北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

牛の診療

生乳廃棄5000トン(10)

「ポテトが足りない」という記事が出て、

馬鈴薯の大産地の十勝に住む私は、

それを疑問に思って、

2月10日の早朝にブログ記事を書き、

生乳廃棄5000トンの危機という事態が、

再び来ないための「他山の石」としたつもりだった。

その舌の根の乾かぬ日の朝の北海道新聞に

こんな記事が出ていた。

「チーズ4月から値上げ」

という見出しと

「雪印メグミルク・原料高騰 輸送費も増」

という小見出しで

「雪印メグミルクは9日、家庭用のプロセスチーズやナチュラルチーズなどを4月1日出荷分から値上げすると発表した。新型コロナウイルス禍からの経済復調で世界のチーズ需要が高まり、原料となる輸入チーズの価格が高騰しているため。家庭用チーズの値上げは約4年ぶり。・・・・」

IMG_3341という本文が

家庭用のスライスチーズの写真とともに

三段の小さな記事になっていた。

生乳が5000トンも余って

廃棄されそうな危機のなかで

家庭用チーズが値上がりするのだという。

その理由は

家庭用のチーズの原料となる輸入チーズの価格高騰

だという。

チーズの原料は生乳である。

その生乳が5000トンも余っている我が国で

チーズが値上がりするのだという。

北海道の酪農家は

搾った生乳を

加工原料乳という名目で

乳業会社に生乳を売っている。

それを乳業会社が買って

乳業会社には生乳(加工原料乳)が

5000トンも余ってしまい

廃棄の危機にある。

乳業会社は

余った生乳を

消費者に飲んでもらおうと

大々的にキャンペーンを張っている。

その最中に

生乳を原料とするチーズの

原料が不足して高騰しているという理由で

家庭用チーズの価格を値上げするのだという。

これは一体どいうことなのだろう。

普通に考えれば

それほどに生乳が余っているのであれば

その余っている5000トンの生乳を使って

チーズを作れば

チーズの値上げなどしなくても良いと思うだろう。

ところが

現状はそうではなく

生乳を5000トンも廃棄しそうな状況の中で

国産の生乳をチーズに加工することなく

高騰する輸入チーズを原料として

家庭用チーズを作り

その小売価格を値上げするのだという。

消費者から見ると

乳業会社は

一体何をやっているのだ

と思うだろう。

乳業会社は

あれほど消費者に

生乳が余るから

飲んでくれ飲んでくれと頼み

国産の生乳を消費者に買ってもらって換金し

その傍らで

余った国産の生乳を

チーズに加工することもせず

旧態依然として

高騰した輸入チーズを使って加工するという

古い加工技術のままに

相変わらずのチーズ工場で

家庭用チーズを作り

挙げ句の果てに

その家庭用チーズの値上げに踏み切り

そこでまた消費者に

高い価格でチーズを売り

換金しようとしている。

乳業会社はよほどに

自分に都合の良いことばかりしているように見える。

乳業会社はずいぶんと

国産の生乳をぞんざいに扱っているように見える。

乳業会社はどれほどに

酪農家と消費者を舐めているのだろうか。

私は

このような乳業会社の態度を見て

怒りがこみ上げてくるのだが

私以外の

消費者の方々は

どう感じているのだろう?

4月から値上がりするという

家庭用チーズを

素直に買う気になるのだろうか?


マスコミ各社にも

言いたいことがある。

生乳廃棄の危機の中での

チーズ値上げのニュースが

こんなに小さくていいのだろうか?


(この記事続く)


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生乳廃棄5000トン(9)

生乳と同じように、

北海道の十勝地方が、

大きな生産シェアを持っている農産物に、

じゃがいも(馬鈴薯)がある。

今年のじゃがいもの出来はまずまずだったようだ。

20218281323160_sum240毎年収穫の秋なると

じゃがいもを作っている農家さんや

知り合いなどから

沢山いただくことがあり

じゃがいもの大産地である十勝に住む者の

IMG_3340恩恵でもある。

今年も例年同様

じゃがいもを美味しくいただいている。

そんな

じゃがいも(馬鈴薯)王国の十勝で

不思議な現象が起こっている。

「ホテトが足りない」

というのである。

日本マクドナルドでは

マックのM・Lサイズの販売を一時休止する

IMG_3216という新聞記事が出ていた。

その理由は

ポテトの船便の経由地である

カナダのバンクーバー港近郊の大水害と悪天候で

ポテトの輸送が大幅に遅れ

日本に届かなくなっているのだという。

じゃがいもの大産地である十勝で

じゃがいもが普通にたくさん

収穫できた年に

ポテトフライが品薄で販売中止とは

なんとも不思議な現象である。

さらに

こんなことも起こっている。

IMG_3217びっくりドンキーの

「びっくりフライドポテト」

などの

ポテト5品目の販売を

全国で休止するという。

その理由は

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う

国際物流の混乱で

欧州からの輸入が大幅に遅れて

届かなくなっているからだという。

じゃがいもの大産地である十勝で

じゃがいもが普通にたくさん

収穫できた年に

レストランのポテト料理が品薄で販売中止とは

なんとも馬鹿げている

不思議な現象である。

マックやびっくりドンキーは

十勝でも愛好者が多い。

私もごくたまに利用することがあるが

この現象に

首を傾げたくなった。

そして、これは

「地産地消」

という理想とは逆の

産地消」

という現実からくる

珍現象であると思った。

マックやドンキーのポテトの愛好者は

地元の十勝のじゃがいも農家の

じゃがいもの出来よりも

遠い外国のじゃがいもの出来

に影響されているのである。

地元の十勝の気候よりも

遠い外国の気候変動

に影響されているのである。

普段の生活は

地元の気候に影響を受けているのに

食べ物は遠い外国の気候に影響を受けている

という

なんとも馬鹿げた

おかしな現象が生じている。

「ポテトが足りない」

という現象が起きなかったら

それにはずっと気づかずに

暮らしていただろう。

さて

話を「生乳」に戻したいと思う。

輸入ポテトで

いま起こっているこの現象は

外国の生乳を原料とする

輸入乳製品で

これから起こっても不思議ではないのではなかろうか。

国産の生乳を

ちゃんと「地産地消」する体制を

築いてゆくことを怠れば

国産の生乳を

5000トンも廃棄する

という危機に見舞われている時に

外国産の乳製品が

外国の事情で届かなくなって

「乳製品が足りない」

ということになり

地元の店頭から

チーズやヨーグルトが消える

という

まるで馬鹿げた

珍現象が

将来起こらないとは限らない!?

のではないだろうか・・・


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生乳廃棄5000トン(8)

生乳5000トンの廃棄の危機は、

ひとまず回避できたというニュースで、

酪農業界の関係者は、

胸を撫で下ろしているようである。

IMG_3312しかし

こういうニュースを聞くにつけ

生乳や乳製品ばかりではなく

農産物の全てにおいて

我々は

IMG_3317「ぞんざいな扱い」

をしているのではないか

と思わざるを得ない。

足りなくなったら増産するのは良いだろう。

増産してそのまま売れている間は良いだろう。

IMG_3316しかし

増産を続けていれば

いつかは余ってくるのは当然で

余った時はどうするのかという事も

当然考えて準備しておかなければならないだろう。

今回はコロナ禍の緊急事態だったからと
IMG_3318
言い訳ができるのは今回だけである。

今後またこういう局面は

必ず訪れるだろう。

生乳の流通は

IMG_3319飲料として消費するばかりではなく

色々な乳製品になって消費されてゆくので

非常に難解で

一般の消費者には

すこぶる分かりにくいものになっている。

IMG_3320更にそこへ

輸入される乳製品が絡んできて

生乳流通のブラックボックスは

更に深い闇の底に沈んでいるように見える。

この現状を

IMG_3322誰にでも理解できるように

分かりやすく解説できる人は

果たしているのだろうか?

解説できる人がいないから

分析できる知恵がないから

的確な対策を講じることが出来ず

生乳廃棄5000トンという危機がやって来た

と言えるのではなかろうか。

生乳ばかりではなく

全ての農産物において

それぞれの性質を理解せずに

ただ

商品として

商売の道具として

工業製品と同じものとして

貿易の取引や駆け引きのカードとして

生産したり

消費したり

という

「ぞんざいな扱い」

を今後も

続けるのだろうか。

生乳は

農産物は

ありがたい食べ物であり

命をいただく物であることを

今一度

いや

二度も三度も

いや

永久に

考え直し続けなければならない

のではなかろうか。

(この記事続く)



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生乳廃棄5000トン(7)

戦後から長年続いている、

工業立国の日本、

農業軽視の日本、

は農業人口の激減をもたらし、

農業関係者からの発言力(選挙票=政治力)が落ちた。

そんな背景の中で

今回の生乳廃棄問題が出てくると

今までのように

生産者側に立ってそれを守ろうとする政治力は弱く

消費者側に立って解決しようとする力が強くなる。

結果として

消費者が

この問題の解決の鍵を握っている

ということになり

生乳と乳製品の

消費拡大キャンペーン

ばかりが叫ばれている。

しかし

それだけでは

緊急事態の一時的な回避であり

根本的な解決にはならないことは

誰でも薄々感じている事ではないかと思う。

工業と農業

という性質の違う産業。

今回の場合の具体例で言えば

自動車会社と酪農家

という性質の違うものを

貿易という商業取引の中で

同等に扱われてしまうことに

強い不満があるのは

農業関係者ば誰でも感じている事ではないかと思う。

images「生乳が5000トン廃棄」

というニュースが出た時

酪農関係者は

また余ってきたか

という感想を持ったに違いない。

生産量を調整することが難しい酪農業では

何度も繰り返してきた事態である。

そのような事態を招く

原因の一つになっている

自動車販売の業界の人々は

どういう感想を持っただろうか。

自動車会社にとって

酪農業界の生乳廃棄問題など

全く他人事のどこ吹く風

と思われているに違いないだろう。

生乳の生産を急激に減らしたり

生産ラインを一時的にストッブさせて

需要と供給のバランスを取ることは

乳牛の健康を維持の面から考えて

非常に難しい。

それに比べて

自動車の生産ラインを一時的にストッブさせて

需給のバランスを調整することは

はるかに容易であり

Unknown自動車の廃棄

すなわち

「新車の廃棄」

などという問題が生じることはない。

そんな性質の違う

2つの産業が

貿易という商業取引の道具として

同等な扱いをされている。

すなわち

日本の攻めの道具として自動車が売られ

その代償の道具として乳製品を買っている。

これからも

このようなことが続けば

将来何度でも

同じことが起こるに違いない。

今回の生乳廃棄問題で

少なくとも

自動車産業に身を置く人たちに

こういうことを

少し気づいてもらいたいものである。

気づいてもらえれば

輸入された乳製品を

スーパーの店頭で見たとき

何かを考えてもらえる

かもしれない・・・
 
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生乳廃棄5000トン(6)

今回の生乳廃棄騒ぎは、

コロナウイルスという特殊な事情があったから、

と言うこともできるが、

今後も新型コロナウイルスが、

変異をしながら、

この世にはびこり続ける以上、

これからは

コロナ禍を特殊事情だ

などとは言えなくなり

何事をするにも

コロナ禍を想定しなければならなくなるだろう。

生乳廃棄の問題もその例外ではない。

そこで湧いて来る疑問の一つに

「生乳がそんなに余るのに、なんで乳製品を輸入するのか。」

生乳という原料が余っているのならば

それを使って乳製品を作っておけば

廃棄などせずに済むだろうに。

と思うのは当然だろう。

しかし

貿易というのはそんなに甘くはない

という事も

我々はうすうす感じている。

今回の生乳廃棄問題で

「生乳をもっと飲もう。」

と言うばかりで

「乳製品の輸入を減らしたらどうか。」

という意見が

なかなか出てこないのも

マスコミなどが

貿易の事情を慮ってのことなのかもしれない。

その事情とは何か?

私は貿易の専門家でもなく

経済アナリストでもないので

詳しいことはわからないが

乳製品の輸入を減らすのは難しそうだ

という事はなんとなく感じている。

それは

乳製品の輸出国(主に欧州)の圧力であろう。

欧州に色々な品物(主に自動車)を輸出している日本は

その取引のカードの一つとして

乳製品(主にチーズ)を

大量に買っている。

端的に言えば

自動車を欧州に売るために

チーズを欧州から買っている


という事である。

こういう図式は

豪州や米国の牛肉の輸入にも見られ

例えば

石炭を買いたいがために

抱き合わせで牛肉も買わされている

という図式もある。

imagesここで気になるのは

乳製品や牛肉などの農産物が

自動車や石炭などの工業(鉱業)製品の

売買のための犠牲になっている

という図式である。

Unknown日本の強みは

相変わらず自動車で

日本の弱点は

相変わらず農産物で

自動車の販売のために

農産物が犠牲になる

という図式は

日本が戦後から長年の間やってきた

農業軽視

工業立国


の結果である。

日本の国民はずっと

そうやって豊かな暮らしを続けてきた。

だが

今後も

それでいいのだろうか・・・


(この記事続く)

 
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生乳廃棄5000トン(5)

生乳が大量に余ってしまったならば、

それを飲んで消費しようとするキャンペーンは、

IMG_3198大変有効で、

実際に今回、

生乳の大量廃棄の危機が、

回避できそうな見通しになった。

だが

この先

生乳がまた大量に余ってしまう状況が

IMG_3201いつ来るともわからない。

もし

またこの先

生乳が大量に余る状況がやって来たら

IMG_3202またまたマスコミは

牛乳消費キャンペーンを

大々的にやるのだろうか・・・?

そしてまた

消費者はそれをまた真摯に受け止めて

牛乳をたくさん飲んでくれるのだろうか・・・?

消費者の心理というのは

それほど甘くはないだろう。

同じことを何度も繰り返していれば

そのうちに消費者は

「生産現場は一体何やってんの・・・?」

「生乳の流通は一体どうなってんの・・・?」


という疑問を抱き

牛乳の生産現場に対して

批判の目を向けて来るに違いない。

IMG_3219それは当然のことであり

それはまた

消費者が酪農業界というものを

よく知るきっかけになることでもある。

IMG_3252そのような場面が

将来きっと

やって来るだろうと思うのは

きっと私ばかりではないはずである。

「生乳廃棄の危機の再来。」

それはいつ来るのか

酪農業界という生乳の生産現場が

今までと同じことをやり続けているのならば

今までと同じ方向性で増産体制をしているならば

それは将来必ずやって来るだろう。

IMG_3240その時に

消費者から批判を浴びることなく

あたたかい心のある消費者から

そっぽを向かれないような

生乳の剰余対策を

今こそ

真剣に議論し

実行してゆかなければならないだろう。

「生乳を余らせず廃棄しない。」

IMG_3218ために

これから

何をすべきなのか。

生乳を飲んで消費する

ということ以外に

シンプルに思い浮かぶのは

生乳を乳製品に加工して

保存することである。

IMG_3197それも

チーズなどの長持ちする乳製品に

加工しておくことである。

100%国産の生乳を

余すことなく

チーズなどの乳製品に加工する生産体制を

酪農業界は今後ますます

急いで作り上げてゆくべきだろう。

ところが

その足かせになっているものがある。

IMG_3280その一つに

貿易がある。

乳製品の輸入である。

チーズやヨーグルトなど

外国の生乳を加工した

外国製の乳製品の輸入量は

年々増える傾向にある。

「生乳がこれほど余るのに、どうして輸入するの・・・?」

という疑問は

大人でも子供でも

自然に湧いてくる疑問だと思う・・・


(この記事続く)

 
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生乳廃棄5000トン(4)

コロナ禍などの影響で、

生乳が前代未聞の5000トンが余りそう、

IMG_3174という危機感を、

マスコミが大々的に喧伝し、

消費者がそれを真摯に受け止め、

年末年始を通して

生乳の消費運動が盛り上がり

IMG_3170ここへ来て

前代未聞の5000トン廃棄

という憂き目に会うことが

なんとか

回避されそうな気配である。

とりあえずは

私も一人の業界関係者の端くれとして

胸をなで下ろしている次第である。

IMG_3164ただ

どうしても

その胸のうちには

釈然としないものが残ってしまう。

IMG_3165その一つが

乳製品の加工について

である。

生乳が今後また

大量に余る局面があるのならば

IMG_3166生乳を原料とする乳製品の生産ラインを

もっと充実させる必要があるだろう。

コロナ禍が特別な事情だったとはいえ

今後さらにオミクロン株が猛威を振るい

生乳が余る状況が

いつまで続くのか予想できない。

IMG_3168それならば

生乳を飲むばかりではなく

加工して長い期間保存しながら

確実に消費してゆくことを

急いで考えなければならないだろう。

IMG_3171ここ数週間の

マスコミの報道を見ていると

生乳をそのまま飲んで消費しよう

というキャンペーン記事ばかりで

IMG_3172それを加工して

バターやチーズなどの

「乳製品の今後」

について

言及することがなかったように思う。

それはこれからの課題

と言うことなのだろうが

IMG_3280そこをちゃんと

見据えていないと

同じことを

また繰り返すだけ

になってしまうのではないか

と私は感じるのだが・・・


(この記事続く)

 
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生乳廃棄5000トン(3)

生乳が余り、

廃棄されることになれば、

酪農王国北海道の、

面目は丸つぶれであろう。

IMG_3163酪農業界は

一体何をやってきたのか

どこを向いてやってきたのか

という批判は逃れ得ないだろう。

しかし

IMG_3154冷めた目でこれを見るならば

コロナ禍という予期せぬ事態を発端とした

緊急事態だから致し方ない

ということも出来る。

それでも

そんな緊急事態を想定してはいなかったのは

IMG_3155やはり酪農業界の

増産一辺倒の

見通しの甘い流通の自由化や

過度な商業主義が原因なのではないか

という批判を浴びる可能性は十分にあるだろう。

今回の

生乳廃棄5000トン騒動は

IMG_3156今のところ

なんとか廃棄を回避できそうだ

という見通しが出て

騒動は収まりつつあるようで

そうなった一番の功績は

多くの消費者がその危機感を真摯に受け止めて

IMG_3157様々な消費活動を

すばやく実践したからだろう。

消費者の心を動かしたのは

「もったいない」

という心理ではなかったか

IMG_3158と前回の記事で書いたが

もう一つ

消費者の心をすばやく動かしたのは

「酪農家は皆たいへんだ」

という思いではないかと

私は想像している。

今回貼り付けたテレビニュースのテロップには

IMG_3159取材された人達の

「酪農家はこんなに頑張っているのに」

という

酪農家を思いやる言葉が

随所に見られて

心を打たれるものがある。

消費者の多くは

実際に乳牛を飼養して

生乳を搾っている酪農家に対しては

素直に感謝と労わりの気持ちを

感じているのであろう。

だからこそ

今回の生乳廃棄騒動が

短時間で解決しそうな状況になったのだと思われる。

酪農業界全体としては

まことに有難く

消費者の行動に感謝しなければならないだろう。

だが

しかし

結論をそれだけで

終わらせてはならない

と私は思っている。

世間一般の消費者は

酪農業界の中での

現場の酪農家の苦悩を

十分に理解しているわけだが

この生乳廃棄騒動をきっかけとして

消費者には

もうひとつ突っ込んで

酪農業界全体の

おかしな所を

問題点を

知って欲しい

という気持を

私は持っている・・・


(この記事続く)

 
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生乳廃棄5000トン(2)

昨年の暮れに、

生乳が前代未聞の5000トン廃棄!、

IMG_3116という予測が出て、

それは大変だ、

という事で、

新聞・テレビ・などのマスコミが、

こぞってこの話題を取り上げて、

生乳廃棄回避のための、

大キャンペーンが続いている。

IMG_3117特に

生乳の生産地である

酪農王国北海道では

その報道は凄まじかった。

北海道新聞や十勝毎日新聞の紙上には

IMG_3129連日多くの紙面を割いて

読者への訴えと

生乳廃棄回避のための

様々な取り組みが

これでもかというくらい報じられた。

IMG_3130「生乳廃棄5000トン」

というものが

それだけ一大事であり

北海道の基幹産業における

大きな汚点になりそうな出来事

IMG_3148であることを

酪農関係者をはじめ

マスコミ各社が

強く感じているからであろう。

IMG_3149さらに

それを消費者が

その情報を素直に受け止めて

各々ができる方法で

廃棄回避のための行動を

IMG_3150素早く実行に移しはじめた

という事である。

私は

酪農業界で働かせてもらっている

関係者の一人として

この年末からの

生乳消費拡大キャンペーンには

IMG_3151感謝ばかりではなく

驚きを感じている。

驚きばかりではなく

感動のようなものも感じている。

IMG_3153その理由を考えてみると

消費者としての我々の

心の中に

「もったいない」

という心理が働いているのではないか

という気がしてくる。

「もったいない」

という考え方が

マスコミや消費者に根付いていて

それがこのような事態を受けて

一気に多くの人の心を動かしたのではないか

それが大きなうねりとなっているのではないか

と思う。

「もったいない」

という言葉は

英語にはうまく訳せないので

「MOTTAINAI」

というアルアァベット表記で

そのまま英語になっていることは

多くの方がご存知だろう。

さて

どうも前置き?!

が長くなってしまっているが

じつは

ここから先が

私の言いたいこと

なのである・・・

(この記事続く)

 
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生乳廃棄5000トン(1)

昨年の暮れ、

IMG_3056業界団体Jミルクから出された、

「過去最大規模の生乳廃棄の恐れ、約5000トン」

という情報が、

各マスコミによって

大々的に報道され始めた。

各新聞社はもちろんのこと

各テレビ局なども

IMG_3060こぞってこのニュースを取り上げて

生乳大量廃棄の恐れという

危機感を煽った。

年の暮れの各報道には

IMG_3062連日この話題が取り上げられ

年が明けても

なおそれは繰り返され

1月の半ばになって

IMG_3063ようやく

その危機感は

薄れてきたようである。

もっとも

IMG_3105生乳廃棄の危機感よりも

オミクロン株感染拡大の危機感が

それに取って代わってしまったので

表面的に落ち着いただけで

IMG_3109相変わらず

生乳の消費の落ち込みは

依然としてあるのだろう。

ここはひとつ

どこかの学者先生が

牛乳の免疫効果をいち早く取り上げて

「牛乳を飲めば、オミクロン株の感染の予防になる!」

とか

「オミクロン予防に、牛乳が有効!」

などと言っていただいて

生乳大量廃棄問題を

一発で解決

して欲しいものである・・・!?

・・・そんな

冗談はさておき

「生乳が余る!」

IMG_3114という連日の報道と

それに応える消費者の善意によって

今回の生乳の大量の廃棄は

実行されずに済みそうな気配になってきたようである。

IMG_3115心ある消費者の皆さんのおかげであり

酪農業界の端くれで

生計を立てている

私としても

IMG_3113まことに有難く

感謝をしなければならない。

ただ

その感謝の気持ちの一方で

酪農業界の端くれで

働かせてもらっている

私として

ちょっと

腑に落ちないことも

感じている・・・

(この記事つづく)

 
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「畜大牛乳」復活はいつ?

「畜大牛乳」製造中止のお知らせ

                                        令和3年9月22日 
「畜大牛乳」ご利用の皆様
畜大牛乳製造中止のお知らせ       
畜産フィールド科学センター                                                                   センター長  小池 正徳

いつも「畜大牛乳」をご利用いただき誠にありがとうございます。
令和3年9月17日の牛乳製造中に、製造ラインの充填機基盤に不具合が発生したため、製造の中止を決定しました「畜大牛乳」を愛飲いただいている皆様には、ご不便をお掛けし誠に申し訳ございません。
なお、現在製造ラインの復旧に向けて調整しておりますが、新型コロナウイルスの影響により、世界的な電子部品の供給不足となっていることから、製造再開の目途が立っておりません。新しい製造再開に関する情報が得られ次第、随時ホームページ上でご連絡させていただきます。 引き続き、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。


               *                 *               *                  


そんなインフォメーションが

帯広畜大のHPに掲載され

帯広市内をはじめ

十勝管内のスーパーマーケットの

乳製品コーナーの棚から

IMG_3085 「畜大牛乳」

の姿が消えたのは
 
今からちょうど3ヶ月前だった。 

店頭から消えた時は

また直ぐにでも復活するんだろう・・・

と、たいして気にも留めていなかったのだが

IMG_3084さすがに3ヶ月以上も姿を見ないと

ちょっと心配になってくる。

詳しい事情はわからないが

「充填機基盤の不具合」という

テクニカルな問題で

コロナ禍によって

IMG_3077その機械の修理?交換?ができず?

普及の目処が立っていないのだそうだ。

上記のインフォメーションに書いてあるように

私は「畜大牛乳」を愛飲している

「畜大牛乳」ファンである。

世の中の市販の牛乳の中で

IMG_1063「畜大牛乳」がNo1にうまい

と思っている。

その牛乳を飲めない状況が

3ヶ月以上続くのは

ファンとしては非常に残念でならない。

この場を借りて

IMG_3075畜大のフィールド科学センターさんに

是非とも、1日でも早く

「畜大牛乳」を復活させて

わが町のスーパーマーケットの店頭で

買えるようにして頂きたい

と、お願いしておきたいと思う。

あれほどうまい牛乳を出す

畜大農場の牛たちのから搾られた生乳が

他の生乳の生産ラインに乗せられて

他の酪農場の生乳と混ざって売られている

という状況を想像すると

非常に「もったいない」

と思うのは

私だけではないだろう。



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使い心地抜群の「アンダーラップテープ」!

人のテーピングの前の下地に、

皮膚を粘着剤や摩擦から保護する目的で巻く、

0470FFCA-0561-49E1-80A1-CBDB28383AA0「アンダーラップテープ」

というものがあり、

ドラッグストアーなどで手軽に購入できる。

そのアンダーラップテープを

仔牛の骨折の治療の時に

ストッキネットの上に巻き

その上からキャストで固定すると

キャストを外す時に

とてもスムーズに

脱がせることができる

ということを

同僚のT獣医師が教わってきた。

同期の獣医師の間ではかなり広まっていて

その元は

北海道NOSAI研修所の先生のオススメだという。

そんな信頼筋からの情報であれば

すぐにでも使ってみたい

ということで

0470FFCA-0561-49E1-80A1-CBDB28383AA0T獣医師が用意をしておいた

市販の「アンダーラップテープ」。

先日

仔牛の中手骨骨折を治療する機会があったので

早速使ってみることにした。

24D03C76-80A8-4165-AD0B-303423F2669Aまずは

鎮静剤を打って寝かせた仔牛の

患肢を牽引して

ストッキネットを二重に

蹄先から腕節を超えて橈骨まで巻く。

4265E731-9E64-4639-B5F6-76F33184DC1Fそして

その上に

今回初挑戦の

アンダーラップテープを

幅の半分くらい重ねるように

4EDB22D8-A39B-4AA5-B971-676D92ABAEE5ゆっくりと巻いてゆく。

巻き終わったら

骨折面のズレをできるだけ矯正しながら

キャストを巻いてゆく。

簡単な操作で

C84B2356-33E2-40CE-9E20-B4E197546F86普通に終了。

エックス線写真を見ると

この右中手骨骨折は

何かに踏みつぶされたように

何か所も粉砕している骨折だった。

D3C482E3-9AB3-4B4B-95BD-5CEA95B2C589外見から骨折部位の特定はできず

ボーっと腫れている感じだったが

この写真を見てその理由がよく分かった。

それから2週間後の

エックス線写真によって

骨造成が確認されたので

74CABD03-3AFD-45D9-922B-F1691A3C9446その翌日に

いよいよ

キャストを外すことになった。

キャストを巻いた日から3週間後だった。

鎮静した仔牛を寝かせて

ギブスカッターで

縦に真っ二つの切れ溝を入れてゆく。

溝を入れ終わったら

ここで今までならば

専用に開くペンチを用いて

患肢に付着しているキャストを

メリメリと力を入れて剥がしてゆくのだが

3824C60F-47CA-4063-AA89-7DC197B21B91今回は

専用ペンチを使わずに

手を使って

いとも簡単に

パカッとキャストを外すことができた。

「おー!・・・これはすごい、軽ーく剥がれたよ。」

CBA167EB-AE71-4FEE-A3C6-BF6A51193D8B私は思わず声を上げた。

そして

ストッキネットを脱がしてゆくと

ストッキネットは

もう一度使えそうな状態で

いとも簡単に

A7198EF9-7CCD-4C7B-8079-4551D2805A39普通に脱がせることができた。

「おー!・・・これは、きれいだね。」

アンダーラップテープを

ストッキネットの上に巻いたことによって

キャストの粘着剤から

708A2ED3-3973-4DCC-A0E5-0ECBAFA87610ストッキネットと

その下の患肢が

みごとに

保護されていたのだった。

E810A82B-5BDB-4AE7-A92E-6E1D56FA372Cこれは全く

使い心地の良い骨折治療用の道具として

アンダーラップテープは

オススメのアイテムである。


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「満月」のち「難産」のち「大雨」(4)

▽農場の難産介助で、

分娩をさせたあと、

双児の確認を省略して帰ってきて、

その後▽さんから2仔目がいたという電話を受け、

恥ずかしい思いをした。

1仔目が大きかったことや

忙しかったことや

空腹だったことや

確認を怠った言い訳は色々挙げられる。

しかし

そういう時にこそ

しっかりと確認をしなければならないことを

今回の件は物語っていた。

さて

その後

私は事務所で仮眠を20分ほど取って

再び自分の机に戻ると

同僚のT獣医師の書き置きが置いてあった。

「『▲畜産の難産に行ってきます』」

昨日から続いている

難産の往診の波は

まだ収まっていないようだった。

私は事務所で1人

カルテを書いて

1時間ほど経った頃

T獣医師から電話がかかってきた。

「▲畜産のお産、出したんですけど・・・」

「・・・うん、それで?」

「さっきの▽さんの件もありますし、もう1頭いるかと思って確認してみたんです・・・」

「・・・うん、うん。」

(先ほどの私のミスが、さっそく教訓として生かされていた)

「そうしたら、2頭目がいて、それが・・・頭だけ来ていて・・・」

「・・・出ないの?」

「はい、頭部以外に手がかりがなくて、さっきプラニパート(子宮弛緩剤)も打ったんですけど・・・」

「・・・了解、行きます。」

▲畜産に到着して

牛の産道に手を入れてみると

確かに頭部に触れるのみだった。

「前肢の肘の先端にはやっと触れるんですけど・・・」

確かに前肢の一部には触れることができた。

私はその肘の部分を指で前後に揺すってみた。

すると辛うじて腋下に指を滑らせることができた。

「・・・産科チェーンあるかい?」

「チェーンは持ってないです、産科用ロープならありますけど・・・」

「・・・こういう時は、重みのあるチェーンの方が使いやすいから、俺のチェーン持ってくるね。」

私は診療車から産科チェーンを持って来て

再び手を入れて

チェーンの先端を丸めて

胎児の前肢の腋下の上に置き

次いで腋下の下から指を入れて

上に置いたチェーンの先端を探った。

腋下の上に置いたチェーンの先端が

重みで腋下に落ちて

腋下の下から探る指先に触れた。

チェーンの先端の輪の部分に指を入れて引っ張ると

産科チェーンを橈骨に巻きつけることができた。

橈骨に巻きついたチエーンを

▲畜産の従業員君に強く引いてもらうと

胎児が少し産道へ侵入して来た。

チェーンを緩めてもらい

チェーンがかかっている場所を橈骨の遠位の腕節近くへと移動させ

再びチェーンを軽く引いてもらいながら

頭部を強く押し込む。

すると腕節の先の中手骨を手で掴むことができた。

橈骨にかかっているチェーンの輪の部分を

腕節を超えて中手骨へ移動させて

再びチェーンを軽く引いてもらいながら

頭部を強く押し込む。

と腕節が手前に移動して球節に触れるようになった。

球節に手をかけてチェーンをさらに引っ張ってもらうと

胎児の右の前肢が整復されて外陰部に姿を現した。

手を入れると左前肢の橈骨に触れたので

左の前肢も右前肢と同様に

チェーンをかけて

頭部を押し込みながら

整復を終え

胎児はようやく正常位となった。

IMG_6402「よし。あとは普通に引っ張るだけだ。」

(左の写真は別の症例)

従業員くんとT獣医師と私の三人で

胎児の前肢を強く引くと

死亡した2仔目の胎児が娩出された。

大きめのF1の双子の難産介助だった。

IMG_6667「ちゃんと双子の確認して、よかったです・・・」

「・・・そうだね、しなきゃいけないんだよ(笑)」

「道具も、産科ロープだけじゃなくて、チェーンも持ち歩くようにします・・・」

「・・・うん、チェーンも持っていた方がいいよ。」

同僚の若いT獣医師にとって

この日の難産介助は

有意義だったと思われた。

平穏無事な日曜日ではなく

お産ばかりの続く

多忙な土日の休日出勤だったが

そういう時の経験こそ

臨床獣医師にとっては

貴重な糧になってゆくのだろう

と思った。

その晩

十勝地方は

大雨になった。


(この記事終わり)


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「満月」のち「難産」のち「大雨」(3)

宵のうちの初産の乳牛の子宮捻転の診療を、

帝王切開によって終わらせて、

その夜遅く、

別の初産の乳牛の過大児の難産を、

経膣の陰部切開によって終わらせて、

寝床に着いたのが午前3時。

翌朝の6時に

親牛の乳房炎と

仔牛の腸炎の緊急診療が入り

それを終えたら

通常の診療受付時間になっていた。

この日は日曜日だったので

出勤しているのは私とT獣医師の2名だけで

日中の仕事を分担してこなさなければならなかった。

その日のやや多めの通常往診の6件を

済ませたところで

追加の往診が入った。

和牛繁殖農家の▽さんの難産だった。

(昨日から今日にかけて、お産の仕事が多い・・・)

そう感じる時は

だいたい

天気が下り坂になる時である。

(天気予報はどうなっているんだろう・・・)

そんなことを考えながら

▽農場へ向かい

難産介助をした。

大きな♀の胎児が

産道で前肢と頭部を少し横向きにしていたが

ワイヤーとロープで難なく整復し

普通に分娩させることができた。

時計は午後1時を回っていた。

腹も空いてきていたので

私は道具を片付けて

そそくさと▽農場を後にした。

この時

私は

一つのミスを犯していた。

それに気づかずに

診療所へ戻り

弁当を食べて

カルテを書きながら

襲ってくる眠気と

戦い始めていたその時

診療所の電話が鳴った。

応対した同僚のT獣医師によると

先ほどの▽農場からで

胎児がもう1頭腹の中にいるらしいという。

▽さんに詳しく状況を聞いたら

その胎児の足は飛節が触れる後肢2本だという。

そこでT獣医師は▽さんに

そのまま引っ張れば大丈夫と言って応対を終えた。

その後

何の連絡もなかったので

▽さんの2頭目の胎児は

逆子で無事に娩出されたようだった。

「いやー、申し訳ない・・・」

私は

T獣医師に謝った。

お産の時にいつも必ずやっているはずの

2頭目の胎児の確認

すなわち双子かどうかの確認を

忙しさと空腹にかまけて

省略して帰ってきてしまったのだった。

忙しい時にこそ

こういう確認作業が大切だということを

わかっていながら

確認してこなかった自分が

恥ずかしく情けなかった。

2頭目の仔牛は無事に生まれたようだったので

結果はオーライだったのだが

IMG_6665若いT獣医師の前で

いつも色々と

難産介助のことを

教えている私が

ミスをしたことは

やはり恥ずかしかった。


(この記事続く)


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「満月」のち「難産」のち「大雨」(2)

夜間待機時間への突入寸前に入った往診が、

初産のホルスタインの帝王切開で、

約3時間かかり、

その夜帰宅して就寝し、

深夜1時に枕元の電話が鳴って、

また初産のホルスタインの難産。

飼主の◯さんの稟告では

産道が狭く胎児がなかなか来ないという。

(・・・今夜2頭目の帝王切開になるのか・・・)

と半ば覚悟を決めて

産道に手を入れると

「・・・うーん・・・」

胎児の頭は

かろうじて産道に乗っていた。

◯さんに胎児の前肢を軽く引いてもらい

産道の胎児の頭部を探ってみる。

ここで

胎児の後頭部まで手が回り

後頭部にワイヤをかけられるほどの隙間があれば

帝王切開はせずに経膣分娩を選択し

胎児の後頭部まで手が回らず

後頭部にワイヤをかけられるほどの隙間がなければ

経膣分娩はせずに帝王切開を選択する


というのが

私の30年以上の経験から

会得してきた判断基準である。

で、今回は

非常に微妙ではあるが

そのギリギリのところで

経膣分娩を選択しても良さそうな所見だった。

胎児の後頭部まで手が回ったこと

がその大きな理由である。

「・・・うーん・・・、なんとか腹を切らずに出せるんじゃないかな・・・」

「出せますか・・・」

「・・・うん、後頭部をここまで触れれば、何とかね・・・」

私はループワイヤーを手に持って

胎児の後頭部を手で探り

胎児の頭の耳の奥へワイヤーをかけようとした。

ところがこれがなかなか

ワイヤーをかけ辛いほどの隙間で

手が圧迫されて痛みが走った。

ようやく何とかワイヤーを

耳の後ろにかけることができ

胎児を滑車で牽引することにした。

「・・・まずは頭にかけたワイヤーだけをゆっくり引いて・・・」

私はき◯さん夫婦に指示しながら

外陰部を手で広げていた。

ところが

外陰部は胎児の頭部を通過させるほどの開きがない。

「・・・ちょっと待って、陰部を切開するから・・・」

私は安全カミソリで

9時の方向へ外陰部を約15センチほど切開した。

外陰部の肉が開き

胎児の頭部がゆっくりとそこを通過し

胎児の頭部が完全に露出した。

「・・・よし、あとは足を滑車で引っ張って・・・」

IMG_2931◯さん夫婦が

滑車で足を牽引し

胎児はそのまま

途中ヒップロックもほとんどなく

一気に引き出すことができた。

IMG_2933胎児は最初呼吸をしていなかったが

心臓はしっかりと拍動していたので

刺激を与えて呼吸を促し

しばらくすると

仔牛は自発呼吸を始めてくれた。

IMG_2935「・・・何とか助かったね・・・」

私はひと安心してから

親牛の陰部の縫合に取り掛かった。

切開した部分からの出血は多くなかったが

傍らで頭を上げた胎児の頭部は

血まみれで赤くなっていた。

IMG_2930今夜2頭目の初産の難産は

帝王切開をせずに

経膣分娩で

終わらせることができた。

久々に

ギリギリの判断を迫られた

経膣分娩だった。


(この記事続く)


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「満月」のち「難産」のち「大雨」(1)

一昨日の夜間当番は、

久しぶりに大忙しだった。

折しも月蝕が観測される満月の翌日。

十六夜の月の不思議なパワーは

その日の午後にもまだ残っていた。

夜当番の時間が始まる17時前に

「初産牛のお産なんですけど、朝からずっとふんばっていて、出ないんです・・・」

◎牧場の場長からの電話だった。

着いて、産道へ手を入れてみると

見事な子宮捻転だった。

寝ている牛を起こさずに

そのままロープとパイプを使って牛を縛り

慣性ローリング法を試みたが

捻転は全く整復できなかった。

「・・・帝王切開しかないね・・・道具は積んでるんで、このまま直ぐ切りましょう。」

最近私は

同僚のT獣医師に教わって

獣医師ひとりで現地で帝王切開をするための道具を

持ち歩くようになった。

そうするようになってひと月も経たないうちに

現地での帝王切開をする場面に遭遇してしまった。

特別な道具があるわけでもなく

1人で帝王切開をするためのコンパクトな道具と

助手になってくれる現地の人用の手袋などを診療車に積んでおけば良い。

ローリング法のために縛り上げた牛の四肢をそのまま寝かせて

左のけん部の毛狩りをして

直ちに帝王切開を始めた。

スタッフの手際よい協力もあって

大きなF1の♂仔牛を無事に摘出することができた。

牛は終始おとなしく

子宮をはじめ腹壁の縫い上げもスムーズに終えることができた。

IMG_1255帰りの車内の時計を見ると

20時を回っていた。

事務所へ帰り

帝王切開の道具を更新してスタンバイし直し

日中のカルテを書いて

弁当を食べて

自宅に戻った。

22時半就寝。

日付の変わった深夜1時に枕元の携帯が鳴った。

「初産のお産なんですけど、胎児が大きくて、産道が狭いんです・・・」

酪農家の◯さんからの電話だった。

満月ののちの十六夜・・・

明日の天気は下り坂・・・

初産の難産・・・

夕方からの帝王切開・・・

途切れない往診の依頼・・・

私は嫌な予感がした。

今夜は2頭目の帝王切開になるのか・・・

と、思いながら◯さん宅へ向かった。


(この記事続く)


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肛門形成術を施した和牛の一例

2020年7月8日生まれの和牛、

生まれた時に、

肛門に形成不全が認められ、

その数日後に、

帯広畜産大学の先生に相談して、

当時の我が診療所のスタッフだったH獣医師と

当時畜産大学の教員だった先生(お名前失念)とで

肛門形成術を施した

という和牛の♀仔牛。

施術はみごとに成功し

仔牛は全く普通に排便するようになり

全く普通に哺乳しながら

その後も普通に採食しながら

すくすくと育っていた。

と、いう話を聞いていた。

それから

約1年3ヶ月後の

今年の10月末に

飼い主の〓さんから

その牛の調子が悪くなった

という稟告を受けた。

〓さんの家に着いて診ると

体の大きさや骨格は

普通に成長しており

IMG_2771排便も普通だったが

かなりの削痩がみられ

熱発し(39.8℃)

肺胞音の粗励

そして

IMG_2770胸垂に著しい浮腫が見られた。

強い循環障害が疑われる臨床所見だった。

血液検査では

ガンマグロブリンの増加が見られたが

EA7794D3-0F0E-4D04-8DC0-9E21347952A5それ以外の値は概ね正常だった。

数日間抗生物質と消炎剤による治療が施されたが

症状は解熱したこと以外は改善せず

飼主の〓さんの意向も受けて

廃用・殺処分することになった。

病畜処理場での剖検結果によれば

IMG_2897肺に著変無し

心臓に著変無し

肝臓の充血・うっ血

腎臓に著変無し

胃に著変無し

腸管全体にわたり変色・充血・出血の腸炎像

腹膜の変色・充血・腹水の増加

という所見だった。

私がこの牛に関わったのは

一度だけだったので

それ以上の詳しいことはよくわからない。

ただ

生後の肛門の形成不全を

形成術によって直し

生後15ヶ月まで成長させた

という事実は

記録として残しておく価値がある

と判断して

拙い記憶ながら

わかる範囲で

記事にしておくことにした。



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近ごろ流行りの?産前起立不能(2)

「乾乳牛が立てなくなった・・・」

という稟告は、

私の若い頃からよくあったのだが、

昔は乾乳牛を太らせてはいけないという、

やや乱暴な飼養管理方法の俗説があったので、

それを真に受けて

極端な給与制限をした結果

乾乳牛が急激な栄養不足に陥り

栄養失調や低カルシウム血症を起こして

立てなくなることが多かった。

そういう場合には

栄養剤+カルシウム剤の投与で

牛はあっというまに回復して

立つことができるようになったものである。

ところが

近頃の乾乳牛は

立てなくなる原因が栄養不良ではなく

四肢の疾患が多い。

牛舎の床が固く滑りやすいことに加え

不衛生で細菌感染が起こりやすいことに加え

密飼いによって同居牛の争いや外傷が頻発し

立場の弱い牛たちの足腰はますます弱くなり

お産を前にして

胎児の大きな体を支えることができず

お産の予定日より前に立てなくなってしまうのである。

先日の〓牧場の牛もそうだった。

予定日の約1カ月前に立てなくなってしまった。

食欲はそこそこあったので

ホスピタル(病畜牛舎)に移動して

水と餌を目の前に運んで飼い続けた。

痩せて来るのは仕方がなかった。

また四肢も麻痺して弱ってゆくのも仕方がなかった。

そのまま鎮痛剤(スルピリン)と抗生物質を続け

分娩予定日を2週間後に控えた日に

分娩誘発を試みた。

PG+デキサが投与され

その約36時間後に分娩兆候が始まった。

IMG_2659〓牧場のスタッフが

助産を試みたが

産道が狭く陣痛も弱く

お産が長引いて

結局獣医師を呼ぶことになった。

この時は

私が呼ばれて助産をした。

胎児の足と頭が産道に来ていたので

滑車で半ば強引に介助した。

IMG_2660結果は

胎児は死亡してしまった。

ホルスタインの♀の胎児だった。

親は痩せた体でお産に耐えたが

衰弱して頭をあげることもできなかった。

廃用の認定をして

安楽殺処分となり

死亡した親子の牛は

その日の昼に

揃って病畜処理場(レンダリング)に運ばれて行った。

私はその手続きをしながら

「帝王切開をすれば、せめて仔牛の命は助けられたのではないか。」

という後悔の気持ちを

ずっと引きずっていた。

近ごろ流行の

産前起立不能の

結果が最悪なパターン

と、なってしまった。


(この記事終わり)


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近ごろ流行りの?産前起立不能(1)

最近多いと感じている症例のひとつに、

乳牛の産前の起立不能がある。

昔からある症例で、

原因も様々なのだが、

産前に立てなくなる原因の中で

最近特に多くて気になるのが

四肢の疾患である。

股関節脱臼や関節炎や脊椎損傷などによって

四肢がダメージを受けて

お産を前にした乳牛が立てなくなる

という症例が多くて気になるのだ。

飼主さんの稟告は

「乾乳の牛が立てなくなった・・・」

である。

昔はその原因が

栄養不足の低カルシウム血症が多く

カルシウム剤で治療すると多くが治癒した。

ところが今の牛は

原因が栄養不足ではなく

四肢の疾患で立てないので

治癒させるのが難しく

ほとんどの場合

寝たきりになってしまう。

乾乳牛が寝たきりになってしまったら

どうするかといえば

分娩予定日近くなるまで

足場の良いところに寝かせておくしかない。

その間は消炎鎮痛剤などを投与するくらいしか

IMG_4353治療方法がないのである。

お産を前にした乾乳牛が

お産の予定日近くなるまで

寝たきりで飼われている

IMG_0940という牛のいる酪農家は

今や珍しくはない。

当たり前のように

どこの町村の酪農家にも

そのような

IMG_0358産前起立不能牛症

に陥った牛が

寝たきりで飼われている。

足腰の弱った乳牛が

寝たきりで

お産の予定日まで飼われている

という光景が

当たり前のように

見られるように

なってしまったのである。

(この記事続く)

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和牛仔牛の直腸脱(3)

強い怒責が、

何度も繰り返されることによって、

一度出てしまった直腸脱が、

なかなか収まらず、

これといった方法も思い浮かばず、

治療が行き詰まってしまった。

結局

砂糖をまぶして

抗生物質を投与する以外は

何もせずに

放って置くことになってしまった

〓牧場の生後約2ヶ月の和牛の♂。

それから約1ヶ月ほど経った頃

別の用事で〓牧場に行った時

この仔牛のことを記号さんに聞いてみた。

「・・・ところで、あの直腸脱の仔牛、どう?」

「あー、あの仔牛ですか、治りましたよ・・・」

「・・・え、ほんとに?」

「はい、あの後何日か抗生物質も打ったんですげと、元気良くて捕まえるのも大変なんで、もうしょうがないから、注射もやめて放ったらかしにしておいたんです・・・」

「・・・何もしなかったんだ。」

「はい、3週間くらい何もしないで、直腸も出っ放しでした・・・」

「・・・3週間!?」

「はい、で、その後何日間か、直腸が見えなくなったり、出たり入ったりするようになってきて・・・」

「・・・出たり入ったり!?」

「はい、そんな状態が4、5日続いていたんですけど・・・」

「・・・だんだん出なくなってきたんだ。」

「はい、そのあとはもう出なくなって治っちゃいました・・・」

「・・・怒責は消えたの!?」

「そうですね、ふんばらなくなりました・・・」

「・・・便はどう?」

「便はまだ他の牛より柔らかいですけど・・・」

IMG_2667〓さんに見せてもらった

例の仔牛は

他の牛達に混じって

普通に元気だった。

ただ

お尻をよく見ると

他の牛よりも

乾燥した便が多くこびりついて

やや広範囲に汚れていた。

しかし

直腸脱がひどかった頃に比べて

肉付きも骨格もしっかりしてきて

仔牛は普通に成長していた。

  *  *  *

この牛が直腸脱になった原因として

コクシジウム症による下痢が続いたことによる

長期間の強い怒責が考えられる。

だが、普通の仔牛はそれのみで直腸脱にはならない。

〓さんから後で聞いた話だが

この仔牛の母親も

お産が間近になると

直腸脱を起こしていたのだという。

したがって

コクシジウムの怒責に加えて

この仔牛の遺伝的な素因が加わって

結果的に直腸脱になったと考えられる。

そして

その治療の決め手は

抗生物質の注射でもなく

砂糖の直接塗布でもなく

時間の経過であった。

この仔牛の直腸脱を治した決め手は

仔牛が成長するという

「時間の経過」

であった。


(この記事終わり)


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