北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

馬の診療

重種馬の蹄病治療用ドリル

重種馬の蹄病を治療する機会は減ってしまった、

しかし、減ったとはいっても、

我が診療地区に重種馬が飼われている限り、

ゼロになることは無い。

1年に数回くらいの頻度ではあるが、

重種馬の蹄病治療の依頼が、

忘れそうになる頃にやってくる。

それに備えて私なりの準備をしていることは

以前の記事にも書いている。

約8年前の私のブログに書いた

電動ドリルを使った蹄病の治療法である。


その記事には

当時の私の蹄病治療の考え方と

IMG_2217手動ドリルではなくて

電動ドリルを使った治療法が書いてある。

基本的な考え方は当時と今と変わっていないのだが

8年前に比べて

重種馬の蹄病治療の機会は

明らかに減ってしまい

そして

私は8年前から比べて8歳年をとった(当たり前だ)。

その間

私の蹄病治療の考えや方法を

私よりも若い獣医師たちに

どれだけ伝達することが出来たのか・・・

と、考えると

これが大変お寒い状況であることに

今更ながら気付いた。

今もし

重種馬の蹄病の治療の依頼があったとき

私が出勤していれば私が対応することになるが

それだけでは若い獣医師たちに伝達することができないので

若い獣医師たちと一緒に往診へ向かい

彼らと一緒に治療の場に臨まなければならない。

そこで実際に治療をやって見せなければならない。

しかしそれだけではまだダメで

やって見せた手技を

こんどは彼らが実際にやってみなければ

本当の技術の伝達ができたことにはならない。

さらにそのためには

私の使っている道具を

いちいち私から借りて使うのではなく

私の使っている道具と同じ道具を

若い獣医師たちにも常に持っていてもらわなければならない。

ここでちょっと思案をした。

重種馬の蹄病治療のポイントは

蹄の炎症箇所を特定することであり

さらに特定した箇所に向けて

蹄底からドリルで穴を開けることが重要になる。

そのために必要な道具が

治療用のドリルである。

しかし

若い獣医師たちにいきなり

私が使っている電動ドリルを勧めるには

技術の取得の流れとしてはちょっと無理がある。

まずは手動ドリルを持ち歩き

それを使いこなせるだけの経験を

ある程度積んでからでないと

この技術を伝達することは難しいと考えた。

そこで

いつも懇意にしている重種馬の削蹄師

N坂氏に電話をして

手動のドリルを作ってもらうことにした。

自分でドリルを作れない私は情けないが

こういう事はその道のスペシャリストに頼んだ方が

良いものを作ってくれるものである。

IMG_2185左の写真は

そのN坂削蹄師に作ってもらった

重種馬の蹄病治療用の

手動ドリルの3点セットである。

IMG_21843点セットを3人分

我々獣医師のために

作ってくれた

削蹄氏のN坂氏に感謝!



人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。  


 

重種1才馬の鼻梁の外傷(2)

「安田君、@さんの馬の傷、化膿してるよ。」

私が初診してから4日目、

@さんに往診に行って来た同僚のK獣医師がそう言った。

「・・・そうですか。」

「あれじゃあ、共進会は出られないな。」

「・・・そう・・・ですか。」

今回の馬の外傷の処置について、

私はきれいに治せる「強い自信」は持ってはいなかったものの

なんとか治ってくれるだろうという「普通の自信」はあり

その漠然とした期待の中で

この馬の傷についてさほど気にかけていなかった。

しかし、同僚の獣医師からそう言われると

これは、失敗してしまったか・・・

という反省の気持ちが急に膨らんできた。

それから3日後

私が今度は@さんの馬を診た。

枠馬に入れて傷をよく見ると

IMG_1901なるほど、傷口は

きれいに縫い合わさってはおらず

10cmほどに渡って

腫脹して肉芽が盛り上がり

痛々しい状態になっていた。

「・・・化膿させてしまって、申し訳ない。」

「・・・。」

「・・・縫った糸は、ほどけちゃった?」

「取れてはいないようだ。」

「・・・でも、共進会は出せないか。」

「いや、出すよ。」

「・・・そうなの?」

「だから治してくれって言ってるべや。」

私は@さんがまだ

この馬の共進会出場を諦めていないことを確認した。

しかし、こうなってしまった以上

あとは、抗生物質を注射し続けて

この馬の傷口が早く

目立たなくなるのを待つことしかできなかった。

その次の@さんの診療日は

同僚のS獣医師に行ってもらった。

「安田君、@さん、共進会に出すの断念したよ。」

帰ってきたS獣医師がそう言った。

「・・・そうですか。」

「結構、傷が深かったみたいだね。」

「・・・ええ、上手く縫えたかと思ったんですけど。」

「あの腫れはなかなか引かないね。」

それから3日後

私は再び@さんの馬を診に行った。

やはり傷はきれいに治っていはなかった。

IMG_1906「・・・共進会、出すのやめたの?」

「ああ。」

「・・・そうなの?」

「これじゃお前、カッコ悪いべや。」

「・・・。」

私は@さんに

きれいに治すことができなかったことを詫びた。

最善を尽くしたつもりだったが

創口を縫合する前に

もっと清潔に洗い

メスなどで新鮮な創面を作ってから

もっと慎重に縫合すべきだったと

反省点を挙げた。

それから

数日後

共進会が終わり

この馬を治療する予定だった日に

@さんから連絡があった。

この馬を、育成屋さんに売ったので

もう治療に来なくても良いという連絡だった。

私は、売れてよかったという気持ちもあったが

無事に売れたというわけではない、と思った。

本当であれば

@さんは、この馬を共進会に出品し

商品価値が最も高くなったところで

高い値段で売りたいと思っていたに違いない。

しかし、それはできなかった。

いろいろと

反省点の多い症例となってしまった。

買われて行った先がどこかわからないので

この馬の傷の状態は

もはや確認するすべも無くなってしまった。

あとはこの馬の鼻の腫れが引いて

きれいに治ってくれることを

祈るのみとなってしまった。

反省点の多い症例だった。


(この記事終わり)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。 

重種1才馬の鼻梁の外傷(1)

「・・・共進会に出す馬が、顔に怪我をした・・・」

そんな電話が、

馬産家の@さんからかかって来たのは、

夜間当番の早朝だった。

IMG_1866馬を枠場に入れて顔を診ると、

馬の長い鼻梁に約15cm程度の切り傷があった。

よくみると、ヨードチンキを塗布した後の色が付いており、

傷口からは出血と漿(しょう)液が垂れた後のような汚れがあった。

「これは・・・何時頃、怪我したの?」

「・・・きのうの晩。」

「ヨーチン付けてあるね。」

「・・・ああ。でも治りそうもないから、縫ってくれ。」

「たしかこの馬、共進会に出すやつだったよね。」

IMG_1862「・・・そう。」

「共進会は何日だっけ?」

「・・・あと2週間。」

「そっかー、うーん。」

「・・・縫って治してくれ。」

「まぁ、やれるだけやってみるか。」

「・・・きれいに治してくれよ。」

「うーん、まぁやってみるか。」

IMG_1869馬に鎮静剤を投与し

鼻捻をかけて保定し

傷の周囲を

ビルコン液を染み込ませたスポンジで

ジャブジャブと洗い

汚れを落として

再び傷を良く見ると

何か鋭利なもので

鼻梁をザクッと切ってしまったような傷だった。

IMG_1876長さは上下に15cm程度

頭部に近いところの傷がもっとも深く

その深さは2cmほどあった。

出血は無く

薄いピンク色の創の断面は

皮下組織がほとんどで

奥のほうは骨に達しているようだった。

私は過去に

こういう筋肉の無い鼻梁の切創を縫合した経験を

思い出せなかったので

行き当たりばったりの処置となった。

IMG_1877洗浄した創口の頭側の深い部分に

角針を刺して、吸収糸をかけて

そこを起点に連続で皮内縫合をしてゆく。

この方法は

牛の開腹手術の最後の

皮膚を皮内縫合する方法と同じだった。

熟慮してそういう縫合法を選択したのではなく

とっさに思い浮かんだのが、この縫合方法だった。

しかし、いつも牛の手術で慣れている方法なので

スムーズに縫いすすみ

縫合処置は数分で終わった。

IMG_1879縫合処置をした切創は

手で広げようとしても広がらないように

針の縫い目もわからないように

皮内縫合された。

この縫合処置によって

なんとかこの1才馬を

十勝共進会に出品させたいという

@さんの願いが叶えられるかどうか。

私は、きっとこれで何とかなるだろうと

抗生物質を投与し

あと三日間の抗生物質の投与を指示して

帰路についた。


(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。 

重種繁殖牝馬の回腸捻転(3)

この馬の、

その後の対処を当直の獣医師に任せて、

私はその日の用事と、

翌日の用事をこなしたが、

その間中ずっとこの馬のことが頭に浮んできては、

ため息が出てくるのだった。

そして、月曜日の朝、

事務所に出勤して、

同僚のH獣医師と挨拶を交わしたとき

H獣医師が言った。

「◆さんの馬、昨日死んだそうです。」

「・・・そう・・・やっぱり、ダメだったか・・・。」

「腸捻転だったそうですね。」

「・・・そう・・・やっぱり・・・。」

「だいぶ、ひどかったんですか?」

「・・・うーん。フル二キシン打つと(症状が)よくなったんだけど・・・。」

そして

事務所には、馬のその後を託したK獣医師がいた。

「あの日の午後に、◆さんからすぐ電話が来ましてね・・・もう、立てなくなってて・・・」

以下

カルテから抜粋して経過を記載すると

同日午後

体温36.2℃ 心拍数84   呼吸数36

起立不能、意識朦朧、苦悶、眼結膜充血、心悸亢進不正、排便少。

リンゲル等補液、フルニキシン、投与。

K獣医師も

この馬はもう今夜、死んでしまうだろうと思ったそうだ。

そして、翌日の朝

体温38.2℃ 心拍数86 

自力起立し飲水する。

疝痛症状、心悸亢進、腸蠕動(+)、排便不明、加療後放牧地へ。

K獣医師は、この時点で

この馬はもしかすると、持ち直すかもしれないと思ったそうだ。

そして、その日の昼頃

再診にて上診する。

しかし、その時は放牧地の奥で横臥

死亡を確認した。

と、いうことで

万事休すとなった。

残念な結果になってしまったが

現在の我々の技術と

◆さんの抱えている家の事情と

を、考慮すれば

恥ずかしながら

これが精一杯の対処だったのではないか

と、これは自己弁護なのかもしれないが

そう思われた。

書いて居ながら

なかなか筆が進まない。

しかし、これも私の遭遇した一つの症例であり

症例は「一期一会」

それを書き留めて将来の糧にしようという

このブログの趣旨を

貫いておきたいと思う。

BlogPaintちなみに

初診と2診目の、この馬の

血液検査の結果の写真を添付しておこうと思う。

初診と2診目の、間の時間は

BlogPaintおよそ5時間。

その間に

目立った変化が見られたと思われるのは

WBC  9980  /μL   → 12240 /μL

Ht         37.0 %  → 38.7%

BUN    16.7 mg/dl → 20.3 mg/dl

CL       94 mEg/L    → 92  mEg/L

など、だろうか。

BlogPaint最後に

十勝化成場での解剖所見を添付しておく。

解剖に当たった先生のコメントは

「回腸にに捻転あり、一部に出血・壊死あり(写真3枚)」

 馬(回腸捻転)  馬(回腸捻転)  馬(回腸捻転)

ということだった。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。

重種繁殖牝馬の回腸捻転(2)

1度事務所に戻って往診の受付をして、

その日の午前中の、

牛の往診をひと回りした後 、

再び◆さんの馬の様子を見に行った。

疝痛で、寝たままで、

きっと苦しんでいるのだろう・・・、

もうそのままあの世へ行ってしまったかもしれない・・・、

そんな暗い気持ちを抱いて、

馬の寝ていた場所をのぞいてみると、

そこには馬がいなかった。

「あれ?・・・立ってどこかへ行ったな・・・牧場のほうだべか・・・」

家から出てきた◆さんが言った。

◆さんと私は、放牧場の奥の方へ馬を探しに行った。

馬は、放牧場の最も奥の森との境界線に立っていた。

前足で土を掻く仕草などをして

やはりどこか腹の調子が悪そうだったが

足取りはしつかりとしていた。

牧場から連れ戻して

枠場に入れて診察した。

体温37.8 心拍数50 呼吸数約16

腸の蠕動は左側で短く聴こえるのみだった。

直腸検査では、宿便わずかで

直腸内はほぼ空虚だった。

「どうだい先生・・・。」

「・・・。」

馬の症状は改善したとは言い難かった。

しかし

今朝のような、横臥して苦悶している症状よりは

だいぶマシになったので

これはもしかすると

通過障害が改善する可能性があるのではないか

(腸捻転ではないかもしれない・・・)

という考えも

僅かばかり

脳裏に浮かんだのだった。

IMG_1699この馬に付いている仔馬は

立っている母の乳房をしきりに突いて

あまり泌乳しない乳首を何度も吸っていた。

いま・・・

パソコンに向かって

この記事を書いている私が思うには

この時点で

一か八かの開腹手術による外科的整復を

どこかの施設で実施することができたならば

この馬の命を救うことができたのかもしれない

と思うのである。

だが・・・

実際には

我々十勝NOSAI「東部」事業所の獣医師が

重種の繁殖牝馬の腸捻転を

開腹手術によって治癒させた症例は未だになかった。

また・・・

十勝NOSAI「北部」のA町では数例の治癒例があったと聞いていたが

今年は、たまたまタイミングが悪く

麻酔機器の更新準備をしているらしく

また、麻酔のできるスタッフの転勤や退職などもあり

対応が難しい状態であるとも聞いていた。

また・・・

飼主の◆さん側にも

色々な気の毒な、家庭内の事情があり

治癒の確率の低い開腹手術に踏み切るには

高いハードルがいくつも立ちはだかっている

という状況だった。

「・・・先生・・・注射と薬で、できること、やってくれや。」

「・・・うん・・・」

IMG_1701私は

押し寄せてくる無力感を振り払いながら

この馬に補液をはじめた。

そして

迷った挙句

流動パラフィンと整腸剤の経鼻投薬をした。

「・・・便が通じてくれるといいんだけれど・・・」

補液と経鼻投薬の治療を終えて

私は祈るような気持ちで

◆さんの家を後にした。

週末のこの日の

午後から、私は

どうしても抜けられない用事があり

この馬の

これから先のことは

同僚のK獣医師に託して

事務所でカルテを書き終えて

ずっと祈るような気持ちのまま

帰宅した。

(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。


 

重種繁殖牝馬の回腸捻転(1)

先日の当直、

午後10時半過ぎに携帯電話が鳴った。

「親馬が腹イタなのですぐ来てくれ。」

という◆さんからの往診依頼だった。

到着すると、

馬はなるほどかなり痛がっていた。

唇に力が入らぬつらそうな表情で、

前屈みになったかと思ったら、

バッタリと倒れこんで、

仰向けになって中空を蹴り上げる、

IMG_1689疝痛である。

「とりあえず痛み止めの注射をしましょう。」

私は馬がごろりと寝転んでいる合い間に馬に近づき

採血と同時にフルニキシンの注射を打った。

数分すると

疝痛症状が治まってきた。

IMG_1692馬がおもむろに立ち上がると

傍にいたこの仔馬がすかさず

母馬の乳を探りに来て

乳房を鼻で突いて乳をせがんだ。

体温37.5℃ 心拍数60 呼吸数約20

聴診器を(けん)部に当てると、

弱く短い腸の蠕動音が聴こえた。

疝痛がほぼ消失したので

この馬を枠場に入れて直腸検査をし

直腸内部には馬糞の形にならない柔らかな宿便を認めた。

IMG_1695その量は約5〜6kgだった。

さらに直腸から内臓の触診をするが

手の届く範囲では

これといった異常な所見は触知できなかった。

馬の症状が落ち着いてきたので

◆さんと私はひと安心して

念のためにこの馬にリンゲルの補液と

整腸剤(ミヤリ菌製剤)をカテーテルで投与して

今夜はこれで

様子を診ることにして

私は帰路に付いた。

事務所の当直室に戻ったのは

午前1時を過ぎたところだった。

翌朝

午前5時半頃に携帯電話が鳴った。

「馬がまた痛がってるからすぐ来てくれ。」

という◆さんがらの電話だった。

到着しすると

IMG_1696馬は牧場の片隅の泥のある土の上で

首を横たえたかと思うと

また首を上げて

疝痛症状を示していた。

「やっぱり痛いんだな。糞はいちおう今朝一回出たけど。」

◆さんの示した馬の便は

正常な馬の便の量には程遠い

少量の宿便だった。

「馬をちよっと立たせてみてくれる?」

◆さんはこの馬に何度も気合を入れては

立たせようと試みたが

馬は立つ気はあるものの

立ち上がることが出来なかった。

「・・・。」

私はここで初めて

この馬は間違いなく通過障害を起こしている、と思い

暗澹たる気持ちになった。

(腸捻転かもしれない・・・)

いやな時間が流れ始めた。

IMG_1697傍にいる仔馬は

立てない母親の腹部へ鼻をこすりつけて

乳を探しては、前掻きを繰り返した。

疝痛で馬が立てないというのは

もうよっぽどのことであり

馬はもちろん、飼主さんも

大変な心身の苦しみと

経済的損失を被る事になる。

この時点で

体温37.5℃ 心拍数60 呼吸約20(伸吟)

いやな時間の中で

私はこの馬の再びの採血と

フルニキシンと補液と抗生物質を投与し

◆さんには

また昼前に来ると約束して

一度事務所へ戻ることにした。


(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。














なつかしき獣医師スタートの日

今から33年も前の話。

昭和60年、

4月1日の朝、

私はM別町農業共済組合の、

新規採用の新人獣医師として、

臨床獣医師としてのスタートを切った。

この日の朝、

診療所に初出勤した私は、

完全に二日酔いだった・・・ 

それはなぜかというと

3月31日の夜

いよいよ明日から社会人として働くのだなーと

胸を膨らませながら

軽く寝酒を飲み

布団に入ってウトウトしていたところへ 

玄関のベルが鳴った

と、思うまもなく 

鍵をかけていない家の中へ

その日の夜間当番だった獣医師のM川所長が

ドヤドヤと入ってきて

「馬のお産だから、すぐ起きろ。行くぞ。」 

と、叩き起こされて

そそくさと助手席に乗って

仕事へ向かったのだった。

馬屋のH坂さん宅に着いて

早速助産開始。

正常位であることは確認できているが

なかなか出てこないので

痺れを切らせたH坂さんと

手伝いに来ていたG嶋さんと

我々2名の獣医師とで

仔馬の足にロープをつないで

牽引介助を始めた。

初産の親馬で

牽引の途中に仔馬が止まってしまった。

仔馬の骨盤が引っかかり

ヒップロック状態になったのだ。

牽引していた4人は

ここぞとばかりに

渾身の力でロープを引いた。

ドッ・・・と

仔馬の下半身が全て現われた時

ロープを引いていた我々4人は

もんどり打って

寝わらの中に倒れこんだ。

「いやーきつかったな。」

「仔っこは大丈夫だべ?」

「オンつか?」

「いや、メンつだ。」

「良かった良かった。」

「まぁ、上がっていっぷくするべ。」

時計の針は午前0時を過ぎ

4月1日になっていた。

「あんたは、今度新しく来た獣医さんかい。」

「はい。」

「そうかい、まぁ飲みなさい。」

「あ、どうも。」

目の前に出されたガラスのコップには

大きなペットボトルから直接注がれた甲類焼酎が

なみなみと入っていた。

(飼主さんから出されたお酒はできるかぎり飲むべし)

そう教えられていた私は

コップに注がれた甲類焼酎をくいくい飲んだ。

H坂さんとG嶋さんはニコニコしながら

私のコップの焼酎がなくなる前に

すぐに注ぎ足してくれるのだった。

しばらくは

M川所長とH坂さんとG嶋さんの馬談義を聞いていた。

教科書に載っていない専門用語が飛び交い

その内容はほとんど理解できなかった。

そのうちに

焼酎が体全体に廻り始め

私の記憶はそこから曖昧になった。

ただ、最後に

ふらふらと酔いながら

IMG_1275心地のよい夜風の中を馬小屋まで行き

先ほど生まれた仔馬が立ち上がって

母馬の乳を探り始めたのを見たことだけは

よく覚えている。

IMG_1277そうして迎えた

4月1日の

朝の初出勤の朝礼は

完全な二日酔いだった・・・

IMG_1280というわけだ。

当時は

M別共済に加入していた馬は

900頭以上いた。

それから

IMG_132333年の歳月が流れ

現在

我が診療区域内で共済に加入している馬は

50頭以下になってしまった。

これからの

IMG_1330我が町の馬産は

そして

十勝の馬産は

どうなってしまうのだろう・・・


人気ブログランキング


IMG_2775








 

重種馬つながりの新年会

「研修所のM木先生が講義に来られるので、その晩飲みませんか?」

帯広畜大のN保先生からの電話だった。

私は二つ返事でもちろんOK。

その日を楽しみに待ち、

先日、帯広の居酒屋へ集合した。

私が小上がりで待って居ると、

まずN保先生がやってきた。

続いて、M木先生がやってきた。

「あともう一人は・・・?」

「I井先生です。もう少し待ちますか。」

「I井先生と飲むのは、久しぶりですねー♪」

しばらくして、I井先生がやってきた。

「どうも、お待たせしました。」

「お久しぶりですねー。」

「この面子と聞いたら、外せないですよ(笑)」

 「・・・では、乾杯。」

和やかにはじまったプチ新年会は

私の敬愛する先生方ばかりの

嬉しい飲み会だった。

今回の4人の獣医師の共通項といえば

重種馬の繁殖である。

かつて重種馬の繁殖管理や分娩管理についての

データーを集めて共同研究をしたことがあった。

その後

M木先生は十勝NOSAIから野幌の研修所へ

I井先生は畜大から開業へ

N保先生はJRAから畜大へ

と、それぞれの道を進まれて

重種馬の繁殖に止まらず

皆さん、多方面で

八面六臂の活躍をされている。

そんな獣医療界の最先端をゆく3人の先生方と

気のおけない飲み友達で居られる私は

つくづく幸運であると思った。

これも、重種馬の繁殖に興味を持って

今まで仕事をしてきたおかげかなと思った。

重種馬に感謝である。

M木先生とは、もうかれこれ30年近い付き合いになるし

I井先生とN保先生とも20年以上、いろいろとお世話になってきた。

若い頃は

このメンバーで飲んだ時は

仕事の話ばかりをしていたような記憶がある。

各地方の色々な獣医学会などへ

私がたまに参加する時には

3人の先生方は、必ず講師や座長などで参加されているので

私にとっては、3人とも学問の師という思いがある。

夜遅くまで飲んでも

学問と仕事の話ばかりをしていたのは

皆さん本当に、真摯に仕事に打ち込まれているからだろうと思う。

今回の飲み会も、そういう感じで始まったが

少し違ってきたのは

それぞれのご家庭のことやら趣味のことやら

プライベートな話題でも

いろいろと盛り上がるようになってきたことだ。

私もついつい、日頃の由無し事を話しまくって

気持ちよく発散をさせていただいたような気がする。

みなさんそれぞれ

色々な人生の荒波を乗り越え?!

IMG_0987円熟味を増して

ますます進化し続ける

3人の先生方なのであった。

「またやりましょう!」

楽しい時間は瞬くまに過ぎ

またの再会を約束して

それぞれ

深夜の帯広の街を

後にしたのだった。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして








 

hig先生・来帯(5)

「骨が折れようが、腸が捻れようが、産道に穴が開こうが、治す方法はあります。」

IMG_0491hig先生は講演会の最後を、

こんな言葉で締めくくった。

死亡原因の上位を占める難しい症例でも、

治す方法は「ある」、

というメッセージである。

多くの難しい症例に立ち向かって来たhig先生の言葉には重みがある。

それは、長年培ってきたサラブレッドの個体診療技術に対する

hig先生の経験と自信に裏付けられた言葉だと思われる。

IMG_0501では、これに対して

我々十勝の

あるいは牛の診療の多い地区全ての

獣医師たちの個体診療技術は

自らどれだけの経験と自信を持っているだろうか。

目の前の馬が、目の前の牛が、

骨が折れたら・・・本気で治療せず(できず)に・・・廃用・・・

腸が捻れたら・・・本気で治療せず(できず)に・・・廃用・・・

産道に穴が開いたら・・・本気で治療せず(できず)に・・・廃用・・・

我々は、そんなことを繰り返してきたのではないだろうか。

死亡原因の上位を占める難しい症例を前にして

我々牛の診療主体の地域の獣医師は

それらの牛や馬を廃用にすることで終りとし

その症例の詳しい記録を残さず

未来の症例治療に役立たせるデータの蓄積もせず

繰り返し襲ってくるそれらの症例を

繰り返し右から左に

同じ様に廃用にするばかりで

治癒に向けて本気で個体診療をするのを怠ってきたのではないだろうか。

我々牛の診療が主体の獣医師たちは

ある時期から・・・

病牛を治療をすることよりも、病牛の発生を予防をすることに重点を置くようになり

病牛の個体を診ることよりも、病牛の少ない牛群を管理することに重点を置くようになり

そのような牛群のなかで

不幸にして病気になってしまう個々の牛に対しては

個体診療技術を駆使して治癒させる方法を選ばず

生産性、コスト低減、群管理、などという大義名分の下に

病気の個体を安易に抹殺処分にしてきたのではないだろうか。

ある時期から・・・

その「ある時期」とは

いつ頃からなのか、といえば

プロダクションメディスン(生産獣医療)という考え方や

ハードヘルスマネジメント(牛群健康管理)といった考え方が

わが国の酪農業界に入ってきた時期と

一致するのではないかと

私は考えている。

当時はこの新しい考え方が業界内を席巻し

予防獣医学・生産獣医療こそ

これからの新しくて輝かしい獣医療であり

個体診療をしている獣医師というのは「火消し屋」に過ぎない

などと揶揄されたものである。

しかし、今

慢性的な牛不足による

牛の個体価格の高騰がつづく酪農業界の中で

我々牛の獣医師が求められるようになってきたのは

かつて「火消し」と揶揄されていた

個体診療の技術なのである。

個体診療というものは

薬物や医療施設や医療器具を駆使した

獣医師でなければできない

獣医師本来の仕事といえるだろう。

それに対して

生産獣医療や疾病予防というものは

薬物や医療施設や医療機器などはほとんど使わない管理技術であり

本来は畜産経営者や経営コンサルタントがするべきもので

獣医師が本来すべき仕事とは違うものなのではないかと思われる。

牛の診療が主体の獣医師たちは、今

獣医師本来の仕事である

個体診療の技術に

もう一度立ち返って

個体診療の技術を

真剣に学び直す時期に来たのではないだろうか。

主にサラブレッドを診療する獣医師である

hig先生の講演を拝聴して

私は

そういう思いを強くした。


(このシリーズ終わり)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。
 
 



















hig先生・来帯(4)

hig先生の講演の三番目の山場は、

骨折の話だった。 

馬の三大死亡原因の一つに数えられる骨折は

四肢をよく動かす馬に非常に多い外傷事故であり

特にサラブレッドのような気性の激しい競走馬では

職業病的な大怪我と言えるだろう。

そんな骨折に立ち向かい

数々の難しい症例を治癒させてきた

hig先生の骨折治療の話は

たいへん説得力があるが

一方で

サラブレッドをほとんど診ることのない我々十勝の獣医師たちにとっては

雲の上の存在かもしれない。

しかし、そんなレベルのhig先生が

IMG_0488今回は

雲の下まで降りてきて

重種馬の骨折の治療

さらには

牛の骨折の治療について

IMG_0498非常に丁寧に

解説してくれた。

我々が骨折の治療をするといえば

今現在は、キャストを巻く外固定ばかりである。

そのキャストの巻き方にはまだまだ間違いが多いとhig先生は言う。

「下巻きの綿は不要。」

綿をグルグルと厚く巻き

それからキャストをぎゅうぎゅう圧迫して巻くのは間違いで

骨折部が固定されず、かえって骨癒合の妨げになる。

「下巻きはストッキネットで薄く、キャストはコロコロと転がすように」

巻いてゆくのがよいと言う。

それは、重種馬や牛でも同じことで

馬や牛の四肢は解剖学的に言うと

「足ではなく指である」

からである、とhig先生は言う。

ただし

そのようなキャスト巻きによる外固定が成功するのは

筋層の薄い、中手骨や中足骨の骨折である。

筋層の厚い、橈骨や脛骨さらに上腕骨や大腿骨は

「キャストによる外固定では限界が」

あり

たとえ骨癒合しても、変形して癒合するなど

きちんと治癒しない確率が高い。

そこで登場するのが

プレートによる内固定の技術である。

hig先生は、Bovine orthopedics(牛の整形外科)という本の中から

「牛では、プレート固定が通常もっとも安定した内固定を提供する。」

「内固定は、経済的に高価な牛の骨折だけでなく、いくつものタイプの骨折において、外科手術による、速く、問題のない治癒が達成される。」

IMG_0503という言葉を引用して

我々十勝の獣医師たちに

プレートによる内固定技術の習得を

強く勧めている。

「牛の骨折で、今までは治せなかった骨折が治せるようになる」

という技術。

それが

IMG_0502プレートによる内固定の技術である

と、hig先生は明言しているのだ。

その詳しい内容は、ここでは書ききれないが

hig先生が、今回の講習会でもっとも言いたかったことの一つが

これだったことは間違いないと思う。

IMG_0495それは

今回の講習会のために

hig先生はわざわざ、和牛子牛の後ろ足を一本と

必要最小限のプレート固定の道具を持ってきて

我々の目の前で、プレート固定を実際に披露してくれた

ということでもよくわかる。

この時

私と、後輩のS本獣医師が

子牛の足を保定・保持する役目をやったのだが

私が全く初めての経験だったせいで、要領を得ず

骨折部位の仮止めまでの時間をかなり長引かせてしまった(汗)

NEC_0034ただ、そのおかげで

私はこの歳で初めて

牛の内固定術の実習をすることができ

なんとなくこんな感じで進めてゆくものなのだ

ということを、身を以て体験することができた♪

会場にいた獣医師のの中でも、私と同じように

牛の内固定技術を実際に見るのは

全く初めてだったという獣医師が

きっと

多くいたに違いない。


(この記事もう少し続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。
 
 



 

hig先生・来帯(3)

馬の3大死亡原因の中の、

IMG_0488「分娩事故」は、

我々十勝の獣医師をはじめ、

どこの獣医師でも経験することがあるだろうと思う。

それは、飼主さんが馬をなぜ飼っているかといえば、

その多くが、仔馬の生産のために飼っているからである。

重種馬を飼う農家さんも、その例外ではない。

我々は、重種馬の生産地で働いているのである。

ところが今・・・

その重種馬の生産が大きな転機を迎えつつある。

重種馬を生産する農家さんが

いよいよ居なくなってしまったのである。

多くが高齢で廃業してしまった、

おきまりの後継者不足である。

その理由はいろいろだが

最も大きな理由は、おそらく

生産した重種馬の値段がずっと安く低迷し

重種馬を飼っていても利益が出なかった事だと思う。

そんな状態が10年以上も続いていた。

重種馬農家の後継者たちは

多くが馬の生産をやめ

安定収入を得るために、和牛の生産に切り替える家も多かった。

重種馬生産の辛抱も限界を超えていたのだ。

ところが、去年あたりから

重種馬の値段が、一気に上昇してきたのである。

重種馬の供給が、とうとう需要に追いつかなくなったのである。

詳しい理由は省略するが

数年前の倍以上の値段で重種馬が取引されるようになった。

とうとう値段が底を打ったのだ。

今後は、きっと

我々獣医師にも、重種馬の診療依頼が増えて来るに違いない。

IMG_0532そのような状況の中で

hig先生の「馬の分娩事故」への獣医療についての

さまざまな言葉には

我々重種馬の生産現場の獣医師にとって

とても重要な事が含まれていると思った。

まずは

「正常な分娩について知る必要がある。」

これは全く当たり前のことである。

異常なお産の時ばかり呼ばれていては

どこか異常なお産で、どこが正常なお産なのか

認識できないのでは、話にならない。

ところが、今の若い獣医師たちの実際は

馬の正常な分娩にさえ、立ちあう機会が激減してしまっている。

いちいち獣医師を呼ぶほどではない、馬の正常なお産を

若い獣医師諸君は、自ら積極的に

体験できるような働きかけが重要であると思う。

臨床獣医師として、何事もそうであるが

特にお産については

いくら本を読んで勉強しても

いくらビデオを見て勉強しても

それでは不十分なのである。

とにかくまずは、1人でも多くの獣医師が

馬の正常なお産を、実際の現場で体験してほしいと思う。

これが、「分娩事故」に対応できる獣医師になるための

最初の一歩であると思う。

それができてから、ようやく

難産介助、帝王切開、などの技術を

習得してゆくのが良いと思う。

難産介助については、hig先生曰く

「2人以上で行う。」

「20分で進展がなければ全身麻酔を考える。」

また、帝王切開については

「止血をしっかりする、胎盤は剥がさない!」

これについては

私も痛い経験があったので

全くその通りだと、身に沁みて思った。

馬の全身麻酔をする機会は

我々十勝の獣医師にはそれほど多くない。

しかし

全身麻酔の話の時に、hig先生から

「麻薬施用者の免許を取っている方はどれだけいますか?」

と、問われて

その場で手を挙げたのは

なんと、私1人だった・・・

ということは

麻薬に指定されている麻酔薬(主にケタミン)を取り扱える獣医師が

今回の聴衆の中では、私だけ、ということ。

BlogPaintこれにはちょっと、私が驚いてしまった。

十勝の獣医師全員が、麻薬施用者になる必要はないけれども

少なくとも、1診療所に1人くらいは

麻薬施用者を配置しておくべきではないかと

私は思った。


(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。
 
 





 

hig先生・来帯(2)

「馬はどういう病気で死亡するのか?」

IMG_0488という問いに、

hig先生は過去のデーターに基づいて、

「腸捻転」、「分娩事故」、「骨折」、

の3つを挙げ、

それを馬の3大死亡原因であるとしている。

まず第1の、腸捻転の部の解説の中で

私の印象深かったhig先生の言葉のひとつは

腸捻転・変位の中で

最も多い、結腸の捻転・変位は、

「ほとんどが前回りである。」

というものだった。

つまり、結腸捻転の馬が立っているとしたら

その結腸は「前回り」にでんぐり返るように捻転している、ということである。

これはとても役に立つ言葉だと思われる。

実際に馬の結腸捻転に遭遇した時

この言葉を頭に入れておけば

万が一、開腹手術することになっても

腹腔内を無駄に掻き回してしまう事がないように思えるのだ。

さらに手術中の注意点として、曰く

「周囲を汚染させない、すなわち、病巣部をできるかぎり術創から離す。」

「疑わしきは、切除する。」

「血行を確保する。」

「漏れないように吻合する。」

「狭窄しないように吻合する。」

これはすべて、hig先生の長年の経験から発せられた言葉であろうと思う。

我々が万が一、馬を開腹して腸管手術をせざるを得なくなってしまった時

この言葉は覚えておけばきっと役に立つだろうと思う。

しかも、これらの注意点は

牛の腸管手術においてもまったく同じことが言えるので

我々のような牛を主に診る獣医師にとっても

大いに役に立つ言葉であると思う。

また

IMG_0499さらに

馬の疝痛の

脱水時の

内科的治療においては

「補液ではなく大量の輸液を、持続点滴すべし。」

あるいはまた

盲腸や結腸の便秘において

「従来のさまざま下剤は、流動パラフィン以外はみな疑問。」

「ヒマシ油が診療所にあったら、すぐ捨てなさい。」

「便秘には、経口の等張電解質液を1時間に5リットル、自然落下で投与。」

IMG_0489などという言葉は

我々重種馬の診療現場で

内科治療する場面があれば

もう明日からでもすぐに役立つ言葉であろう。

そしてhig先生は

疝痛の部の解説の最後を

こんな言葉で締めくくった。

「Who can save the colic horse ?」

すなわち

「誰が、その馬を、助けるのか?」

そして、曰く

「我々獣医師が助けなければ、その馬は、苦しみ抜いて死ぬだけだ。」


(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。
 
 


 

hig先生・来帯(1)

私が敬愛してやまない獣医師&同窓の朋友、

NOSAI日高家畜診療センターの、

ドクターhig先生が、

十勝獣医師会の講習会の講師として招かれ、

十勝NOSAIの本所で講演をしてくれた。

hig先生は、この季節にはもう何年もの間

あちらこちらの講習会や学会で講演に飛び回り

今や日本の、馬の臨床獣医師の第一人者であることは

誰もが認めているところだと思う。

帯広畜産大学や駒場の十勝牧場などには何度か来られているようだが

十勝獣医師会の講習会の講師として十勝NOSAI に来てもらったのは

今回が初めてではないかと思う。 

演題は「サラブレッドの生産地のMadicine&Surgery」

日高地区の馬の多くがサラブレツドであり

十勝地区の馬の多くが重種馬であるという事情は違うが

だからこそ

日高地区の馬の診療技術は大きく進歩して来たのであり

hig先生はその牽引役を長年努めているのだ。

その内容は

馬の臨床の先進国(主に欧米)の技術を日本に取り入れて実践した30数年間だった

とhig先生は言う。

NOSAI日高の診療センターという性質上

最初の診療(一次診療)では手に負えない

酷い怪我や重い病気にかかった馬たちが

放っておいたら死んでしまう・・・

という状態で運ばれてくる。

そういう診療所で積み重ねたデーターによれば

IMG_0488馬が死亡する原因となる病気は、主に

「腸捻転」、「分娩事故」、「骨折」

の3つ、であるという。

これが、馬の三大死亡原因、というわけだ。

この三大死亡原因の病気に対して

果敢に立ち向かって来たhig先生の

IMG_0499豊富な臨床経験と

そこで培われて来た

高度な診療技術を

我々十勝の臨床獣医師達のために

実に解りやすく披露してくれた。

IMG_0498hig先生が30数年もの長い間に

実際に手がけて来た症例の披露であり

しかもそれが、学術データーとしても

しっかりとまとめられ、考察が加えられているので

単なる症例の披露に終わる事なく

また単なるデーターの羅列に終わる事もなく

我々聴衆の頭の中にすーっと入ってくるのだった。

その詳しい内容を全てこの場に書くことは到底できないが

hig先生のブログ「馬医者修行日記」

書いている先生本人の解説付きで

ゆっくりと読ませてもらったような講義だった。

その講義の、節目節目には

hig先生の人柄がにじみ出るような

名言、格言、引用文、が織り交ぜられていた。

その全てを私が受けとめる事ができたかどうかは全く自信がないが

私なりに感銘を受けたhig先生の「名言」がいくつかあったので

それを少し書いておきたいと思う。

先ずは・・・

(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。
 
 
 

野幌出張(2)

家畜診療技術北海道地区発表会は、

乳牛7題、肉牛4題、馬1題、の計12演題の発表があった。

IMG_0443その中から、

優秀な発表と見做されたのは、

以下の2題、

「乳牛における分娩後子宮捻転の12症例に関する検討」

                         北海道ひがしNOSAI     風間 啓  氏

「国内で初めて確認された牛コレステロール代謝異常症の4症例」

           オホーツクNOSAI     鴇田 直子  氏

この2題は

来年の2月に東京で行われる

家畜診療技術全国発表会で講演されることが決まった。

詳しい内容は

いずれ、「家畜診療」誌に掲載されると思われるので

楽しみにしていて頂きたいが

どちらもすばらしい内容だった。

IMG_0419前者の発表は

「分娩『後』子宮捻転」、という

今までとは病態の違う珍しい子宮捻転の症例を

12例も収集し、学術的な検討を加えた報告だった。

また後者の発表は

2015年に世界で初めてドイツで報告された

「牛コレステロール代謝異常症」という新しい遺伝病を

早くも2016年に、国内で4例も確定診断したという報告だった。

どちらの先生の発表も

常日頃の症例に対して

異常を見逃さない鋭い観察力と

あくなき探究心と

新しい症例であることを裏付ける

獣医学術知見の広さとを

兼ね備えいてたたからこそできる

レベルの高い発表だった。

IMG_0420それ以外の演題発表も

さまざまな角度からの新知見

斬新な発想にあふれた内容で

とても楽しく拝聴させて頂いた。

演者の先生方のほとんどが

NOSAIに勤め始めて10年前後の新進気鋭な先生方だった。

その中に、20年勤めた先生が1人おり

さらに、私だけが

NOSAIに勤めて30年以上経っているロートル獣医師だった(笑)

しかし、私にはそれがとても心地よかった。

若い先生たちと同じ土俵に立って発表していると

自分も昔、どこかで学術発表をした時に感じた

緊張感のようなものが蘇って来て

新鮮な気持ちに成れたのだった。

IMG_0425発表会の合間の

休憩時間や

食事の時間などにも

若い獣医師の先生方に混じって

色々な質問や雑談を交わすことが出来たのは

今回の出張の大きな収穫だった。

発表会が終わった日の夜には

懇親会が設けられていた。

そこではさらに

参加者の先生方と

あまねく情報交換をすることか出来た。

若い先生方の中には

私のブログを読んでくれている方も意外に多く

そこでまた話が盛り上がることもしばしばだったのは

望外の喜びだった。

宴もたけなわな所で

とりあえずの締めという事になった。

M木先生から指名されていた私は、立ちあがって

今日の各症例発表との一期一会に感謝し

それから発表者の皆さんへ賛辞と

全国発表会へ駒を進めた2人の先生方の

発表の成功を祈念して万歳三唱!をして

この場をなんとか締めくくった。

懇親会には
 
北海道NOSAI連合会のH田家畜部長も

札幌からはるばる参加してくれていた。

H田家畜部長というのは、ご存知の通り

IMG_0421又の名を「頑黒之和」

あるいは又「頑黒和尚」

と名乗る人物である。

この人と私が

ひとたび隣り合わせて杯を乾せば

北海道獣医師会雑誌の文芸欄

果ては北海道の俳句界に話が及ぶのは

もう避けることが出来ない(笑)

締めの挨拶が終わった直後

隣の頑黒和尚曰く

「ここで一句、ってやらないの?」

「・・・余裕なかったよ」

「俺ならやるよ。」

「・・・そっかぁ(笑)」

頑黒和尚氏から

鋭く突っ込まれてしまった私。

いみじくも、俳人ならば

そこで一句は欲しかったわけだ(汗)

では、その代わり

今この記事で

その宿題に応えて一句・・・


 野幌の初雪解ける熱気かな   豆作



人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。
 










野幌出張(1)

全国農業共済会が主催する、

家畜診療技術発表会の北海道地区予選会が、

野幌(のっぽろ)の北海道NOSAI研修所で、

毎年開かれている。

今回私は、その発表会に演題を持って行く事になった。

とはいっても

実は、最初からこの会に発表する予定だったのではなく

9月に旭川で行われた北海道獣医師会三学会の方へ出す予定だった

「腹腔洗浄によって回復したミニチュアホースの腹膜炎の1症例」

という発表が、十勝を襲った台風10号の被害で没になり

十勝NOSAI家畜部の計らいで

急遽こちらの発表会に参加させてもらう事になった。

職場命令の出張は、JRを使って移動することが原則になっている。

しかし、十勝地方の鉄道(JR)はまだ台風10号によって寸断されたままであり

IMG_0398札幌方面へ行くためには

未だに代行バスとJRを乗り継いで

4時間近くかけて行かなければならない。

しかも、JRの臨時特急は1日3往復しか運行していない。

そのおかげで今回の出張は

普段であれば1泊2日であるところを

2泊3日のプランに延長された。

これが、返って私にはとても有り難く

余裕の出張旅行を堪能できる事になった。

IMG_0403帯広からの代行バスは空席でガラガラだった。

そのバスでトマム駅まで行き

トマム駅からは臨時特急列車に乗り換えて札幌へ向かうのだが

その臨時特急列車もまたガラガラに空いていた。

道東から札幌方面へ行く人たちの交通手段は

現在、わざわざ高くて時間のかかるJRを使う人は

非常に少なくなっているようだった。

札幌駅に中途半端な時間に到着した私は

NOSAI研修所の研修課総括のM木先生にメールを打った。

「ご無沙汰してます!これからそちらへ伺います。」

しばらくすると返事が返ってきた。

「今日来るのは何時頃?、予定なかったら一杯やりますか。」

私の返信はもちろん、了解♪

M木先生はNOSAIの1年先輩で

十勝NOSAI時代からの長い付き合いの朋友である。

M木先生の勤務終了時刻を待ち

研修所の近くの居酒屋へ。

M木先生と飲むのは数年ぶり♪

ビールジョッキを傾けながら

ゆっくりと、色々な話をすることができた。 

IMG_0407はじめは、明日の発表会に備えて

軽〜く、飲むつもりだったのだが

話が弾んでくるに連れて

焼酎のお湯割りの注文が止まらなくなり

気が付いた時には

午後10時をとっくに回っていた(笑)

翌日

IMG_0408発表会は午後からだったので

少々飲み過ぎた頭をリフレッシュさせるべく

買い物がてら

研修所の周りを散歩することにした。

IMG_0414野幌市街の四番通り付近は

ナナカマドの並木が真っ赤に色づいていた。

消防大学校の側を通って

三番通り付近へ出ると

IMG_0415今度は銀杏並木の

明るい黄色一色の世界になった。

じつに広々とした

静かな街の佇まいだった。

私はそんな街をのんびりと徘徊しながら

午後からの発表会で

しゃべる内容などを反芻していた。


(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。
 



 

十勝馬まつり

「十勝軽種馬農協」という組織がある。

文字通り、

十勝地方の軽種馬の生産者で構成する農協である。

ここで言う軽種馬とは 、

サラブレッドのことである。

すなわちこの農協は、

十勝地方のサラブレッドの生産者で構成する農協である。

その組合員の戸数は、

わずかに10数戸。

繁殖牝馬の数は、

わずかに数10頭の、

小さな生産者団体である。 

十勝地方の馬の生産と言えば

ペルシュロンやブルトンやベルジャン、といった重種馬が主体で

サラブレッドの生産は影が薄いけれど

JRAから補助を受けながら

頑張ってサラブレッドを生産し続けているのである。 

そんな十勝軽種馬農協の事務所と

IMG_0313種牡馬の繋留所(種場所)が

我が町にある。

ここの馬たちは、NOSAIには非加入であるけれども

我々獣医師は年に何回か

ここで繋留されているサラブレッドの種牡馬や

そこへ種付けにやってくる繁殖牝馬の

診療をする機会がある。

IMG_0314先日は

ここの種牡馬の最長老が老衰で亡くなった。

種牡馬といっても昭和63年生まれの爺様

28歳という高齢で

悠々と余生を過ごしていた。

その名は「リンドシェーバー」。

競馬ファンの人であれば

きっとご存知に違いない。

朝日杯3歳ステークスで

あの名馬マルゼンスキーの樹立した記録を塗り替えてレコード勝ちした馬である。

IMG_0306それから25年。

華やかな現役時代とはうって変わって

静かな最晩年を十勝で過ごし

先日、静かに息を引き取った。

IMG_0312私はその翌日

この馬の死亡診断書を届けに

十勝軽種馬農協の事務所へ行った。

とても良い天気だった。

IMG_0310そして、その日は折しも

十勝軽種馬農協が毎年主催する

十勝馬まつりが行われている日だった。

家族連れの一般客が多く訪れ

IMG_0309ポニー馬車や

乗馬体験などがあり

地元の生産関係者と

競馬ファンと

子供達で賑わっていた。

とても和やかな

秋晴れの一日だった。


  人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。

 

ポニーの蕁麻疹

「皮膚にブツブツが出来てるんだけど・・・」

そんな稟告で往診した★さんのポニー。

「元気や食欲はあるんだけど・・・」

枠馬に入っていた馬は、

確かに皮膚にブツブツができていた。

蕁麻疹のようだった。

IMG_5830「これは蕁麻疹みたいですね。」

「というのは・・・?」 

「アレルギー。」

「・・・?」

「過敏症。」

「・・・?」

「ほら、人でもあるでしょ。」

「・・・。」

IMG_5831「痒くなったり、ブツブツできたり。」

「・・・うん。」

「何か刺激されて、それに必要以上に反応しちゃうやつ。」

「あー・・・。」

「何の刺激だかわからないけど。」

「変なもの食べたのかい・・・?」

「そういう可能性、ありますね。」

「何食べたんだか・・・?」

「食べた物だけじゃないかもしれない。」

IMG_5832「・・・?」

「虫に刺されたとか。」

「そんなことあるの・・・?」

「あるかもしれない。」

「・・・?」

「刺されたところを見たことはないけれど。」

「蜂とか・・・?」

「わからないけど、こういう蕁麻疹は夏から秋に多い。」

「あー・・・。」

「だいたい草や虫が元気のいい時に多い。」

IMG_5833「そうなんだ・・・。」

「痒がってないですか。」

「いやー、どうだべ・・・。」

「痒くて、あちこちに擦り付けて皮剥けちゃうのもいる。」

「それは・・・。」

「すりっぽ、ってきいたことあるでしょ。」

「あー・・・あるね。」

「それもアレルギーなんだけど、痒がってないですか。」

「いやー、あまり痒くはないみたいだけど・・・。」

「とりあえず、注射打っておきますね。」

「うん・・・お願いします。」

蕁麻疹のような過敏症の

原因を特定するのはなかなか難しいが

症状は間違いなく蕁麻疹のようなので

とりあえず

抗ヒスタミン剤を打って様子を見ることにした。

翌日

そのポニーの皮膚には

若干の模様が残っていたものの

その皮膚の変化はかなり軽減していた。

そのようなわけで、翌日は

そのまま何もせず様子を見ることにした。


 人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。





 

誇るべき、日本の牛、日本の馬。

音更町の家畜共進会場で、

IMG_5849第47回十勝総合畜産共進会、

肉用牛の部、種馬の部、

が開催された。

私はこの日たまたま休日をもらっていたので、

前夜の激励会と、

当日の審査会を、

ゆっくりと拝見させてもらった。

ここで出品される肉用牛は全て、

黒毛和種である。

褐毛和種(いわゆる赤牛)の部も設けられているが、

やはり、日本全国的に

黒毛の需要が圧倒的に多いようだ。

その黒毛和種の

肉用牛としての改良レベルを

十勝全体で高め

上位に選ばれた牛たちは

さらに全道(全北海道)大会、全国大会へと

コマを進めることになる。

黒毛和種の生産は、世界の中でも

言うまでもく日本が最も盛んである。

IMG_5847他国の追随を許さぬ

世界のトップレベルの

誇るべき「日本の牛」の畜産と言うことができる。

ここが、実に

酪農業界のホルスタインの生産とは違うところ

であると思う。

同様に

馬の部に出品される馬たちは

全て、農用馬と呼ばれる重種馬である。

重種馬の生産目的は

もちろん、ばんえい競馬である。

ばんえい競走用の馬の生産の

改良レベルを

十勝全体で高めるのが

馬の部の共進会の目的である。

今や、日本の重種馬は世界のどこ馬よりも

大きく、太く、逞しくなっている。

それは世界でただ一つの

ばんえい競馬が存在しているからである。

それに供用される馬たちの改良は

言うまでもく日本が最も盛んである。

IMG_5848他国の追随を許さぬ

世界のトップレベルの

誇るべき「日本の馬」の畜産と言うことができる。

ここが、実に

軽種馬業界のサラブレッドの生産とは違うところ

であると思う。


 人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。




 

重種馬の生産意欲の高まり

我が町の馬の繁殖シーズンも、

そろそろ大詰めを迎えている。

我が町の馬の・・・と言うよりも、

我が町を含めた道内の他町村の繁殖牝馬の・・・繁殖シーズン

と言ったほうがいいかもしれない。 

IMG_5804それだけ

我が町の重種の繁殖牝馬は

頭数が減ってしまっているのだ。

しかし

地元の牝馬の数は減っているものの

今年から供用されている

我が町の種牡馬の人気が

なかなかのものだったので

他所の町から種付けにやってくる牝馬が多く

その馬たちの発情鑑定や

IMG_5803不妊治療や

妊娠鑑定などの頭数が 

今年は、久しぶりに多かったように思う。

これはとてもありがたいことだった。

10数年前から

我が町の重種馬の飼養頭数は

恐ろしい勢いで減り続けていて

その歯止めが全くかからず

消滅寸前の様相を呈していた。

IMG_5805それにつれて

私が手がける馬の繁殖の仕事も

当然のように減り続けて

自分の仕事が激減したという虚しさだけに止まらず

重種馬の繁殖の獣医療自体が途絶えてしまうのではないかという不安が

年々増している状況だった。

ところが今年は久しぶりに

そんな不安を払拭できる要素が現れたのだ。

その最も大きな出来事は

やはり

昨年来の重種馬の高値

ということになるのだろう。

重種馬の高値がしばらく続けば

あちこちで生産意欲を高める人が

必ず現れるものである。

生産意欲が高まってくれば

その要求に従って

我々の仕事、すなわち

重種馬の繁殖の獣医療に対する期待も高まってくる。

今年の繁殖シーズンを振り返ると

そんな生産意欲の高まりと

我々の馬の繁殖獣医療に対する期待の高まりが

ほんの僅かであるけれども

感じられるようになった。

そんな期待に応えるために

我々は重種馬の繁殖診療の技術を

しっかりと継承してゆかねばならないと

あらためて思った。

今年はそんな繁殖シーズンだった。

 人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。


 



 

最後の1頭、誕生♪

昨夜の深夜1時半頃、

枕元の携帯電話が鳴った。 

「・・・袋が見えてきたから、大至急頼む。」 

分娩遅延の馬のいるΑさんからの往診の依頼だった。

急いで馬小屋まで車を飛ばして、

到着した時には、

IMG_5650写真のように、 

すでに生まれていた。

仔馬の後肢2本はまだ胎胞に覆われて、

臍帯(へその緒)はまだ微かに脈を打っていた。 

生まれたばかりの仔馬と

産んだばかりの親馬は

共に寝そべり

鼻で呼吸をしていた。

その傍らに

飼い主のΑさんがしゃがんでいた。

「無事に出てよかったね。」 

「・・・。」 

「オス、メス、どっち?」

「・・・まだわからん。」 

「おっきな子だね。」

「・・・そうでもないんでないか。」 

「いやぁ結構でかいよ。」 

 「・・・ずいぶん遅れたからな。」

IMG_5663「何日遅れたの。」 

「・・・24日。」 

「予定日は?」 

「・・・24日。」 

「5月24日・・・が予定っていうことは・・・」 

「・・・だから24日だって。」 

「そっか(笑)じゃあ発情1周期まるまる遅れたっていうことだ。」

「・・・そうだ。」 

仔馬が頭を上げ始め

親馬が仔馬のことを気にし始めた。

「いま頃のお産は、寒くなくていいね。」 

「・・・。」

「メスみたいだね。」 

「・・・そうか、ま生きとったら、どっちでもいいわ。」 

「やっぱりでかいよ。」 

「・・・メスにしては肢が太いかもな。」 

「種馬はどこの?」

「・・・Mさん。」 

「いい子できたね。」 

「・・・ま、こんなもんでないか。」 

「こいつだけどうしてこんなに遅れたのかね。」 

「・・・この親は、おととしも遅れて、その時は死産だったからな。」 

「それで心配で、アリナミン何度も打ってたんだ。」 

「・・・そうだ。それが効いたんでないか。」 

「それはどうかわかんないけどね。結果オーライだね。」

「・・・この親、自分ばかり肉つきやがって。」

「そういう親、いるよね。お腹の仔がなかなか育たないのかね。」 

「・・・だから遅れんのか。」

「栄養分の行き先のちがいで、遅れたり早くなったりなのかもね。」

「・・・。」 

親馬が仔馬を舐め始めた。

「・・・一服するべ。」

私たちは

Αさんの家に上がり

居間の監視モニター画面の前に座り

この親仔を引き続き見守りながら

お茶で一服することにした。 

1時間ほど経ったところで

再び馬小屋へ行ってみると

IMG_5667親は立ち上がり

引き続き仔馬を舐めていた。

胎盤(後産)がまだぶら下がっていたので

オキシトシンの注射を打ち

そのまま帰路に着いた。

翌朝

往診の1番最初にΑさん宅に寄ってみた。

昨日の親子は

特に問題なく

普通の親仔馬の姿で

馬小屋の中に立っていた。

「後産は出たの?」 

「・・・今朝、おまえが帰ってからすぐ出た。」

「仔馬のうんち出た?」

「・・・でた。浣腸もした。」

「じやあもう大丈夫だね。」

「・・・なかなか乳首に吸い付かんのよな。」

「これだけ元気に乳探ってれば、大丈夫だよ。」

IMG_5668仔馬は親の乳を探り

親馬は仔馬の鼻先へ白い乳を漏らしていた 。

仔馬が乳首に吸いつくのは

もう時間の問題だった。

私はひと安心して

次の往診地へと向かった。 

かくして

わが町の重種馬の

今年最後のお産も 

ようやく無事に終わったのだった。 


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。

 
Profile
ギャラリー
  • 分娩後6日目の子宮脱!(1)
  • 分娩後6日目の子宮脱!(1)
  • 分娩後6日目の子宮脱!(1)
  • 分娩後6日目の子宮脱!(1)
  • 分娩後6日目の子宮脱!(1)
  • 分娩後6日目の子宮脱!(1)
  • 分娩後6日目の子宮脱!(1)
  • 第36回北の年尾忌句会in小樽
  • 第36回北の年尾忌句会in小樽
蓄 積
1日1回クリック宜しく!

願援助為自己満足
livedoor 天気
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

感 謝
牛馬語の俳句

  • ライブドアブログ