北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

牛の診療

「イボとり」(4)

市場の日の約1ヶ月前に、

内科的治療と外科的治療を、

ほぼ同時に始めたこの牛の、

イボの数と大きさ。

その規模はあまりにも大きく、

飼主の‰さんの思惑通りに、

綺麗に取って市場へ持って行くことは、

できそうにない状況になっていた。

先日、ハサミで

かなりの数のイボを

外科的に除去した後

数日経って

‰さんが事務所にやってきた。

「血止め・・・打ってもらったけど・・・」

「・・・出血ひどかったの?」

「あぁ、しばらく血が止まらなくて・・・また打ってもらおうかと思ったけど・・・」

翌日には

なんとか

血まみれ状態は治まってくれたらしかった。

「よく見ると・・・まだまだ、デカいやつがいっぱいなのよ・・・」

「・・・手術室に連れて来てくれるの、いつにします?」

「市場が近いから、すぐやってもらおうかと思ったけど・・・」

「・・・?」

「今月の市場は、もう、あきらめるわ・・・」

「・・・うん、そうでしょう。」

「来週の末に、牛持って来るから、腹の下のデカい親玉のイボとってもらうかな・・・」

「・・・うん、了解、そうしましょう。」

‰さんも

私も

先日ハサミでイボを外科的に切除した時

IMG_1603あまりにも多いイボと

牛の嫌がりようと

出血の多さに

直近の市場に出すのは

無理ではなかろうかという

考えが浮かんでいたのだった。

これだけ規模の大きいイボ(乳頭腫)の治療の場合

IMG_1604私の乏しい経験を振り返ると

外科的治療だけでは難しく

内科的治療すなわち

ヨクイニンの経口投与がメインになり

最低でも1ヶ月以上の投与が

絶対に必要だと思っていた。

IMG_1605今回

治療のスタートが

市場の1ヶ月前だったということで

私は最初から

直近の市場に出すのは難しく

時間切れになるだろうという気がしていた。

IMG_1607しかし

飼主の‰さんは

そう思っておらず

自分なりに市場に間に合わせるための

治療プランを考えていたようだった。

IMG_1608私と‰さんとの間に

治療プランに対する考え方に

齟齬があったまま治療がスタートしていた。

私の考えは

内科治療を中心にして

時間をかけてゆっくりとするべきだと思っていた。

IMG_1609‰さんの考えは

外科的治療をすることで

予定の市場に間に合わせようと思っていた。

そのせいで

‰さんは

IMG_1610最初はヨクイニンを

ちゃんと必要量を毎日飲ませていなかったようだった。

その後、2回の外科的治療をすることで

だんだんと、この牛のイボ(乳頭腫)の多さに気づき始め

ついに

直近の市場に出荷することをあきらめて

じっくりと治療に専念することへ

IMG_1611考え方を変えてくれたようだった。

私は私で

これだけの規模のイボ(乳頭腫)の

外科的治療は初めての事だったので

初診の時に

内科治療でゆっくりやるしかないとは感じつつも

IMG_1612その場でいきなり

「1ヶ月後の市場は諦めた方が良い。」

とは言えなかった。

‰さんとの考えに齟齬がありながら

そのまま共同作業をして

約2週間の時間が経過して

IMG_1614ようやく

‰さんと私の

この牛に対する治療方針が

同じ方向を向いて来たのだった。

かくして

今回の一連の写真は

IMG_1616この牛を

手術台に寝かせて

一つ一つ

除去して行った時のものである。

かなりの数のイボが

腹部に出来ていた。

いちばん大きな

IMG_1617臍帯部分のイボを取るときは

皮下に局所麻酔を打ち

疼痛と出血を抑えつつ

慎重にやらなければならないほどの

大きなイボだった。

IMG_1618頭部に残っていたイボも

立位では非常に嫌がって

取りづらかったものを

じっくりと取り除くことができた。

市場に出荷するのは

1ヶ月以上

先延ばし

という事になった。


(この記事つづく)


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「イボとり」(3)

飼主の‰さんは、

‰さんなりに、

あと3週間後に迫った市場の日までに、

なんとかこの牛の「イボとり」を完了し、

何事もなかったかのような外見に仕上げて、

この牛を市場に連れてゆきたいと考えているようだった。

最初の外科的処置は、

手でむしり取る用手法だけを行っていたので、

むしり取る事が難しい

根の深く大きいイボや

根がくびれていないイボが

よく見ると

まだまだかなりたくさん

残っているのだった。

「今日は、そいつらをちょっと・・・ハサミかなんかで、切ってくれないべか・・・」

「・・・うん、・・・やってみますか。」

‰さんは牛をきつく繋いで待っていた。

76269E3C-FCCB-4525-8C62-C42C45C8F963私は毛刈りバサミを手に持って

先週手だけでむしり取れなかった

手強そうなやつに

毛刈りバサミを当てて

切り取っていった。

A98E483E-532C-46A5-B95B-65BA1767B119切り取るたびに

牛は頭を振ったり

体を揺すったり

痛みがあることを訴えて来たが

飼主さんの要望でもあるし

776829A1-3B99-4E19-930F-5F9308031A5Aここは心を鬼にして

スパッスパッと

イボの根っこの皮下組織に

ハサミを入れていった。

切り口からの出血は

DC66ABD8-C96B-4E88-9DFA-C42B5C75B4E1当然のように

手でむしり取る時より多くなり

切るときに走る痛みも

当然手でむしり取る時より強いはずで

それは

写真を見るとわかるように

0A316284-641C-4A4C-943C-8601851CB9B8牛の目の表情が

全てを物語っている。

牛は息を荒げて

血まみれの顔をして

私が手に持っているハサミの行方を

目で追っていた。

IMG_1499「顔や頭の方はだいぶ取れたな・・・」

「・・・そうだね。」

「でも腹の下の方や内股に、まだ残ってるなぁ・・・、切れるかい・・・」

「・・・いやー、そこらへんにハサミ当てたら・・・足が飛んで来て危ないよ。」

「だよなぁ・・・」

「・・・体の下の方は、診療所に連れていって手術台に乗せてやらないと危ないよ。」
IMG_1500
「んだなぁ、そうしてもらうかな・・・」

ということで

今回のハサミによる外科的処置は

頭部と背側部にとどめ

腹部や鼠径部周辺の外科的処置は

来週に診療所の手術台を使って

ちゃんとした保定と鎮静の下で

牛を寝かせて行うことにした。

今回もまた

牛の顔や体は

血が滲んで血まみれなったので

トラネキサム酸を投与した。

「・・・ヨクイニンも、ちゃんと毎日飲ませてね!」

「あぁ、分かってる、ちゃんと飲ませてるよ・・・」

‰さん宅からの帰り際

私は

内科療法の継続を

だめ押しして

帰路についた。

この牛を出荷する予定の

市場の日まで

あと3週間を切っていた。


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早朝往診の「空気」

先日の早朝、

仔牛の調子が悪いとのことで、

往診した〆ファームは、

高台にある牧場である。

その朝は気温が比較的高く、

氷点下でも一桁台の温かさだったが、

IMG_1791朝靄(あさもや)が激しく

視界が悪かった。

気象学用語では

「靄」よりも視界が悪く

水平方向の視界が100メートル以下になると

「霧」と呼ばれるようになる。

IMG_1789したがってこの日は

朝霧(あさぎり)の中の往診ということになる。

しかし

俳句の歳時記的には

「霧」は秋の季題であるから

いまの季節にふさわしい言葉ではない。

IMG_1788俳句的にいうならば

この日の状況は

朝霞(あさがすみ)

あるいは

朧(おぼろ)の中の往診

ということになる。

IMG_1787まぁ・・・

なんでも良いのだが・・・

春のこの時期の

朝の状況を表す言葉として

「靄」「霧」「霞」「朧」

という四種類の個性のある言葉が

日本語には存在しているということと

それぞれ少しづつ意味が違っていて

微妙なところを使い分けることができる

というのは

とても繊細で

奥ゆかしいことで

日本語の美しさであり

日本人の感性であり

このことは

世界に誇って良い

素晴らしいことではないかと思う。

気象学的に間違いだから

使ってはいけないのではなく

俳句的に間違いだから

使ってはいけないのではなく

IMG_1817どちらも理解して

使い分けることが大切なのだ。

ちなみに

今朝また

同じ〆ファームから

IMG_1818仔牛の調子が悪いとのことで

往診に行って来たが

今朝は

有明の月が空にかかり

天気は快晴で

IMG_1819靄も霞もかからずに

東の空は

次第に

茜色に染まりはじめていた。


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「イボとり」(2)

「あの牛のイボ、むしって取ってくれないべか・・・」

ヨクイニンとメナドンを渡してから、

1週間ほど経った頃‰さんが診療所にやってきた。

「・・・それは、できないことはないんだけど。」

「来月の市場に間に合わないよ・・・」

「・・・あと1ヶ月先か・・・もう少し我慢して・・・飲み薬ちゃんとやってるかい?」

「ああ、つけ薬もやってるよ、でも変わらない・・・」

「・・・まだ1週間じゃ変わってこないから、とにかく1ヶ月間、飲ませて。」

「来週、もう一度見に来てくれないべか、そこで取れるやつは取って欲しいんだ・・・」

「・・・わかりました、来週ね。」

‰さんは‰さんなりに

この牛を市場へ出すための

イボの治療計画を考えているようだった。

それは外科的に切って取り除く方法を

主に考えているようだった。

話を聞いていると

メナドンは毎日必ず塗布しているようだが

ヨクイニンを指示通りちゃんと飲ませいてるのかどうか疑問だった。

私が初めてこの牛の状態を診た時

あの乳頭腫の規模と数では

いきなりの外科的処置は到底無理だろうという直感があった。

私はヨクイニンによる内科療法をメインにしたかった。

しかし

‰さんは外科的な療法をメインに考えているようだった。

私の診断と説明と

‰さんの考え方との間に

溝があることが分かってきた。

市場の日も1ヶ月後に迫っていた。

こういう時は

飼い主さんとのコミュニケーションを

いつも以上に頻繁に行ってゆく必要がある。

1週間が経ち

‰さんの牛の状態を診た。

ほとんど変わっていなかった。

IMG_1427「デカいやつだけでも、むしり取ってくれないべか・・・」

「・・・うん、やってみましよう。」

牛を簡易枠場に繋ぎ

一番目立つものから

IMG_1430一つ一つ

むしり取っていった。

根元が直径数ミリ程度であれば

簡単にむしり取れるものだが

根元が数センチ以上あるものは

IMG_1429爪を立てて

強い力で取らねばならず

次第に手の握力がなくなってきた。

「・・・たくさんあって、とりきれないよ。」

「血も出てきたな・・・」

「・・・もう少し、薬を飲ませて、柔らかくしてからの方がいいよ。」

IMG_1434「頭や首だけでなくて、腹の下や内股にもたくさんついてるな・・・」

「・・・腹の下のやつをここで取るのは、足が飛んできて危ないね。」

「ああ、もう少し後にするか・・・」

「・・・うん、その方がいいと思うよ。」

IMG_1433‰さん宅で

‰さんの希望する外科的処置をしながら

私はこの牛の治療はかなり手強いと感じていた。

そして

1週間後にまた再診をすることにした。

IMG_1431「・・・飲ませ薬(ヨクイニン)は、毎日、いった通りに、ちゃんと飲ませてね!」

「ああ、分かってるよ、やってるよ・・・」

私は‰さんに

ちゃんと内科療法を続けるように

しつこく言って

その日の治療を終えた。

市場の日までは

あと1ヶ月を切っていた。


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「イボとり」(1)

「来月、市場に出したいんだけど、イボがひどくて、取ってくれないべか・・・」    

ということで診に行った‰さんの♂の和牛は、

立派な体格だった。

「血統もいいんだよ・・・」

IMG_1290というこの牛の

顔のイボは

写真の通り

なかなか派手なものだった。

「取ってくれないべか・・・」

「・・・うーん、これは・・・」

イボ(乳頭腫)は顔面ばかりではなく

IMG_1292首や脇腹や下腹部

鼠径部にも大きなものが点在し

全身を覆っていた。

その多くが

根元が太く

しっかりとしていて

生々しく

元気の良い乳頭腫だった。

「むしって取れるべか・・・」

「・・・いやー、これは、そう簡単にはいかないねー。」

いきなり外科的処置として

むしって取るには

あまりにも数が多く

全てが生々しく元気な乳頭腫なので

むしり取った後の出血や

創部からの細菌感染のリスクが

かなり高くなる思った私は

IMG_1238「・・・まずは飲み薬だね。」

「むしって取れないの・・・」

「・・・まずはこの飲み薬を毎日5グラムで1ヶ月間。」

「市場に間に合うべか・・・」

「・・・市場は微妙だけど、きれいに治すには、飲み薬から始めた方がいい。」

「やってみるけど・・・塗る薬とかないの?・・・」

「・・・それも併用したらいい、でも飲み薬をきちんとやるのが大事。」

「わかったよ、やってみるわ・・・」

ちょっと不満そうな‰さんに

私はヨクイニン(飲み薬)とメナドン(塗り薬)を手渡しして

この牛の膨大な数の乳頭腫の

外科的な除去は

後回しにすることにした。

「イボとり」作戦の

始まりだった。

(この記事つづく)


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「こぶとり」

「股の間にコブがぶら下がってる・・・」

という稟告で診に行った、

和牛繁殖の∂さんの若牛。

「だんだんデカくなって来たみたいなんだ・・・」

「・・・お乳の乳頭の間にぶら下がってる、ちょっと触って診たいんだけど・・・」

「嫌がって蹴るかもしらんぞ・・・」

「・・・蹴られたらやだから、枠場に入れて・・・」

「じゃあ、今度来るときまでに枠場出しておくわ・・・」

∂さんの家の枠場は

深い雪の中に埋まっていた。

その枠場が先日

使えるようになったということで

私は再び∂さん宅へその若牛を診に行った。

その時

必殺腫瘤切断道具「イージーカット」

を持って行くことを忘れなかった。

イージーカットは

直径5冂度の腫れものであれば

その威力を遺憾なく発揮してくれる。

∂さん宅に着くと

IMG_1751例の若牛は

既に枠場の中に入れられていた。

下腹部を覗いて

乳棒付近にぶら下がっている腫瘤物に

手を伸ばそうかと思ったが

「嫌がって蹴るかもしらんぞ・・・」

という∂さんの言葉を思い出し

IMG_1752「・・・足一本、縛ってからだね。」

右の後肢を縛り上げて

蹴りが来ないようにしてから

おもむろに腫瘤物に触ると

硬くもなく

波動感もなく

IMG_1754痛みもなく

生あたたかな

腫瘤物だった。

おそらく乳頭腫の一種に違いなかった。

必殺腫瘤物切断道具「イージーカット」に

ゴムリングを装着して

道具を手で目一杯握ると

IMG_1755ゴムリングが目一杯開く

そのゴムの輪の中に

こり腫瘤物は

ギリギリ入るか入らぬかという大きさだった。

手を添えて

少しづつ

腫瘤物の縁を

ゴムの輪の中にくぐらせてゆき

IMG_1756数分でようやく

ゴムリングを

腫瘤物の根元のくびれの部分まで

持って行くことができた。

ここまでくれば

あとは握っていた器具を外し

腫瘤物の根元に

ゴムリングが取り付けられた。

IMG_1757「・・・ゴム輪に通ってくれてよかった。」

「これでもういいんかい・・・」

「・・・いいよ、あとはもう知らないうちに取れて落ちるから。」

「そうかい、わかったよ・・・」

かくして

未経産の繁殖和牛の

こぶとり作業が終了した。


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仔牛の「関節湾曲」!?と思いきや(3)

最初にX線検査をした翌日、

私は休日をもらっていたので、

IMG_1395同僚のT獣医師とN獣医師が、

Åさんの骨折仔牛のキャスト巻きをして、

そこでまたX線の撮影をした。

セラクタールで鎮静下

左前肢を牽引しつつ

IMG_1396フルリムキャストを巻いた。

それから約2週間後に

キャストを除去したところ

腕節の外側と内側に

直径数センチの褥瘡ができていた。

IMG_1404新人のT獣医師は

その痛々しさに

褥瘡をかなり気にしていたが

私は、その程度ならば

「よくあること。」

腕節に褥瘡ができるのはそこに体重がかかっているからで

「キャストの巻き方としては正解のはず。」 

と、たいして気にはしていなかった。 

IMG_1651その後

約3週間して

再びキャストを除去。

そしてもう一度X線撮影。

IMG_1653骨折部位は化骨が進み

順調に融合しているように見えた。

左前肢の跛行は変わらず

褥瘡も化膿していたので

T獣医師はそれをかなり気にしていたが

私は、その程度ならば

「よくあること。」

この仔牛の治療のポイントは

骨を癒合させることで

ある程度の褥瘡は仕方がない。

「肉は切れても骨が着けば良い。」

IMG_1654と、思い続けていた。

それから先は

化膿した褥瘡の局所治療と

抗生物質の投与を1週間行った。

最後に診療したカルテには

「活気、哺乳あり。左前肢やや湾曲も痛み無し。包帯外し消毒。」

とあって

治療が終わったようだった。

初診からちょうど1ヶ月目の

治癒転帰だった。


(この記事終わり)


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仔牛の「関節湾曲」!?と思いきや(2)

家畜の臨床獣医師という仕事を、

35年程度やっていても、

経験をしたことのない症例には幾度も遭遇する。

というより、

全く同じ症例などというものはなく、

毎日毎日初めての症例に遭遇している、

という方が本当は正しいのである。

そのような状況の中で

古くなってゆく自分の頭脳というのは

若い頃よりも思考に柔軟性を欠き

先入観にとらわれやすく

過去の経験に縛られた考え方をしてしまうものだ。

・・・などと

言い訳がましい書き出しになっている

今回のÅさんの黒毛和牛仔牛の症例。

Åさんのばあちゃんから

しつこく再診を要求されなかったら

X線写真すら撮らずにそのまま放置してしまっただろう。

とにかく

X線写真が目の前にあらわれるまで

私は骨折はしていないだろうと

タカをくくっていたのだ。

現像をして診療所に戻ってきた同僚のT獣医師から

IMG_1393「しっかり骨折してますよ!」

と言われて

思わず「マジか」と言ってしまった。

臨床キャリア35年にして

齢60歳にして

IMG_1392なんとも恥ずかしい誤診だった。

骨折部位は

中手骨の近位端。

骨折部位の外側の

遠位半分が嵌入して

IMG_1391前肢がそこから曲がっていた。

腕節の湾曲ではなく

骨折部位から曲がっていた。

骨折を確認したT獣医師は

早速Åさん宅に電話をかけて

明日の早い時間に

骨折治療として

キャストを巻きに行くことを約束をした。

(この記事続く)

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仔牛の「関節湾曲」!?と思いきや(1)

「仔牛の足が曲がっているんですけど・・・」

黒毛和種の生産農家のÅさんからだった。

牧場に着いて、

仔牛の足を診ると、

左前肢の腕節が外側へ曲がっている。

歩様を観察すると、

わずかに跛行する程度で、

スタスタと歩いた。

触診してみると

腕節周囲の組織の腫れはなく

腕節の可動範囲もほぼ正常だった。

IMG_1394「これはきっと、生まれつきでしょう・・・」

私はそう言った。

Åさんの嫁さんは

「・・・そうですか、骨が折れてるんじゃないかって、ばあちゃんが心配してるので。」

「いや、これはきっと生まれつき曲がってるやつでしょ・・・」

「・・・そうですか。」

「うん、大きくなるにつれて、そのうちわからなくなるんじゃないかな・・・」

私は、嫁さんの疑問を振り切るようにそう答えて診察を終えた。

それから数日後

別の牛を見にÅさんへ往診した時

嫁さんの後から

ばぁちゃんも来て、こう言った。

「・・・先生ー、この前に見ていただいた仔牛なんですけどー」

「ああ、あの前足ね、あれは生まれつき曲がってるんだと思う・・・」

「・・・いやー、生まれた時は、そんなに曲がってなかったような気がするんですけどー」

「腫れてもいないし、スタスタ歩くし、あれは生まれつきでしょ・・・」

「・・・いやー、生まれてすぐの時は、あんな足してなかったような気がするんですよー」

「本当に?・・・」

「・・・はいー、だんだん曲がってきているような気がするんですけどー」

「本当に?・・・」

「・・・あのー、骨が折れてるとかいうことは、無いんですかねー」

Åさんのばぁちゃんが

いつになく

私の診断に対して疑問を投げかけてくるので

「じゃあ、午後からレントゲン写真撮ってみようか・・・」

「・・・はいー、お願いしますー」

「それで、骨に異常がなければ、生まれつきだから・・・」

「・・・はいー、お願いしますー」

かくしてその日の午後

Åさんの仔牛の足の

エックス線撮影をすることになった。


(この記事続く)


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「正座位」!?、の難産

「お産なんですけど、お尻から来てるんですけど・・・」、

という電話は、

良くある稟告である。

先日の牧場からの電話もそうだった。

「わかりました、すぐ行きます。」

牧場に着いてカッパを着て

助産の準備をしながら

(きっとまたいつもの臀位、そして双子かな・・・)

私はそんな予想を立てていた。

分娩房へ行くと母牛は寝たままだった。

産道に手を入れると

尻尾と臀部が侵入していた。

陣痛が弱くても親が寝たままでは整復が難しい。

「立てないの?・・・」

「・・・はい、・・・カルシウムはまだ打ってないです。」

「じゃあ、まずカルシウムを打ってからにしよう・・・」

「・・・了解です、じゃその間に親牛を吊る準備します。」

ベテランの場長と従業員君とが

テキパキと牛の保定と吊起の準備をしてくれた。

カルシウムとリンゲル液とプラニパートを投与し終わり

親牛の腰にハンガーを取り付けて

ゆっくりと吊り上げて

再び産道に手を入れた。

胎児の臀部のすぐ奥に

胎児の飛節を触ることができた。

「まずは後ろ足を直すから・・・」

私は子宮の奥に向いて要る後肢の球節にチェーンをかけて

臀部と飛節を押し込みながら

後肢の1本目そして2本目を整復した。

ところが

後肢の蹄が2本とも陰部の外へ向いているのにもかかわらず

胎児の臀部がまだその近くにあって

産道が窮屈で胎児が動かない。

(あれ・・・この臀部と後肢は別の胎児なのかな・・・?)

臀位は双子が多いので

一瞬、そんな考えが頭をよぎった。

だが、たとえそうだったとしても

この胎児の臀部は

いったん産道の奥へ押し込んでやらねばならない。

後肢につけたロープを従業員君に持っていてもらって

私は胎児の臀部を思い切り押した。

産道にはまり込んでいる臀部は

なかなか奥へ落ちなかった。

と、その時

ズボッ・・・

と胎児の後肢の1本が伸びて

膝と飛節が陰部の外にあらわれた。

その瞬間、私の目の前がぼやけ

生ぬるい胎児の羊水と尿水が顔にかかった。

そしてまたズボッ・・・

と2本目の後肢が伸びて

2本の膝と飛節が陰部の外にあらわれた。

その奥には先ほどの臀部があった。

胎児は1つだけだった。

「よし・・・これでやっと普通の逆子になった・・・みんなで引っ張って・・・」

場長と従業員君と私の3人は

用意した滑車で胎児の後肢を引いた。

IMG_1444臀部が外へ出た後

胸部が外へ出るまでまた強く引いた。

そしてようやく

胎児の頭が出て助産が終わった。

大きな♀の胎児だったが

残念ながらすでに息はなかった。

IMG_1443「普通にお尻から来てるんじゃなかったよ・・・」

「・・・いやーキツかったっすね」

「お尻と後肢が2本とも同時に産道に入っちゃってた・・・」

「・・・それでよけいにキツかったんすか」

「そう、まるで産道の中でお座りしてるみたいな格好だったね・・・」

これはいわゆる「臀位」というより

IMG_1442その新しいバリエーションとして

「正座位」⁉︎

と言ってよいかと思った。

この胎位は

片足のみの経験はあったが

両足が揃って正座して

産道に詰まったという難産は

私の今までの記憶に無いものだった。


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牛の大量鼻出血(喀血?・CVCT?)(3)

派手な鼻出血の見られる乳牛が、

止血剤と抗生物質の投与で、

とりあえず小康を得て、

また再び、

搾乳牛として現役復帰できる可能性は、

どれだけあるのだろう。

IMG_1346その確率を

我々牛の臨床現場の獣医師は

ある程度頭の中に入れておくべきだと思う。

現在のところ

獣医師向けや酪農家向けの色々な書物を読んだ獣医師が

IMG_1349その中の

大量の鼻出血の強い印象の画像と

CVCT(後大静脈血栓症)という病名が

現実よりも強く

頭の中で結びついてしまって

「大量鼻出血」=「CVCT」

という安易で不確実な認識が

広がってしまっているように思う。

その結果

非情で非常に厳しい予後判断を

飼い主さんの前で宣告したにもかかわらず

その後

牛が症状を回復させて

何事も無かったかのように

現役復帰をしているという

獣医師にとって恥ずかしいことが起こる。

私のように四半世紀以上牛の臨床をやっていると

そんな過去をいくつか思い出して冷や汗をかく。

私と同世代程度の獣医師には

皆同じような経験があるに違いない。

そのような状況の中で

2015年に

当時帯広畜大にいた猪熊壽先生らの論文が出た。

「急性鼻出血を主訴とするホルスタイン種乳牛10症例における臨床所見の病態別比較」

IMG_1440というもので

今まさに

私が問題としていたことを

みごとに解決してくれる素晴らしい論文である。

ネットで検索すると上位で出てくるので

プリントアウトしてすぐ読んでいただきたいと思う。

私なりに

その論文から

現場の指針となることを拾ってみると

大量の鼻出血が見られた10例のうちCVCTは3例

CVCT3例をを含めたPTE(肺動脈血栓症)だったものが6例

1上記の6例(PTE群)が

いわゆる肺動脈内の血栓によって

うっ血を起こして大量の喀血をするものだった。

それ以外の4例(非PTE群)は

肺動脈からではなく

鼻粘膜からの出血によるものだった。

そして

前者の6例は全て

両鼻腔からの大量出血で

後者の4例は全て

片鼻腔あるいは片側に偏りのある大量出血だった。

すなわち

前者は大量の「喀血」

後者は大量の「鼻血」

ということだと思われる。

血液検査を比較すると

前者の白血球数は後者よりも高く

前者のA/G比は後者より低い

という傾向

すなわち炎症像の強さに差があった。

といったところが

現場での診断の指針になると思われた。

私はこの論文を読んで

新しい言葉(病名)に出会った。

それは

PTE(pulmonary thromboembolism=肺動脈血栓症)

という言葉である。

牛の大量鼻出血での

病態を鑑別して

的確な診断をするためには

症例が少なく確認の困難な

CVCT(caudal vena cava thrombosis=後大静脈血栓症)

よりも

症例が多く臨床症状によく反映する

PTE(pulmonary thromboembolism=肺動脈血栓症)

という言葉(病名)を使うべきであろう。

CVCTではなく・・・

PTAではなく・・・

PTE(ピーティーイー)である。

これからの

獣医学書や酪農学の書物に

PTE(肺動脈血栓症)という病名が

定着することを期待して

私もこれからは

この言葉を

使って行きたいと思う。


(この記事終わり)
 

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牛の大量鼻出血(喀血?・CVCT?)(2)

「牛の大量の鼻出血」を診て、

「CVCT(後大静脈血栓症)」を連想する獣医師は多いし、

それは間違いではないだろう。

しかし、

「連想」と「診断」は違う。

牛(主に乳牛)の大量の鼻出血あるいは喀血の姿は、

非常に印象的である。

そして、あの名著「テレビドクター」には

激しく喀血した牛の写真とともにCVCTの解説が載っている。

「テレビドクター」という本は

獣医師向けに書かれているものではないのだが

我々獣医師にとっても大変有難い本である。

しかし

CVCTの「診断」に関して言えば

獣医師の思考回路にあまり良くない影響を与えている

と言わざるを得ないのかもしれない。

その臨床所見があまりにも鮮明で印象的であることと

生前の確定診断が困難であることが

IMG_1346「大量の鼻出血」=「CVCT」

という安易で不確実な認識を

臨床獣医師の間に広げてしまったように思われる。

かく言う私も

過去に何度かこのブログ上で

大量の鼻出血の牛に遭遇するたびに写真を撮り

CVCTであろうと「連想」し

確定的な証拠もなく厳しい「診断」を下し

その後

牛の症状が改善してしまい

「CVCT」を解説した様々な書物に対して

疑問を感じたことを記事に書いてきた。

私の思考回路の中にも

「大量の鼻出血」=「CVCT」

という安易で不確実な認識が

いつの間にか染み付き

それを約四半世紀もの間

引きずって来たのであった。

それを近頃になって

ようやく気づいたのである。

IMG_1349先日診療した

大量の鼻出血の牛も

初診から止血剤と抗生物質を投与したら

翌日には出血が止まり

IMG_1350食欲も回復していた。

その牛の血液検査の結果は

左の写真の通りで

慢性の肺炎が強く疑われる結果だった。

IMG_1354だが

この結果のみをもって

この牛がCVCTだと診断することはできない。

CVCTはあくまでも

その牛を解剖して

後代静脈に本当に血栓があるかどうかを確認して

確定診断すべきなのである。

と、いうことは

CVCTの生前診断は

「不可能」

ということになる。

症状が派手な割に

めんどうな病気であり

煩わしい病名である

と、言わざるを得ない。


(この記事もう少し続く)


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牛の大量鼻出血(喀血?・CVCT?)(1)

「親牛の鼻血が止まらない。」

という稟告。

先日の酪農家の¢さんの牛もそうだった。

牧場に着いて診ると、

飼槽に真っ赤な鮮血がばら撒かれ、

IMG_1344可視粘膜は貧血気味、

呼吸は早めで肺音粗励、

慢性肺炎が疑われる症状。

ここで

私を含めて

多くの臨床獣医師が

頭に思い浮かべる病名が

CVCT(後大静脈血栓症)である。

IMG_1345とにかく

その症状が派手で

強烈な印象を植え付ける

大量の鼻出血の写真が

どの教科書にも必ず記載されていて

我々は

臨床の勉強をして行く中で

「牛の大量鼻出血」=「CVCT」

IMG_1346という思考パターンを

自分の頭脳の中に

刷り込んでいる。

そして

かの有名な教科書「牛の臨床」に書かれている

あの冷酷なフレーズ

を思い浮かべるのだ。

曰く

『治療法はない。鼻出血をする前に診断し、無駄な治療をしないことが重要である。本症罹患牛は食肉として供されないので診断のつき次第殺処分する。』

そして

飼い主さんの前で

この教科書のフレーズを元に

我々臨床獣医師は

冷酷な診断を下す。

「これは治らないから、治療しないで廃用にしたほうがいい。」

とか

「諦めたほうがいい、肉にもならない。」

とか

自信を持って言ってしまう。

それを聞いた飼い主さんは

その意外に厳しい診断に

驚きの表情を見せる。

しかし・・・


(この記事続く)


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子宮脱の星

「午前中に起立不能で診ていただいた、初産の牛なんですけど・・・」

◉牧場のスタッフからの電話だった。

「子宮脱になってしまって・・・」

「・・・そうですか、すぐ行きます。」

「お願いします。」

午前中は

初産の牛が夜中に自力分娩して

朝にまだ立てずにいるという稟告だった。

午前中の診療時にこの牛は

呆然として起立意思がなく

いわゆる普通の

初産の自力分娩によって

疲労困憊して

しばらく立てないでいるのだろうと診断し

リンゲル液やビタミンB1などの栄養補給を行っただけだった。

初産なので低カルシウムはないだろうと推測したが

一応採血して血液検査に出しておいた。

そして

その日の午後の

夕方近くに

子宮脱になってしまったのだった。

子宮脱整復用の道具を車に積み

IMG_1360◉牧場について

カッパを着て手袋を履いて

牛が起立不能なので

カウハンガーで腰部を吊り上げた。

もし自力で起立してくれれば

子宮脱の整復は容易になる。

IMG_1357しかし

この牛は立ち上がることができず

吊られるがままだった。

お湯の準備と

子宮脱整復用の道具を全て揃えて

いざ仕事にかかろうとした

IMG_1358その時

「あ・・・」

「・・・?」

「目が・・・」

「・・・あれ・・・」

「いっちゃった・・・」

IMG_1362「・・・ダメか・・・」

「吐いてます・・・ダメです」

牛は死んでしまった。

間に合わなかった。

というか

IMG_1361吊り上げたことによって

そのショックで死亡してしまったのかもしれない。

かといって吊り上げなければ

子宮を整復することは困難になる。

吊り上げないで行う方法もあるけれど

吊り上げて行うよりも困難である。

IMG_1359しかし

結果はこの通り。

子宮脱というのは

おそろしい疾病である。

後日

血液検査の結果が来た。

IMG_1380初産だったので

やはり

低カルシウムは

ほぼ認められなかった。

子宮脱の原因と

この牛の死因は

IMG_1363何だったのかは

謎が残る。

空には

大きな星と

丸い月が出ていた。


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手術台の世代交代(3)

かくして、

我が家畜診療所の手術台も、

三代目の入れ替えをめでたく終了することがてきた。

入れ替えて直ぐに、

油圧の調整に手間取ったりしているが、

新たな気持ちで今までと同じ仕事ができることに、

安堵と喜びがある。

IMG_1293この手術台は九割九分

牛の手術に使われ

その手術の内訳で最も多いのが

第四胃変位整復術

次いで多いのが

帝王切開術

次いで多いのは

仔牛のヘルニア整復術

であるが

最近はそれ以外にも

外傷や膿瘍切開や異物の除去

などの外科診療を

現地で行うよりも衛生的かつ確実な方法として

患畜を診療所に搬入して

手術台に保定して行うことが多くなった。

それは牛の診療技術が発展する方向として

望ましい方向であり

牛の診療技術の進むべき道として

健全な道であろうと思う。

IMG_1294家畜を手術台に乗せて治療をすることは

獣医療として当たり前のように思われるが

実はそうではない。

手術台で治療が受けられる家畜というのは

種類が限られている。

犬や猫などの小動物は軽量だから

手術台に乗せやすいので手術台での治療は当然であるが

大動物では手術台に乗せること自体が大変な作業になる。

馬は手術台で治療する技術が発達している。

羊や山羊が手術台に乗るのは稀であろう。

鶏や豚が手術台で治療されることはほぼない。

その理由は・・・

一口で言えば「経済」ということなになるだろう。

では、牛はどうか・・・?

北海道のNOSAIの診療所の多くが

IMG_1295牛用の手術台を備えていて

日々の診療に対応しているが

どうやらそれは

当たり前のことではないらしい。

組織の内部にいると

当たり前と思っていることが

当たり前ではなかったりするものである。

ともあれ

我が診療所の

牛用の手術台が

この度めでたく更新された。

IMG_1353これは

健全な牛の診療技術の発展のために

喜ばしい出来事である。

手術台の更新とともに

それを使う獣医師も更新(世代交代)されて

技術が受け継がれてゆく。

こちらも健全に

受け継がれてゆくことを

願ってやまない。


(この記事おわり)


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手術台の世代交代(2)

前回の記事のhig先生からのコメントで、

手術台を更新している工事中に手術が入ったらどうするのか?、

という問題。

我が町の場合は

というか

十勝NOSAIの各診療所はどこでも

隣の町に同じような診療所があり

そこに同じような手術台が設置されているので

患畜を最寄りの隣町の診療所に運んで

そこで手術をさせてもらう

という方法をとっている。

我が町の場合

最寄りの診療所は池田町の診療所である。

池田町の診療所は

建て替えたばかりの新しい診療所で

手術台も新しく

工事期間の間も快適に手術をさせてもらうことができた。

今回我が町の手術台の更新工事期間は2週間だった。

この2週間の間に

隣町の手術台へ運んだ牛の数は

10頭に満たなかったが

重篤な症例もあったので

隣町の診療所には大変お世話になった。

広域組合のメリットが出た!?と言えるのかもしれない。

IMG_1268ともあれ

二代目の古い手術台が去った翌日

三代目の新しい手術台が運ばれて来た。

新しい手術台とは言っても

ほとんど全く同じタイプの手術台である。

IMG_1270実は

このタイプの手術台は

十勝NOSAIでは今や希少なものになってしまった

土台の基礎の部分が浅い(1メートルにも満たない)タイプの手術台である。

現在主流になっている手術台は

IMG_1272土台の基礎の部分が深い(2メートル以上の)タイプの手術台である。

前者の基礎の浅いタイプの手術台は

台を上げ下げする油圧が弱く

そこに負担がかかりやすく故障が多いらしい。

それに対して後者の基礎の深いタイプは

IMG_1277大きな太い柱で台を上げ下げするので

パワーがあって故障が少ないらしい。

我が町の手術台も

更新を契機に

浅いタイプから深いタイプへ変更する案もあったようだが

既存の浅い基礎を新たな深い基礎に作り変えるのは

IMG_1273大掛かりな工事となってしまい

経費がかさみ期間も長くなるという理由で

却下されたと聞いている。

それも止むを得ないことなのかもしれない。

私としては

使い慣れた浅いタイプの手術台の方が

IMG_1278なんとなく安心して仕事ができる。

だがもう

来年は定年なので

この新しい手術台で仕事ができるのも

あと数年である。


(この記事続く)


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手術台の世代交代(1)

北海道のNOSAIでは、

ほとんどの診療所で大動物用の手術台が設置されている。

十勝NOSAIの各地区にある家畜診療所には、

全ての診療所に大動物用の手術台が設置されている。

「大動物」用といっても

十勝では9割9分「牛」の診療に使われる手術台である。

私が就職した35年ほど前は

大動物用の手術台が設置されている診療所は数えるほどで

牛の第四胃変位などの手術は

農場の片隅で牛をトラクターで保定して

仰臥させてやっていた。

今でもたまには

起立不能に陥った牛の手術などは

現地で寝たままの状態で行うこともあるが

やはり

現地で行う手術は

不衛生であること

患畜のポジションを変えられないこと

予想外のアクシデントに対応しづらいこと

などの理由で

患畜の様々な手術は

診療所の手術台で行うことが望ましい。

我が町の診療所に手術台が設置されたのは

今から約30年前のこと。

それから約10年後に

我が診療所は引越しを契機に

手術台が更新された。

それから約20年後の今年

再び手術台を更新することになった。

IMG_1259先日

トカチックスという業者さんが入って

古くなった二代目の手術台を

土台から外して

トラックに積む作業をした。

IMG_1260長年使ってきた手術台には

実に様々な思い出がある。

ほぼ毎日動かしていたのだから

その思いは数え切れない。

淡々と日々の手術をこなす中で

IMG_1261思わぬ成功に喜んだり

意外な失敗に悔しがったり

そのたびに新たな発見や進歩もあった。

その一部は当ブログの記事にして

紹介をしてきた。

IMG_1263今こうして

慣れ親しんだ二代目の手術台が運ばれるのを見ていると

ご苦労さんという思いとともに

使い込んで古くなったこの手術台の姿と

歳をとってあちこち古くなった自分の姿とが

IMG_1267重なって来るのだった。

世代交代するのは

手術台ばかりではなく

手術をする獣医師もまた

そうなのだ。

(この記事続く)


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「いぼむしり」

牛の「イボ(乳頭腫)」は、

牛パピローマウイルスに感染することによって、

皮膚が変形してイボイボになるもので、

未経産牛で体表にイボを持っている牛は非常に多い。

多くはポツポツと目立たぬ程に出来ていて

月齢が進むにつれて

知らぬまに自ら免疫を獲得をして

きれいになくなってしまう。

しかし

たまには驚くほとのイボ持ち牛がいて

体表の数パーセント以上に

ゴツゴツとした大きな

「イボの鎧」をつけているような牛の

治療を頼まれるのだが

そういう多数のイボ持ち牛には

IMG_1238「ヨクイニン(はと麦粉)」の

1ヶ月以上の経口投与を薦めている。

効果はゆっくりだが

「イボの鎧」は次第に弱々しく

ポロポロと崩れ去ってゆき

跡形もなく消え去ってしまう。

IMG_1221ところが

このイボの正式名が

乳頭腫というわけではないのだろうけれども

乳頭に多数のイボイボか出来ることがある。

この乳頭にできた乳頭腫も

IMG_1227体表にできるイボと

病理は同じであって

多くがそのまま消失するか

ヨクイニンの経口投与でなんとかなってしまうものだが

ごく稀に4本の乳頭の全てに著しい「イボの鎧」ができて

IMG_1230妊娠してお産しても

乳頭が使えずにお肉になってしまうこともある。

今回治療の依頼を受けたのは

典型的な乳頭の乳頭腫だった。

まだ「イボの鎧」にはなっていないが

IMG_1231将来これがどうなってゆくのか

場所が場所なだけに

飼い主さんとしても

早目になんとか退治してしまいたいということだった。

手術台に乗せて寝かせて

IMG_1235写真のようにまずは手で

1つ1つイボをむしり取って行く。

手でむしりきれないような

根っこの深いイボは

鉗子を用いて挟んではむしりとって行く。

IMG_1236ある程度むしり取れたところで

乳頭全体に血が滲んできた。

さらに目ぼしいイボをむしって

おおかたむしり終わったところで

ヨード系消毒剤を塗布して

IMG_1237いぼむしりを終了した。

ちなみに

「いぼむしり」

という言葉は

俳句の歳時記に載っていて

IMG_1289秋の季題である。

昆虫のカマキリのことを

「いぼむしり」と呼ぶのである。

牛の乳頭腫の治療に

「カマキリ療法」

という新しい治療法が

開発されることを期待したい。


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難産「臀位」の方程式

終業時間の間際に当番のケータイ電話が鳴った。

「お産なんだけど、ケツから来てて足が触れないんだけど・・・」

酪農家の◉さんからだった。

「・・・わかりました、すぐ行きます。」

このタイプの難産は頻度が高い。

ケツ(尻)から来ているということは

産道に胎児の臀部が来ていて

2本の後肢は前方へ向いてしまっている

いわゆる「臀位」であろう。

◉さんの牛は寝て唸っていた。

「・・・予定日はいつ?」

「まだ1週間くらい早かったはずだな・・・」

「・・・初産ではないよね?」

「3産目だったかな・・・」

臀位でかつ

経産牛でかつ

予定日よりも早く産気づく

というパターンは

私の経験上

非常に高い確率で

双子の難産であると考えてよい。

陣痛で唸っている牛の外陰部から

胎児の尻尾がのぞいていた。

産道に手を入れると

胎児の臀部に触れて

両後肢は完全に前方へ向いてしまっていた。

陣痛の合間に手を奥に入れると

後肢の太ももから膝関節まで触れたが

その先は触れることができず

強い陣痛によって腕がが恥骨と胎児に挟まれて痛い。

「・・・子宮の怒責を緩める注射打ちますね。」

プラニパート(子宮弛緩剤)を静注し

さらに

「・・・親牛の腰を持ち上げたほうがいいですね。」

親牛が寝たままだと産道の圧迫が強く

胎児の整復が思うように出来ないので

親牛の腰にハンガーをかけて

腰を上げてもらった。

そしてもう一度産道に手を入れると

胎児のポジションは産道の奥へ下がっていた。

手に産科チェーンを持ち

腕を目一杯奥に入れて

胎児の後肢を探り

産科チェーンを胎児の大腿部に乗せて

手を下から探って

大腿部の上から垂らしたチェーンの端を掴み

胎児の大腿部にチェーンをゆるく巻く。

チェーンのゆるく巻いた部分を

胎児の膝関節を越えて

下腿部へ移動させる。

ここでチェーンの端を◉さんに持ってもらい

胎児の下腿部を固定しておいて

私は胎児の骨盤を

思い切り奥へ押し込む。

すると

まっすぐだった胎児の後肢が折れて

胎児の飛節に手が届くようになった。

巻いたチェーンを緩めて

さらに後肢の遠位

すなわち飛節より遠位の

中足部へ輪を移動させて締めて

もう一度チェーンの端を◉さんに固定してもらい

私は再び胎児の骨盤を強く押した。

すると

胎児の飛節より遠位の

球節と蹄先に手が届くようになった。

巻いたチェーンをさらに遠位の

球節の繋の部分へ移動させて

蹄先を手で覆い

もう片方の手で骨盤を強く押しながら

◉さんにチェーンを引いてもらう

すると

胎児の右後肢が整復されて

蹄が外陰部に顔を出した。

もう片方の左後肢も

同じような方法で整復し

外陰部から胎児の後肢が2本現れた。

「・・・よし、これで普通の逆子だから、あとは引っ張れば出てくるよ。」

私と◉さんは牽引道具を使って

尾位に鳴った胎児を牽引娩出した。

IMG_1252「お、まだ生きてるよ・・・♀だね・・・」

簡単な蘇生術を施してから

私は再び産道へ手を入れた。

「・・・やっぱり・・・もう一匹いる・・・」

「今度は♂かも・・・な・・・」

2子目の胎児は普通の逆子(尾位)だったので

簡単に牽引することができた。

IMG_12532子目の胎児も生きていた。

「お、これも♀だ・・・」

かくして

♀♀双子の難産の失位整復を

無事に終了することができた。

寝ている親牛の腰からハンガーを外し

リンゲル液とカルシウム剤を投与して

IMG_1255道具を片付けていると

南の空に木星らしき大きな星と

東の空に火星らしき赤い星が

瞬きもせずに光っていた。


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仔牛の前後肢2本の骨折(3)

「おはようございます。仔牛が死亡したので、確認をお願いします。」

朝の診療の受付、

★ファームの従業員君からの電話だった。

「わかりました。・・・もしかして、あの仔牛?」

「・・・昨日、足を骨折して治療をしてもらった子です。」

「そうですか・・・死んじゃいましたか。」

「・・・はい。」

昨日キャストを巻いて

エックス線撮影をした時は

それほど早く死んでしまうとは思えなかった。

しかし、考えてみると

ずいぶん未熟な感じだったし

鎮静を解いた後

頭を挙げる力も弱かった。

「わかりました、確認に行きます。」

「・・・お願いします。」

かくして

生まれたばかりの

中手骨と中足骨を同時に骨折した

和牛のETの仔牛は

治療した翌日にあっさりと死亡してしまった。

★ファームに着くと

従業員君が牛舎の裏手の

廃棄物などが積んである場所へ案内してくれた。

ブルーシートを剥がすと

IMG_1021そこには

昨日キャストを巻いて

X線写真を撮った仔牛が

冷たく横たわっていた。

「死んじゃったか、早かったね・・・」

「・・・はい。」

「昨日の朝、この仔牛を見つけた時はどんなだったの?・・・」

「・・・あそこの乾乳牛のパドックで、泥だらけだったんです。」

「そうだったの。治療した時はきれいだったけど・・・」

「・・・はい、あんまり泥まみれだったので、洗ったんです。」

「それで、その後ウォーマーの中で乾かしてたんだ・・・」

「・・・はい。」

「他の親牛たちに踏まれたとか、泥水を飲んだとか、かなりダメージが大きかったんだろうね・・・」

「・・・はい。」

「分娩監視、なんとかしないとね。」

「・・・はい。」

昨日巻いたキャストは

前後の足ともまだ真新しかった。

もう少し輸液治療をしっかりやっていれば良かったかもしれない

という思いも湧いてきたが

それと同時に

いくら骨折治療を施しても

本体が死んでしまったならば何もならない

という虚しい気持ちも湧いてきた。

★フアームの仔牛の骨折は

ここ数ヶ月で3例。

そのうち

1例は治癒したが

残りの2例は

治療中に他の原因で死亡した。

骨折の治療技術は大切だと思うけれども

仔牛を骨折させないための予防

他の病気で死亡させないための対策

すなわち飼養環境を改善するという

骨折治療以前の問題が

この牧場にはある

と思った。


(この記事終わり)


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