北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

馬の診療

ばんばの予防獣医学

昨日の十勝毎日新聞のトップに、

うれしく頼もしい記事が出ていた。

ばんえい競馬の病気を未然に防ぐための共同研究プロジェクト、

IMG_0652が立ち上げられた。

「帯広市」と「楽天競馬」と「帯広畜大」

が協力し合って推し進める、

という3年間の共同研究らしい。

これはすなわち「ばんばの予防獣医学」のひとつ

と言って良いのだはなかろうか。

記事を読む限りその内容は

「飼料」「微生物」「疾病」

の3要素を総合的に研究するという。

主に

ばんえい競馬の厩舎内のデーターをとるようだが

特に今まで

科学的な検討がなされてこなかった

「厩舎のエサ」
に対して

このような研究の手が伸びたことは

大変喜ばしいことだと思う。

「医は食に通ず」「医食同源」という言葉は

IMG_0654当然のことながら

人間のみではなく

馬にも当てはまる言葉である。

ばんえい競走馬たちの食事が

科学的に見直されて

彼らの食事が改善されて

彼らがより健康になり

IMG_0656その結果として

よりレベルの高い

ばんばレースを

披露してくれる

そんな

ばんえい厩舎になってくれることを願っている。

人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。
  
 

重種馬の交配の動画

馬の交配(種付け)シーンは、

たびたび当ブログ上にアップしてきた。

今回は、

診療所の新人のT獣医師が撮影した動画。

良く撮れていると思う。

種馬の尻尾の動きに注意して欲しい。

それで射精の有無を判断する。

  ↓↓↓


https://www.youtube.com/watch?v=Rv37I1zfTv0&feature=share





IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。
  

重種仔馬の胎便停滞

深夜に飼主の△さんに介助されず、

自力で自然分娩した重種馬。

△さんが朝来て見ると、

母親が疲れてずっと寝たまま、

生まれた仔馬がその周りをよちよちと、

お乳を求めて 歩き回っていたという。

半日がかりで

母馬に治療を施し

母はようやく立ち上がった。

その日の夜

仔馬は母馬の乳首に自力で吸い付いて

お乳を飲めるようになった。

これでめでたしめでたし

と、なるはずだったのだが

その日の夜

当番の携帯電話が鳴った。

「仔馬が腹痛いようだ・・・」

△さんの馬小屋に着いて

子馬の様子をしばらく見ていると

仔馬はお乳を吸ったかと思うと

すぐに口を離して横を向き

IMG_0175背中を丸めて

首を垂れて

ゴロンと寝たかと思うと

後肢をばたつかせて

また起きて

また背中を丸めて

また首を垂れて

そんなしぐさを繰り返していた。

いわゆる疝痛症状である。

「うんち出たの・・・?」

真っ先に疑うのは胎便停滞である。

「・・・ああ、出たよ。浣腸を2回かけたからな。」 

それならば大丈夫だとは思ったが

「ちょっと(仔馬の肛門に)手を入れさせてね・・・」

私は、仔馬の直腸を指で探った。

胎便らしいものには全く触れず

指の届く範囲内では直腸の中は空虚だった。

「・・・ガニグソ(胎便)は、もう出たよ。」

「まだ残ってるのかも・・・」

「・・・乳飲んでるんだが。」

「もう一度浣腸してみようか・・・」

浣腸はすでに2回もしているし

お乳も飲み始めているので

便が通じるのは時間の問題だと思ったが

他にすることもないので

もう一度浣腸をすることにした。

IMG_0176浣腸液を入れて

しばらくすると

仔馬はいよいよ背中を丸めて

尻尾を高く上げて

排便姿勢になった。

仔馬の肛門から浣腸液が溢れ出て

その最後に

茶色い粘稠性の胎便が

片手の手のひらほど出た。

その後しばらく

仔馬は背中を丸めていたが

そのまま敷き藁に倒れ込み

首を投げ出したかと思うと

そのままスヤスヤと眠ってしまった。

IMG_0179さっきまでは

ここでまた足をばたつかせて

起き上がったのだが

今度は

起き上がる気配もなく

そのままスヤスヤと眠ってしまった。

「・・・家に入って、一服するべ。」

私と△さんは

その様子をしばらく見て

家に上がってお茶を飲むことにした。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。

  




 

ミニチュアホースのお産

我が診療地区の、

繁殖牝馬の飼養頭数が激減したことは、

このブログで繰り返し書いているけれど、

全くゼロになったわけではなく、

毎年どこかの牧場で、

仔馬が生まれている。

馬の品種は

主にばんえい競馬用の 

重種馬が多いが

最近よくあるのが

乗馬用のポニーや

愛玩用のミニチュアホースといった

小型の馬のお産である。

前回の夜当番の時

「破水したのになかなか出てこない・・・」

という電話で呼ばれたのも

ミニチュアホースのお産だった。

牧場に到着して

カッパを着て手袋を用意していると

飼主の父さんがやって来て

「今出たわ、生きてて無事だった・・・」 

とのこと。

馬のお産ではよくあるパターンだった。

このパターンを決して期待してはいけないのだが 

毎回こうなったことに安堵して

こうなる度に

あぁ、春だなぁ・・・

と感じるのは

私に限らず

馬の診療のある地域で働く獣医師ならば

誰でも感じることではなかろうか。

 「仔馬と母馬、見せてね。」

こう言って

馬の母仔共に異常がないことを確かめるのが

この場合唯一の仕事となる。

そこで何か異常を発見することもあるけれども

大概は飼主さんが既に色々気づいているので

IMG_0168それを聞きながら

ただ

母馬と仔馬の仕草を

じっと眺めていれば良い。

今回のミニチュアホースは

IMG_0167たいへん可愛らしい親仔だった。

ミニチュアホースは母仔ともに小さい

というのは当然だが

母馬と仔馬の

大きさの比率を考えると

仔馬の体格に比べて

母馬の体格が小さい傾向にあるようだ。

IMG_0173

それにしても

小型馬の親仔は

可愛らしい。

しばらく見ていたら

仔馬が何度も立とうとしては転がり

そのうちに

ついに立ち上がった。 


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。

  

ミニチュアホースの流行性肺炎?(3)

パドックにいる3頭の同居馬が、

みな咳をするなどの肺炎症状を示し、

その中の1頭が、

初診から5日目に死亡してしまった。

そんな事実を前にして

飼主のθさんが言った。

「死ななかった2頭の治療と血液検査、してくれないべか。」

それは、私としても

ぜひ診ておきたかったので

二つ返事で採血をして

残りの2頭の体温を測り聴診器をあてた。

残りの2頭の食欲は正常で

咳も収まり

体温はど面も37℃後半

特に異常は見られなかった。

しかし、念のために

栄養剤と抗生物質を投与しておいた。

血液を持ち帰り

しばらく放置しておいたら

血清と血餅とに分離していた。

IMG_69162つの血液のどちらの血清も

透明感があり

死亡した馬のような

乳糜(にゅうび)血清ではなかった。

IMG_6903







翌日

検査の結果を見ると

IMG_0061




AG比の低下とAST(GOT)の上昇が見られるものの

最も心配していた中性脂肪は

それぞれ

63 mg/dl   56 mg/dl

と正常値を示し

その他の肝機能を示す値もほぼ正常値だった。

この結果を

θさんに報告し

さらに

今回の最初に死亡した馬だけは

感染が起こる前に

もともと脂肪肝という基礎疾患があり

病原体の感染に対して

抵抗力がなかったので

最悪の結果になった

ということを説明した。

説明しながら

細菌かあるいはウイルスによる

感染の流行に対して

基礎疾患のある個体だけが

重篤になり死に至る

という構図は

近頃、毎日

テレビのニュースで報じられている事と

そっくりだと思った。

(この記事終わり)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。

  

ミニチュアホースの流行性肺炎?(2)

1つのパドックに入っていた3頭の馬が、

一斉に咳をして、

一斉に食欲不振、

手持ちの抗生物質を筋肉注射して、

2頭は快方に向かったものの、

1頭の調子が上がらない、

という事で診療をしたミニチュアホース。

リンゲルなどの輸液と抗生物質を投与し

翌日、血液検査の結果を見たら

驚きの値だった。

BlogPaint特に

 中性脂肪  3104 mg/dl   !

正常値は 50〜150 mg/dl 程度だから

まるで桁が違う。

正常値の数倍になっている個体はよく見かけるが

この馬の血清には約30倍の中性脂肪が含まれていた。

さらに

IMG_6903 AST(GOT)  13711 U/L

 γ-GT                80  U/L

 総ビリルビン 3.0  mg/dl

など

肝機能を診る項目が軒並み異常値を示していた。

これはもう

単なる脂肪肝というよりは

肝臓の崩壊である。

2診目からは

強肝剤などの脂肪肝治療に重点が置かれ

約半日の輸液治療を行なった。

しかし

翌日の3診目にも

症状は全く改善されていなかった。

そして

翌日の4診目の朝

この馬は起立不能になった。

IMG_6910飼主のθさんの希望で

帯広畜産大学へ搬入して

さらなる治療が続けられた。

しかし

その翌朝早く

このミニチュアホースは死亡した。

畜大手の病理解剖の結果は

以下の通り

BlogPaint







〈臨床診断名〉
 高脂血症、流産

〈病理解剖学的診断名〉
 脂肪肝、化膿性壊疽性肺炎、子宮蓄膿症


〈病理解剖学的所見〉
1.肝臓はびまん性に褪色しており、辺縁は鈍であった。表面および割面では、小葉構造が明瞭化しており、黄褐色領域と黄白色領域がモザイク状になっていた。
2.左肺前葉の表面および割面は黒褐色調を呈し、灰白色および黄緑色の変色巣も混在していた。同部は膿臭を放ち、硬結感を増し含気量は著しく乏しかった。割面では、直径0.5-1.0兮腓龍洞が散在していた。左の胸腔内には、フィブリンを混じた膿臭を伴う泥水様漿液性の胸水が少量貯留していた。
3.子宮体部は暗赤色調であり、左右の子宮角および子宮体には黄白色混濁の膿臭を伴う悪露が少量貯留していた。


ということだった。

(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。

  

ミニチュアホースの流行性肺炎?(1)

1つのパドックに同居している3頭のミニチュアホースが、

みな一斉に咳をしはじめて、

食欲不振となったという。

そこで

飼主のθさんは数日間、

手持ちの抗生物質(マイシリン)を筋肉注射たところ、

3頭のうち2頭は快方に向かったという。

ところが

残りの1頭の食欲が全く上がらないので、

「診に来てほしい。」

という連絡が入った。

IMG_6901H28年6月生まれ

3才♀のミニチュアホース

初診時の

体温36.0℃ 心拍数40 呼吸数16

食欲廃絶、横臥を好み

聴診すると

腸蠕動ほとんどなし。

呼吸音は若干の粗さは有るものの

それほど異常な肺音は聞くことができなかった。

IMG_69001つのパドックの中の

3頭がそろって

突然元気がなくなったらしく

何か変なものを食べて

「食中毒にでもなったのだろうか?」

というθさんの稟告だった。

しかし

エサの内容は全く変わっておらず

中毒になりそうなエサは思い当たらないという。

IMG_6899とりあえず

何かの感染症を疑い

対症療法として

抗生物質の投与と

リンゲルなどの点滴治療を施すことにした。

同時に採血をして

明日の再診を告げて

事務所に戻り

血液をしばらく放置して

カルテを書いて

その血液を再び見て驚いた。

IMG_6903血清の部分に

全く透明感がなく

乳黄色に濁っていた。

血清中の脂肪が高いのは

ポニーやミニチュアホースでは

よくあることなのだが

今回のこの白濁の程度は

尋常ではない・・・

と、思った。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。

  

ばんえいG1・第45回帯広記念、観戦記

1月2日(木)の午後から、

飲み友達のH田さんとばんえい競馬場へ。

今年初めての開催ということで、

各種イベントやファンサービスが盛りだくさんで、

場内に入った時には、

無料の蕎麦のコーナーから長い行列ができていて、

その最後尾は中央の馬券売り場まで続いていた。

こんなに混雑している帯広競馬場に来たのは

初めてかもしれないと思った。

だが屋外は北西の風が吹いて非常に寒く

混雑しているのは建物の中だけだっかもしれない。

ともあれ

そんな熱気の中で

暖かいコップ酒を買って

それを飲みながら

第9レースの馬券を買い

その馬券を外し

資金を約2000円程度使ったところで

私はH田さんとともに

本日のメインレース

第45回帯広記念のパドックを見に外へ出た。

寒風吹きすさぶ中

ごつい大きな馬たちが

円乗りをしていた。

その馬たちの中で

後肢の踏み込みがよく

ひときわ元気良く見える馬がいた。

3番コウシュハウンカイだった。

他の馬たちもみな堂々として

立派な馬体で誇らしげに歩いていたが

その中でも特にこの馬の肢の運びが力強く

全体的に元気がみなぎっているように見えた。

「・・・いいねぇ、あの3番の馬!」

IMG_6802ところが

手元の競馬新聞を見ると

3番コウシュハウンカイは1週間前に熱を出し

前レースを棄権して出走取り消しになっていた。

つまり今回のレースは病み上がりでの参加である。

さらに新聞をよく見ると

この馬の曳くハンデ(ソリの重量)は

920キロと全出走馬のうち単独で1番重い。

これはどういうことか?

そんな厳しい条件を課してまで

この馬をこのレースに出走させる理由は何か??

IMG_68037頭立ての少頭数なので

調教師が頭数合わせで

病み上がりの馬にもかかわらず

レースを盛り上げるためだけに出すのだろうか?

さらに新聞を見ると

この馬の所属は松井厩舎だった。

私は松井調教師とは面識があり

一度一緒に食事をしたことがあるのだが

自厩舎の馬を人の都合だけで酷使するような人ではなく

馬をとても大切にするという印象を受けた調教師である。

新聞では

「厳しいですよ。」

などと、控え目なコメントを出しているが

実際に3番コウシュハウンカイをパドックで見ると

とても元気が良く気合十分に見えるのだ。

と、いうことは

・・・ここは勝負に来ているのではなかろうか!!

IMG_6790そう思った私は

3番コウシュハウンカイを本命馬として

対抗馬は1番人気の実力馬1番オレノココロ

穴馬として最軽量ハンデ890キロを曳く7番ソウクンボーイ

の3頭の馬券を買うことにした。

機械で馬券を購入し

それから売店でお酒を一杯買って

H田さんとともにスタート地点へ向かった。

IMG_6787ゲートが開き

馬群はほぼ一線で第1障害を越え

第2障害の前で全頭が止まって息を整える。

最初に仕掛けたのは2番ミノルシャープ

それから次々と他の馬が登坂を仕掛けてゆく

「いけぇ〜!」「それゃ〜!」「がんばぁ〜!」

観客から声が飛ぶ。

「たくみぃ〜〜!!」

騎手の名前を叫ぶ声も混じる。

第2障害の頂上をトップで越えたのは

遅めに仕掛けた3番コウシュハウンカイだった。

続いて2番ミノルシャープが越え

その他の馬も次々と第2障害を越えた。

最後の直線で1番オレノココロが猛然と追い詰めてきた。

逃げる3番コウシュハウンカイとの力比べになった。

ゴール寸前で1番オレノココロの足が一瞬止まったかに見え

それからまた動き出しその直後には

他の馬たちも次々とゴールへなだれ込んだ。

興奮冷めやらぬまましばらくして

電光掲示板に着順が映し出された。

1着・・・3番コウシュハウンカイ

2着・・・1番オレノココロ

3着・・・7番ソウクンボーイ

IMG_6789私はまばたきしながら

掲示板の着順を見直してから

手元にある3枚の馬券を見直した。

「・・・当たっちゃったよ・・・3着まで(笑)・・・」

私はH田さんにむかって

そうつぶやきながら

呆然と歩き

その後

確定した払戻金の場内アナウンスを聴いた。

「単勝3番、1370円。」

「馬連1番3番、770円。」

「ワイド1番3番、290円。3番7番、1450円。1番7番、910円。」

ということは・・・

このレースへの馬券代金は

IMG_67911900円で

払い戻し金の

13550円が戻ってきたことになる。

前レースで2000円すっていたれけれど

それさえも挽回する配当金を

手にすることができた。

IMG_6800今まで何回か馬券を買っていて

レースで狙った3頭の馬が

ワンツースリーで的中する

という経験は

私には無かった。

IMG_6793新年早々

これはもう

大変うれしい出来事になった♪

長年競馬で損をしていた経験が

ようやく功を奏して

読みが冴えわたったのだろうか

2D22930C-9016-40C6-8891-B75FEBEAA43Bいやいや

そうではなく

今年のツキを

これで

使い果たしたのだろう。



IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。

サラブレッドの過疎地域

十勝の馬といえば、

今は「ばんえい競馬」用の、

体重が800〜1000キロ程度の大きな重種馬である。

しかし、

私が就職した頃の

およそ30年前の十勝には

体重が400〜500キロ程度の軽種馬(サラブレッド)も、

かなりの頭数が飼われていて、

当時の我が幕別町には、

重種馬が約800頭、

軽種馬が約300頭、

も飼われていたのである。

それが

あれよあれよという間に

飼養頭数が激減し

今では

重種馬が数十頭、

軽種馬に至っては数頭、

IMG_6090という

まことに寂しい

風前の灯のようにな状況になってしまった。

「ばんえい競馬」がかろうじて存続し

今、十勝では重種馬の生産意欲が

IMG_6091息を吹き返しつつある中で

十勝の軽種馬(サラブレッド)の

生産意欲は

特に高まることもなく

このままでは後継者もなく

自然消滅してしまうのではないかという

IMG_6094危機的状況になっている。

それでも我が町には

「十勝軽種馬農協」の事務所があり

十勝の組合員さんが十数人名を連ねて

細々と軽種馬(サラブレッド)の生産に励んでいる。

IMG_6095先日、珍しく

我が診療所にサラブレッドがやってきて

後肢の外傷の治療をして帰っていった。

サラブレッドは重種馬よりも

気性が激しいので

IMG_6098保定や局所麻酔には

多く気を使う。

久しぶりだったので

思わず緊張してしまう

そんな診療だった。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
      
 

孤児馬の下痢

前回の記事は、

育児放棄された和牛の仔の下痢だったが、

今回の記事は、

孤児となった重種の仔馬の下痢である。

孤児になった原因は、

生後10日目で親馬が腸捻転で死亡してしまったことによる。

サラブレッドの生産地であれば

代用の母馬、すなわち乳母(うば)馬

が用意されて

孤児馬は乳母馬に育てられ

事無きを得ることが多いだろう。

ところが

繁殖牝馬が激減してしまった重種馬の生産地では

そう簡単には乳母馬が見つからない。

死産したり、生後の仔馬が死んでしまったりしする繁殖牝馬は

毎年現れるのだが

哺乳されなければ

その牝馬のお乳は1週間程度で出なくなってしまう。

また、タイミングよく乳母になれそうな馬がいたとしても

飼主さん同志が知り合いではなかったり

知っていても仲が悪かったりした時は

孤児馬に乳母馬に出会うことが難しく

非常にハードルの高い状況になっている。

今回の飼主の◎さんも

乳母馬を見つけることができなかった。

仕方なく、止むを得ず

生後10日の孤児馬を

人工哺育することになった。

馬の人工哺育は

牛の人工哺育よりも

はるかに体力を消耗する。

◎さんは朝6時から3時間おきに

馬用の人工ミルクを仔馬に与え続けた。

6時、9時、12時、15時、18時、21時、0時

の7回を毎日繰り返した。

毎日毎日の繰り返しだから 

午前3時だけはキツイのでパスをして 

奧さんと二人で毎日繰り返した。

途中、仔馬が熱を出したり

便がゆるくなったり

元気が無くなったりすると

診療所に電話がかかってきた。

そんなことを何度も繰り返しながら

生後5ヶ月が過ぎた。

仔馬はぐんぐん大きくなった。

5ヶ月が過ぎると

仔馬は共済の保険に加入する資格を得る。

保険に加入した後は治療代が安くなる。

先日、この仔馬の便がまたゆるくなった。

IMG_6024元気は良いのだが

下痢が治らない。

血液検査をしてみると

低タンパク、貧血が見られるものの

その他ミネラルバランスには異常がなかった。

◎さんに話を聞くと

すぐ便がゆるくなるので

離乳の餌としての配合飼料などを控えめにしていたという。

ここで、親がいる仔馬であれば

広い放牧地に親仔を放して

栄養のある青草をたっぷりと食べさせられるのだが

この孤児馬を同じ場所に放牧させるのは

色々な危険が伴うので

それは出来ず

制限された時間の中で放牧し

粗飼料の足りない分は乾草を与えていた。

当然のように粗飼料の摂取不足

配合飼料との給与バランスが崩れ

下痢気味となる。

加えて、放牧が制限されることによって

運動不足になる。

孤児の仔馬の

人工哺育と育成には

大変な苦労がつきまとう。

重種馬の生産地の

悩み事の一つである。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
      
  

ミニチュアホースの鼠径ヘルニア

生まれて間もないミニチュアホース、

元気は良くて、

お乳も吸うのだが、

股の付け根が膨れているという。

飼主の鵑気鵑それを気にして、

電話をかけてきた。

麕匸譴砲弔い匿濃,垢襪

399A92CB-9E7A-4E0D-AA2F-90B51575F4F6なるほど

内股の根元が膨れている。

触診してみると

鼠径部にヘルニアが認められた。

仔馬の腹腔によく起こるヘルニアは

臍ヘルニア



鼠径ヘルニア

がある。

前者は文字通りの

腹壁のど真ん中のお臍にできる。

そのヘルニア輪(穴)は楕円形をしていて

直径数センチ以下の小さなもヘルニア輪であれば

馬体の成長とともに相対的に小さくなり

放っておいても自然治癒することが多い。

またヘルニア輪が大きくて外科手術をすることになっても

臍は位置が良いので手術しやすく治癒率も高い。

これに対して

鼠径ヘルニア

DB93C298-218B-42A5-8563-13C9B4822B74内股の根元

すなわち腹壁と後肢の付け根との間の

間隙からヘルニアが起こる。

そのヘルニア輪(穴)は細長く

精巣からつながる精索もあるので

ヘルニア自体も複雑で

輪(穴)を閉じるのが難しい。

たとえ外科的な処置で閉じたとしても

後肢の根元は強い力が掛かって動くところなので

縫い閉じた部分が切れてしまって再発することが多い。

強い動きによって細菌感染の機会も高まり

臍ヘルニアに比べて治癒が困難である。

仔馬の鼠径ヘルニアを

縫い合わせて治すのは

なかなか難しく

私は過去3例の手術経験があるけれども

そのすべてが細菌感染により

治癒までに数週間から数か月間掛かった。

さて

今回のミニチュアホースの鼠径ヘルニアだが

ヘルニアの大きさはクルミ実程度

10410122-6A8B-4F28-9F22-2C51E61D4A3C仔馬自体は元気で哺乳も正常

ということで

何もせず

そのまま経過を観察することにした。

仔馬が大きく成長するにつれて

鼠径部のヘルニア輪が相対的に小さくなり

自然治癒することを期待することにした。

399A92CB-9E7A-4E0D-AA2F-90B51575F4F6ただ・・・

難点が一つだけある。

ミニチュアホースというのは

大きく成長しないのが特徴の馬である。

この仔馬もきっと

ミニチュアホースゆえ

大きく成長してはくれないだろうから

ヘルニアがいつ自然治癒するのか

予測は難しく

ずっと見守るしかないのである。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
      

サラブレッド牝馬の外傷縫合の一例

十勝地方の重種馬の生産は、

ばんえい競馬が帯広に残っているおかげで、

頭数や戸数は減りつつも、

瀬戸際で何とか持ちこたえて、

絶滅の危機は免れている。

しかし

十勝地方の軽種馬の生産、

すなわちサラブレッドの生産牧場は、

いよいよ絶滅の危機を迎えているように見える。

そんな数少ないサラブレッドを生産する∇牧場から

「繁殖牝馬が怪我をして、血が止まらない・・・」

という電話がかかって来た。

∇さんの話によると

「昨日突然お尻から出血したので流産したのかと思った・・・」

ところがよく見ると

「外陰部の直下に傷があってそこからの出血だった・・・」

そして

「血はそのうち止まると思って手持ちの抗生物質を打って様子を見ていた・・・」

しかし

「今朝になってもまだ出血しているようだ・・・」

ということで

∇牧場に着いて

FBC8681B-BDEF-42BC-9DAD-111D33C030F2馬を簡易の枠場へ入れて

問題の箇所を診ると

外陰部の下にもう一つの外陰部が出来たかのような

縦に深い傷が口を開けていた。

「・・・これは縫わないとだめですね。」

4A79BDE3-6FD6-4D7E-AEAA-5DA27425834A「お願いします・・・」

しかし

このままで患部を触るのは危険である。

私は簡易枠の後方に

古畳を立ててもらい

4D8A027C-83D7-41EE-AE3C-EE4B16A7AC23蹴られても直接当たらぬようにした。

さらに

∇さんに鼻捻をしてもらった。

患部を洗浄して

触診して見ると

330EF41F-CD63-4DF2-A4B4-71DB1E563605幅約20僉⊃爾橘10僂曚匹

えぐられたような外傷で

奥の筋層からはまだ少し出血が続いていた。

馬は意外な程おとなしかった。

「20才の老齢なんでね・・・」

97D133C7-3C55-4988-A7F2-55275E8B4FA3それでも

∇さんの話では

今年の春先に

タニノギムレットという種牡馬を交配したのだという。

懐かしのダービー馬である。

ともあれ

馬が大変おとなしいので

8A6EB18E-2587-42C7-B8AC-500802474E96私は縫合処置を開始した。

創の最深部の筋層を寄せ

もう一度浅い部分の筋層と皮下織を寄せると

ようやく

出血のしたたりが止まった。

DA68EB32-A1DA-4B9E-A54A-2EEA80B79D85最後に皮膚を結節で縫合。

筋層を縫っているときは

馬はほとんど動かなかったが

皮膚を縫っているときに

馬は痛がって少し動いた。

121F78C6-547B-4FCC-91EC-08A1B5562176しかし

縫合するのにはほとんど支障のない

おとなしい痛がり方で

∇さんと私は

この牝馬をなだめて声をかけながら

最後まで縫い上げることができた。

98610F50-1F35-4D80-8E96-AD6BF07516E7サラブレッドの外傷を

往診先で縫合するのは

何年振りだろう。

重種馬では数年に1度は外傷縫合することがあるが

サラブレッドを縫うのは本当に久しぶりのことだった。

0429BC54-FFA1-4C63-A6F9-E6A3A8A4C6A6私が使っている道具は

写真のように

全く必要最小限の道具に過ぎない。

保定をする道具も

簡易枠場とロープと
52186C69-2A6C-45D3-8A96-1B1DEC0F31BC
鼻捻り一本に過ぎない。

今回は鎮静剤や局所麻酔剤を使わずに

処置をすることができたのは

ひとえに

この馬がとてもおとなしい馬だったからだ。

6CC5D679-6DB3-4CB5-8B2A-4D6E7F950AE4気性の荒い馬だったら

こうは行かなかっただろう。

そこで

現在のサラブレッドの生産地で行われている

最先端の縫合治療は

どのように保定し

どのように治療しているものか

サラブレッドの治療に詳しい先生方に

教えていただきたいと思う。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
       


 
 

共進会出品馬・当日の怪我

音更町の十勝共進会の、

和牛と馬の部の当番獣医師の仕事を仰せつかり、

7月18日の朝、

事務所を出て会場へ向かっていると、

共進会事務局の十勝農協連のS藤さんから、

電話がかかってきた。

「今どこでしょうか?」

「会場に向かってるところですけど。」

「馬が怪我したので、至急お願いします!」

「はい、あと10分くらいで着くと思います。」

共進会の当番獣医師は

かつて何度もやった事があるが

向かっている途中で診療依頼をされたことは未だかつて無かった。

会場に着くと

S藤さんが待っていて並んでいる厩舎小屋へ案内された。

怪我をしたのは

生後4ヶ月の当歳馬だった。

右の後肢の管部から球節にかけて

縦に約20僂寮攸呂世辰拭

水槽に後肢を突っ込んでしまい暴れたらしい。

「これは、すぐ縫いましょう。枠場はありますか。」

飼主さんばかりではなく

会場スタッフや周囲の見物客も見守る中

親と仔馬は小屋から出て枠場へ移動した。

親用の枠なので大きかったが

ロープを数本使って仔馬に合うようにして

肩と腹へもロープを巻いて保定。

飼主さんと助手さん達の手際はとても良かった。

鼻捻をかけてドミトールで鎮静し

患肢ではない方の足をロープで縛り上げると

枠場の横から患部を診察する事ができた。

ビルコン溶液でよく洗い

薄い筋層と皮下組織を連続縫合で寄せていると

仔馬が足の力を抜いて寝そうになった。

飼主さんはじめ助手の人たちが

約250kgほどの仔馬の体を支えてくれた。

皮膚を6針(だったと思う)結節縫合していると

仔馬はいよいよロープに体を預けて

息苦しそうに体をだらりと落としてきた。

飼主さん達が必死で仔馬の体を支える中

イソジンゲルを塗ったガーゼを患部に当てて

伸縮包帯を巻いて抗生物質を筋注し

なんとか処置を終えた。

だらりとした仔馬の頸静脈にアンチセダンを打ち

しばらくして仔馬に起立を促すと

仔馬はバタバタと枠場の中で立ち上がった。

診療は終了し

親仔馬は控えの小屋へ帰っていった。

IMG_5809「このまま、もう帰ろうかと思ったんだけど・・・」

飼主▪️さんが言うと

そのお父さんと思しき人が

「明日まで様子見るべ・・・」

と、この馬の出品を諦めていない様子だった。

しばらくして、共進会の初日が始まった。

IMG_5810▪️さんの親仔馬は

測尺と歩様検査に参加する事ができた。

仔馬は多少右足をかばっていたが

なんとか無事に終える事ができた。

その翌日

朝一で▪️さんの幕舎へゆき

怪我の仔馬に抗生物質を打ち

明日と明後日も同じように打つように指示し

その後地元の獣医師にガーゼの交換をしてもらうように指示し

私からも地元のNOSAIの診療所へ連絡しておいた。

雨が次第に降り始めたが

その中で

共進会二日目の

比較審査が始まった。

IMG_5813その比較審査にも

この親仔馬はなんとか出品する事ができた。

仔馬は相変わらず右足をかばっていたが

痛みも軽度のようで

歩きにはほぼ支障はなかった。

比較審査の結果の発表が行われ

IMG_5815この親仔馬は

2等賞を獲得する事ができた。

雨の中で

怪我をして

慌ただしい共進会になったが

出品された全ての牛馬の

トラブルはこの1件のみ。

当番獣医師としての仕事は

この当歳馬の治療のみ。

IMG_5820▪️さんは大変だったと思うが

当番獣医師としては

この仔馬の診療だけで

なんとか無事に

仕事を終える事ができ

ホッとしている。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
     

ある馬産家の死

先日、

町内の馬産家の#さんが亡くなった。

成績の良い種牡馬を何頭も飼養し、

重種馬の生産界では知らない人は居ない、

全道的にあまねくその名を知られた種馬屋さんだった。

私は若い頃から#さんの種馬所に通い、

全道各地から集まってくる繁殖牝馬の

発情鑑定や妊娠鑑定をしながら

重種馬の繁殖を勉強させてもらった。

#さんは

私の馬の繁殖検診の技術を

育ててくれた恩人のひとりだった。

背が高く逞しく豪快な風貌で

まさに荒くれ男という感じの人だったが

馬に対してはとても優しく

種馬の扱いが抜群に上手な人だった。

短気で怒りっぽく

獣医師なら皆一度は怒鳴られた経験を持ち

恐ろしい存在でもあったが 

後腐れのない気持ちの良い性格の人だった。

良い馬を見ると目を細めて

心から馬を褒め

馬談義が止まらなくなる

馬一筋に生きている人だった。

晩年は体調を崩し

経営は息子さんに譲りつつも

春の繁殖シーズンになり

私が馬の直検をしていると

必ず家から出て来て

「お茶飲んでゆきなさい。」 

と、声を掛けてくれる人だった。 

そんな#さんが

今年の春は姿を見ないな

と思っていた矢先 

訃報が届いた。

私はその晩お通夜に参列した。

翌日

仕事にかかったところで

事務所から電話がかかって来た。

IMG_5567#さんの牝馬の1頭が

今朝から急に倒れて立てないという。

我々診療所の獣医師は

緊急の往診でその牝馬を懸命に治療したが

IMG_5568治療に反応せず

頭を投げ出し苦悶して

とうとう死んでしまった。

#さんのお葬式当日の出来事だった。

血液所見には特に異常値は見当たらなかった。

004 2019.05. 馬解剖所見には

「結腸〜小結腸粘膜出血」

とだけ書かれており

それ以外の箇所には異常が見られなかったようだ。

005 2019.05. 馬2急性の腸炎だったと思われたが

それにしてもあっという間の出来事だった。

よく言われることだが

馬屋の親父さんが亡くなると

その家の馬を1頭

道連れにして逝くものだ

と言われている。

今回もまさに

そうだったようだ。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
    
 

M木先生おめでとう!!

北海道NOSAI研修所長のM木先生が、

このたび学位(博士号)を取得された。

IMG_5299その論文のタイトルは、

「重輓馬における超音波画像検査を利用した卵巣・子宮の診断基準の策定」 

というもので、

重種馬(輓馬)に関するM木先生の長年の研究の集大成である。

牛の乳房炎やその他色々、

IMG_5300牛馬の診療に関して幅広い知識と経験と、

常にその最先端を走っておられるM木先生は、

北海道にとどまらず日本全国の牛馬の獣医師の間では、

その存在を知らない人はいない。

M木先生は

私より一年早くNOSAIに就職し

IMG_5301牛馬の臨床獣医師として15年以上のキャリアを積んでから

北海道NOSAI研修所へ転身した。

そこでNOSAI新人や若手の研修指導ををしながら

自らも常に研究テーマを持ち続けて

今回その集大成をまとめられた。

普通のNOSAI獣医師ではなかなか出来ない

IMG_5302マルチなスーパー獣医師なのである。

私は、M木先生と

ほぼ同期のNOSAI獣医師として

色々と先生の仕事のお手伝いをしたり

自分の仕事に対して助言をもらったり

IMG_5322公私にわたって

長い付き合いをさせてもらっている。

特に重種馬(輓馬)の診療に関しては

共に同じ道を歩んで来た。

そんなM木先生は

IMG_5336同期の桜

と言って良い存在である。

昨日は

帯広畜産大学のN保先生の計らいで

学位取得の祝賀パーティが開催され

私もそれに招かれて出席させて頂いた。

IMG_5328畜大OBのM宅先生はじめ

現役の畜大の先生方や

開業されたI井先生や

私の同僚の十勝NOSAIの臨床家の先生方が

帯広市内のホテルに集まり

和やかなお祝いをした。

重種馬(輓馬)の繁殖

というテーマでの今回の学位取得は

生産力の低下している重種馬生産地と

そこで働く獣医師にとって

とても励みになる出来事である。

M木先生は

「これは私の新たなスタートです。」

と何度も言っていた。

先生の幅広い視野と人脈と

若い獣医師に対する抜群の指導力は

この学位取得によって

ますます磨きがかかり

輝きを増すに違いない。

M木先生の今回の学位取得は

我々のような牛馬の臨床現場の獣医師はもちろん

畜産系の大学や

業界の関係者にとって

とても嬉しく有難い

朗報だと言えよう。

M木先生

本当におめでとうございます!

今後ともどうぞよろしくお願い致します!


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
  




 

ぼちぼち始まる馬の繁殖

私が就職した30数年前は、

我が町に重種の繁殖牝馬が300頭以上いて、

飼養戸数はざっと40〜50件。

ところが今では、

重種の繁殖牝馬の数は20頭にも満たず、

飼養戸数はたったの5件。

ずいぶんと減ってしまったものである。

寂しい限りなのだが

それは全道的な傾向であった。

重種馬の生産力は

後継者不足で

がた落ちしてしまった。

そしてついに

重種馬の需要と供給のバランスが崩壊し

極度の供給不足となった。

重種馬の需要に変化がほとんどないにもかかわらず

重種馬の供給が極度に低下した。

その結果として

重種馬の価格が跳ね上がった。

それが今から約6年前の出来事だった。

その後

重種馬が高く売れるからと

新規の重種馬の生産牧場が

ぼちぼちと参入してきたが

一度減ってしまった重種馬の生産力は

そう簡単に元に戻せるものではない。

重種馬の生産牧場を

新しく立ち上げる資金のほうは

多くの資本家たちから

注ぎ込まれるようになってきたが

実際に

牧場で重種馬を養い

交配や分娩を管理する人がいないのだ。

お金や人を

なんとか集めても

生産技術を教える経験者や技術者がいない。

一度衰えてしまった重種馬生産の技術力は

そう簡単に回復させられるものではないのである。

重種馬の値段が跳ね上がってから約6年

今、我が町の重種馬の生産力は

底を打った横ばい状態が続いている。

いつになったら

重種馬の生産力が回復するのだろうか

その責務の一端は

私自身にも降りかかってくる。

そんな状態の中で

今年もまた

春がやってきた。

春の訪れと同時に

重種馬の繁殖シーズンがやってきた。

遅ればせながら我が町の重種馬たちにも

41F6AD17-6D7A-47C5-B72A-DDD661A99B0F発情が来るようになり

仔馬も生まれ始めた。

昨日は

3頭の重種馬の直腸検査をした。

83E4FD86-B1BB-4F95-A083-317A48A17EADその3頭は全て

町外の繁殖牝馬たちだった。

我が町内には

人気の種牡馬がいて

その馬を交配させるために

全道から繁殖牝馬が集まってくる。

5D029FEE-DEDB-4F9B-AB92-A250F2A78FBE種馬所のΩさんによれば

今年はすでに

15頭の種付け(交配)をしたという。

繁殖牝馬の肛門に手を入れて

馬糞をかき出しながら

私は

また重種馬の繁殖シーズンが

ぼちぼち始まったな・・・

と感じていた。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
  

火気厳禁の不妊治療(2)

長期不受胎の重種繁殖牝馬の、

子宮の中へ灯油を注入する不妊治療。

IMG_5257そんな物を子宮に入れることを、

よく思いついたものだ、

と思った。

が、よく考えてみると

子宮内膜の洗浄と再生を目指すために

子宮内へ注入する薬剤の

IMG_5258多くは水溶物

すなわち水に溶ける薬剤であり

水和性の高いものばかりだった。

そこへ、一つの発想転換として

水和物ではなく

油性の液体による

IMG_5259子宮内膜の洗浄と再生へと

発想が行くのは自然の成り行きかもしれない。

水で落ちない頑固な汚れは

油で落とせるのではないか

と考えるのは

クリーニングに携わる人の

自然な発想なのかもしれない。

帯広畜大のN保先生の指示に従って

前日に

灯油100ml+生理食塩水100ml=200ml

を子宮内に注入した馬の

子宮洗浄をすることにした。

いつものように道具をセットして

陰部を洗浄していると

ほんのりと灯油の匂いが鼻を突いた。

助手をしてくれたΔさんに

子宮内を還流させた洗浄液を

ガラスのコップに受けてもらった。

IMG_5279写真は

1回目の還流液

から

4回目の還流液までを

順番に撮影したものである。

IMG_5280最初の還流液には

白濁した液の中に

非常に多くの絮片が混ざり

それが

還流を繰り返してゆくたびに

IMG_5281絮片の数も白濁の程度も

少なくなっていった。

18リットルのタンク一杯の洗浄液(生理食塩水)を

ほぼ使い切って

子宮洗浄を終えた私は

IMG_5282N保先生の指示通りに

最後に抗生物質の溶液を注入して

作業を終了した。

今後は

この馬に発情が来たら

普通に種付けをすればよいという。

この馬の洗浄液の状態などを

翌日、メールでN保先生に報告したら

その返信メールに

わたくしの経験では注入後4日で交配した18歳のクオーターホース雌馬が受胎しましたので、そのくらい空ければ次の発情で交配できると思います。」

という心強い言葉が書いてあった。

この馬の今後も、楽しみである。

IMG_5283以上

とても簡単な手技であり

しかも

灯油は安価である。

長期不受胎馬を抱えて

治療に困っている飼主さんと獣医師は

ぜひ試してみていただきたい治療法である。

ただ一つ

注意しておくことは

火気厳禁!!!

タバコを吸いながらの治療は

絶対ダメである。


(この記事終わり)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
  


 

火気厳禁の不妊治療(1)

十勝管内の重種馬で、

長期にわたって不受胎の繁殖牝馬を、

その道のスペシャリストの先生に診察してもらい、

受胎率の向上を図る事業が行われている。

IMG_5253十勝農協連が主催となり、

帯広畜大のN保先生がその中心的な指導をされている。

我が町の◯牧場で飼われている重種馬1頭も

その事業のお世話になっており

昨年の暮れに検診を受け

IMG_5249先日その診断が下され

診断に従って

治療が施されることになった。

その治療法とは

ちよっと驚きの方法であった。

まず

長期不受胎の対象馬に 

プロスタグランディンとエストラジオールを投与して

子宮頸管を弛緩させる。

弛緩させた子宮頸管外口を通して

子宮の中に薬剤を注入する。

こう書けば

普通の子宮の治療のようだが

ここで使用する薬剤が 

ちょっと驚きの薬剤

IMG_5257何と

「灯油」

なのだ。

子宮内へ繋げたシリコンチューブの

IMG_5258外側に漏斗を付けて

その漏斗の中へ

灯油100ml+生理食塩水100ml

を混ぜ合わせた200mlを注入する。

「カリフォルニアなどの乾燥した地域では、この灯油に火が引火することがあるそうです。」

IMG_5259「え、ほんとですか?」

「そういう注意書きが書かれているんですよ。でも、ここは湿度があるから大丈夫ですね。今日は雪が降るみたいだし。」

N保先生はニコニコしながらそういった。

火気厳禁の先端技術なのだ。

注入した日はそれで終了。

IMG_5262「明日、子宮洗浄をお願いします。」

N保先生から

私は翌日にこの馬の子宮洗浄をするように指示を受けた。 

「子宮洗浄して、その洗浄液を見たら、驚かれるかもしれませんよ。」 

「汚れが出るんですか?」

「はい、きっと。」

IMG_5263N保先生はニコニコしながらそういった。

長期不受胎の馬の子宮内に入れる薬剤として

かつては流動パラフィンがよく用いられて来た。

それはただ入れっぱなしだった。

しかし

今回注入した灯油は

翌日に洗い流す必要があるという事だった。

「洗い終わったら、この抗生物質を入れておいてください。」

IMG_5265N保先生から手渡されたのは

子宮注入用のネオポリシダールという商品名の

抗生物質だった。


(この記事続く)



人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
  


 

重種馬の気腫胎(3)

腐敗の始まった胎児を引き出し、

胎盤を剥離して取り出し、

とりあえず仕事がひと段落ついたところで、

私は同僚のT獣医師に電話を入れた。

私が午前中終えているべき残りの診療件数を告げると、

T獣医師はそのほとんどを引き受けてくれた。

「じつは、昼からもその馬の子宮洗浄する予定なんで・・・」

「わかりました、こちらの診療は全て行きますから、大丈夫です。お疲れさまでした。」

こういう時はやはり

常にチームで仕事をこなしている診療所の

メリットが活きるのである。

ヘルプをしてもらったおかげで

私は鵑気鵑凌芭鼎諒夘佞韻鬚罎辰りと終えることができた。

そして

診療所に戻り

昼食の弁当を食べて

午後からの仕事の準備に取り掛かった。

重種馬の流産の後は

多くの場合で子宮洗浄をしておくべきである。

特に今回のような

胎児の腐敗が始まっている流産の場合は必須である。

私は再び鵑気鸞陲妨かい

IMG_5062子宮洗浄をして

仕事を終えた。

ただ

少し残念で淋しかったのは

子宮洗浄を私と飼主の鵑気鵑2人で終えたということ。

機会の少なくなった馬の診療には

若い獣医師を一緒に連れて行きたかった。 

私の若いころは

管内に今よりも10倍以上の数の馬がいたから

少しでも馬の診療の経験を積もうとして 

こんな時は必ず

先輩獣医師と一緒に付いて行って

色々細かいところまで

仕事を覚えたものである。

だが、今

これだけ繁殖雌馬の数が減ってしまうと

獣医師の馬の診療技術取得の

機会も

その必要性も

薄れてしまった。

IMG_5063私にはそれが

残念で淋しいのである。 

せめて

記事に残しておかなければ

淋しくて仕様がないのである。


 (この記事終わり)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
 

重種馬の気腫胎(2)

朝いつものように、

診療所で往診準備をしている時、

電話がかかってきた重種馬の流産。

最初に行ってすぐ終わらせるつもりの仕事が、

IMG_5045すでに1時間を経過。

ようやく馬を保定して、

陰部に手を入れた。

「・・・。」

「どうだい?・・・」 

「・・・やっぱり流産だね。」 

膣内には胎児の前肢が1本と

その奥に胎児の頭頂部があった。

頭部の下にもう1本の前肢の腕節があった。

「・・・鼻先が下向いて、前肢も1本折れ曲がってるよ。」 

「やっぱりダメだったか・・・」 

「・・・ちょっと引っ張ってみるか。」

私はこちらを向いている前肢を掴んで

強く引っ張ってみた。

しかし

胎児はほとんど動かなかった。

曲がっている前肢は簡単に直ったので

両前肢を掴んで引いてみたが

胎児は全く動かなかった。

分娩予定日までにはまだ3ヶ月ある流産胎児だから

引っ張れば出てくるだろう

という安易な読みは外れてしまった。

「・・・鼻先が曲がって下向いてる・・・これを直さないと出てこないか。」

胎児といえども

馬の鼻は長い。

頭部の整復は牛よりも困難である。

私は車に戻って

粘滑剤の準備をした。

IMG_5056バケツのぬるま湯に粉末の粘滑剤を溶き

カテーテルに付けた漏斗に汲んで

カテーテルのもう一方の先を膣の奥へ押し込んで

膣壁と子宮壁にへばりついている胎児を剥がすように

粘滑剤を流し込んでゆく。

途中で親馬の怒責が強くなり

IMG_5060カテーテルは何度も押し出されてしまうのだが

めげずに粘滑剤の注入を繰り返した。

胎児の両前肢を押し込んだ拍子に

胎児の鼻先がこちらに向いてきたので

さらに前肢を押し込んで

胎児の頭部を整復する事ができた。

「・・・よし、これでもう一度引っ張ってみるか。」

チェーンをかけてあった前肢をそのまま引いてみた。

しかし

胎児は思ったほど動かなかった。

努責による胎水は

少し腐敗臭がした。

「・・・中で腐って膨らんでるみたいだね、これは滑車で引くしかないか。」

私は再び診療車に戻って

産科用の滑車を持ってきて

馬の後方の柱に一方の端を結び

もう一方の端を胎児の肢のチェーンに結んだ。

飼主の鵑気鵑惑呂良’韻犬鰺かせているので馬の頭部から離れることはできず

後方での助産の作業は全て私一人でしなければならなかった。

(ここからの写真はエグいので閲覧注意)

IMG_5055滑車のロープは思ったよりもきつく動かなかった。

さらにぎゅーっと滑車のロープを引くと

急に楽になった

と、思ったら

チェーンをつけてある前肢が一本だけ

肩のあたりから、ちぎれて出てきた。

「・・・あー、ちぎれちゃった。」

IMG_5057胎児の腐敗が進み

片と肋骨の結合部が緩くなってちぎれてしまったのだった。

もう片方の前肢を引いても

また同じようにちぎれてしまう可能性がある。

私は仕方なく

前肢にチェーンをかけることをあきらめて

そのチェーンを胎児の首にかけて引っ張ることにした。

チェーンをかけ直してもう一度滑車を引くと

IMG_5058重い手応えとともに

胎児が引き出されてきた。

ドサッ・・・と胎児が落ちるとともに

残りの胎水が排出されてきた。

「出たかい?・・・」

「・・・うん、やっと出た・・・だけど後産がまだだいぶ付いてるから。」

私は子宮の中に手を入れて

胎盤の剥離を始めた。

妊角のほうは簡単に取れてきたが

不妊角の奥のほうに強い付着があった。

それをゆっくりと手で剥離して

IMG_5059先端までちぎれずに

なんとか胎盤も全域取り出すことができた。

この時点で

手元の時計を見たら

午前11時半を過ぎていた。

治療時間は2時間を超えていた。


(この記事続く)

人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→
クリックして

見ることが出来ます。  
 
Profile

豆作(まめさく)

ギャラリー
  • 新婦の父として
  • 新婦の父として
  • 新婦の父として
  • 新婦の父として
  • 新婦の父として
  • 新婦の父として
  • 桜紅葉(さくらもみじ)蔦紅葉(つたもみじ)
  • 桜紅葉(さくらもみじ)蔦紅葉(つたもみじ)
  • 桜紅葉(さくらもみじ)蔦紅葉(つたもみじ)
蓄 積
1日1回クリック宜しく!

願援助為自己満足
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

感 謝
牛馬語の俳句

  • ライブドアブログ