北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

牛の診療

こんなに大きくなりました。

このX線写真は、

IMG_4963去年の1月に撮影した、

多頭飼育の酪農家▲牧場の、

和牛子牛の右後内側の蹄骨の関節炎と骨髄炎。

(蹄骨は骨膜を欠くので骨膜炎とは言えないらしい。)

今から約15ヶ月前の写真である。

当時この腫脹した患部の治療について、

2月の初めに何回かに渡って記事にした際、

IMG_4885初診時の対応や、

その後の診断や、

その後の治療方法や、

従業員との意思疎通のまずさ、

などに対して、

多くのコメントをいただいて、

予想外の盛り上がりがあったことを、

記憶している方もいらっしゃるかもしれない。

その当時の記事のリンクを貼り付けたので

和牛の蹄のレントゲン画像(1)

和牛の蹄のレントゲン画像(2)

和牛の蹄のレントゲン画像(3)

興味のある方は過去の記事とコメントを

クリックして是非とも読んでいただきたいと思う。

IMG_4893読み返してみると

同業の獣医師の方々からは

かなり厳しいご意見と

ご批判があったことがわかる。

そのおかげで私も

大いに反省するとともに

随分と色々なことを学ばさせていただいた。

IMG_4895しかし

その後の経過がどうなって行ったのか

という報告の記事は

なかなか書く機会がなかった。

あれから15ヶ月が経った今

IMG_4955この牛はまだ▲牧場で飼われ続けている。

当初目標としていた完治の状態に

ようやくたどり着いてくれたようだ。

その間、何度か

足の患部の状態の写真を撮り続けてきた。

IMG_5069発病して約半年後には

まだ患部に腫脹があり

自壊した部分の皮膚が

覆っていない状態だったが

10ヶ月以降は

IMG_0947自壊部分に肉芽が覆い

外見では自壊部分が

わからないような状態になっていた。

写真を撮ってゆくにつれて

当然のことながら

IMG_0944牛はだんだんと大きく成長し

右後肢の内蹄骨部分は

特に言われない限り

全く普通に見える状態となっていた。

写真を撮ろうとすると

私が餌をくれると思って

とても人懐こくなっていた。

この▲牧場は

IMG_1344その後も相変わらず

従業員達の雇用が長続きせず

私も相変わらず

病牛の治療方針について

経営主への説明と同意に

労力を費やしている状況は

まったく変わっていない。

IMG_1341ただ、この和牛を

今後どうするのかについて

従業員達から

話を又聞きして分かったのは

自家肥育して食べるらしい

ということだった。



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「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

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 見ることが出来ます。


 

仔牛の上腕骨骨折

「仔牛の右肘(ひじ)が腫れて、着けない。」

という酪農家の⌘さんから電話が来た。

休日の当番だったK獣医師が往診へ行き、

とりあえずの処置として、

消炎剤と抗生物質を投与した。

IMG_1286翌日、

K獣医師から伝言を受けた私が、

この仔牛を診た時、

「昨日と変わっていないです。」

という飼主の⌘さんの言葉に、

IMG_1289私はこれはちよっと厄介かもしれないと感じた。

肘の関節の炎症で腫れているのは間違いないのだが、

関節の深部や骨に異常がないないかどうか、

確かめておかねばならない。

「じゃあ、レントゲン写真撮ってみましょう。」

私はそう言って、

昼から出直して、

ポータプルのレントゲン装置を積んで、

この仔牛の右肘(ひじ)の腫れている部分の写真を撮った。

腫れている部分の内側に

立ったままで脇の下にカセットフィルムを当てても

胸部につかえて患部に届かない。

そこで、仔牛に鎮静剤をかけて寝かせ

仰向けの状態にして

前脚を開いた姿勢にして

カセットフィルムを患部の外側に当て

寝かせて仰向きになっている仔牛の

患部の内側から外側に向かって

X線を照射するようにして

なんとか

肘(ひじ)の部分の写真を撮ることができた。

写真の現像は

隣町のT町の東部事業所まで

撮ったカセットフィルムを運び

そこにあるデジタル解析装置の中へ

IMG_1290カセットを差し込めば

デジタル画像化されたレントゲン写真が

画面に現われる。

その結果がこの2枚の写真である。

IMG_1291ちょっと分かりにくいが

よく見ると

上腕骨の遠位端が

ポッキリと折れて

後方へ変位しているのが見える。

BlogPaint最後の写真は

牛の肘の部分の

骨格模型に

その状態を記入したもの。

「あー、これは、いっちゃってますねぇ・・・」

「ほんとだ。」

現像機械を操作してくれたM獣医師と私は

画像を眺めて、ため息をついた。

「これは、厳しいんじゃないですか・・・」

「・・・うん。」

私は、しばらく画像を見て

この牛は我々の手には負えないと判断した。

そして翌日

私はこの仔牛の廃用の認定を

共済の連合会に申請し

そのまま承諾された。

仔牛は約2ヶ月齢だった。

私は

今回のような

上腕骨の遠位の骨折を

X線画像で診断したのは初めてだった。

さて

記事をお読みの獣医師諸君でも

上腕骨骨折の症例を経験された方は

少なからずいると思うので

ご意見を聞きたいと思う。

私には手に負えなかった症例だが

どなたか

仔牛の上腕骨骨折の整復に

成功した方は

おられますか?

(追記)

この記事をアップした後

コメントしていただいたTamさんという獣医師から

黒毛和種仔牛の上腕骨骨折の

治療中の写真を送っていただいたので

以下に貼り付けました。

Tam先生、ありがとうございます!

BlogPaint










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仔牛の下顎の腫れ(毎度!)

すっかりお馴染み(!?)、

IMG_1205となった仔牛の顎の腫れ。

そのほとんどは、

口腔内の細菌が、

歯肉(はぐき)に感染して、

それが歯肉深く侵入し、

IMG_1207下顎をぷっくりと腫らして膿瘍になる。

私の記憶の中ではすべてが下顎で、

上顎が腫れた仔牛を見た憶えがない。

下顎が好発部位であるようだ。

なぜそうなのか?

IMG_1210それはまだよくわからないが

牛の下顎とその周辺には

細菌感染しやすい構造と

その後の

膿瘍を形成しやすい構造が

IMG_1213きっとあるのだろう。

今回の腫れも

その例に漏れぬ

典型的な下顎の膿瘍だった。

穿刺をして

IMG_1217膿瘍であることを確認し

そのまま頭部を保定して

メスで切開。

中の膿汁を絞り出して

軽く洗浄して

IMG_1219抗生物質を投与して

創部はそのまま開放して

終了。

後日

綿棒に採取した膿瘍の

細菌検査の結果が送られて来た。

αーstreptococcus(レンサ球菌)

BlogPaintが検出された。

仔牛に限らず

牛の体にできた膿瘍を

出来るだけ綿棒で採取して

細菌検査に出すことにしているのだが

症例数がそれほど多くないので

なかなかデーターが集まらず

牛の体表の膿瘍における

感染細菌の菌株の傾向

というものは

まだなかなか掴むことができていない。

っても、まぁ

傾向など掴めなくても

特に困ったことにはならないから

そうなっている訳なのだが。


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ピアス(耳標)落ち牛

「子牛の耳から血が出てます・・・」

そんなFAXが、

和牛生産者の¢さんから送られて来た。

「縫ってもらいたいので、よろしくお願いします・・・」

いつもは

電話での往診依頼が来ることの多い¢農場だが、

この日ばかりはなぜか、FAXによる往診依頼だった。

FAXの印刷でそう言われてしまえば仕方がない、

縫合の準備を完璧にして¢農場へ向かった。

「耳標が取れちゃったんです・・・」

「あー、ほんとだ。」

生まれてまだ数日の仔牛だったが

とても元気が良く

捕まえることさえ大変な

IMG_1324やんちゃ坊主だった。

耳標を付けたばかりなのに

その耳標を何かに引っ掛けて

引き千切ってしまったのだろう。

IMG_1325出血していた耳は

大きく裂けていた。

「このまま放っておいてもいいかなとも思ったんですけど・・・」

「こんな小さいうちから耳裂けじゃあねぇ。」

「そうなんです。このままずっとこんな耳では・・・」

「見た目が悪いと、いろいろね。」

「そうなんです。それに、耳標をまた付けなきゃならないと思うと・・・」

「ちゃんと繕っておいた方がいいですよねぇ。」

「そうなんです・・・」

耳を触られるのを嫌がる仔牛を

セラクタールで鎮静して

IMG_1326縫合に取り掛かった。

乾燥していた創面に

カミソリを当てて

剃毛を兼ねて新鮮創にし

IMG_1327角針で縫合した。

縫合を終えて

アンチセダンで鎮静を解くと

仔牛はたちまち元気になり

IMG_1328ロープを強く引っ張って暴れ始めた。

やはり相当なやんちゃ坊主である(笑)

耳標(ピアス)の落ちた牛は

親牛では良く見かけるが

IMG_1329それらはすべてそのまま放置されている。

それを一々縫合して繕うことは

私は、かつて一度も経験がなかった。

しかし

耳の裂けた牛は

どこか哀れな感じがする。

まだ小さな仔牛の時から

そんな哀れな姿で一生を送るのは

ちょっとかわいそうだと思う。

それに加えて

牛の個体を確認をする場合

耳の裂けた牛は

番号がわからないので

確認に手間がかかる。

牛の外見を良くするためばかりではなく

牛の管理の徹底のためにも

こういう耳の縫合の仕事は

もっとあってもいいのかな

と思った。


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また乳房の出血かと思いきや(!?)

「乳房から出血してるみたいなんですけど・・・」

そんな往診依頼がまたやって来た。

(またか・・・) 

と思って、話を聞いたら、

今回はさすがに、♯牧場の牛ではなく、

♭ファームの牛だった。

♭ファームに到着して

出血をしているという牛を診ると、

今度の出血は

乳房表面を走る静脈からではなく

乳頭の損傷部からの出血だった。

IMG_1281右後の乳頭が

写真のごとく

縦に裂かれる様に

約10儷瓩損傷している。

しかし、損傷は

乳頭管まで達しておらず

この乳頭の生命線は守られているようだった。

「・・・うーん、縫ったらなんとかなるかなぁ・・・」

「これを見つけた搾乳担当の人が、そうしてほしい、って言ってました。」

「・・・いつ頃、見つけたの?」

「午前中の搾乳の時だそうです。」

「・・・じゃぁまだ、半日くらいしか経っていないね。」

「そうだと思います。」

「・・・んじゃぁやってみるか。」

「お願いします。」

「・・・それにしても・・・汚い乳房だねぇ・・・」

「そうですね。」

IMG_1282♭ファームの従業員君は

どこか他人事の様な口振りだったが

言われた事はちゃんとやってくれた。

損傷した乳頭に触ると

牛が嫌がって暴れるので

枠場に入れて治療をしたいところなのだが

IMG_1283この♭ファームには

枠場がない・・・。

仕方がないので

牛を壁ぎわに繋いで

フリーバーンの扉を寄せて来て

細長い三角形の中に牛を挟み

牛が尻を振らないように保定し

IMG_1284そこで鎮静剤をかけて

扉の外側にしゃがんで

そこから手を伸ばし入れて

乳頭の縫合をすることにした。

損傷部の汚れを洗っていると

この乳頭の乳房が

乳房炎になっていることもわかった。

「・・・乳房炎にもなってるから、ちょっと腫れてるね・・・」

「そうですか。」

「・・・縫ったところがちゃんと付くかどうかわからないよ・・・」

「そうですか。」

「・・・このあと、もっと腫れるよ・・・寝床も汚いしねぇ・・・」

「そうですね。」

「・・・抗生物質の注射も打つからね。」

「わかりました。」

相変わらず他人事のような従業員君だが

言った事はちゃんと理解してくれたようだ。

ともあれ

乳頭損傷の応急的な縫合を終えて

道具を片付けて

帰路に着いた。

乳牛を飼う場所が

スタンチョンの繋留から

フリーストールやフリーバーンのような

繋がない形式にする酪農場が増えた昨今

乳頭損傷の事故は

減って来たように思うのだが

最近はそれが

そうでもなくなったように思う。

その理由として

フリーストールやフリーバーンにおける

牛の過密状態

があるのではないかと

私は思っている。


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S木牧場さん!

北海道獣医師会雑誌の今月号に、

十勝の広尾町の酪農家、

S木牧場さんが紹介されていた。

IMG_1313「私の職場紹介」

というシリーズの記事だ。

執筆者は、

元十勝NOSAIの獣医師だったNさんで、

このS木牧場に嫁ぎ、そこを職場として紹介している。

私はかつて、Nさんとは

同じ診療所の同僚の獣医師として、

約5年間一緒に働いたことがある。

Nさんが現在の自分の職場

IMG_1310すなわちS木牧場で

主婦として

母として

そして獣医師として

頑張っている姿を

獣医師会雑誌の記事を通して

知ることができた。

読んでいるうちに

一緒に働いていた頃のNさんの面影と

往診に通っていた頃のS木牧場を思い出し

とても懐かしく思った。

IMG_1316と同時に

S木牧場が

多くの困難を乗り越えながら

現在に至り、素晴らしい酪農家として

さらに日々進化しつつあるということが

Nさんの文章の隅々から伝わってきた。

その文章は

理路整然としていて

堅実かつ謙虚

そして

地にしっかりと根を張った

酪農家としての自信と

獣医師としての自負が

至る所で感じられる好文章である。

興味のある方は

特に

酪農家の方々には

是非クリックして

全文を読んでいただきたいと思う。

この文章の中で

最も、私の心に響いたのは

「今後の北海道酪農に望むこと」

という章の中の

「欧米のやり方を真似しても成功しません。『日本の土と草で牛を飼う』を忘れてはいけないと思います。」

IMG_1312というNさんの言葉だ。

この言葉は

酪農家であり

かつ

獣医師である

Nさんだからこその

説得力があり

とても重みのある言葉だと思う。


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乳房からの出血(三たび!!)

「乳房から、また出血してるのですが・・・」

#牧場からの往診依頼だった。

なんと・・・

またまた乳房からの出血である。

半ば呆れながらも、

事態は大変なことになりそうな気配もあるので、

いつものように緊張した面持ちで、

#牧場に到着してみると、

IMG_1250問題の牛はすでに、

パーラーの枠に入れられていて、

肢を上げられていて、

乳房の出血部位を治療する準備が、

全て万端に整っている状態だった。

前々回

前回

に引き続いて

今回もまた、全く同様に

乳房の外側面を走る静脈に

穴が開いて

そこからの出血だった。

IMG_1251「・・・またか。」

「・・・はい。」

3回目もまたもや

乳房のほぼ同様の箇所から

勢いよく出血している牛を目の前にして

この出血の原因が

カラスの仕業であることを

もはや誰一人として

IMG_1253疑う者はいなかった。

私は再び

いや、三たび

この乳房の出血部の血管を縫合し

止血剤を打ち

治療を終えた。

IMG_1254頻度のそれほど高くない

乳房側面の血管縫合

という手技を

ここ1ヶ月も経ぬ間に3回も

繰り返し行っていると

なにやら、時間が空回りして

タイムスリップしているような気分になった。

そして、更には

こころなしか

IMG_1255自分自身の

乳房の血管の縫合処置の

手際がよくなって

技術が上達したようにも感じていた。

短時間に反復練習

いや

反復「本番」を

3回も繰り返せば

誰だってきっとそうなるに違いないと思った。

「・・・カラス、何とかしないとね。」

「・・・そうですよね。」

短期間に3回繰り返された

カラスの獣害だが

このままではいつ4回目が起こるかわからない。

大事なのは

治療技術などよりも

予防対策であることは

もはや言うまでもない。


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乳房からの出血(再び!)

「乳房から、また出血しているのですが・・・」

#牧場からの電話だった。

#牧場では、たったの10日前に、

乳房からの出血で往診したはかりである。

またか・・・

最近多すぎるなぁ・・・

と感じつつ、#牧場のフリーストールへ行ってみると、

IMG_1177写真のように、牛床と通路が、

赤い血で染まっていた。

「今のところ、血は止まったみたいなんですが・・・」

「でも、この前と同じみたいだから、枠に入れて、縫っておいたほうがいいね。」

「わかりました。」

牛は歩いているうちに

IMG_1184また左の内股あたりから出血を始めた。

枠に保定して

左足を挙げて見ると

左足の下腿部に隠れていた出血部位が露呈し

消毒液で洗浄すると

乳房の周囲を走っている血管から

IMG_1187血が放物線を描いて噴き出した。

10日前の牛は

乳房の右側の血管に穴が空いていたが

今日の牛は

乳房の左側の血管に穴が空いていた。

その血管の傷は見事に

IMG_118810日前の症例と左右対称の

全く同じような位置にできた傷だった。

とりあえず、前回と全く同じ縫合をして

出血を止めて、止血剤を打ち

治療を終了した。

それにしても

たったの10日という短い期間に

乳房の出血に2例も遭遇するとは

IMG_1189いまだかつてない出来事である。

それも

乳房の左右の内股の部分。

それは・・・

牛が立っている時は

後肢の下腿部に隠れて見えない部分。

IMG_1125しかし・・・

牛が横臥した時だけあらわになる

そんな場所の血管が

集中して損傷を受けたのだ。

「これは、やっぱりカラスしかありえないよね。」

「そうですね。」

想像すると

BlogPaintカラスは左の絵のごとく

横臥している牛の

後肢の下腿の付近に止まり

そこから乳房の表面に走っている血管を狙って

嘴でつついて出血させたのだろう。

カラスのそんな姿が

浮かび上がってくるのだった。 


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フリーマーチン、語源の「新説」

仔牛の♂♀の双子のことを、

業界ではフリーマーチンと呼んでいる。

なぜそんな名称になったのかというのは、

意外にナゾで、

今のところ、

新得の畜産試験場の先生から教えて頂いた説が、

最も信頼できる説であるようだ。 

フリーマーチンの語源については

私もこのブログの約10年前の記事に書いたのだが

先日、なんとそこへ新しい書き込みがあり

フリーマーチンのマーチンというのは

正しく発音すると

マーチン(Martin)ではなく

マーシャン(Martian)である

という書き込みなのだった。

マーシャン(Martian)とは何かというと

日本語に訳せば

「火星人」である。

仔牛の♂♀の双子は

じつは火星人(マーシャン)と呼ばれていて

それが次第にナマって

フリーマーチンと呼ばれるようになったという説である。 

なるほど

こんなところにも 

地球の大気圏外の大宇宙の影響があったのである。

Unknown大宇宙からの影響・・・

といえば・・・

♂♀の双子のフリーマーチンが・・・

火星人(マーシャン)
ならば・・・

我々がよく遭遇する宇宙人・・・

すなわち子宮脱星人は

何と呼ばれるのだろう。

子宮脱は英語で Uterine  prolapse(プロラプス)であるから

子宮脱星人は

プロラプシャン(Prolapsian)

である。

お、なかなかいい呼び名じゃないか。

では子宮捻転星人は

何と呼ばれるのだろう。

子宮捻転は英語で Uterine torsion(トージョン)であるから

子宮捻転星人は

トージョニアン(Torsionian)

である。

おお、なかなかいい呼び名ではないか。

images




子宮脱星人(プロラプシャン)

子宮捻転星人(トージョニアン)

これは、なかなか

カッコいい♪


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深夜の雪

「お産なんですけど、破水したのに、陣痛が全く始まらないんです・・・」

「わかりました。すぐ行きます。」

携帯電話が鳴ったのは、

午後9時30分を過ぎた頃だった。

和牛の繁殖農家の⌘さんからだった。

夜道に診療車を走らせて約20分、

空には星が見えていたが、

どういうわけか、

細かい雪がチラチラと降り続いていた。

・・・夜の風花・・・?!

そんな風情のあることを考えている間も無く

⌘さん宅に到着。

「分娩予定から、もう2週間遅れてるんです。」 

牛は大きな和牛で

今回が6産目だという。

「全然いきまないので、心配で・・・。」

手を入れると、胎児は生きていたが

産道の開きがまだ不十分だった。

「お産をさせる前に、まずカルシウム剤を打ちましよう。」 

和牛といえども

6産目ともなると、低カルシウム血症になることがあるし

今の産道の状態では

いきなり助産をするには少し早い気がしたので

カルシウム剤を打ちつつ

ひと呼吸置いてから、ゆっくり助産した方が良いと判断した。

それに加えて

⌘さんの和牛は半月ほど前に

お産の発見が遅れて、胎児が死んでしまった事故があったばかりだった。

そういうことがあると

次のお産の時は

絶対に死なせたくないという思いから

早く獣医を呼んで、万全を期すということになる。

私は、そういう⌘さんの気持ちを強く感じていた。

そういう場合、実際には

呼ばれるのが早すぎてしまうこともある。

カルシウム剤を打ち終わり

ひと息ついてから

「じゃあ、始めましょうか。ロープと滑車をセットして・・・」

「はい。」

「産道が狭いから頭にもワイヤをかけますね。」

「はい。」

「まず頭だけ軽く引いて・・・そう・・・」

「・・・」

「頭が・・・産道に・・・よし、乗ってきた。こんどは足をゆっくり引いて・・・」

「・・・」

「そのままゆっくり・・・仔牛のおデコが全部出たら・・・滑車を強めに引いて・・」

「・・・」

「よし、頭が出た。・・・引いて、引いて・・・」

IMG_1129ここは絶対に

生かして出さなければならなかったので

私も少し緊張したが

胎児は無事に誕生した。

IMG_1130大きめの♂だった。

産科道具を片付けて

挨拶を交わして

帰路につくと

来るときには星が見えていた空は

雪雲に覆われて

雪が盛んに降り始めていた。

途中の道ではさらにそれが激しくなり

IMG_1132分岐点や交差点が

降る雪でよくわからなくなってきた。

慣れている道だというのに

曲がる交差点を一つ間違えて

IMG_1134あらぬ所へ向かいそうになり

また引き返し

さらに激しくなる吹雪の中を

対向車にも気をつけながら

路肩にも落ちないように気をつけながら

IMG_1137ようやく

宿泊している事務所まで帰ってきた。

帰りの道のりは

行きの道のりの

倍近くかかったような

深夜の雪の中の往診だった。


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乳房からの出血

「乳房から血が出ていて、止まらない・・・」

午後3時頃、#牧場から電話が入った。

乳房からの出血の治療は、

1週間前に♭牧場でもやったばかりだった。

よく当たるなぁ、

と思いつつ、

#牧場の牛を診ると、

IMG_1100右後肢の飛節以下が血で真っ赤に染まっていた。

乳房はそこに重なる面がやはり血で真っ赤に染まっていた。

牛の顔を見ると、

その部分をしきりに舐めていたのだろう、

鼻と口が血で染まっていた。

IMG_1122「どこで見つけたの?」

「フリーストールから牛を追い始めた時、ポタポタ血が垂れていたんです。」

「今は、血は止まってるみたいだけど。」

「そうですね。」

「でも、また何かの拍子に出血するといけないから、どこから出ているか見ておこう。」

IMG_1102「はい。」

「右の後肢をロープで縛り挙げてみようか、削蹄するときみたいに。」

「わかりました。」

従業員の@君は、搾乳パーラーの中で手際よく

牛の右後肢を上げてくれた。

IMG_1111「あー、ここから出てるみたいだねー。」

「ほんとだ。」

「縫って、止血しておこう。」

「はい。」

従業員の@君は、牛の頭をモクシで固定し

牛の尻側にもロープをかけて

この牛をしっかりと保定してくれた。

出血部分と見られる箇所は

乳房の内側を走る7mmほどの太さの静脈だった。

小型の針に吸収糸をつけ

IMG_1112まず2針縫い

糸の張りを緩めて

出血のなくなったかどうかを確認して

まだ少し

血が滲んでくるので

IMG_1118もう1針

血がほとんど滲まなくなって

ダメ押しのもう1針

きれいに止血されたところで

縫合を終了。

その後、止血剤(バソラミン)を注射して

IMG_1120治療を終了した。

「出血の原因、なんだろう、何か思い当たるものあるかい?」

「えーっと、だいぶ前、この器具に引っ掛けて出血した牛がいました。」

その器具とは

パーラーで搾乳する時に

IMG_1121ミルカーのチューブを固定するための金属製のフックだった。

「これか・・・。」

「でも・・・」

「搾乳する前にストールで見つけたんだったら・・・」

「つつかれた・・・」

「奴らに・・」

「やっぱり、カラスですか・・・」

「その方が、ありえるかもね・・・」

IMG_1126今日の#牧場の周辺には

カラスの鳴き声が響いていた。

近くの電線や

牛舎の屋根に止まって

こちらの様子を伺っているカラスたちに

IMG_1123携帯のカメラを向けると

賢いからスたちは

危険を察知したように

空に舞い上がり

近くのカラマツの林に移動していった。


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乳房の膿瘍

稟告は「起立不能」だった。

牛が坐り込んでいるところへゆくと、

ずいぶんと疲れた表情の牛が、

一瞬、私を恨めしそうに見て、

また視線を遠くへ移した。

「ずっと乳房炎やっていたんですけど・・・今朝から、立てなくなってしまって・・・」

IMG_0940▲牧場の従業員は、

そう言って牛を立たせようとして、

体を揺すってみたりしたが、

牛は数センチ体を持ち上げただけで、

再びへたり込んでしまった。

「左の前の乳房が、ずいぶん腫れているね。」

「はい、そこがずっと悪かったんです・・・」

私は左の前の乳頭を掴んで

乳汁を絞り出そうと

乳房を押してみたら

ポチャ・・・ポチャ・・・

という音がした。

何か、液体が溜まっているような音だった。

乳房に液体が溜まる、と聞けば

乳牛を知らない人であれば

乳房に乳汁が溜まっている、と思うかもしれない。

しかし

乳房に蓄えられる乳汁というのは

乳腺細胞とその周囲にぎっしりと溜るので

乳房をどれほど揺すっても

決してチャポチャポというような

水分の溜まったような音は聞こえることはない。

この音は明らかに異常だった。

「何か悪いものが溜まっているんだね。」

私は即座に、これは乳房の膿瘍だと思った。

「針を刺して中身を吸ってみるね。」

IMG_0939車から注射器と留置針を取ってきて

乳房の問題の箇所へ

ゆっくりそおっと穿刺した。

「あー、やっぱり・・・」

刺した針の口から

水分の高い化膿汁が吹き出てきた。

▲牧場の従業員君はこれを黙って見つめていた。

IMG_0938「・・・。」

「ずいぶん我慢したねぇ・・・」

「立てるようになりますかね・・・」

「わからないけど、やるだけやってみよう。」

私は、穿刺した針をそのままにして

この牛の治療の準備を始めた。

補液剤と抗生物質を持ってきて

投与を開始しようと牛に近づいた時

IMG_0941牛はもがきながら

足を踏ん張って

バタつきながらも

なんとか自力で起立した。

「あ、立った!」

▲牧場の従業員君は少し驚いたようだった。

この牛に、どれ程の気持ちがあったのかは

未だに不明だが

不健康な体ながらに

この牛が

一生懸命生きようとしていることは

間違いのないことであり

毎日数キロに満たない乳汁を

搾り出しながら生きていることも

間違いのないことであった。

BlogPaint後日

この乳房の膿汁の

細菌検査の結果が来た

それによれば

αーstreptococcus

が検出された。


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仔牛の跛行の原因は・・・

生まれて1週齢の仔牛が、

突然、

右の後肢を引きずり始め、

立つことさえままならず、

その症状は、

次第に悪化してきた・・・という

そんな稟告で向かった★ファーム。

問題の仔牛を診てみると

哺乳欲はそこそこにあるが

介助をしないと立つことが出来ない。

右の後肢を動かすことが出来ない。

立たせて歩かせてみると 

右後肢の懸垂跛が著しい。

股関節付近が

大きく腫れ上がっている。

股関節付近の打撲か?

股関節炎か?

股関節の脱臼か?

親牛に踏まれたのか?

骨盤の骨折か? 

などの症状が頭をよぎる中

触診をしてみると

ソフトボール大に腫脹した

右の股関節付近には

波動感があった。

「針を刺してみよう。」

超音波装置は

一人一台づつは持ち歩いていないので

こういう腫れ物の内部を診断するための

手っ取り早い方法は

穿刺検査である。

注射針を刺してみると 

IMG_0911「ああ、これは・・・」

トロリとしたクリーム状の

化膿汁が吸引されてきた。

股関節部に形成された

大きな膿瘍だった。

どうしてこんなに大きな膿瘍が

このような場所にできたのか

理由はよくわからなかったが

治療方法は簡単だ。

「切って出しましょう。」 

私は

膿瘍の切開術の準備を始めた。

ここまでくればもう

この先は一本道である。

IMG_0914仔牛を寝かせて

抗生物質を注射し

切開部分の周囲の毛を刈り

洗浄消毒して

IMG_0916メスを入れる。

切開部からは

思った以上の

大量の膿汁が溢れ出てきた。

IMG_0919指で圧迫すると

さらに大量の膿汁が溢れてきた。

ゆびを入れると

膿瘍の内腔は

IMG_0921私の拳が入ってしまいそうな大きさだった。

内容をほぼ全部絞り出すと

仔牛の右後肢は

左右対称の正常な姿に戻った。

IMG_0924治療はこれで

無事終了した。

念のため

化膿汁をスワブに採り

細菌培養を依頼した。

BlogPaint結果は写真の通り

「好気性菌の発育を認めず 」

という

コメントが返ってきた。


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後肢吊り上げ法による子宮「脱」整復(2)

牛を吊る道具もなく、

場所も状態も制限されたために、

止むを得ず採用することになった、

後肢吊り上げ法による、

子宮脱の整復だった。

しかし、

採用してみると、

これが実に楽で、

スムーズに子宮を腹腔内へ完納することができる、

IMG_0897なかなか良い方法だった。

子宮の整復を終えた後

IMG_0902

陰部を巾着縫合して

吊った牛を下ろし

後片付けをしていると

「あれっ・・・」

牛の様子がおかしくなってきた。

断続的に大きく

四肢をばたつかせるようになった。

目を見開き

口を大きく開けるようになった

「あっ・・・これはヤバイ・・・」

気付いた時はもう

四肢のばたつきと

開口露舌の繰り返しは止まらず

眼光はしだいに彼の世へ向かって

死出の旅立ちを始め

数分後には

息を引き取ってしまった。

「・・・ダメだったか・・・」

「・・・ダメでしたね・・・」

「・・・親子で逝っちゃったか・・・」

「・・・そうですね。」

「・・・助けられなくて申し訳ない・・・」

「・・・いや、でもなんかこの牛、こうなっちゃうような気がしたんですよ。」

£さんの

落胆と慰めの混ざったような言葉に

妙に納得させられた私だった。

それから私は

淡々と後片付けを続け

診断書を書いて£さんに手渡し

次の往診へと向かった。

BlogPaint翌々日

血液検査の結果が来た。

検査項目には

これと言った大きな異常値は見られないようだった。

最も気になっていた

カルシウム濃度は

7.2 m/dl

と、

低値ではあるが

それが影響しているとは言い難い

微妙な値だった。

今回の牛の

子宮脱の原因は

いったい、何だったのだろうか・・・

そして

子宮脱の整復した直後に

死亡してしまった原因は

いったい、何だったのだろうか・・・





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後肢吊り上げ法による子宮「脱」整復(1)

1月2日の午前、

往診2軒を終えて3軒目へ移動中に、

携帯電話が鳴った。

 「£さんの牛が子宮脱らしい。頼みます。」

緊急携帯を持っているS獣医師からの連絡だった。

 到着した時、親牛は

首を投げ出して横臥していた。

「朝7時頃産んだんですけど、その後、9時頃来たら子宮が・・・」 

仔牛は残念ながら死産、

親牛も力なく頭を上げることもできず

牛舎の柵に背中を向けて横臥していた。

「これでは、牛の腰にハンガーを掛けられないね。」 

BlogPaint起立不能の牛の子宮脱を整復するには

横臥したままでは腹圧が強くてうまく行かないので

骨盤(産道)を高い位置に保定する必要がある。

その場合、私は普通はカウハンガーを腰に取り付けて

骨盤(産道)を持ち上げて整復する。

ところが今回の場合は

それがうまくできそうにない。

「とりあえず、まずカルシウムを打って・・・」

£さんの牛は和牛だった。

しかし、子宮脱で起立不能で

経産牛の場合は

経験上ほとんどが低カルシウム血症であったから

私は採血の後、ためらわずカルシウム剤を投与した。

カルシウム剤を打ちながら£さんとしばし思案。

「このままだと吊れないし・・・」 

「ハンガーはかけられないですね・・・」 

「寝返りもできないし・・・どうしよう・・・」 

「後ろ足を縛って吊り上げますか?」 

「それ、いいかもしれない・・・やってみようか・・・」

£さんの機転で治療方針が決まった。 

後肢吊り上げ法である。

後肢吊り上げ法・・・というのは

普通は

子宮「捻転」を整復する時に採用する方法だ。

しかし、今回は

子宮「脱」を整復するために採用することになった。

私には初めての試みだった。

IMG_0886記念すべき瞬間(!?)の到来となったので

準備をしながら

£さんの奥さんにカメラマンをお願いした。

後肢を吊り上げて

骨盤(産道)を適当な位置まで持ち上げると

IMG_0892これがなかなか

整復するのに良いポジションとなった。

今回の子宮は胎盤停滞はしていなかった。

微温湯で洗浄し

IMG_0893用手整復に取り掛かった。

子宮は脱出してからまだ数時間以内で

半分程度の脱出で

浮腫もなかった。

IMG_0896怒責もあまり強くなかった。

子宮脱はあっさりと

整復されて

腹腔内に戻すことができた。


(この記事続く)

 
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淑気?、粛気!満つ。

今年は元旦と二日が勤務の日だった。

本年初めての往診1件目は、

◉さんの和牛の治療だった。

治療を終えて車に乗ろうとすると、

◉さんが隣のD型牛舎の入り口で、

私に向かって手招きをしている。

何かなと思って、

D型牛舎のそばまで行くと

「先生、今ね、隼が来てるんですよ。」 

「ハヤブサ・・・?」 

「そう。めちゃくちゃ緊張してますよ。」 

「緊張・・・?」 

「ええ。いつもこのD型には鳩や雀の鳴き声がすごくうるさいんですけど、今日はもう・・・」 

「今日は・・・?」

「しーんと、静まり返ってるでしょう。」 

「あ・・・そう言われれば、そうだね。」

「今この中、めちゃくちゃに張り詰めてますよ。」

◉さんはそう言って

D型牛舎の入り口を細く開けて

そぉーっと、中に入って行った。

私も◉さんの後について

そぉーっと、足を踏み入れた。

「あそこらへんに、やられた鳩の死骸が落ちてるはずなんですけど。」 

「隼にやられたの・・・?」

「はい。たしかこの辺に・・・あれっ?、無いな、おかしいな・・・」

「・・・?」

「そうか、きっと猫が持って行っちゃったんだな。」

IMG_0876「・・・。」

「でも、ほら!、ここに鳩の羽根が散らかってるでしょ・・・」

「あっ、本当だ。」

IMG_0878「この上に、いるんですよ。隼が、ほら!、あそこの簗に、止まってるでしょ・・・」

「あっ、本当だ。」

「隼って、意外に小さいんですよ。」

IMG_0877「ほんとだ・・・、鷹とか鳶よりも小さいんだね。」

「でも凄く速いですよ。」

「だろうねー・・・」

「鳩なんて、今日はもうビビりまくってますよ。」

「・・・うん。」

「雀もたくさんいるのに、簗のかげに隠れてて、1羽も見えないですから。」

「ほんと全然見えないね・・・いないみたいだけど。」

「でもいるんですよ。あ、・・・あそこに鳩がいますね。」

「あっ、本当だ。」

IMG_0879「首だけ出して、様子を伺ってる。」

「ずいぶん首長くしてるね。」

「いつも鳩と雀でうるさい牛舎が、こんなに静か。」

「面白いもんだねー。」

「しばらく隼を逃さないで、こうしておこうと思って(笑)」

元旦の朝の牛舎に

淑気(しゅくき)満つ、ではなく

静粛なる恐怖に満ちた

粛気(しゅくき)満つ、である。

1件目の初仕事の家で

初夢の縁起物の

鷹ではないけれども

同じ猛禽類の

隼を見ることができたのは

何か縁起が良い知らせ!?

と、いう事にしておこう

と思った。


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今年の死亡牛、廃用牛。

今年の1年間で、

私はどれだけの家畜の死亡を確認し、

どれだけの家畜の廃用に立ち会い、

その処理のために、

どれだけの診断書を書いて来ただろうか。

事務所でカルテを書き終わって、

ふと、そんな思いが湧いて来たので、

今年度の私が書いた、

死亡・廃用・の診断書の数を数えてみた。

今年度なので、

平成28年の4月から12月までの、

9ヶ月間に、私が書いた診断書の数である。

IMG_0864それらはほぼ全部

牛だった。

それは

103枚あった。

9ヶ月間に103枚ということは

103 ÷ 9 = 11.5

1ヶ月に約12頭の死亡診断書を書いている計算になる。

これを1年に換算すれば

103 ÷ 9 × 12  =  137.3

1年間で約137頭の牛たちの

死亡を確認し

廃用のに立ち会って

診断書を書いて来たことになる。

こんなことをわざわざ集計してみたのは

今年が初めてのことで

去年や一昨年は

そのようなことは考えもしなかった。

しかし、今年は

どういうわけか

死亡を確認した牛

あるいは廃用にした牛の

BlogPaint数が気になって仕方がなかった。

なぜかというと

その数が

年々増えているのではないかという感じがするからだ。

今年はこの、年間約137頭の死亡廃用という数が

どういう意味を持つのかということを考えてしまうのだった。

たとえば、人の医療現場の場合

年間137人の死人を扱う臨床医師など、いないと思う。

3日に1度のご臨終に立ち会う臨床医師など、いないと思う。

しかし牛の臨床獣医療の現場では

多くの臨床獣医師が、私とそれほど変わらない数の

死亡・廃用の診断書を書いていると思われる。

繰り返すが、「臨床」獣医師が、である。

牛の命を救うために

牛が健康を取り戻すために

働いているはずの「臨床」の獣医師が、である。

死亡・廃用野診断書を書いた牛というのは

屠殺場で食肉にすることさえ出来ない

哀れな死に方をした牛たちである。

「臨床」の獣医師が

これほどの数の牛の

「ご臨終」に立ち会っているのである。

今年の締めくくりの記事として

なんとも湿っぽい話ではあるが

これを書かずにはいられない

そんな思いが私にはある。

この記事をお読みの

獣医師諸君!

あなたは今年

何頭の牛の死亡を確認し

何頭の牛の廃用に立ち会いましたか?

教えていただけると嬉しいです。

では皆様

どうぞ良いお年をお迎え下さい。


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難産介助(側頭位の整復)

「前足は来ているのに、頭が全く触れないんですが・・・」

そんな電話が来て向かった、〓牧場の牛の難産。

手を入れてみると・・・

なるほど前足ばかりが産道へ侵入していて、

頭には全く触ることができない。

完全な側頭位になっていた。

強い陣痛の隙を狙って、

腕を手一杯挿入して、

その奥を探ってみると、

胎児の耳の先端と後頭部に、

辛うじて指先が触れた。 

胎児の頭は、完全に向こうを向いてしまっていた。

胎児は自らは全く動かなかった。

「直せますか?」

「やってみましょう。」 

私は側頭位の整復を試みることにした。

そのままでは陣痛(怒責)がきついので

IMG_0801子宮内の収縮がを抑えるために

プラニパート(塩酸クレンブテロール)を注射。

羊水が減っていたので

プロサポ(粘滑剤)を約10リットル注入。

IMG_0797そうしておいてから

用手整復に取り掛かった。

今回の難産介助の

ポイントはいうまでもなく

胎児の頭である。

まず胎児の前足を目一杯押し戻したが

胎児の頭の向きは変わらず

IMG_0799手掛かりが耳の先端のみ

というのは変わらなかった。

そこで産科器具のショットラーを使って

胎児の頸を挟むこと数回試みた。

ところが、私はショットラーを1つしか持っていなかったので

2本使った組み合わせ技(たぐり寄せ)ができなかった。

しばらく胎児をゆするなどしたが進展がなかった。

IMG_0795そこで登場させたのが

この産科器具

名前はなんというのかは知らない。

器具の中央には

IMG_0794HAUPTNER

という印字が彫られている。

この器具に

産科チェーンを取り付け

この器具を胎児の頸と胴体の隙間に差し入れる。

IMG_0794胎児の頸の背側から差し入れた器具の先が

胎児の頸の腹側から差し入れた手に辛うじて触れた。

それをたぐり寄せることで

胎児の首に産科チェーンを掛けることができた。

そのチェーンを引きながら

しばらく胎児を強くゆすり

再び手を入れてみると

耳の先端しか触ることのできなかった胎児の頭部の

額と眼窩に手が届くようになった。

眼窩に手が届けばしめたものである。

眼窩に指を掛けることができれば

IMG_0800そこへ今度は

産科鈎(こう)を掛けて

掛けたロープをそのまま保持し

胎児の足を強く押し込む。

と、胎児の頭が

上を向くように

反転し始めて

ついに

こちら向きになった。

これで胎児の頭部の整復が完了した。

次に

押し込むことで屈折してしまった前足2本を

整復した頭部の横に揃えて戻し伸ばして

ようやく

産道の上に

胎児の頭と前足2本が揃った。

「よし、これであとは、普通のお産だね。」

〓牧場のスタッフといっしよに

滑車を使って胎児を牽引した。

IMG_0792大きなメスだった。

しかし

残念ながらすでに死亡していた。

親牛は疲れて寝ていたので

カルシウム剤などの補液をセットして

IMG_0793産科道具を片付けて

次の往診先へと向かった。

朝1番目の診療だったが

時計を見ると

午前11時を回っていた。


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初産牛の子宮脱(2)

子宮脱星を支配するナゾの巨人、

子宮脱大魔王の正体を暴くために取り組んできた(?!)、

子宮脱最中の牛の、

血中カルシウム濃度の測定。

先日ようやく、

最も気になっていた初産の牛の、

子宮脱時におけるカルシウム濃度を測定する機会を得た。

これまで私がカルシウム濃度を測定してきた子宮脱の牛たちは

たしか7〜8頭だと思ったが

全て経産の牛であった。

それらの血中カルシウム濃度は

ことごとく低値で

ことごとく 3〜4 mg/dl 前後の

強い低カルシウム血症を示していた。

そこで

私は

「牛の子宮脱の必要条件の一つは、低カルシウムである。」

という仮説を立ててみた。

この仮説を実証するためには

経産牛子宮脱の血液ばかりではなく

どうしても、未経産牛

すなわち、初産の子宮脱の牛の

血中カルシウム濃度も測定して

それが、経産牛と同様に

低カルシウムであることを示さなければならなかった。

IMG_0507そして先日、とうとう

その機会がやってきたわけである。

もし、臨床検査センターに出した

初産の子宮脱の牛の血液が

低カルシウムであったならば

私の仮説は

俄然、現実味を帯びてくることになる。

私は、その結果が

臨床検査センターのWEB上に出されるのを

楽しみに待っていた。

そして

先日ついにその結果を見た。

それは以下の写真の通りだった。

BlogPaint











クリックして拡大して見ていただければわかるが

血中カルシウム濃度は

9.7 mg/dl 

・・・ということは

正常値。

・・・ということは

私の立てた

「牛の子宮脱の必要条件の一つは、低カルシウムである。」

・・・という仮説は

見事に否定されてしまった。

低カルシウム血症は牛の子宮脱の必要条件ではなかったのだ・・・

経産牛の子宮脱には

必ずといってよいほど見られる低カルシウム血症が

初産牛の子宮脱では

見られなかった。

私の推理は根底から崩れ去ってしまった。

子宮脱という病態と

低カルシウム血症という病態が

私の頭の中では強くリンクしていたのに

今回の血液検査で

その両者が一気に

遠く離れて

どこかへ飛んで行ってしまった。

窓の外を見ると

遥か夜空の銀河の淵の

子宮脱星のある方角から

私をあざ笑うような

子宮脱大魔王の

不気味な声が

微かに

聞こえてくるのだった・・・


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初産牛の子宮脱(1)

先日のまだ暗い早朝、

子宮脱の往診依頼が入った。

子宮脱の治療は約3ヶ月ぶりか、

子宮脱星を支配する子宮脱大魔王は、

当直の私にビーム照射することを忘れてはいなかったようだ(泣)。

「昨日の夜お産して、今朝来たら子宮が・・・」

「何産目?」

「初産です。」

初産・・・

初産の子宮脱だった。

私はとうとう、初産の子宮脱に遭遇した。

じつは、初産の子宮脱に遭遇することを

私はここ数年

密かに待ち望んでいたのだった。

なぜかというと

それは

血中カルシウム濃度を測ってみたかったからだった。

ここ数年

私は牛の子宮脱に遭遇するたびに

治療の前にまず採血をして

血中カルシウム濃度を測るようにしている。

そして

ここ数年

それらの牛たちの血中カルシウム濃度は

ことごとく、全て、低値だった!

その事実に基づいて

私はある仮説を立てている。

それは

「牛の子宮脱の必要条件の一つは、低カルシウムである。」

というものだ。

但し

ここ数年、私が遭遇した子宮脱の牛は

全て、経産牛だった。

したがって

測定した血中カルシウム濃度は

全て、経産牛のデーターだった。

さて

牛の臨床獣医師であれば

誰もが当然

経産牛の分娩時の血中カルシウム濃度は下がっているものが多いが

初産牛の分娩時の血中カルシウム濃度は下がっていないものが多い

という事を知っている。

今回

ここで、もし

初産牛の子宮脱時の血中カルシウム濃度が

低値になっている事を確認することができたら

私の「牛の子宮脱の必要条件の一つは、低カルシウムである。」という仮説は

仮説から真実へと大きく前進することになる。

私は

IMG_0504初産の子宮脱の牛を目の前にして

内心少しワクワクしながら

採血をして

カルシウム剤を投与してから

IMG_0505子宮脱整復の治療に取り掛かった。

牛は自力では立つことができなかったので

カウハンガーを装着し

吊起しながら

IMG_0508子宮を押し込み、整復した。

整復棒を挿入し、子宮を完納し

外陰部を巾着縫合した頃

牛はようやく立つことができた。

IMG_0511全ての応急処置を終え

事務所に戻り

カルテを書き

臨床検査センターへ

血液検査の依頼書を書いた。

はたして

今回の

初産牛の子宮脱の

血中カルシウム濃度はいかに・・・


(つづく)


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