北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

馬の診療

おめでとう!アシュラダイマオー3歳頂点!

ばんえい競馬の今年の3歳馬のG1レース。

初年度の明け3歳の最強馬を決める、

IMG_5274「第54回イレネー記念」、

が3月19日に行われた。

我が町幕別町の

浅井嘉市さんの生産馬

IMG_5277アシュラダイマオーが優勝し

3歳馬の頂点に立った。

5番人気で

評価はそれほど高くなかったが

ゴール前の大混戦を制したのは

実力はもちろんのこと

目に見えない色々な力が

この馬の力となったのではないか

と思わせる勝ちっぷりだった。

それは

手綱を握った西騎手の

「まさか勝つとは思っていなかった」

というコメントや

松井調教師の

「強い馬だがびっくりした」

というコメントにも表れている。

生産者の浅井さんは

私が若い頃からずっと診療に通っている

十勝管内で最高齢の馬産農家さんで

馬の診療を一から勉強させていただいて来た

超ベテランの飼主さんである。

IMG_1931決して派手なことをせず

無理な投資をせず

75年以上

ひたすらに

馬を生産し続けて来た

十勝馬産のまさに

レジェンド

と言って良い人である。

アシュラダイマオーの父は

同じく幕別町で飼養されていた

IMG_5214インフィニティーで

残念ながら2年前に他界し

その後産駒の成績も

目立ったものはなかったが

この1勝で

インフィニティーの株は上がり

アシュラダイマオーが

インフィニティーの後継馬として

活躍してくれるのが楽しみである。

母親は天空という繁殖牝馬で

浅井牧場の中では成績の良い系統だが

競馬場でのレース経験はなく

IMG_5273オーゴンキングという

タカラコマの血統を引く馬である。

天空は

先日仔馬を無事に出産したばかりで

その仔馬も今後

注目を集めるに違いない。

競馬という勝負の世界では

紙一重の差で

評価が大きく変わる。

競馬の名予想で知られた佐藤洋一郎氏は

「強い馬が勝つのではなく、勝った馬が強いのだ」

と言ったが

アシュラダイマオーは

イレネー記念の優勝で

間違いなく

本物の

「強い馬」

になった

と言えるだろう。

関係者の皆さん

そして浅井さん

おめでとうございます!


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ミニチュアホースのニコイチ捻転・去勢(4)

数日前に同じ飼主さんから、

再びミニチュアホースの去勢の依頼があったので、

その症例もついでに報告しておこうと思う。

年は同じくらいの成馬である。

IMG_5244体重は80kg程度

専用の小さな枠馬に入れる。

ロープで保定する。

後肢2本は柱に縛る(蹴りの予防)。

鎮静剤(ドミトール)を0.5ml静注。

IMG_5246術野をヨーチンで消毒。

局所麻酔剤(キシロカイン)を注射する。

陰嚢ごと2つの精巣を同時に掴む。

陰嚢の正中を約5僂曚廟敞蕕垢襦

結合組織を鈍に剥がしながら

IMG_5248またはカミソリで剥がしながら

2つの精巣を同時に創口から露出させる。

2本の精索を同時に捻転棒のフックに掛ける。

棒を回転させて捻る。

捻り切れるまでひたすら回転させる。

IMG_5251捻り切れたら出血の程度を確認する。

抗鎮静剤(アンチセダン)を0.5ml静注する。

保定を解く。

簡単に書けば

以上のような手技となる。

IMG_5253今回は

同僚のC獣医師に施術してもらい

私がカメラマンになった。

牛の診療所の獣医師は

全員が牛の去勢には熟達している。

IMG_5256子牛とサイズの同じな

小型馬の去勢は

保定と切皮が若干違うだけで

ほぼ同様の手技で行うことが出来る。

馬の無医村の

IMG_5257牛の獣医師でも

こうして馬の去勢を

簡単に行うことが出来ると思う。

手技は簡単なのだが

それをする機会が少ない

というのが

IMG_5259馬の無医村で働く

我々の悩み事であるので

次回はいつになるのかわからないが

こうして

ブログに症例報告を書いておけば

それを見ながら

どこかの馬の無医村地域で

誰かが初めて試みようとする時の

参考になるのではないか

と思っている。

ちなみに

このニコイチ捻転用の去勢棒は

サイズを大きくしたものがあれば

例えば

サラブレッド用のサイズや

重種馬用のサイズの

太くて大きな捻転棒を作成すれば

どのような大きさの

どのような種類の馬でも

ニコイチ捻転は

可能であろうと

考えられる。


(この記事終わり)



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ミニチュアホースのニコイチ捻転・去勢(3)

ミニチュアホースの小さい体格に合わせた、

専用の小さい枠馬は、

この馬たちを飼うためには、

必須の施設である。

今回は

その枠馬に

ミニチュアホースを入れて

ロープで普通に保定し

IMG_4973さらに

左右の後肢を

左右の後柱に縛り

股間を操作しやすいように保定した。

鎮静剤(ドミトール)を投与し

IMG_4975陰嚢を消毒し

局所麻酔(キシロカイン)を注射。

片手で

精巣が2つ手の中に収まるように握り

もう片方の手に持った安全カミソリで

IMG_4979正中を縦に約5僂曚

切皮する。

結合組織をできるだけ

鈍で剥がしながら

補助的にカミソリで剥がしながら

IMG_49832つの精巣を

創口から露出させる。

露出させた2つの精巣を

同時に引いて

2本の精索を確認し

IMG_4985そこに

ニコイチ捻転棒のフックをかける。

2本いっぺんに

フックにかけるのが

ニコイチ捻転法のミソである。

ミニチュアホースの精巣は

IMG_4987約5ヶ月の子牛の精巣と

ほぼ同じ大きさなので

子牛に使っているニコイチ捻転棒は

サイズがぴったりで

とても使いやすい。

ここまで来れば

あとは

子牛の去勢と全く同様に

捻転棒を回すだけである

精索に引っ掛けた捻転棒の

フックを回す。

フックを引っ張らずに

ただひたすら

ぐるぐる回すだけである。

IMG_4989約十数回

捻り切れるまで回して

切れたら

創口にヨーチンをスプレーし

抗生物質(マイシリン)を筋注し

IMG_4990抗鎮静剤(アンチセダン)を静注し

保定のロープを外して

終了である。

ミニチュアホースの

ニコイチ捻転去勢法は

IMG_4993以上のように

保定や鎮静や麻酔には

入念な準備が必要だが

いざ

施術を開始したら

子牛の去勢と同様に

数分で終えることができる。

施術中の

子牛と違っているところを

あえて言うならば

陰嚢の正中を縦に切皮することと

皮膚と精巣の被膜の間の結合組織が

子牛よりも固く

剥がすのに時間かかかること

くらいである。

以上が

ミニチュアホースの

ニコイチ捻転法による去勢の

一例報告である。


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ミニチュアホースのニコイチ捻転・去勢(2)

ミニチュアホースは、

成馬でも体重が70〜80kg程度、

数ヶ月齢の子牛よりもさらに小さい。

馬というのは

1000kg(1トン)以上もある重種馬から

100kg にも満たない小型種まで

様々な大きさがある。

これは

牛と大きく違っているところである。

今回は

ミニチュアホースを去勢するにあたって

鎮静剤や麻酔剤を使用するのだが

それぞれに詳細な科学的データーの蓄積があるわけではなく

ほとんどがサラブレットでのデーターであり

サラブレッド以外の馬の診療をする場合の

薬品の使用量は

サラブレッドのデーターを元にして

そこから体重換算をして

例えば

重種馬ならば約2倍量

小型馬なら約5分の1量 

というようにして

投与量を決めている。

我々が使用する多くの薬剤の中で

投与量に最も注意を要するのが

鎮静剤や麻酔剤である。

他の薬剤がいい加減で良いとは言わないが

中枢神経に直接作用する薬剤は

やはり細心の注意が必要である。

人医療ではあえて麻酔専門の医者がいることでも

それは解るだろう。 

獣医療における麻酔専門の獣医師というと

一部の研究者のみか

高度診療施設の特化した技術を持つ獣医師に限られる。

私のようないわゆる

「馬の無医村」

で馬の診療に携わっている獣医師は

馬の鎮静や麻酔をする機会が少ないので

その機会が訪れるたびに

忘れかけていた薬剤の量を

思い出し

さらには

サラブレッドでのデーターを元にして

そこから重種馬や小型馬の

使用量を換算して

確認してから

仕事に当たることになる。 

ここでいつも感じることが一つある。

それは

鎮静剤や麻酔剤の使用量が

「体重に比例していない」

ということである。

例えば

サラブレッドで体重1kgに対して1mlの使用量の鎮静剤を

体重換算で約2倍の体重の重種馬に2倍量を投与すると 

重種馬には効き過ぎてしまう。

また 

サラブレッドで体重1kgに対して1mlの使用量の鎮静剤を

体重換算で約5分の1の体重の仔馬に5分の1量を投与すると 

仔馬には効きが悪い。

といった現象が起こる。 

これはおそらく

サラブレッドが

馬の中でも非常に特化した循環器系

特に体重の割に大きな心臓を持っていることからくる

「誤差」

なのではないかと私は考えている。

IMG_4971今回

体重が100kgにも満たないミニチュアホースに

鎮静剤や麻酔剤を使用するにあたって

一つの悩みどころが

この薬剤使用量である。

とりあえずは

体重換算で使用量を割り出し

「誤差」については

小型の馬への換算なので

おそらく

計算通りには

「効かない方向」

に作用することが予想される。

今回使用した鎮静剤は

イミダゾール系のドミトールだったが

ミニチュアホースでのデーターはもちろん無いので 

体重換算を基本としつつも 

過去の経験を思い出しながら

投与量を決めることになった。

さて

また前置きが長くなってしまった(汗・笑)

この症例の報告は

次回にします(笑)

どうぞお楽しみに。


(この記事続く)



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ミニチュアホースのニコイチ捻転・去勢(1)

ミニチュアホースを、

ニコイチ捻転棒を用いて、

去勢する機会を得たので報告したいと思う。

症例を報告する前に

ひとこと言って置きたいことは

「諸事情」により

IMG_4973馬の保定が枠馬での

立位であること

使用薬品が

局所麻酔剤と鎮静剤と抗生物質

であり

「全身麻酔ではない」

ことである。

「まだそんな保定法でやっているのか」

「まだそんな麻酔法でやっているのか」

そんな声が

動物愛護の観点から

馬医療の先進地域から

聞こえて来そうである。

しかし

施設がない

薬品が揃わない

などの

「諸事情」



理想的な馬医療を

難しくしていることを

ここで申し上げて置きたい。

多くの現場で

多くの獣医師が

「まだそんな方法」

でしか

馬の診療をせざるを得ない

「諸事情」

があるのである。

そのような中で

決して先端技術とは言えない技術を

ネット上にUPして

色々と指摘されることも

意味のあることだと思い

ここにUPしておく次第である。

日本全国で

理想的な馬の診療ができる地域は

限られており

多くの地域が

「馬の無医村」

の状態に陥って

理想的な診療が出来ずにいることを

知ってもらいたい

という意味も

込められている。

前置きが長くなったので

今回は

とりあえず

前置きだけ

にしておこうと思う(汗・笑)

次回の記事を

どうぞお楽しみに。


(この記事続く)


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馬券好調↑・馬産低調↓

新年度の「ばんえい競馬」の、

馬券の売り上げが、

前代未聞の盛況らしい。

北海道の独特の競馬として

岩見沢市、旭川市、北見市、帯広市、の

4地区を巡回しながら行われていた「ばんえい競馬」が

売り上げの不振から3町が撤退し

残った帯広市の開催も

 嵜裕つ稾臓

◆崘箴緝埒供

「後継不足」

が続き

「ばんえい競馬」そのものの

廃止の議論が真剣に行われていたのは

それほど昔のことではない。

そんな「ばんえい競馬」が

ここへ来て

驚異的な回復力を見せているように思える。

インターネットの馬券の購入が8割以上を占め

インターネットでの実況や解説

予想番組などのメディアが充実し

そこへ

コロナウイルス禍による巣篭もり需要が後押しして

IMG_3796 嵜裕げ麌」

◆崘箴綉涸」

という状態になっている。

誠に喜ばしいことである。

ところが

もう一つの

「後継確保」

これが出来ていないのである。

ばんえい競馬用の重種馬の生産現場は

いまだに後継者がなかなか育たず

生産の支援もままならない状態である。

生産現場が弱いままだと

「ばんえい競馬」の足元が覚束ず

足腰の強い産業とは言えず

それに関わる馬文化の発展も覚束ない。

そして我が身を振り返れば

重種馬の生産現場における

IMG_3789「獣医療技術」

もなかなか発展することがなく

低迷したままであり

若い獣医師の後継者が育っているとは

なかなか言えない状態である。

私も就職してから約35年

「ばんえい競馬」の

生産現場に関わって来た獣医師として

このことが

もっとも気にかかる事であり

我が身を振り返って

反省するとともに

私の拙い経験と技術ではあるけれども

少しでも

若い獣医師たちに

それを伝えて行かなければならない

と思っている。


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おめでとう!「メジロゴーリキ・ばんえい記念制覇!」

ばんえい競馬で最高峰のレース、

農林水産大臣賞・第54回ばんえい記念の、

IMG_3499今年度の覇者は、

我が幕別町で生まれた、

メジロゴーリキ(牡8歳)だった!

幕別町で生まれ幕別町で育った馬が

遂にばんえい競馬の頂点に立った。

IMG_3501父・ニシキダイジン

母・メジロルビー

という十勝では珍しい父方の血統に

生産者の佐渡さんが大切に守ってきた「メジロ」の母系が

見事に花開いたことを証明するような勝利でもあった。

IMG_3500そのレースぶりは

まさにパワー全開。

第二障害まではゆっくりと進み

第二障害の下でゴーサインが出ると

太い四肢で第二障害をザクザクと登坂し

障害の山を一度も止まることなく

一気に

一腰で超えて

トップに躍り出ると

そのまま力強い足は止まらず

太い首を真っ直ぐ前に突き出して

自分の体重よりも重い荷物を曳きながら

止まらずにゴールまでその荷物を運び切った。

ばんえい記念のような重量戦では

砂の水分が低下した重い馬場になると

一息二息入れながらの戦いになることが多いが

メジロゴーリキはその名にふさわしく

たとえ馬場の抵抗が大きくて

曳くスピードが遅くなっても

歩き出したら最後までその歩みを止めず

真面目に休まずに荷物を運び切るという

パワーの競馬が本領の馬である。

そのパワータイプの素質が

今回のばんえい競馬の最高峰の舞台で

ついに開花したと言えるだろう。

メジロゴーリキは

生まれた時から

非常に個性的な馬だった。

その様子は

今から8年前の私のブログ記事に書いてあるので

ぜひご覧いただきたいと思う(笑)↓

メジロゴーリキが赤ん坊の時のエピソード
 
とにかく

生まれた時から

ケタ外れに食欲のある馬だったのだ(笑)

その食欲が

大きな身体と

強い牽引力を

作り上げたのかもしれない。

そんな素質のある馬を

生産者の佐渡さんと

松井調教師と西騎手とが

大事に育てつつ

的確に鍛えつつ

成長させてくれた結果

今回の栄冠をつかむことができたのだ。

あらためて

メジロゴーリキと

それに関わるスタッフの皆さんに対して

心からお祝いを申し上げたいと思う。

「おめでとうございます!」

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町内の仔馬(重種馬)の第1号

昨日の夜当番の午後10時前、

仔牛の肺炎を診たN牧場から事務所に戻り、

さてこれからカルテを書こうと思った矢先、

携帯電話が鳴った。

「産みそうだから来てくれ・・・」

Aさんの馬のお産だった。

そのまま再び車に乗って

Aさん宅に着くと

息子さんとOさんが手伝いに来ていて

ちょうど仔馬の足にロープをかけて

助産を始めるところだった。

IMG_3480陣痛は軽く

親馬は汗もほとんどかかず

あっという間に

仔馬が誕生した。

「予定日はいつ?」

「まだ2週間先・・・いつもは1週間早く出るけど・・・今年は早いな。」

「オスメスどっち?」

「わからん・・・雄か。」

IMG_3481「種馬は?」

「・・・Mさんのコウシュハウンカイ。」

「栗毛だね!」

「栗毛と栗毛だからな・・・。」

しばらくすると

親馬が立ち上がり

仔馬を舐め始めた。

IMG_3483仔馬はそれに応えるように

頭を上げては

立ち上がろうとしては

立てずにしゃがみ込む。

しばらくすると

また頭を上げて

同じ動作を繰り返した。

そのうち

親の陰部からぶら下がっていた胎盤が

寝わらの上に落ちた。

その胎盤を

親の邪魔にならぬように取り上げて

全体を広げて

妊角の先端と不妊角の先端が千切れていないかを確かめた。

「全部出てるね、大丈夫。」

そうこうして入るうちに

仔馬は相変わらず

立とうとしては

しゃがみ込んでいたが

Aさんがちょっと仔馬の尻尾を掴んで

手伝ってやると

仔馬は

長くて太い四本の足を踏ん張って

立ち上がった。

Aさんが手を口に当てると

その手を咥えて

乳を飲みたがるように

口と舌を動かした。

「でっかい仔馬だね!」

「足が長いな・・・オープン馬だ(笑)」

毎年同じようなことを言いながら

毎年同じようなことを聞きながら

馬のお産を手伝っているな

と思った。

「さて、そろそろ帰ります。」

夜空から雲が消えて

今日は満月という月が

シバれはじめた地面を

煌々と照らしていた。


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馬の聴診体験会

11月3日は文化の日。

この日は気象学的に「晴れの特異日」として有名で、

過去のデーターによると、

とりわけ晴れの多い日として知られている。

そんな日に、

NPOとかち馬文化を支える会から

「馬の聴診・体験会」

の講師をおおせつかり

帯広競馬場のふれあい動物園へ出向いた。

IMG_2806晴れの特異日なのに

雨降りの寒い日だった(笑)

それでも

講習会に参加してくれた皆さんは

皆若々しく元気な

学生さんや乗馬クラブや厩務員の人たちで

熱心に私の話を聞いてくれた。

「馬の聴診の体験」

と言っても

いきなり馬の体に聴診器をあてて音を聴く

というわけではない。

IMG_2807まずは

初対面の飼い主さんと

初対面の馬と挨拶をしなければならない。

それから飼い主さんとコミュニケーションをとりながら

診る馬の状態や気性などを把握してゆき

診る馬の緊張をほぐし

診る馬をできるだけ興奮させぬように

安全に保定してから

やっとおもむろに

馬の体に聴診器をあてることになる。

IMG_2808聴診する音は

心拍音、心拍数

左右の肺音、気管音

左右の腸管の蠕動音

などであり

それぞれの特徴や

それぞれの解剖学的位置などを説明しながら

IMG_2809参加者一人一人に

聴診を体験してもらった。

当然、初めて聴診する人が多く

皆さん興味津々で

体験してくれたことが

私にとっても新鮮だった。

私が普段いやになる程繰り返して来たことを

こんなに興味を持って追体験してもらえることが

IMG_2810とても新鮮だった。

聴診器で馬の体内の音を聴く

という一つの行為は

音を聴くことばかりではなく

馬の体に触れることであり

体温を肌で感じることでもあり

自分の行為を馬に伝えることでもあり

そこで馬から発せられる情報を感知することであり

それは馬との無言のコミュニケーションである。

さらにその行為をしながら

同時に飼い主さんと

この馬についての情報を交換することでもある。

今回

体験会に協力してくれた馬は

栗毛の乗馬で

名前がタケシ君という

壮年の騸馬だった。

とてもおとなしく協力的で

しかもとても落ち着きがあって健康で

心拍数も肺音も腸の蠕動音も

全くの正常そのものだった。

私はいつも

若い後輩の獣医師たちには

「正常を把握せよ」

と言っている。

正常なものを知っていないと

異常がわからないからである。

至極当たり前のことだけれども

患馬の異常な時ばかりに呼ばれる獣医師は

その患馬の正常な状態がわからなくて苦労をするものである。

今回の受講者の皆さんの中に

畜大の獣医の学生さんが2名ほどいたので

そんなことも付け加えながら

和やかに講習会を終えることができた。

この講習会を企画担当して

お世話をしていただいた

とかち馬文化を支える会の

事務局の旋丸巴さんと

三宅陽一理事長に

感謝を申し上げたい。

さらに参加していただいた講習生の皆さんと

乗馬のタケシ君にも

心から感謝を申し上げたい。


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産後に発症したポニーの高脂血症(3)

この1年と8ヶ月の間に、

ポニーの高脂血症に3頭遭遇した。

症例1

症例2

症例3

そのどれもが、

治療に反応がなく、

発症後1週間以内に死亡した。

共通した初期症状の稟告に、

「口がよく動かない」

「水を飲みたがるがうまく飲めない」

という特徴的な症状の訴えがあった。

この3症例の採血をした時

その肉眼的な所見は

全ての血清で

著しい乳黄色の混濁

が見られた。

3症例の血液検査の値で

特徴的だった所見は


 中性脂肪(TG)

IMG_6903  3104 mg/dl  (症例1) 

  2293 mg/dl  (症例2)
 
  2254 mg/dl  (症例3)



  AST(GOT)

IMG_2383  13711 U/L   (症例1)

  10078 U/L   (症例2)

    8859 U/L   (症例3)



  遊離脂肪酸(FFA)

75004a2b  1.32 mEq/L (症例1) 

  2.37 mEq/L (症例2)

  2.45 mEq/L (症例3)



という

揃いもそろって

脂質代謝関係の

著しい異常値が見られた。

これだけの

特徴的な所見があるので

診断は容易である。

ところが

強肝剤

リンゲルや糖質の輸液

抗生剤の投与

副腎皮質ホルモンの投与

という

治療にほとんど反応がなく

全ての症例が1週間以内に死亡してしまい

治療が困難である。

診断のし甲斐はある症例だが

治療のし甲斐のない症例となっている。

3戦全敗であり

治療にほとんど良い所なく

完封負けである。

完膚なきままに打ちのめされている。

ポニーの高脂血症での

38f61780-s治癒例はないのだろうか?

良い治療法はないものだろうか?

的確に予防する方法はないものだろうか?


このブログをお読みたいいた獣医師の方で

心当たりのある方は

ぜひ教えていただきたい。

(この記事おわり)


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産後に発症したポニーの高脂血症(2)

死産した後に、

食欲が全く無くなり、

治療の前に採血をしたら、

その血液の血清が乳黄色に濁り、

高脂血症と肝機能障害が疑われた、

17歳のポニーの繁殖牝馬。

その血液検査の結果は

異常値のオンパレードだった。

特に目をひいたのは


 中性脂肪(TG)         2254 mg/dl

 AST(GOT)             8859 mg/dl

 遊離脂肪酸(FFA)   2.45 mg/dl



IMG_2384「・・・やっぱり・・・」

脂質の代謝障害が著しく

強い肝機能障害が見られ

極度の脂肪肝が疑われる数値だった。

採血した日の

血清の肉眼的な所見で

それは大方想像はついたものの

改めてこの数字を見ると

「・・・これはひどい・・・」

と思ってしまうのだった。

この結果を持って

飼い主の▽牧場へ再び往診に行き

IMG_2391内容を説明して

前日とほぼ同じ治療を施した。

翌日の3診療日も同様の治療を施した。

ポニーの症状は若干の元気が出たものの

食欲は全くなく水槽に口をつけるだけだった。

4診療日も同様の治療を施した。

食欲は全くなく水槽に口をつけるだけだった。

5診療日も同様の治療を施した。

食欲は全くなく水槽に口をつけるだけだった。

6診療日にも同様の治療を施した。

この日は朝から横臥してばかりだったので

馬を立たせてようやく枠場にいれて治療をした。

外陰部からは産褥性の悪露が出て

強い匂いが漂っていた。

食欲は全くなく水槽に口をつけるだけだった。

7診療日にも同様の治療を施した。

この日は馬がなかなか立たず

ようやく立たせても歩様がふらつき

治療中に枠場の中で寝てしまった。

8診療日に▽牧場へゆくと

この馬が朝死亡したことを

飼い主の▽さんから告げられた。

結局

治療には反応なく

発症後1週間で

死亡してしまった。


(この記事あと少し続く)


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産後に発症したポニーの高脂血症(1)

17歳の繁殖牝馬(ポニー)、

分娩予定日よりやや早く死産。

その3日後、

「餌をほとんど食べない、水を欲しがる。」

という稟告で上診。

胎盤は分娩直後に排出されたという。

IMG_2389T38.3 P60 R20

食欲はないが

腸の蠕動はしっかり聞こえていた。

産褥性の不調であろうということで

いちおうルーチンとして採血をし

抗生物質とリンゲル液とブドウ糖液を点滴した。

IMG_2390「腹の動きは普通に聞こえているから・・・」

それほど心配することではなさそうだと思って

初診を終えて

事務所に帰り

採った血液の

肉眼的な性状を見たら

「・・・これは・・・」

IMG_2383血清が乳黄色で不透明。

ポニーなどの小型馬に多く見られる

高脂血症が強く疑われた。

臨床検査センターで調べてもらう項目に

肝機能の指標を中心にして

血液検査を依頼した。

「・・・一昨年、高脂血症で死んだ馬と同じ性状の血清・・・」

検査結果は

センターから翌日送られてくるが

このポニーの治療は

そう簡単には行きそうもないな

という気分になった。

(この記事続く)


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カミナリ注意報

7月の中旬、

西日本の沖縄や九州や四国から、

梅雨明けの便りが届くようになってきた。

梅雨明け前には、

激しい豪雨になることが多く、

今年も静岡県の熱海などで、

土石流が発生して甚大な被害が出てしまった。

毎年

我が国のどこかで

この季節に

必ずどこかで

豪雨による災害が発生する。

近年は特に

その頻度が

高くなっているような気がしてならない。

北海道では

本州のような激しい梅雨明けの雨には

さほど見舞われないものの

この時期の気候の変化の激しさは

様々なことで感じることができる。

先日

梅雨前線が上昇した時

北海道上空に寒気が入り

大気が乱れて

カミナリが発生しやすくなっていた。

夜になり

予報通りに

積乱雲が発生し

あちこちで落雷があった。

我が町でも

稲妻と雷鳴が

頻繁に響き渡る時間があった。

そんな日の夜

馬産農家のさんから

「当歳がケガをした。」

という往診依頼があった。

IMG_2142着いてみると

首の部分を地面と水平に

約30僂砲錣燭覲綾ができていた。

このような切創は

牧場周囲に張り巡らされている

バラ線によるものであろう。

「いつもだったらバラ線なんかには近づかないんだけどな。」

IMG_2143さんはそう言うが

先ほどまで

上空には厚い雲と

あちこちに稲妻と雷鳴が

いくたびも響き渡っていたので

「たぶん、カミナリに驚いたんだべな。」

IMG_2145という結論になった。

傷をよくみると

正中に近いところが

もっとも深い傷になっていて

左側へゆくほど

傷が浅くなっていた。

暗いところで稲妻が光り

雷鳴に驚いてに走り出したところ

バラ線を首左側に引っ掛けてしまったのだろう。

IMG_2147治療は

暗いので

患部を車のヘッドライトで照らしながら

鎮静剤を打ち

簡単な毛刈りをし

切創の一番深い正中に近い部分の

IMG_2148筋肉内を縫い

そのあとに皮下織と皮膚を寄せ

抗生物質を投与するという

簡単なものだったが

あまり清潔に縫合ができなかった。

案の定

数日後に

漿液に混じって化膿汁も出て

縫った糸が緩み出てしまったようだ。

IMG_2149しかし

さらにその数日後には

傷がふさがり

化膿汁も次第に減少し

傷痕が次第に目立たなくなり

なんとか治癒してくれたようだ。


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数年に一度の「重種馬の帝王切開」(2)

「餌を全く食わなくて、体を震わせてるんだけど、大丈夫だべか・・・」

帝王切開をしたその晩、

約7時間後、

飼主の◯さんから電話がかかってきた。

「・・・わかりました、診に行きます。」

当番だった私は、

◯さんの要望にお応えして夜道を走った。

過去に帝王切開をした重種馬の中には

その晩に術創部が開いてしまった馬や

起立不能になってしまった馬や

出血多量で死んでしまった馬など

色々いたので

それを思い出すと

今回の馬も心配になってくる。

◯さんの家に到着して診察した。

T 38.5   P 82  R16

食欲廃絶、全身小さく震戦していた。

左後肢が腫れていた(これは術前から)。

「・・・とりあえず、点滴(輸液)しておきますね。」

「あーそうしてもらうと、安心だわ・・・」

「・・・後産残ってるけど、それは明日取ることにして、子宮洗浄もするから、明日のお昼頃また来ますね。」

「わかったよ、お願いします・・・」

リンゲルの輸液4リットルにオキシトシンを入れたものをセットし

私は帰路に着いた。

翌日

馬を枠に入れ

再び診察した。

T 39.9  P 80  R 20

熱発していた。

食欲なく、小刻みに震えているのは変わらず。

まず消炎剤を入れた輸液をセットし

尻尾をあげて

胎盤の用手除去を試みた。

まだ子宮壁に付着している箇所が多く

それをゆっくり剥がしながら全域を除去することができた。

その後、生理食塩水よりも高張に作った洗浄液で

子宮内を還流洗浄し

抗生物質を投与。

「・・・明日は俺、休みだから、誰か獣医が来ることにしておきますね。」

「わかったよ、頼んます・・・」

翌日

往診したT獣医師のカルテを見ると

「T 38.4  P 72  R 16

食欲漸増、術創やや腫脹も良好。」 

IMG_1890とあった。

その翌日

私は再び子宮洗浄のタンクを持って

◯さん宅へ向かった。

馬は牧場へ放されていた。

IMG_1892馬を捕まえて枠に入れて診察すると

T 37.9  P 72  R 14

食欲はさらに回復

子宮洗浄をすると

膣に茶褐色の粘稠な悪露があり

IMG_1889子宮は収縮しつつあり

内膜の状態はほぼ正常な手触りだった。

抗生物質を投与し

さらに3日間の抗生物質を薬治して

この馬の診療をいったん終えることにした。

IMG_1891術創の抜糸は

1週間以上後にして

その時に

この馬の子宮の状態も

再び診察することにして

◯さん宅を後にした。


(この記事とりあえず終わり)


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数年に一度の「重種馬の帝王切開」(1)

馬のお産のシーズンになった。

3月の末にもなれば、

かつては我が町でも毎日どこかで、

仔馬が誕生していたものだ。

私が就職した頃の我が町は、

重種の繁殖牝馬が300頭近くいた。

ところが

繁殖牝馬の頭数激減で、

いまや我が町の重種馬の、

今年の出産予定頭数は、

たったの10頭ほどである。

それでも

300頭近くもいた頃と同じか

それ以上の診療技術を

我が診療所内で維持し続けなければならない。

頭数減による診療機会の減少は

診療技術を若い世代へ引き継いでゆく

大きな障害になっている。

だが、それでも

引き継いでゆかねばならない。

これは我々老年?!の世代の獣医師に突きつけられた

重要な課題である。

先日の朝方

当番のT獣医師から連絡を受けた馬の難産は

「産道に足が一本しか来ていない。」

というものだった。

応援にかけつけて確認すると

どんなに手を奥に入れても

胎児の足は1本しか触れなかった。

その足を触診すると途中に飛節があり

後肢であることが判明した。

「逆子で、一本しか来ていないね。二本来てたら引き出せるんだけど、これは無理。」

「・・・ですよね。」

「帝王切開だね。」

「・・・そうですね。」

急遽、馬を診療所に運ぶことになった。

この日は土曜日で

出勤している獣医師の数は2.5人。

帝王切開をするとなれば

術者1人、助手1人、麻酔1人、の3人が必要である。

T獣医師はこの日休みの2名の獣医師に電話を入れて

手術要員獣医師3人を確保し

この日の手術以外の往診は

残りの獣医師2名で回ってもらうことにした。

IMG_1873馬が診療所に運ばれ

麻酔薬が準備された。

手術台に馬を横付けにし

ドミトールとケタミンを静注。

意識が朦朧として来たところで

手術台を倒して馬を寝かせ

IMG_1874アームに肢を固定。

その後は、生食+ドミトール+GGE+ケタミン

の点滴で全身麻酔を維持。

いわゆるトリプルドリップ法である。

術野は基本的に左の下けん部で

手で押して胎児にコツンと当たるところを選ぶ。

IMG_1875そこを約50兩擲して

腹腔に達したら

そこに子宮があり

胎児の頭部があり

その横に前肢もあった。

子宮を約40兩擲して

前肢と頭部を創口外へ

この作業が牛と違って馬の場合

足も頭部も非常に長いので苦労するのだが

今回は胎児の位置が良かったので

すんなりと露出させることができた。

前肢2本に産科チェーンをかけて

チェーンブロックで胎児を引き上げる。

IMG_1878「・・・生きてるか・・・」

緊張する一瞬だが

今回は残念ながら

胎児は既に死亡していた。

子宮を吸収糸で縫合し

抗生物質の入った生食でよく洗い

IMG_1876腹腔に収めて

腹膜を吸収糸で連続で縫い

筋層を吸収糸で連続で縫い

皮下織を吸収糸で連続で縫い

皮膚をナイロン糸で結節縫合した。

馬は縫合の途中で麻酔が覚めかけて

嘶き始めたので

トリプルドリップを新たに作って追注。

IMG_1877手術を終えたときは

馬はまだ意識がなかった。

それから次第に

麻酔が覚めて

約1時間後に頭を上げた。

その反動で創部から出血があった。

それから数10分後に

IMG_1879馬は立ち上がった。

心配した創部からの出血は

皮下織の浅い血管からだったので

縫合糸で簡単に止めることができた。

立ち上がった馬は

足元がふらついて非常に危険なので

注意して興奮させずにしばらく見守り

見守っている間にリンゲルなどの輸液をした。

輸液が終わる頃には

足元もしっかりして

目や耳の表情も普通に戻って

嘶きがうるさくなって来たので

ゆっくりと歩かせながら

家畜車の荷台へ誘導。

家畜車に無事に乗ったので

とりあえず

明日の再診を飼い主さんに約束して

手術を全て終了した。

朝の9時半に馬を運び入れ

馬が帰ったのは14時。

手術室の片付けが終わったのは

14時30分過ぎだった。


(この記事続く)


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ポニーの高脂血症(3)

ポニーの診療機会はさほど多くはないが、

今までに何度か、

高脂血症に遭遇してきた。

ポニー以外の馬では、

ドサンコ(北海道和種)にも、

それらしい症状が出たものがあったが、

それはポニーほどではなく

治療に反応して立ち直ってくれた。

今回のポニーの症例のように

血清の中世脂肪が著しく増加し

治療に殆んど反応なく死に至ってしまう

という症例は

いままでの記憶を辿ると

全てがポニーだった。

今回の死亡例は

昨年の春に他所から導入し

$さん宅で交配して受胎し

夏と秋と冬を$さん宅で過ごし

冬の終わり頃に発症した。

$さんの話によると

死亡した馬は元気がよく

他馬を押しのけて草を食べ

さらに草の良いところを選り好みして

ガツガツ食べるポニーだったらしい。

他所からの導入による

飼養環境の変化と

とりわけ旺盛な食欲が

仇になったようだ。

IMG_3424私の以前の経験だと

ポニーは太りやすいから

低栄養の質の悪い草をやっていれば良い


という世間の言い伝えを真に受けて

低栄養の草で冬季を養い

春の分娩の時期に

生まれた仔馬がことごとく不調で

親も感染症にかかりやすくなる

IMG_3422ということが多くあった。

その時も

他所から導入された個体が死亡する

という症例があった。

今回の件と合わせて考えると

質の良い高栄養な草を与えていると

高脂血症が多発し

質の悪い低栄養な草を与えていると

感染症が多発する


ということが見えてくる。

さらに重要なことは

質が良くても悪くても

高栄養でも低栄養でも

そのエサに長年慣れているポニーは

高脂血症にも感染症にもなりづらく

また

質が良くても悪くても

高栄養でも低栄養でも


他所から導入された馬は

高脂血症や感染症にかかりやすくなる。

ということが見えてきたことだ。

IMG_3421すなわち

飼養環境の変化

が引き金になっている

ということが見えてきたのである。

ポニーのような小型馬は

根強い人気があり

新しく導入した牧場や

導入を検討している牧場が

私の診療地区にも少なからずある。

「ポニーは粗食に耐える」

という世間一般の常識は間違いではない。

IMG_0173ただ

その常識によって

ポニーの飼養環境が

牧場ごとにまちまちで

与えているエサの栄養価が

数値化もされずに

大きく異なっている

というのが現状である。

したがって

飼養される牧場が変わる時

ポニーは大きなエサの変化に見舞われて

体調を崩すのである。

ポニーを自分の牧場に導入するにあたっては

導入前のエサと

導入後のエサとの

ギャップが激しくならぬように

十分注意しなければならないだろう。

ポニーのような

食欲旺盛な品種においては

「良い草から悪い草へ変わるギャップ」

が良くないのはもちろんだが

それに加えて

「悪い草から良い草へ変わるギャップ」

ということにも

十分注意しなければならないなのである。


(この記事終わり)


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ポニーの高脂血症(2)

食欲は不振ながらわずかにあり、

食べた物を飲み込めなくなったという稟告があり、

診察したら食道にも口腔にも異常が認められず、

体温38.2℃  心拍数60  呼吸数20以下で、

E977E7ED-B4C1-4C32-80C2-2C7E5E3D4E6F可視粘膜がやや暗色。

血液検査のための採血をしたら

血清が肉眼でも明らかに異常に

黄白色に濁っていた。

検査センターから送られてきた数値の中で

驚いた項目は

 GOT   10,078 U/L    (正常値の約30倍↑)

    TG(中性脂肪)    2293 mg/dl   (正常値の約20倍↑) 


IMG_1678だった。

その他にも

 総ビリルビン 4.1 mg/dl  ↑

    血糖  47 mg/dl ↓

など

肝機能の破綻を示唆する値が並んでいた。 

高脂血症による脂肪肝

肝機能障害と診断して

この日から連日

糖分の輸液や経口投与などの治療を開始した。

しかし

症状は改善せず

食欲は全くなくなり

横臥することが増え

20210206 及川恵子 馬 (002)発病の6日後には

起立不能となり

翌日の朝
20210206 及川恵子 馬 (002)
あっさりと死んでしまった。

病畜処理場の解剖の所見には

IMG_1721写真とともに

山田純三先生の筆で

「脂肪肝、腸間膜や腎周囲に多量の脂肪あり」

という記述があった。

アヒルやガチョウではなく

ポニーのフォアグラだった。  


(この記事もう少し続く)


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ポニーの高脂血症(1)

「餌をこぼして、食べることができない。食道が詰まってないだろうか?」

そんな電話で呼ばれた$牧場、

診たのは9才のポニー、

妊娠9ヶ月だった。

いつもより元気が無く

食べたものを吐き出してしまうらしい。

枠に入れて

鼻から食道へカテーテルを入れると

カテーテルの先端はは途中で止まることなく

胃の中に入った。

「・・・食道が詰まっていることはないですね。」

「そうかい。でも、なんだか匂いが臭くないかい?」

確かに、私もそう思ったが

とりあえず、食道梗塞ではないことで安心し

せっかくカテーテルを入れたので

それを使って胃腸薬を投与して

その日の診療を終えた。

カルテの病名は

とりあえず「胃腸炎」にしておいた。

翌日

「やっぱり口や舌がうまく動かないみたいで、食えないし、昨日より元気がない。」

という連絡で再び$牧場へ。

「歯は悪くないと思うんだけど、舌べらが麻痺してるんでないべか?」

と$さんが言うので

再び枠に入れて口を開けて

口の中の異常を探索したが

歯の異常な摩滅は確認できず

舌の異常も特に確認できなかった。

ただ、やはり食べたものを

ちゃんと飲み込めない嚥下障害があるらしく

口の中には咀嚼した草が溜まっていた。

「・・・口は何ともないみたいですね。血液を採って調べてみますか。」

「お願いします。」

口の中を診たとき

口腔の粘膜の色がなんとなく

暗い色をしていたように感じた。

採血をして

食欲がないので

栄養の補給の意味と

便が少なく鹿のような糞をしていたので

脱水の改善の意味をこめて

リンゲルとブドウ糖の補液をして

その日の診療を終えた。

E977E7ED-B4C1-4C32-80C2-2C7E5E3D4E6F事務所に戻って

採った血液を見ると

写真のごとく

血清が黄白色で

不透明に濁っていた。

・・・これは・・・

私はここではじめて

高脂血症を強く疑った。


(この記事つづく)

 
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ポニーの口内炎??(3)

いまだかつて、

ちょっと経験のない場所に出来た、

ポニーの歯肉の腫瘍。

口を開けてすぐの、

上顎の切歯の歯肉だったというのは、

不幸中の幸いだったかもしれない。

イージーカットのゴムリングを装着した日から

数えて1週間もたたない日の朝に▽さんから

「あの馬の口から何も出なくなったので、取れたみたいです・・・」

という知らせが来た。

「・・・そうですか。早いですね。血が出てるとか、大丈夫ですか?、取れたほう、ありますか?」

「馬はすごく元気で、大丈夫です。でも、取れたやつは草の中に紛れて見当たらないです。」

「・・・そうですか。そしたらそのうち一度診に行きます。上顎の写真だけ撮らせてください。」

IMG_1509「はい。」

イージーカットのゴムリングをつけたのは

昨年の年末だった。

予定では、年が明けて早々に診ることになっていたのだが

思ったより早く

ゴムリングの効果が出たようだ。

IMG_1507暮れの押し迫った12月31日が出勤だったので

▽さん宅に寄って写真を撮らせてもらった。

腫瘤はきれいに根こそぎ取れていた。

その断面をよく見ると

上顎切歯の中間の歯肉付近から

上部へ広がるような断面があり

IMG_1508軟部組織と同時に

骨か歯のような硬い組織らしいものが

僅かにあるような断面だった。

出血もなく化膿もほとんどなく

とりあえずこれで様子を見てもらうことにした。

そういえば

もう20年ほど前の経験だが

ポニーではなく大きな重種馬で

上顎から鼻腔の奥にかけて

腫瘤物が見つかり

鼻腔を圧迫して

片方の鼻腔が塞がり

呼吸困難に陥った馬がいた。

手術で摘出しようにも

場所が悪く

摘出不可能で

腫瘤はどんどん大きくなり

呼吸がいよいよ苦しくなって

最後には結局廃用になってしまった

という馬がいた。

そんな過去の経験を思い出すと

今回のポニーの上顎の腫瘤物は

出来た場所がラッキーだった

と思う。

まあ、これからまた

腫瘍が膨らんでくる可能性はあるが

場所が良いので

その時はまた

同じことをすればいいのだ。


(この記事終わり)


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ポニーの口内炎?? (2)

ポニーの口から何かが少し覗いている、

ということで、

口を開けて診てみたら、

まるでお饅頭のような腫瘍が、

上顎の切歯の歯肉部から

イボ状に成長して盛り上がっていた。

IMG_1447こういう腫瘤物は

むしり取るか

切り取るか

なのであるが

毟るには根元が太すぎるし

切り取ると出血が多量になる恐れがある。

その腫瘤の大きさを見て

咄嗟に思い付いたのは

牛の臍ヘルニアの治療などに使われる

IMG_1453ゴムリングだった。

名称は「イージーカット」

とても分かりやすいネーミングである。

今回の歯茎の腫瘤を取り除くために

大きさ的に

イージーカットがぴったりだと判断した私は

▽さんに20分ほど待ってもらって

私は診療所にイージーカットを取りに戻った。

IMG_1454そして再び▽牧場に戻り

この馬を枠場に入れて

口を開けてもらった。

そして

イージーカットの器具の先にゴムリングをつけて

器具を握ってゴムリングを伸ば広げてみた。

IMG_1455「うん・・ぴったりだ。」

私はまず1本のリングを

この腫瘤物に装着した。

これでもうよいと思ったが

せっかくなので2本目のリングもかけて

腫瘤物の根元を完璧なまでに

ゴムの力で締め上げた。

イージーカットのゴムリングを

装着したとたんに

ピンク色だった腫瘤物の色が

真っ白い貧血のような色になった。

IMG_1456「とりあえずこれで、2週間ほど置いておきましょう。」

果たして

うまくゆっくりと

腫瘤物が縛り取られるかどうか。

私は今回

腫瘤の大きさと

イージーカットの大きさから

きっとうまく切除できるだろうという

根拠の乏しい自信があった。

切除・・・ではなくて

縛り落とすから

縛落??・・・

そんな言葉はないけれど・・・


(この記事続く)


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