291-43CF-8690-98E49969AC0E左の2枚の写真である。

全部で4枚撮影したが

うち2枚は全くの失敗撮影で

辛うじて患部が写ったのがこの2枚だった。

2枚目の写真の黄色い矢印で示した部分に

BlogPaint上腕骨の骨折らしいものが写っている。

翌日、この写真を元に

この牛を廃用に認定してもらった。

さらに、翌日の解剖の結果

上腕骨遠位の骨折は間違いなかった。

79C58BB0-039D-4DB8-B235-7C858692BE32しかし

それにしても

正直もっと上手な写真を撮りたかった。

今から考えると

C22B5DD2-A6C2-455A-9A00-D5FD59790BCCちゃんと鎮静剤を使うべきだった・・・

もっと保定をしっかりして撮影すべきだった・・・

撮影角度と方向は適切だったのか・・・

X線量ももっと多くすべきだったのか・・・

などという

初歩的な反省点が

たくさん挙げられる症例になった。

これをお読みの

X線撮影の経験豊富な諸先生方に

アドバイスをいただいて

もっと撮影が上手になりたいと思うので

どうかコメントを

よろしくお願いいたします。


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女優の涙、赤ちゃんの涙、雌牛の涙

人前で涙を見せることが多いのは、

e5a11ef0成人ではやはり、

女優さんが一番だろう。

女優さんにとって、

涙を流すことは仕事であり、

飯の種である。

Unknown美しく、悲しく、

感動的な涙を流す女優さんを見て、

我々は心を打たれる。

しかし

imagesその涙の多くは

演技による涙であり

嘘の涙である可能性が高い。

自分の涙ではなく

001372acd73d114915f351目薬の可能性さえある。

それでも我々は

そういう涙を見て

心を打たれてしまう。

そんな場面で

女優さんが涙を流すメカニズムや

涙の量や成分などを論じるのは

論じたい人の勝手であるけれども

それは無粋というものであろう。

また

人前で涙を見せるのは

赤ちゃんや幼児も

得意である。

Unknown赤ちゃんの涙は

女優さんの涙よりも

純粋で計算のない

無垢な心から湧き出る涙である。

我々はそんな正直な

images嘘のない涙を見て

心を動かされる。

そんな場面で

赤ちゃんが涙を流すメカニズムや

Unknown涙の量や成分などを論じるのは

論じたい人の勝手であるけれども

それは野暮というものであろう。

また

人前で涙を見せることの多いのは

雌牛もそうである。

IMG_2175私の経験の中では

ホルスタインの搾乳牛が

もっとも涙を流すことが多い。

ホルスタインの成牛は

ヒトの赤ちゃん程度の知能があるとも言われている。

IMG_2174そんな雌牛たちが

人前で涙を流すのは

何も不思議な事ではない。

雌牛の涙は

赤ちゃんの涙と同様に

IMG_2173純粋で計算のない

無垢な心から湧き出る涙である。

我々はそんな正直な

嘘のない涙を見て

心を動かされる。

45F3E6B6-5AC3-4BAE-BE7A-24F00C2908A8そんな場面で

雌牛が涙を流すメカニズムや

涙の量や成分などを論じるのは

論じたい人の勝手であるけれども

それはやはり

無粋で野暮というものであろう。

女優さんの涙

赤ちゃんの涙

雌牛の涙


これら3つの涙に

どれほどの違いがあるのだろう。

哺乳動物の流す涙としては

全く同じものであると言えるのではなかろうか。

哺乳類の涙というものは

此の地球上の

美しい露のひとつであろう。



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子牛の急性鼓腸症

「子牛の腹が、また張ってきた・・・」

家畜商の〆さんの父さんからの電話だった。

「昨日の朝にも診てもらって、おさまってたんだけども・・・」

「わかりました。」 

カルテを見ると、

昨日の朝に初診された急性鼓腸症だった。 

その時は、

経口カテーテルで第1胃内のガスを抜き、

生菌製剤と胃腸薬を投与してあった。

「それで1回おさまって、もう治ったと思って、昨日の晩、配合飼料やったんだよな・・・」 

IMG_2162「あーそう」

「そして今朝餌やりに来てみたら、またこんなに腹張って・・・」

「なるほど」

私は、子牛用のカテーテルと

子牛用のオーラルクロスを

BlogPaint診療車から取り出して

子牛の第1胃に溜まったフリーガスを

カテーテルから排泄し始めた。

「あ、臭え・・・」

「でも、このくらいのガスなら普通だよ」

BlogPaint私と〆さんの父さんとで

この子牛の腹部を左右から挟んで

強く押すと

カテーテルから吹き出す

透明のガスがまた勢いを増した。

IMG_2165カテーテルの先端をバケツのお湯に浸すと

その吹き出す勢いが良く見えた。

勢いがなくなるまで押し続け

その先端に

漏斗を取り付け

今度は薬剤投与となる。

生菌製剤でもよかったのだが

ここはもう少し刺激が強くて

IMG_2166薬効の幅の広い

中森獣医散「Z」を選択。

薬品名にいつのまにか「Z」が付いて

その効果が一段とパワーアップしたような気がするが

それは気のせいかもしれない(笑)

IMG_2167ともあれ、こういう場合は

子牛の第1胃の微生物叢の状態が

まだ不安定で

一部の微生物による異常な発酵が起こっているので

それを鎮める効果のある薬剤を投与しておくのが良い。

投与を終えて

カテーテルを引き抜き

〆さんの父さんに

配合飼料はしばらく与えないよう指示して

帰路についた。

その

翌日の

今度は夕方に

また〆さんの父さんから電話がかかってきた。

「いやー、またあの子牛の腹が張ってきて・・・」

「あらら」

「まちがって配合飼料を嫁さんがやっちゃって・・・」

「あらら(笑)」

私はまた再び

〆さん宅へ往診し

昨日の朝と全く同じ内容の診療を

繰り返し施して

帰路についた。


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牛は泣き虫

牛は泣き虫である。

特にホルスタインは泣き虫である。

酪農家へ往診に行き、

健康を損ねた搾乳牛を診て、

点滴治療をすることになり、

その牛にモクシをかけて、

近くの柱に頭を縛りつけ、

長い首を引き伸ばして、

その頸静脈に、

太い針を刺そうとしたその瞬間、

針を持った手の上に、

温かい雫が、

ぽとり

と落ちてきた。

牛の涙だった。

体調が悪くて

ややくぼんだ目に

透明な涙を溜めて

E15EC11F-575F-434C-AD35-0146C12BE6F8その涙が

ぽろりぽろり

と落ちてくる

牛が泣いているのだ。

声はほとんど出さず

45F3E6B6-5AC3-4BAE-BE7A-24F00C2908A8不安げに

悲しげに

私の方を

じっと見ながら

牛が

静かに

泣いているのだ。


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診療車のクラクション

昨日の往診で、

酪農家の◯さんの牛舎の前に到着し、

誰も近くにいる気配がなかったので、

診療車のクラクションを鳴らして、

あたりを伺っていたら、

「あ、やっぱり安田さんだ。」

と言いながら◯さんの息子がやってきた。

「え?、俺って判ったの?」

「うん。」

「どうして?」

「クラクション鳴らす獣医さんは安田さんしかいないから。」

「え?、そうなんだ。」

「うん。」

「それは知らなかった。」

「クラクション鳴らす人は、むかしの幕別の先生たちだけ。」

「へー、そうなんだ。」

「他の人はみんな鳴らさないですよ。」

「そういえば、どこかの獣医で、往診に来てクラクション鳴らしたら、親方に怒られたっていう話聞いたことある。」

「そういう家があるんでしょうね。」

「やっぱりクラクション鳴らされたら、うるさいの?」

「僕は牛舎の奥に居て、気づかなかったりするから、鳴らしてもらったほうがいいですけどね。」

「今の獣医は、クラクション鳴らしたらダメ、って教わってるのかな?」

「みんな鳴らさないですから、そうかも。」

「俺はクラクション鳴らして、一度も怒られたことはないけど。」

「怒る家もあるから、鳴らさなくなったんでしょうね。」

「そっかぁー、そういえば俺も、怒られはしなかったけど・・・」

実は一度だけ

怒られこそしなかったが

記憶に残っていることがある。

それは転勤したT町で働き始めた頃の

夜間当番のとき

搾乳の時間帯にある酪農家に往診にゆき

つい、いつもの癖で

到着の合図のクラクションを鳴らしてしまったことがあった。

そして牛舎に入って行ったら

中で搾乳していた親方から

「搾乳してんだから、中にいるに決まってるでしょ!」

と、ちょっと不快そうに言われたことがあった。

私の不注意だった。

それ以来

私は搾乳時間中だけは

決してクラクションを鳴らさないように注意している。

それはちょっと考えれば当たり前のことであり

全く私の不注意であった。

しかし

搾乳時間以外の昼間の往診では

牛舎に到着してあたりを伺って

誰も居ないようであれば

クラクションを鳴らすことはよくある。

そのほうが早く気づいてもらえると思っている。

IMG_2161でも

やっぱりそれは

うるさいと思われているのかもしれない・・・

なんだか

心配になって来た。

これをお読みの皆さんは

どう思っているのだろうか?

診療車のクラクションを鳴らされたら

嫌ですか・・・?


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微研学術セミナーin帯広(2)

「新生子牛へワクチン接種した場合、

ワクチンブレイクという現象によって、

その病原体に対する抗体価は上がらないけれども、

抗体価が上がらないからといって、

免疫力も上がらないのではなく、

細胞性免疫はしっかりと獲得され

免疫力が増強される。

したがって、

新生子牛へワクチンを接種する時、

ワクチンブレイクを気にして、

接種を遅らせる(生後3ヶ月〜)必要はなく、

新生子牛へ早期からのワクチン接種が、

有効である。」

今回のセミナーで

私が教わった新知見である。

講師の大塚先生は

この説を唱えるきっかけになったのが

人医療における小児のワクチン接種法だったという。

人の新生児には母親の胎盤を介して

IMG_2552IgGが移行しているにもかかわらず

できるだけ早く

数種類のワクチンを接種することが推奨されているという。

その理由は当然

ワクチン接種の効果が期待できるからである。

IMG_2553その効果とは

発症率の低下という形で現われたり

発症した後の症状の軽減という形でも現われるもので

血中抗体価の高低とは必ずしも一致しないものだった。

講演時間の関係で詳しいデーターの解説は省かれたが

結論として、前回の記事に書いた通り

ワクチンブレイクによって出来た抗原と抗体の結合物は

マクロファージに貪食され

その抗原情報がTリンパ球に記憶され

細胞性の免疫機能が準備される

という新知見が示された。

したがってワクチンブレイクを気にして

新生児へのワクチン接種の時期を遅らせる必要はなく

むしろ生後の早い時期に積極的にワクチンを接種すべきである

というのである。

この理論を裏付けるものとして

実際の現場のワクチネーションの

実例で示したのが

次の講師の加藤先生だった。

加藤先生のデーターの1つは

なかなか衝撃的だった。

それは

サルモネラ症によって

新生子牛が生後数日で次々と重篤な症状を示し

高い確率で死亡してゆくある農場で

サルモネラ症不活化ワクチンを

出生直後に接種し始めた時の

死亡率の変化を示したものだった。

詳しい数字は省略するが

IMG_25552ワクチン接種を開始した時点で

サルモネラ症による子牛の死亡率が

有意に低下している。

その劇的な変化に私は驚いてしまった。

ちよっと読みづらいが

IMG_2532プレゼンテーションの写真に示されているのが

そのワクチネーションプログラムである。

是非参考にしていただきたいと思う。

ちなみに

このサルモネラ症不活化ワクチンは

主催者の京都微研の製品ではなく

他社の製品だった。

ともあれ

サルモネラ症以外の

他の細菌やウイルス感染症においても

新生子牛への早期のワクチン接種で

同じような効果が期待できる

と考えるのが自然ではなかろうか。


(この記事終わり)


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