北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

牛の診療

粋な計らい

北海道獣医師会雑誌、

略して北獣会誌の、

IMG_4580今月号の15ページに載った、

私の漢詩は、

以下の通りである。



  注意

 人員不足某農済
 応援要請乞若手
 一見研修育成風
 内実転勤準備策



我が共済組合の診療所の

同僚の若手獣医師の動向を見ての

素直な感想である。

IMG_4579これが載っているページの

隣のスペースには

某農業共済組合の

「獣医師募集」

のお知らせが載っている。

若手獣医師たちは

これを見て

どう思うだろうか?

北獣会誌編集者の方々の

ブラックユーモアというか

「粋な計らい」

というべきなのかもしれない(笑)


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夜の現地の「獣医師1人帝王切開」

何かと私用(俳句関係)で、

休暇をもらいながら、

夜の当番も代わってもらいながら、

仕事をこなしている毎日である。

先日の夜間当番も

T岡獣医師と交代してもらったところ

そういう日に限って

忙しくなる

というか

T岡獣医師がきっと

忙しい回りに入っていたものを

私が代わりに背負ってしまったと思われる。

こういうことは

臨床獣医師同志でよくある事なのだ。

先日の当番の夜

夜飯の弁当を食べているとき

「昼から産気づいているけど、立てないし、足も見えてこない・・・」

という、酪農家のY田さんからの電話だった。

(乳熱だけだったら良いけど、子宮捻転だったら嫌だな・・・)

そんなことを思いつつ

Y田牧場に着いて牛を診ると

身体も耳も温かく

低カルシウムだけでは無さそうで

陣痛もある

しかし

産道に入れた手の先の膣内壁が

しっかりと左方向へ捻転していた。

親は立てそうもなかった。

(ローリング法も、釣り上げ法も、牛が動けないと大変・・・)

(用手法は当然、牛が寝ていては無理・・・)

色々な子宮捻転の治療法を

全てすっ飛ばして

「帝王切開しましょう、この体勢だとちょうどいい・・・」

IMG_4346私は即決した。

寝ている親牛を

右横臥のまま

頭を起こさぬようにして

ロープで前後の足を保定すれば

すぐさま帝王切開ができる体位となった。

帝王切開の道具は

こういう日のために

あらかじめ1人でできるように

一年ほど前から揃えてある。

T岡獣医師の助言を元に

できる限りの道具を切り詰めて

術布などはビニール袋で代用し

術後の片付も

できる限り簡単にできるような

簡易帝王切開グッズ

を持ち歩いている。

この日の夜

それがいよいよ役立つことになった。

IMG_4347スタッフは

術者が私

助手にY田さんにカッパと手袋を着せ

もう1人外国人の実習生にも手伝ってもらった。

コンテナを3つ

コンパネを1枚

ぬるま湯をバケツに2杯

鉗子と把針器とメスと針を

ビルコン液に漬けておく

抗生物質の筋注と

プラニパート(子宮弛緩剤)を静注

ビルコン液で術野を洗い

ホピドンヨード液でさらに洗って

カミソリで剃毛する

その上にビニール袋をかけて

そのままメスで切開する

腹膜を切開したら

大網と第1胃のやや右下方子宮があり

胎児の後肢の先端に触れた

その奥の飛節を掴み

Y田さんにその飛節を持ってもらい

子宮を切開。

後肢2本が出たところで

IMG_4351チェーンをかけて

実習生とY田さんにゆっくりと

胎児を引いてもらって

摘出に成功。

胎児は大きなホル♂だった。

IMG_4348親牛は大人しく

子宮を縫うときも

腹膜と筋層を縫うときも

怒責がないのは幸いだった。

皮膚を縫い始めたところで

IMG_4349痛がって少し暴れられたが

手術はスムーズに終えることができた。

カルシウム剤とリンゲル液の補液の準備をしていると

親牛はおもむろに立ち上がった。

立った親牛に

用意した薬を投与し終えて

IMG_4352道具を全て片付けて

帰路に着いた。

車の中で

時計を見ると

電話で呼ばれてから

約2時間半が経過していた。


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(13)

手元にある「獣医畜産六法」平成22年版(たまたま手元にあったのはこの版)、

0CBD8797-42A7-46E8-BD9C-E9F67F3A9609第5章 衛生 の、

〇家畜伝染病予防法(最終改正・平成17法102)には、

法律で定められた法定伝染病の

ラインナップが記されており、

1、牛疫
2、牛肺疫
3、口蹄疫
4、流行性脳炎
5、狂犬病
6、水泡性口炎
7、リフトバレー熱
8、炭疽
9、出血性敗血症
10、ブルセラ病
11、結核病
12、ヨーネ病
13、・・・(以下略)

・・・
・・・

まだまだある中で

ヨーネ病は12番目に並べられている法定伝染病である。

世界で最も危険な家畜伝染病の

12番目に挙げられている。

そして

私は

約40年近い臨床経験の中で

1〜11番目までの病気の

真性の患畜には

ただの1頭にも

お目にかかったことが無い。

しかし

12番目に挙げられた

ヨーネ病の真性の患畜には

もう数えきれないほどの数に

お目にかかっており

その牛の殺処分を

もう数えきれないほど

この手で遂行してきた。

38A73BEC-71D2-4D99-89F8-FDEA80D60F14数ある

法定伝染病の中で

ヨーネ病ほど

我が国に蔓延し

撲滅することができずに

その対応に

多くの予算が使われている

法定伝染病は

他にはないのかもしれない。

牛の病気に限って言えば

かつて

口蹄疫が世間を騒がせ

それにも多くの予算が使われたと思われるが

ヨーネ病のように

毎年コンスタントに

しかも少しづつ増えているという

ヨーネ病に比べれば

その対策は一過性で

予算としては

今のところ使わずに済んでいる。

ただ一つ

ヨーネ病だけが

毎年コンスタントに

多くの予算と

多くの労力が

牛の畜産業界において

使われている。

その末席にあって

手足として働いている

私のような一臨床獣医師にとって

ヨーネ病が

最も身近で

最も厄介で

最も体力を消耗させられる

法定伝染病なのである。

その現状を

くどくどと13回にもわたって

記事にしてきたが

そろそろ

このシリーズも終わりにしようと思う。

最後に

ひとこと

申し上げたいことは

ヨーネ病の

「疫学調査」



「病態の研究」

をもっと徹底的に

やってほしい

ということである。

ただ検査で陽性だから

直ちに殺処分という事を続けていれば

ある程度の効果はあるが

「そこから先が見えない」

のである。

ヨーネ病の患畜に対する

「学術研究」

もっと時間とお金と人員を

注ぎ込んで

ヨーネ病というものを

もっとよく理解してかからないと

我が国の牛のヨーネ病ばかりではなく

全世界の牛のヨーネ病が

今後ますます

蔓延してしまうことになるだろう。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」

という言葉がある。

今の酪農や肉牛牧場の現状は

ヨーネ病に対して

「敵を知らず己も知らず」

非常に危うい状態になっている

と言わざるを得ないのである。


(この記事終わり)


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(12)

「ヨーネ病は今後もなくなることはない」

そう思わせる事実として

病原体であるヨーネ菌の性質がある。

ヒトの結核やらい(ハンセン病)と同じく

死滅しづらく繁殖スピードが遅い性質である。

それでも

全世界の

酪農と肉牛生産牧場が

一致して徹底して

グローバルな目標を立てて

ヨーネ菌の撲滅へと行動すれば

ヨーネ病をほぼゼロにすることができるかもしれない。

いわば

「国際・法定伝染病」

というようなグローバルな「国際法」が作られ

それにヨーネ病が認定されるのならば

ヨーネ病をこの世からほぼ撲滅することができるかもしれない。

例えばヒトの天然痘などはその良い例である。

だが

現在の世界の

牛の畜産業界にとって

そのような「国際法」

夢のまた夢に過ぎないだろう。

220px-国際的な発生状況ヨーネ病に対する

世界各国の意識は

全く様々で

大きな違いがある。

とくに

酪農先進国と言われる

カナダ・米国・フランスなどは

農場単位のヨーネ菌の陽性率が皆6割を超えていて

ヨーネ病に特定した対策をしていないのは

先の記事で書いた通りである。

そのような国がある中で

我が国は

「ゼロ・ヨーネ」

を目指した国内法のもとで

ヨーネ菌を撲滅するための仕事に

日々の時間と労力を費やしている。

これは

実は

ある意味素晴らしいことで

日本は世界の中で

ヨーネ病対策の「先進国」である

とも言える。

というか

そう思わなければ

今まで長年にわたる

我々現場の獣医師や

家畜保健衛生所の先生方や

その他ヨーネ病対策に関わってきた方々の

努力が報われないだろう。

私が

非常に危惧するのは

我が国の酪農や肉牛生産牧場が

その生産体制を年々大規模化して

ヨーネ菌が蔓延しやすい環境に

どんどん変わりつつあることである。

そして

さらに危惧することは

酪農先進国と言われながら

ヨーネ病に特定した対策を何も行なっていない

220px-4955cf5fc9702d3e6a877117d20d5f34-400x344カナダ・米国・フランスなどの国の

いわばヨーネ病対策の「後進国」

酪農や肉牛生産技術を見習って

それを取り入れている農場が多いことである。

何事も

良いところを真似するのは良いが

悪いところまで真似をしてはならない。

ヨーネ病に対する意識が薄く

陽性率の高い国々の技術であるから

当然その技術は

ヨーネ菌に対しては手薄である。

そこは真似してはならない悪いところなのである。

我が国の法律で定めた

「ゼロ・ヨーネ」

を目指しているヨーネ病対策を

実行している我々は

ヨーネ病に対する意識の薄い

酪農や肉牛生産技術と

日々悪戦苦闘しながら

任務を遂行していると言って良い。


(この記事あと少し続く)


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(11)

「今の対策では(ヨーネ病)はなくなることはない」

前回の記事に対して、

頂いたコメントの中の言葉である。

じつは私も全く同意見である。

ヨーネ病対策は法定伝染病であるから

その対策の内容は

100%法律にのっとって遂行されている。

その法律の目的は

「ゼロ・ヨーネ」

を目指している。

しかしそれにもかかわらず

我が国の牛のヨーネ病をゼロにするための

実質的な対策にはなっていない

というのが現状である。

その背景には

酪農や肉牛生産牧場の

飼養環境の変化があることも

前回までのコメントなどで

色々と指摘される通りである。

端的にいうならば

酪農や肉牛生産牧場の

「規模の拡大」

ヨーネ病の蔓延を増長させている

と言って良いだろう。

具体的には

規模の拡大によって

牛の数を増やすために

牛を外部から導入することが増えること

規模拡大によって

育成や搾乳に特化された各農場間の

牛の移動が増えること

規模拡大によって

コストを下げるために

哺育時の衛生対策がおろそかになり

ヨーネ菌の哺育時の感染が増えること

規模拡大によって

つなぎ牛舎からフリー牛舎になり

牛同志の自由な接触機会が増えて

糞尿に暴露される機会が増えること

これらのことは

牛の生産現場に身を置く人ならば

誰でも素直に

感じることに違いない。

規模拡大を原因とする

ヨーネ病の蔓延。

すなわち

「スケール・デメリット」

である。

そのために

我々現場の獣医師と

家畜保健衛生所の先生方は

蔓延するヨーネ病に対して

日々法律にのっとって

ヨーネ病対策を遂行しているのだが

その対策に

多くの時間が費やされ

その対策に

多くの労力が奪われ

IMG_4042それにもかかわらず

牛のヨーネ病の発生頭数は

生産現場から減ることがなく

むしろ増えつつある

というのが

現状である。

酪農や肉牛の生産現場の

このままの規模拡大が続く限り

このままのヨーネ病対策では

「ヨーネ病はなくなることはない」

という

前回のコメントの通りの

実態なのである。

そのような現実の中で

今後我々牛の畜産現場に携わる人たちの

「ヨーネ病に対する意識」

どうなってゆくのだろうか・・・


(この記事、もう少し続く)

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ゆゆしき・・・牛の伝染病(10)

牛にとって非常に恐ろしく、

発症したら最後、

治療法がなく、

慢性の下痢で痩せて死に至る、

「ヨーネ病」という伝染病。

病原菌の「ヨーネ菌」は、

人の「結核菌」や「らい菌」と同じ仲間の

220px-Mycobacterium_tuberculosis_01「抗酸菌」という

非常にしぶとい細菌である。

抗生物質でも消毒液でも

なかなか死滅せず

増殖スピードが遅いので

潜伏期が長く

そのために

撲滅できているのかできていないのか

確認することが非常に困難な病原菌である。

Ziehl_Neelsen_stainそういう性質も

「結核菌」や「らい菌」

とよく似ている。

抗酸菌の仲間は

「時間を味方にした菌」

と言っても良いかもしれない。

大腸菌などの

増殖スピードが速い菌は

増えるとき爆発的に

あっという間に増えるが

寿命も短いので

消えるときも

あっという間に消える。

これに対して

抗酸菌は

増殖スピードが遅いので

死んでいるように見えて

死んではおらず生きていて

いつの間にか増えている

菌の寿命も長いので

なかなか消えず

感染した生き物を

ゆっくりと

蝕み

ゆっくりと

死に至らしめる

という

誠に恐ろしい性質を持つ

細菌なのである。

人の病気として

いまだに

「結核」や「らい病」が

撲滅できないで残っているのも

そんな抗酸菌の性質によるものである。

kosankin-photo01人の「結核」や「らい病」の

感染と発症は

人の生活環境に

大きく左右されている。

それと同じ仲間である

牛の「ヨーネ病」の

感染と発症も

牛の生活環境に

大きく左右されている。 


(この記事、もう少し続く)


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(9)

「ゼロ・ヨーネ」対策で、

牛のヨーネ菌を撲滅させようと頑張っている、

我が日本の牛の畜産業界の、

農場レベルのヨーネ病発生率は、

約3%であるという。

220px-国際的な発生状況一方で、

カナダ、フランス、米国、

など

農場レベルのヨーネ病の陽性率が

約70%であるという国々の

ヨーネ病対策は

「ゼロ・ヨーネ」

ではなく

これはもう

「ウィズ・ヨーネ」

あるいはもう

「ギブアップ・ヨーネ」

であると言える。

カナダ、フランス、米国

などの国々の牛の農場は

完全にヨーネ菌に侵されている

と言って良いだろう。

日本が

「ゼロ・ヨーネ」対策を続ける理由は

ヨーネ病が

牛にとって厄介で恐ろしい病気である

というばかりではなく

人の難病(クローン病)などとの関係が

疑われているからである。

一方で

カナダ、フランス、米国などが

「ゼロ・ヨーネ」対策をせず

「ウィズ・ヨーネ」にしている理由は

いったい何故なのだろう。

ネット上に出回っているデーターが

本当であれば

カナダ、フランス、米国などでは

ヨーネ病は

牛にとって厄介で恐ろしい病気ではなく

人の難病(クローン病)などとの関係も

問題視していない

ということになる。

「ゼロ・ヨーネ」の国と

「ウィズ・ヨーネ」の国があり

一つの牛の伝染病に対して

見解が違っている。

見解が違う理由は

何故なのだろう?

色々と理由は考えられるけれども

その理由が

はっきりとしないまま

見解の違う理由が

明確に示されていないまま

ヨーネ病を

ゼロにすべきなのか?

野放しにしても良いものなのか?

明確な答えが出ていないまま

IMG_3912我が国では

「ゼロ・ヨーネ」

対策を採っている。

そんな現実の下で

我々のような

牛の臨床家と

家保の先生方は

「ゼロ・ヨーネ」対策の

実働部隊として

日々その仕事に明け暮れ

大きな時間と予算を

費やしている。


(この記事もう少し、続く)


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(8)

ヨーネ病については、

日本以外の国々のデーターがある。

「農場レベルのヨーネ病陽性率の国際比較」

220px-国際的な発生状況というものだが、

それを見ると、

これがなかなかに、

ショッキングなデーターなのである。

日本以外の国々といっても

データーのほとんどはヨーロッパで

それに加えて米国とカナダのテーターが載っている。

オーストラリアのデーターはなく

アジアのデーターも日本だけという

かなり偏った国際比較ではあるけれども

それを見ると


  陽性率の高い国は

 カナダ        74%

 フランス      68%

 米国     68%


  陽性率の低い国は
 
 スウェーデン  0%

 日本     2.4%

 ノルウェー  10% 


となっている。

日本の牛のヨーネ病の陽性率は

100頭中2.4頭

となっている。

このデーターをよく見ると

陽性と診断する方法が

各国で異なっていて

グラフの横に

検査方法が書いてある。

したがって

このデーターをもっと正確にいうならば

ヨーネ病の牛の

陽性率

というよりも

摘発率

と言った方が良いのかもしれない。

いずれにせよ

これだけ国によって

ヨーネ病の牛の陽性率が違うというのは

一体どういうことなのだろうか。

日本の法律では

ヨーネ病が確定したら

その牛は殺処分しなければならない。

それはすなわち

100頭の牛がいたら

2.4頭の牛が陽性で

それらが殺処分されている計算になる。

そんなに殺処分しているのか・・・

と思われるが

これはきっと

「農場レベルの・・・」

という断りがついているデーター

すなわち

ヨーネ発生農場に限ったデーターだと思われる。

日本の場合

ヨーネ陽性の牛が出た農場は

「ヨーネ対策農場」

というレッテルが貼られて

年に何回か集中的に検査が行われる。

そう考えると

私が日頃通っている

「ヨーネ対策農場」

であれば

100頭中2〜3頭程度の殺処分は

現場の感覚と大体合っているのかな

と思う。

220px-ヨーネ病牛ともあれ

驚くべきは

酪農の先進国

あるいは

牛肉生産の先進国

と言われる

米国やカナダやフランスの

農場レベルの陽性率である。

例えばカナダのヨーネ発生農場では

100頭中74頭が陽性だという!(◎_◎;)

これを

日本の法律に従って

対策を施せば

74頭が殺処分をしなければならなくなる。

100頭中74頭を殺処分してしまったら

農場の経営は成り立たないのは

明らかである。

カナダの牛のヨーネ病対策は

「ゼロ・ヨーネ」ではないことが想像できる。

同じように

陽性率の高い

フランスや米国も同様に

「ゼロ・ヨーネ」ではないことが想像できる。

酪農や牛肉生産の先進国において

ヨーネ病は

もはや撲滅など

できない状況にあることが

このデーターから

読み取れるのである。


(この記事続く)


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(7)

ここでちょっと人の病気との関係を話題にしてみたい。

牛のヨーネ病について語るとき、

必ずと言って良いほど話題になるのは、

220px-日本のクローン病の発生状況人のクローン病である。

難病と言われるクローン病の原因に、

ヨーネ菌(抗酸菌)が関係している、

というデーターがたくさん報告されているからである。

主な症状は

腸管の慢性炎症で

牛のヨーネ病と共通している。

難病の人のクローン病が

牛のヨーネ病と密接に関係し

その原因の一つに挙げられているのであれば

牛のヨーネ病はまことにゆゆしき伝染病であり

「ゼロ・ヨーネ」対策

を目指すべき伝染病であろう。

牛の臨床獣医師にとって

密接な伝染病であり

220px-List_of_adiseases_related_mapさらに

人の難病の原因として

疑われているのであれば

なおさらのことである。

難病で苦しむ人が

一人でも減るために

牛の「ゼロ・ヨーネ」対策は

ぜひ今後も続けてゆくべきだ

と私は思っている。

ただ・・・

人のクローン病について

色々調べてみると

一つの疑問が湧いてくる。

もし

牛のヨーネ病を引き起こすヨーネ菌が

人のクローン病を引き起こす菌であれば

当然

牛のヨーネ菌に接触しやすい人が

優先的にクローン病にかかるはずである。

ヨーネ菌に接触する環境にいる人

すなわち

ヨーネ病の発生農場で働く人たち

その従業員やそこに出入りする人

ましてやその発生農場の

牛たちの肛門に手を入れて

直腸検査をする人

すなわち

我々臨床獣医師や人工授精師のような

牛のヨーネ菌を含んだ糞の飛沫を

最も浴びやすい人たちこそが

クローン病にかかり易いはずである。

もし

牛の糞中に排出されるヨーネ菌が

クローン病の原因になるのであれば

その糞汁を最も多く浴びるという

環境要因のリスクが最も高い

発生農場の従業員や

我々臨床獣医師や

人工授精師たちの

クローン病の罹患率は

他の職業の人たちよりも高いはずである。

ところが

クローン病について

私が探した限りにおいて

職業別の罹患率

というデーターがなく

最も知りたいところを

知ることができていないのである。

人医療界の

クローン病の疫学の研究者の方々には

ぜひとも

職業別のクローン病の罹患率を

調べて発表していただきたい。

そこが我々牛の臨床家にとって

最も気になるところなのである。

さらに

クローン病には

自己免疫疾患すなわち

免疫過敏症という側面があり

環境要因よりも

遺伝的な要因が

発症に影響を与えているらしいのである。

そのことも

牛のヨーネ病と

人のクローン病を

関連づける時の

障害になっているようだ。


(この記事続く)


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(6)

我々牛の臨床家にとって、

最も身近な法定伝染病となってしまっているヨーネ病。

毎月のように、

その診断と認定に立ち会い、

毎月のように、

ヨーネ牛の殺処分に立ち会い、

家保の先生と顔を合わせなければならない。

その殺処分の数は

一向に減る傾向がなく

むしろ

増えているように感じられていたが

IMG_3912先日の新聞記事を見て

その感じは

どうやら

間違いではなかったようだった。

そして

蔓延が止まらない原因が

ヨーネ菌自体の性質ばかりではなく

牛たちの飼育環境の変化にあることも

うすうす感じられていて

それは

前回の記事に書いた通り

牛の飼育環境の規模拡大化と

関係していることは明らかである。

我が国の牛の飼育環境は

米国やカナダや豪州の飼育環境を手本にして

規模の拡大化が進められている。

そのデメリットとして

ヨーネ病の蔓延が止まらなくなっている。

我が国の牛の獣医療は

「ゼロ・ヨーネ」

を目指して

ヨーネ病の摘発と殺処分に力を注いでいる。

しかし

我が国の牛の生産業界は

飼育規模の拡大化によって

ヨーネ病の蔓延しやすい飼育環境を推進している。

ヨーネ病の蔓延について

獣医療の目指す方向と

生産業界の目指す方向が

真逆の正反対で

真っ向から対立しているのである。

このままでは

おそらく

「ゼロ・ヨーネ」

の実現は

無理だろう

と私は思う。


(この記事続く)


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(5)

我々牛の臨床家にとって、

最も身近な法定伝染病となってしまった、

IMG_3912ヨーネ病。

撲滅しようとしても、

容易に死滅しない、

病原菌の抗酸菌という頑固な性格と、

潜伏期間の遅さなどによって、

思うように撲滅ができていない、

というもどかしさがある。

さらに

その蔓延の背景には

農場の規模拡大化という

時代の流れが影響を与えているのは

間違いないと思われる。

例えば

酪農場の規模を拡大するには

牛の数を増やさなければならないのだが

規模拡大をしている多くの酪農場が

自家牛の生産や

自家牛の育成では間に合わず

目標の頭数にするために

外部からの牛の導入を行っている。

IMG_3966また

自家育成の牛だけで頭数をまかなっていても

育成の途中で他の農場の牛と

共同で育成をする農場も

依然として多い。

また

和牛の繁殖農場が

自分の牛の受精卵を

外部の酪農場の牛に移植して

借り腹の母牛として使う契約をしている農場も

かなりの数に上っている。

それらに

共通する出来事は

IMG_3982各農場間の牛の移動である。

現代の牛の畜産において

異なる農場同士の牛の移動は

色々な形で

確実に増えているのである。

それに従って

法定伝染病をはじめ

その他の牛の伝染病が

蔓延するリスクは

確実に増えているのである。

牛の移動に伴って

我々現場の獣医師と

家保の獣医師が協力して

各伝染病の検査体制を敷いて

蔓延防止に努めているのだが

その効果がどれくらい出ているのかは

精査しないとわからない。

とくに

ヨーネ病のような

潜伏期が非常に長く

かつ死滅しづらい病原菌の場合

検査の網をかいくぐって

知らぬ間に

深刻な蔓延状況を引き起こす可能性は高い。

今の牛の畜産における

ヨーネ病の蔓延状況が

まさに

そのことを

物語っていると言えるだろう。


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(4)

ヨーネ病は牛の法定伝染病の中でも、

我々臨床現場の獣医師にとって、

最も身近な法定伝染病である。

最も身近な・・・

ということは

最も関わりの深い・・・

と言い換えることもでき

それは

最もよく接する機会のある・・・

とも言い換えることが出できる

牛の法定伝染病

なのである。

牛の法定伝染病の中で

私の35年以上の臨床経験を振り返ってみて

最も長い間かかわり合ってきて

いまでもそれがずっと続いている

牛の法定伝染病が

ヨーネ病なのである。

これはおそらく

全国の牛の獣医師

少なくとも北海道の牛の獣医師

には共通していることだと思われる。

前回の記事で書いた

「ゼロ・ヨーネ」

の対策を施していながらも

なかなか撲滅に至らず

いまだに多くの牛が摘発されている

我が国の牛のヨーネ病は

実に頭の痛い問題である。

その発端となったのが

北海道の牛だったことについても

忸怩たるものがある。

もう10年以上も前のことになるが

こんなことがあった。

我が町の和牛農家さんとJA職員が

九州へ繁殖用の和牛を買い付けに行ったことがあった。

当時は全国的にヨーネ病の蔓延が問題になり始めた頃だったので

九州の農家さんで買った牛を

北海道へ搬送する前に

ヨーネ病の検査をするように

九州の生産連に要請したところ

先方から

「九州ではヨーネ病の牛は出ていないから今ここで検査する必要はない。」

と言われ

止む無くそのまま北海道へ搬入し

着地検査という形でヨーネ病の検査を実施し

隔離して陰性を確認したのちに

ようやく導入されたことがあった。

こんな生産現場の些細なところにも

ヨーネ病の蔓延が

影響を与えていたのである。

そんな出来事があった時から

220px-国内の年次ヨーネ病発生経過10年以上経ったいま

ヨーネ病は撲滅されるどころか

全国各地で発生しており

ゆっくりながらも

その勢いは衰えることなく

じわじわと

我が国の牛群に蔓延し

牛の体をむしばみつつある。

我が国の法律で定められた

「ゼロ・ヨーネ」

の対策は

今後どうなるのだろうか・・・


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(3)

ヨーネ病が疑われる牛が、

我が診療地区の幕別町で発生し、

その診断を家保に依頼して、

Unknown-2診断が確定したのは、

もう25年以上も前のことだった。

当時はまだ

十勝地区でも数頭の発生に止まっていて

ヨーネ菌の感染経路などが

つぶさに調べられていた頃だった。

町内のその発生農場は

和牛の繁殖農家さんで

下痢が止まらない牛を診療していて

私が家保へ検査を依頼して発覚したので

今でもその時の様子は鮮明に覚えている。

Unknownヨーネ病の確定診断が出たら

というより

ヨーネ病を疑って家保に検査を依頼したら

その時点からもう

法律に従って

決まった対処方法が始まるので

飼い主さんの都合が悪かろうが

我々関係機関の都合が悪かろうが

粛々と対処しなければならない。

それはヨーネ病に限らず

どの法定伝染病についても同じである。

ただ

当時はまだ珍しい病気で

町内の発生が第1号だったために

飼い主さんとの打ち合わせや

家保さんとの打ち合わせに

かなりの緊張感があったことをよく覚えている。

見慣れない

聞きなれない

伝染病が発生すると

先ずは

「どこから入ったのか?」

という感染経路が問題視される。

当時ももちろんそうで

そのルーツを探ると

どうやら音更町の駒場地区にある

国立の農水省の種畜牧場に輸入された牛

に行き着くらしいと言われていた。

だがその事は

推測の域を出ず

純粋に学問的に

感染経路をつぶさに調べられたとしても

その情報を確認する事はできなかった。

あるいはおそらく

ヨーネ菌の感染の遅さや

潜伏期の長さなどから

正しい感染経路を確定するのは

不可能だったのかもしれない。

我々臨床家の立場からすれば

感染経路をつぶさに調べることも大切だが

実際発生してしまった農場をこれからどう守ってゆくか

の方が大切なことだった。

Unknownそして

当時は

まだ発生件数が少なかったこともあり

ヨーネ菌の感染を抑え込むための

徹底した対応策が

法律で決められていた。

つまり

「ゼロ・ヨーネ」

対策である。


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(2)

牛のヨーネ病は、

発症したら最期、

下痢が止まらなくなり、

有効な治療方法もなく死に至る、

という恐ろしい病気である。

しかも

ヨーネ菌が感染してから発症するまでの

潜伏期間が非常に長く

数年以上かかるのが普通なので

220px-ヨーネ病牛ヨーネ病の牛が

いったい何時

何処で

どのようにして

ヨーネ菌に感染をしたのかが

全くわからず

感染予防の対策が困難を極める。

こんな厄介な病気は

なんとか撲滅させたいということで

国を挙げての撲滅対策

すなわち法定伝染病に指定されて

法に基づいた厳しい対策が行われている。

法定伝染病に指定されている牛の病気は

ヨーネ病以外にもいろいろあり

それぞれに厳しい対策が取られているけれども

我々のような

牛の現場の獣医師にとって

ヨーネ病対策は最も身近で

その対策に最も多くの時間と労力を割かれている。

ということは

裏を返せば

ヨーネ病の対策が

数ある法定伝染病対策の中で

最もうまくいっていない対策と言えるのである。

先日の北海道新聞の記事にあるように

IMG_3912その対策は

法律に基づいた

全頭の血液検査による

感染個体の摘発と殺処分であるが

それに加えて

重要な対策として挙げられているのが

牛舎の清掃と消毒である。

それも一般的な消毒薬では効力が弱く

強い塩素系の消毒剤や消石灰(水酸化カルシウム)

を使う必要があるといわれている。

牛舎の清掃と消毒・・・

これは何も

ヨーネ病対策ばかりではなく

牛という動物を飼うときに

最も基本的なことの一つである。

牛舎の清掃と消毒・・・

つまりは

こういう最も基本的な

当然のような対策を

地道にコツコツとやることしか

対策方法がない

厄介な伝染病なのである。

ということはすなわち

牛を飼養する牧場ばかりではなく

我々現場で働く畜産関係者も

基本的で当然のような対策を

地道にコツコツとやることしか

対策方法がないのである。

ヨーネ病という伝染病は

特効薬的な対策が何もないのである。

それゆえに

さまざまな厄介な問題を

我々に

投げかけている。


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ゆゆしき・・・牛の伝染病(1)

「実用的なワクチンは無くワクチンによる予防出来ない。また、治療方法は無いため、感染動物は殺処分される」、

そんな文言で説明される、


IMG_3912牛の法定伝染病、

ヨーネ病

が蔓延して久しい。

私は今まで

牛の伝染病について

このブログで取り上げることを

極力避けてきた。

私の診療地区の

牛の伝染病の生々しい実態を書くと

発生農場や関係機関に

迷惑がかかる可能性が高いからである。

しかし

昨日の北海道新聞の十勝版に

これだけ詳しく

情報が公開されるのならば

私がその情報について

私見を述べることも

許されるのではないかと思う。

ヨーネ病

人の結核菌に性質の似ている抗酸菌の感染による病気で

潜伏期が長く

主に腸管に感染して

発症すると下痢が止まらなくなって

治療には全く反応せずに痩せ細り

最終的には死亡する。

そこで予防するしかないことになるが

「実用的なワクチンは無くワクチンによる予防出来ない。また、治療方法は無いため、感染動物は殺処分される」

というわけである。

一度感染したら

どんな大切な牛でも

国の命令で殺処分しなければならない

という厄介な病気なのである。

IMG_3912新聞記事によると

十勝管内のヨーネ病の感染牛は

全道の3割を占めており

今年も1月〜4月だけで

10町村で111頭の牛が感染し

前年を上回るペースだという。

IMG_3912 2気になるのは

その内訳だ

掲載された表を見ると

ヨーネ病が発生している10町村の中で

広尾町が32頭でトップ

続いて幕別町が20頭

大樹町が16頭で続いている。

この3町はすべて

私が診療した経験を持つ地域であり

発生農場の名前を聞けば

ああ、あそこか

と分かるところばかりである。

さらに気になるのは

発生が2番目に多い幕別町が

現在の私の診療地区であるが

じつは

1位の広尾町よりも

3位の大樹町よりも

牛の飼養頭数が少ない。

飼養頭数が少ないにもかかわらず

発生頭数が2位ということは

「発生率」で見ると

おそらくトップに

躍り出てしまうのではないか

と思われるのだ・・・


(この記事続く)


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赤と黒(双子の子牛)

「お産なんだけど、尻尾しか触れないんだ・・・」

という電話が酪農家のYさんからかかってきたのは

朝の往診に出かけようとしていた時だった。

先ずはその難産の介助のために

Yさんの牛舎へ直行して

その牛の産道に手を入れると

なるほど尻尾1本に触れ

その奥に胎児の臀部があった。

いわゆる臀位である。

「・・・分娩予定日はいつ?」

「来月の初めなんだけど・・・」

「・・・予定より早いのね、了解。」 

牛の難産で

臀位かつ予定日前

とくれば

これはもう

双子である確率が非常に高い。

その理由はよく分かってはいないのだが

私の35年以上の臨床経験から言っても

それはほぼ間違いがないのである。

産道に入れた手をさらに奥に進めると

胎児の飛節に触ることができたので

その先の中足骨の部分を掴んで揺すってみたが

腕力だけでは整復できそうになかったので

「・・・チェーン使うわ。」

私は産科チェーンを中足骨部にかけて

その輪をすこしづつ遠位に移動させて

球節をさらに超えて

繋ぎの部分にかけて

輪を絞った。

そのチェーンを軽く引いた状態で

もう一方の手を使って

飛節を強く押した。

すると

前方へ伸びていた胎児の後肢の

飛節と球節の位置が変わって

後肢1本が整復された。

残りの1本も同じようにして整復し

親の陰部から胎児の2本の蹄があらわれた。

これで臀位が整復されて普通の逆子(尾位)となった。

「・・・よし、あとは引っ張るだけ。」

Yさんと私は2人で

逆子の胎児を牽引すると

胎児は仮死状態だったが

心臓の拍動は確認できたので

マッサージをして呼吸を促してやると

自発呼吸を始めた。

IMG_3815「・・・よし、生きてるね、じゃあ次。」

私はまた親牛の産道に手を入れると

「・・・いたいた(笑)」

案の定

胎児がいた。

いたのは良いが

また同じように尻尾しか触れなかった。

「・・・またケツからきてるよ。」

私は苦笑して

IMG_3813再び第1子の時と同じように

後肢を2本整復してから

Yさんと2人で

2子目の逆子の胎児を牽引した。

この子もまた仮死状態だったが

IMG_3816マッサージをして呼吸を促すと

自発呼吸を始めた。

「両方とも生きててよかった・・・」

「・・・オス?メス?、どっち?」

「両方ともメスだよ・・・あれっ・・・」

IMG_3817「・・・?」

「後から出した方・・・赤白だね・・・」

「・・・ホントだ、赤白と黒白の双子、おれ、介助したの初めてだ。」

「そうかい、ウチじゃ結構あるよ、年1回くらい・・・」

赤白というのは茶色の斑のことである。

IMG_3818赤白と黒白の双子については

かつて私はミステリアスなこととして

記事を書いたことがあった(笑)

今回は

そのことを裏付ける経験を

することが出来た。


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生乳廃棄5000トン(15)

乳製品が足りない時は、

どんなに質の悪い生乳でも、

かまわず売れたので、

酪農家はとにかく生乳の、

「質」など考えずに「量」を搾ればよかった。

ところが

生乳が余った時に

生乳を乳製品に加工する技術が

十分に出来ていなかったことで

生乳を廃棄するという危機が訪れた。

その時私は

質の良い生乳を廃棄するのは問題だが

質の悪い生乳ならば廃棄しても良いだろう

IMG_3242と思った。

質の良い生乳は

健康な乳牛から搾られ

質の悪い生乳は

不健康な乳牛から搾られる。

もう一度繰り返そう。

良質な生乳は

健康な牛群から生まれ

悪質な生乳は

不健康な牛群から生まれる。

当たり前の話だが

健康な牛群では

牛が病気や事故で死ぬことが少なく

IMG_3244不健康な牛群では

牛が病気や事故で死ぬことが多い。

生乳が足りない時は

悪質な生乳も

そのままさかんに出荷されていたので

悪質な生乳を生産する不健康な牛も

不健康な体のままに飼養され

健康を害したままに働かされて

病気や事故で死んでいった。

IMG_3243しかし

いま

生乳が余っているのであれば

悪質な生乳を生産する

不健康な牛たちを

休息させて

健康に戻してやることに

もっと力を注ぐことはできないだろうか。

生乳が不足して

乳質よりも乳量が重視され

悪質な生乳でも売れる時代は

牛の健康への配慮が欠けた酪農家が

IMG_3241大手を振るって乳量ばかりを追求し

その結果として多くの牛たちが

病気や事故で死んだ。

しかし

生乳が余って

乳量よりも乳質が重要視され

良質な生乳が求められる時代になれば

酪農家は乳質改善に真剣に取り組み

牛の健康を第一に考えるようになり

結果として牛は長生きするだろう。

生乳が余っている

今こそ

酪農家は

牛の健康を第一に考える

契機として欲しい。

今こそ

牛を健康に飼うことを

真剣に考えて

実践して欲しい。

「牛の健康第一主義」

を掲げている

獣医師からのお願いである。


(この記事終わり)


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生乳廃棄5000トン(14)

せっかく搾った生乳を余らせ、

加工する能力もないままに、

大量に廃棄する危機を繰り返し、

一方において、

生乳を原料とする乳製品を

外国から大量に輸入し続ける日本の酪農業界。

おかしな現象が続いているが

おかしな現象は

乳業会社や農政ばかりではなく

生産現場でも起こっている。

酪農家が搾った

「生乳」

とひと口に言っても

それぞれの酪農家によって

搾られた生乳の質はさまざまである。

厳密に言えば

それぞれの酪農家の数だけ

質の違う生乳が搾られていると言っても良い。

それぞれの酪農家に皆個性があるように

そこから搾られた生乳には

みんな個性があり

質の違った生乳が搾られている。

生乳は乳牛から搾られるから

生乳の質は

乳牛の質に

左右されるのは当然である。

乳牛の質というのは

乳牛の遺伝的素質もあるにはあるが

それをまっとうに発揮できるための

「健康状態」

が鍵になる。

いくら遺伝的な素質の良い牛であろうと

それが健康でなければ

素質を発揮できないのは当然である。

健康な乳牛こそ

質の良い乳牛であり

健康な乳牛からこそ

良質な生乳が搾られる。

ところが

全ての酪農家の乳牛たちが

健康的に飼われているかというと

IMG_6954現状は全くそうではない。

残念ながら

不健康な乳牛たちも

少なくないのである。

不健康な乳牛からは

質の悪い生乳が搾られている。

IMG_6957具体的に言えば

乳房炎の多い牛群からは

体細胞の多い生乳が搾られている。

いま

私の知っている限りでは

そういう質の悪い生乳を生産している酪農家が

かなりの数で存在している。

一方で

乳牛を健康的に飼い

質の良い生乳を生産している酪農家も

もちろん存在している。

しかし

「生乳」

とひと口に言っただけでは

質の良い生乳のことなのか

質の悪い生乳のことなのか

が分からないのである。

去年の暮れ頃から

生乳を5000トンも廃棄する騒ぎが

報道されるようになった時

私は

質の良い生乳を廃棄するのは問題だが

質の悪い生乳ならば廃棄しても良いのではないか


IMG_6956と思った。

たが実際は

質の良い生乳と

質の悪い生乳が

混ぜられて処理されている。

生乳が不足している状況では

多少質が悪い生乳でも

それを混ぜてでも

消費すべきだろう。

しかし

生乳が余っている状況であっても

今の生乳流通システムでは

質の悪い生乳だけを

選んで廃棄することはできない。

質の悪い生乳も

混ぜて処理しなければならない以上

せめて

質の悪い生乳の

品質を改善して

最低限の質の良さをキープするべきだろう。

それを言い換えれば

不健康な乳牛たちの

健康状態を改善して

最低限の健康をキープするべきだろう。


(この記事続く)


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生乳廃棄5000トン(13)

過去から現在に至るまで、

いくたびも生乳を廃棄する事態をくりかえす、

酪農業界の有り様に対して、

もっとも怒りを感じているのは、

やはり酪農家ではないかと思われる。

大変な思いをして

毎日毎日

牛から搾乳しているのだから

それは当然だと思う。

そして

もうひとつ

忘れてはならないのは

酪農家から毎日毎日

餌を与えられて

生乳を身から絞り出している

牛たちのことである。

乳牛は人の言葉が分からないから

自分の身から搾られた生乳が

大量に廃棄されることなど

知ることもないし

想像することもないだろう。

しかし

もし乳牛たちが

何らかの方法で

それを知ることができたなら

乳牛たちは

酪農家よりももっと

怒りと落胆の気持ちを持つに違いない。

IMG_3364今回の生乳廃棄騒ぎで

生産現場からの声は

どのようなものだっただろう。

私は今回

酪農家を毎日回っていると

怒りと落胆ばかりではなく

諦めと無力感も漂っているような

IMG_3365そんな雰囲気を感じた。

そのような雰囲気の中で

たまたま

酪農雑誌「Dairy Japan」の編集長の伊藤さんから

「牛に感謝」というコラムの原稿依頼があり

それが3月号に掲載された。

IMG_3366そこには

私が普段から酪農家に

往診に回っている時の

雰囲気をそのまま

書いてみた。

IMG_3367よろしかったら手に取って

「Dairy Japan」の3月号を読んで欲しいと思う。

「Dairy Japan」誌は

私のコラムなどよりも

実用的な酪農情報が満載なので

その情報を読むだけでも

もちろん結構だが・・・


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生乳廃棄5000トン(12)

我が国の「乳製品」の自給率は、

現在59%で、

ここ3年低下傾向にあるらしい。

https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_070_385/

「生乳」の自給率は、

現在100%だとはいうものの、

それを搾るための、

「乳牛の餌」の自給率は、

現在34%で、

 http://zookan.lin.gr.jp/kototen/rakuno/r222_3.htm

特に北海道以外ではさらに低く

25%以下であるという。

「乳製品」も「生乳」も

それを生み出す肝心な

「牛」の餌の3分の2を

輸入に頼っている。

「生乳」の原料である

牛の餌の6割を輸入に頼っていては

自給率100%というのは

本当の自給とは言えないだろう。

乳牛の餌とは

乳牛の食料である。

乳牛の食料の自給率が34%

というわけである。

我々人間の食卓の

食料自給率は

カロリーベースで

現在37%で、

年々低下傾向にあるようだ。

https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html

日本の乳牛の餌の自給率が34%で

日本人の食卓の食料自給率が37%で

ほとんど同じような数字である。

先進国

などと言われている日本であるが

そう思っているのは日本人だけのようだが

Unknownいわゆる先進国

の中で

食料の自給率が

一番低いのは

我が国日本である。

日本の牛たちも

飼い主と同じように

食べるものの自給率が低いのは

当然なのかもしれない。

自分(人間)の食べ物の自給率が

37%に過ぎない国で

飼育する牛の食べ物の自給率が

それを上回ることは考えにくい。

牛の餌の自給率が

34%に過ぎないのは

当然かもしれない。

そういう国で

今回の

生乳廃棄と

乳製品の値上げ

の同時進行


というおかしな現象が起こっている。

この原因の1つが

人と牛の

食料自給率の低さ

にあるのは

間違いないだろう。

「生乳」の自給率100%

などというのは全くの

絵に描いた餅と同じまやかし物で

砂の上の城である。

我が国の「生乳」は

自給もできなければ

消費をする力も技術も文化も無い

のである。

乳製品の不足を

自国の生乳で

賄うことができない


のである。

その結果が

生乳廃棄5000トンの危機と

家庭用プロセスチーズの値上げ


となって

消費者にのしかかってくる

のである。

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