北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

馬の診療

研修医制度

先日、

帯広畜産大学の、

研修医の先生たちと一緒に、

IMG_3845往診に回る機会があった。

大学を卒業して、

その後数年、

色々なところで働いていた獣医師の中で、

再び学問の道をメインに、

IMG_3847進もうとされている、

若き精鋭である。

大学病院における二次診療ばかりではなく

我々のような現場の末端の獣医師の

一次診療の経験を

IMG_3849少しでも積み上げたいという事のようだ。

今回は特に

産業動物の獣医療の中でも

今やなかなか経験することの少なくなった

重種馬の診療を

IMG_3850一緒に経験したいという事だった。

この日はたまたま

午前中に1件(蹄葉炎)

午後から2件(発情鑑定と蹄病)

重種馬の診療が有ったので

IMG_3853研修医の先生たちは

私の診療車の後に付いて回ることになった。

研修医の先生たちは

さすがに社会人の経験もある方ばかりなので

IMG_3854往診もスムーズだった。

右も左もわからない大学生の実習生を

手取り足取りしながら連れて歩くのも

それなりに面白いけれども

現場の事情をある程度わかっている

IMG_3856研修医の若い先生たちとの仕事は

受ける質問の内容なども鋭くて

とても充実した中身の濃い

仕事ができたように思う。

私としては

IMG_3857特別な事は何もするわけもなく

ただ普段どおりの事をしただけなのだが

それが

研修医の先生たちには

初めてのことが多かった。

IMG_3860これはつまり

いかに重種馬の診療の機会が減ってしまったのか

ということであり

ちょっと寂しい思いもしたが

それはまた有意義な機会を提供できた

IMG_3862という事でもあり

私は複雑な思いだった。

この日の最後の往診先に

たまたまタイミングよく

重種馬の削蹄師のN坂さんがいた。

IMG_3863一連の写真は

全道を股にかけて

重種馬の削蹄している

N坂削蹄師の

削蹄と蹄病治療の技である。

IMG_3866これを

研修医の先生たちに

体験してもらったのは

この日の

予定外の

収穫だったと思う。



人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして
 
見ることが出来ます。  



 



重種馬の下顎骨切歯部の骨折(2)

「今日治療している時に写真を撮ればよかったです、あれほど酷かったとは思えないくらい落ち着いています。」

さらに、

「草はがっつり詰まっていましたが・・・。感染や過形成に注意します。」

この馬が帰って行った数日後、

競馬場のF獣医師からそんな連絡が入った。

さらに数日後、

「調子よく食べているようです。」

再びF獣医師から連絡が入り、

32243674_1973453589635316_540315991167467520_n撮った写真を送ってくれた。

左の写真がそれで

詰まった食べ物を洗い流した後の

傷口がまだ生々しい。

「こんなことがあっても懲りずに鎖を噛んでいる、と厩務員氏がぼやいていました。」

ということだった。

それからさらに

1週間後

「ここ1週間来院していないので、経過を見せに近々来てもらうようにお願いしてみます。」

という連絡が入り

それから、しばらくは

音沙汰がなかった。

便りのないのは良い便り・・・

と思って

約1ヶ月経過した頃

F獣医師から久々に連絡が来た。

「臭いもなく、過形成もなく順調です。レースにも勝ってます。相変わらず綱を噛む癖はあり、懲りてませんが(笑)、厩務員氏はよろこんでます。ありがとうございました。」

というメッセージとともに

IMG_3680数枚の写真が送られて来た。

経過はとても順調のようだ。

今回私は

たまたま初診を担当したが

IMG_3682創部の摘出以外は特に何もしていない。

それよりも

怪我の後の

F獣医師の続けた丁寧な治療によって

IMG_3683順調に回復することができたと思われる。

したがって

お礼を言いたいのは

こちらの方である。

どうもありがとうございました!


(この記事おわり)



人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして
 
見ることが出来ます。  





重種馬の下顎骨切歯部の骨折(1)

「下顎の歯が折れて、骨も折れたみたい・・・」

という稟告の、▽さんの若馬。

競馬場から下げてきたという現役競走馬だった。

枠馬に入れて、

鎮静剤を打って、

IMG_3526下唇をめくってみると、

下顎の右側の3本の切歯が、

根こそぎ外側へ変位していた。

「・・・これは、どうして」

「頭絡を左右の鎖で繋いでたら、その鎖を口でイジっていて・・・」

「・・・鎖ですか」

「何かに驚いて暴れた時に、鎖が口に引っかかったみたいで・・・」

IMG_3529「・・・歯が根こそぎエグれてますね」

「もうビックリしちゃって・・・」

「・・・グラグラしてますね」

「直らないですか・・・」

「・・・顎は動かすところだから、取ってしまうしかないでしょう」

「大丈夫ですか・・・」

「・・・鎮静剤が効いているうちに取っちゃいましょう」

「そうですか・・・」

IMG_3530私は

有り合わせの道具で

グラついている3本の切歯の根元を削ぎ落とし

最後はメスを使って結合組織を切断し

変位している部分を摘出した。

「あ、取れた・・・」

「・・・大きな骨には異常がないから、噛めるでしょう?」

「それは大丈夫みたいです・・・」

「・・・歯が抜けた穴からばい菌が入るから、抗生物質を続けてください」

IMG_3533「わかりました・・・」

「・・・抜歯したようなもんですから、大丈夫ですよ」

「そうですか・・・」

「・・・あとは競馬場の先生にお任せしましょう」

抗生物質の注射をして

競馬場へ戻して

今後はそこの診療所の先生に

経過を診てもらうようにした。

治療を終えて

事務所に戻った。

IMG_3536事務所には馬の下顎の骨格標本があったので

摘出した部分の切歯部をよく洗い

それを並べて置いて

標本と比べてみた。

切歯3本ばかりではなく

下顎骨の先端もかなり削げ落ちていた。

IMG_3537「抜歯したようなもんですよ・・・」

などと軽く言ってしまったが

こうやって見ると

摘出した部分は意外に大きくて深く

今後のことが

ちよっと心配になってきた・・・


(この記事続く)



人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして
 
見ることが出来ます。  



交配(種付け)後の馬の子宮洗浄

「種付けした後、汚れが出る・・・」、

そんな稟告で、

子宮洗浄をすることになった。

交配(種付け)後の馬の子宮洗浄は、

今シーズンになってからは、

初めてのことだ。

20年ほど前だったら、

繁殖牝馬の数が今よりも、

10倍はいたので 、

今頃は頻繁に数え切れぬほど、

交配後の子宮洗浄をしたものだが、

最近はめっきり減ってしまった。

今回はたまたま、

同僚のC獣医師が同行したので、

子宮洗浄をしているところを、

写真に撮ってもらった。

馬を枠馬に入れて

尾巻きをする。

子宮洗浄用の生理食塩水18リットルの

ポリタンクを枠馬にぶら下げる。

外陰部をスポンジに付けた石鹸でよく洗い

洗浄用の三又のついたシリコンチューブを

タンクの蛇口にセットして

コックをひねる。

三又の短い方の チューブを塞いでおいて

長い方のチューブから洗浄液を出しながら

それをまず膣内に挿入する。

子宮洗浄の前にまず膣洗浄を行う。

IMG_3483膣が洗浄されたら 

チューブの先を持った手を

手とチューブ諸共に

子宮外口から子宮内へすっぽりと挿入する。

挿入した手を魚のヒレのように動かしで

IMG_3491チューブの先から出てくる洗浄液を

子宮の中に満べんなく行き渡らせる。

子宮内に洗浄液が 満杯になったら

シリコンチューブの三又の部分の

タンクにつながっている方を封鎖して

短くついているチューブの方を解放すると

IMG_3486子宮内に溜まった洗浄液が

どっと排出されてくる。

子宮洗浄の還流液は

ガラスのコップなどで受け止めて 

その色や絮片の有無などをよく観察する。

今回の還流液は

IMG_34851回目は米のとぎ汁状に白濁していた。

2回目はそれがかなり薄まって

3回目には肉眼でほぼ透明な洗浄液になった。

絮片は認められなかった。

IMG_3488交配(種付け)後の子宮の汚れとしては

それほど重症ではない

急性の子宮内膜炎であろうと診断した。

子宮に入れている手で

IMG_3490子宮内膜を摘まんでその触感を診ても

異常な触感は認められなかった。

この馬は

排卵していたので

今回の発情での交配(種付け)これで終わり。

そういう場合に私がよく使う

子宮内注入の薬剤は

動物用イソジン液である。

シリコンチューブの短い先に

市販の漏斗を取り付けて

イソジン液を注いでもらえば

IMG_3492それがチューブを通って

子宮内へと注入される。

イソジン液が子宮内へ入ってきたら

また入れている手のひらを魚のヒレのように動かして

子宮内へ満べんなく行き渡らせて

手とシリコンチューブ抜いて

子宮洗浄が終了する。

ここで一つ大切なことは

子宮内に一度挿入した手とチューブは

手技の最初から最後まで

ずっと入れっぱなしで

手を何度も出し入れしないことだ。

出し入れするたびに

外の汚れを

子宮の中に入れてしまうことになるからである。

多くの場合

動物用イソジン液が功を奏し

このまま受胎する可能性さえあるが

再び汚れを出すようであれば

今度は交配(種付け)前にも洗浄する必要があるかもしれず

その時は汚れた液を培養して

細菌検索もすべきであろう。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして
 
見ることが出来ます。  

 
 

重種馬の帝王切開 (3年ぶり)

先週の月曜日、

午前の往診の最中の携帯に、

珍しく隣町の先輩のO獣医師から電話がかかってきた。

「馬の難産なんだけど、変だ。胎児は死んでるみたいで、陣痛が全く無い。」

私は、電話口から帝王切開を一緒にやろうという雰囲気を感じた。

とりあえずもう一度、経膣の分娩介助を試みて、

駄目だったら、また電話をしてくるという事で一度携帯を切った。

しばらくしてまた電話が鳴った。

「やっぱり駄目だ。切るしかないから、頼むわ。」

「わかりました。じゃあ、2時に連れて来て下さい。」

案の定の展開だった。

私も覚悟を決め

こちらの診療所の若い獣医師たちに

手術の準備と麻酔の準備としておくように頼み

午前中の往診を終えて

昼食を急いで食べ終えたところへ

隣町のИさんの馬が運ばれてきた。

牛用の手術台を使う、重種馬の帝王切開が始まった。

導入はドミトールとケタラール

維持はGGE+ドミトール+ケタラールのトリプルドリップ

879134D4-C072-468E-A431-0EAE1C9CAC2F右横臥で左下部を切開。

保定は牛よりも頑丈に縛る。

麻酔がしっかりできれば

あとは牛の帝王切開と同じ流れで

腹腔をあけて

子宮をあけて

胎児を縛って吊り上げて摘出。

今回の胎児はすでに死亡して時間がたっており

F224476D-6952-420D-AE4E-2FEF42D2A3C270キロ以上はあろうかという胎児で

胎位は尾位だった。

母馬は2日前まで乳を漏らしていたが

その後乳か上がって陣痛も全く消えてしまっていたという。

羊水はほとんど消えて粘調の悪露になりつつあった。

胎盤は無理に剥がすと出血多量になるので臨機応変にすべきだが

今回は胎盤も簡単にはがれたので全部摘出した。

C5D99E86-1961-45B2-A8AA-DF68BEC1FA36子宮の縫合も牛と同様の一層縫合。

子宮を生食でよく洗い腹腔へ戻した。

腹壁から皮膚までの縫合は

牛よりも頑丈に

腹膜、筋層筋膜、皮筋皮下、皮膚、の4層をそれぞれに縫った。

縫い終わる頃に維持麻酔を止め

7571B35C-61AA-4876-92DF-A0AA195276A8リンゲルなどの補液に切り替えた。

右横臥のまま寝ている母馬をそのままにして

スタッフ一同後片付けを始めた。

牛の帝王切開と違って

全身麻酔をしているので

手術が終わってから直ぐに叩き起こしてはいけない。

A69DAA24-52E2-4DEE-8F10-BD62F3BB773C麻酔が覚めるのをゆっくりと待つことが大切である。

今回は横臥から座位になるまで約30分かかった。

座位になってから起立するまで約10分かかった。

起立してから歩行し始めるまでさらに約10分かかった。

術後約50分でようやく家畜車に乗り

馬は隣町へと帰っていった。

FB2109BD-5556-4118-A458-CC80E9BC50BDそれから3日後

先輩のO獣医師から

電話がかかってきた。

母馬は

食欲も回復し

経過は順調だという事だった。

仔馬は駄目だったけれども

CE90DEFB-CA36-43F5-9A31-C718E5FA3EC1親馬が助かったことで

また次の繁殖への望みをつなぐことができたのは

良い事だった。

診療地区の重種馬の数が

激減してしまった中で

自分の執刀した帝王切開は

じつに3年ぶりだった。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして
 
見ることが出来ます。  
 



なんとなく輓馬(ばんば)♪

先日の日曜日、

午後から約半日、

ぽっかりと暇で何も予定が無かったので、

「ばん馬でも見に行くか・・・」と思いつき、

きっと暇にしているだろうと思われる、

飲み友達のH田さんにラインを入れたら、

予想通りのOKの返事(笑)。

っそく適当な時間に、

帯広競馬場へ行き、

好き勝手に馬をながめつつ、

適当に馬券を予想しつつ、

ゆるーく競馬を楽しむことになった。

帯広競馬場は、

札内の我が家から、

乗り換えの無いバスで約20分で行ける。

車で行かずにバスで行くのは、

もちろん飲むためだ。

H田さんは奥さんと二人で車でやってきた。

それもどちらかが飲むためだが

今日は私のお願いで奥さんが運転手になってくれた。

いつもはその逆が多いのだか(笑)

ともあれ

「飲んじゃったら、馬券予想が当たらない・・・」

などと言いつつも

「飲まないで予想したって、当たらないんだから・・・」

という事になり

「じゃあ、軽く・・・」

と、H田さんと私は

売店のカウンターでコップ酒を注文。

日の高いうちから喉を潤すのはいいものである♪

さらに愛すべきばん馬たちの息遣いが聴こえ

迫力のあるレースが至近距離でみられるのは

世界でただ一つ、この帯広競馬場だけ

と思うと、いっそう幸せな気分になってくる♪

インクの匂いも心地よい競馬新聞を開き

IMG_3319次のレースの記事を読む。

この日はゆるい北風が吹く天気のよい日だった。

馬場コースの水分は1%程度で乾燥していた。

ばんえい競馬の馬場は

普通の走る競馬と違って

馬場の水分が少ないほど重くなる。

馬場の砂が乾燥すればするほど

橇の滑りが悪くなるのだ。

IMG_3311水分の低い日のレースは

水分の多い日のレースよりも

パワーの勝負になる。

今日のレースのポイントは

「パワーのある馬」だ

と私は思った。

パワーのある馬とはどんな馬かといえば

体の大きな馬であり

体重の重い馬であり

太い四肢を持つ馬であり

水分の低い砂に負けない大きな蹄を持つ馬であろう。

さらに過去の成績で水分の低いレースを好走した馬は

パワーのある馬といってよいだろう。

IMG_3314実際に

パドックで馬たちの体の大きさ

四肢の太さ、蹄の大きさ、を見比べると

微妙な違いが見えてくる。

さらに新聞で

過去の成績と水分と馬体重をチェックすると

「パワーのありそうな馬」

が浮かび上がってくる。

さらに、その馬たちの

年齢や性別などをチェックすると

「7〜8才以上の牡馬」

が浮かび上がってくる。

今日は、つまり

体の大きな牡馬に有利な日だろう。

今日はデカくてゴツくて少し不器用でもいいから

力で押してゆくパワータイプの馬に有利な日だろう。

それは同時に

体の小さな牝馬には不利な日という事も言える。

パワーはそれほど無くても足が速くて器用な馬は

今日のような天気と馬場状態では

その長所が生かされないのではないか。

ほろ酔い気分の頭で考えた割には

今日の私の馬券作戦はなかなかのものだった。

この馬券戦術は功を奏し

初っ端の第6レースの連腹とワイドが的中!

IMG_3315第7、第8レースは外したが

第9レースのワイドが的中。

その内容を見ると

人気の牝馬が馬群に沈んでいる。

やはり今日はパワーのある牡馬の来る日なのだ。

そして迎えた本日のメインレース・陽炎特別

1D5FCB9C-D9E0-492A-9D06-3BD74F400A0Fぐりぐりの本命は

センゴクエース 牡6才

その相手として有力なのが

.▲汽劵螢絅Ε札ぁ_9才

▲札ぅ魁璽イン 牝8才

ぅサラキク 牝7才

Εンシャノココロ 牡7才

馬場の水分は0.9%に下がっていた。

この日最低の水分になっていた。

さて・・・

今日の私の馬券作戦で行けば

牝馬を捨てて牡馬を狙う

という事だったから

△鉢い量毒呂麓里討

から、,鉢Δ硫看呂鮖弔靴

1-3 1-6 3-6

の馬連とワイドを買う・・・

・・・べきだった。

実際このレースの結果は

1着センゴクエース 2着.▲汽劵螢絅Ε札ぁ3着▲札ぅ魁璽イン

で決まった。

牡馬のワンツーで決まったのだ。

私の今日の馬券作戦を

徹底していれば

大勝利・・・

・・・するはずだった。

ところが私は

このレースの直前のパドックで

ぅサラキク 牝7才の

あまりにも美しい姿に心を奪われてしまった。

鹿毛や栗毛や青毛という馬たちの中で

1頭だけ連銭芦毛の白く美しい姿。

IMG_3316しかも

ぅサラキクは

1月のヒロインズカップで

ぶっちぎりの1着になっており

その時私はこの牝馬の馬券を買っていて

良い思いをさせてもらっていた。

「キサラキクは外したくないなー・・・」

その一瞬、ほろ酔いの頭から

冷静な馬券戦術が消え去り

ぅサラキクからの馬券を

たくさん買ってしまった。

その結果は上記の通り・・・

このレースのぅサラキクは

水分の低い第2障害で止まってしまい

そこをなかなか越えられず取り残され

なんと、最下位・・・

たくさん買った馬券は紙切れに・・・

馬券に勝つには

「情」は禁物だ・・・

76F3E3A2-D6CB-4D29-92F7-EEDA2F0F570E





人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして
 
見ることが出来ます。  
 







NOSAI保険の切り替え

1年毎に掛けられるているNOSAIの保険は、

今月末で終了し、

来月からはまた新しい年度の保険が始まる。

昨日から、

うちの診療所の事務室と会議室は、

その保険の年度切り替えの業務で大忙しである。

入れ替わり立ち替わり、

組合員さんがあらわれ、

手続きを終えて帰ってゆく。

私のような下々の獣医師が、

その引き継ぎ業務の手続きに関わる仕事は、

デスクワークではなく、

実際に牧場へ赴いて、

事務所で交わした契約内容に間違いがないかを確認する作業である。

すなわち

保険にかけた家畜の個体に間違いがないか

その頭数に間違いがないかを確認する作業である。

IMG_3230昨日は

町内の組合員さんの中で

主に馬を飼育している牧場を中心に

その個体の確認と

頭数の確認に回って来た。

IMG_3231病気やケガの往診と違って

あまり切迫感のない仕事ではあるが

1頭たりとも間違ってはならない

重要な仕事でもある。

少しでも疑問点があれば

IMG_3233飼い主さんを呼ぶか

あるいは電話をかけて

疑問点を解決しなければならない。

昨日はたまたま

うちの診療所に実習に来ている学生さんを連れて

IMG_3235個体と頭数の確認作業に回った。

学生さんは馬が好きだということで

馬屋さんを回る私の車に同乗した。

種雄馬の農家さん

繁殖牝馬の農家さん

IMG_3237育成馬の多い農家さん

乗馬やポニーの多い農家さん

などを順に回り

最後のオマケに見て回ったのは

驢馬も飼っている農家さん

馬小屋に驢馬を飼って

驢馬の繁殖をしているのだ。

IMG_3241驢馬の親子は

馬よりも長い耳を動かして

とても可愛らしい(笑)

もっとも

驢馬は

NOSAIの保険の対象ではないので

加入はできないのだが。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして
 
見ることが出来ます。  
 






 

繁殖牝馬がやってきた♪

重種馬の高値が続いている。

当才馬も1才馬も繁殖牝馬も、

4〜5年前と比べたら、

約3倍というバカ高値である。

妊娠している繁殖牝馬が軒並み200万円というから驚きである。

4〜5年前が安すぎたとも言えるのだが、

いずれにせよ、

現在は高い相場が続いている。

高い相場が続くということは

需給のバランスからいえば

需要が伸びているか

供給が不足しているか

のどちらかになるわけだが

現在の状況というのは

明らかに「供給不足」である。

重種馬を生産する人がいないのだ。

生産者の高齢化

後継者の不足

という以前から言われていて解決できない問題が

いよいよ切羽詰まってきたところへ

追い討ちをかけるように

輸入馬の激減という国際状況が重なっている。

重種馬というのは牛と違って

ずっと前から完全に

輸入自由化商品だった。

国内で不足すれば

外国産の重種馬が輸入されて

価格は安定していた。

ところが最近はどういうわけか

主な供給元であるカナダ産の馬が輸入されなくなっている。

重種馬の需要は大きく分けて2つ。

1つは「ばんえい競走馬」

2つ目は「馬肉」である。

どちらの需要も安定しているのだが

輸入馬が入らなくなったということで

ばんえい競走馬を欲しがる人と

馬肉用の馬を欲しがる人が

国内の市場でぶつかり合う。

いま

北海道の重種馬は

この2種類の買い手によって競争が起こり

価格がつり上がっている状況なのだ。

北海道の馬産にとって

「ばんえい競走馬」と

「馬肉用の馬」と

どちらの需要も大切なのだが

あえて優先順位をつけるとすれば

「ばんえい競馬」>「馬肉用の馬」

IMG_2330とするべきで

その方が健全な馬産であろう。

ところが今

馬肉用の馬の需要が強く

ばんえい競走馬としての素質を持った馬たちが

若いうちに馬肉用の馬として買われてしまうことがあるらしい。

これはちよっと困ったことである。

IMG_2328馬の相場が高いということは

そういう事情もあるのだ。

そのような状況の中で

先日わが町のある畜産農家さんが

重種馬の繁殖牝馬を5頭導入し

NOSAIの保険に加入して頂いた。

IMG_23355頭のうち4頭が妊娠ブラス。

今年の春には

仔馬が生まれる予定だ。

久しぶりの馬の頭数の増加に

私は素直に嬉しかった。

IMG_2334ただし

生まれてくる仔馬たちは

いきなり「馬肉用の馬」ではなく

まずは「ばんえい競走馬」として

立派に育って

競馬場で活躍してもらいたい。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
見ることが出来ます。  
 

馬文化を支える会、10周年。

「とかち馬文化を支える会」というNPO法人があり、

D6ACC0C5-06F0-4256-80E5-2C855DFE1F27今年で10周年を迎えた。

北海道のばんえい競馬が廃止の危機に立たされた時、

帯広市単独でなんとか存続することが決まり、

それを支えようと有志が立ち上げたものである。

私はその当時の有志の皆さんの熱意に賛同し

AD53FF3D-1F0C-4C7B-AAF3-C03B83549839ささやかながらこの会に参加させてもらっている。

中央競馬(JRA)には馬事文化財団という

立派な団体がある。

ばんえい競馬も立派な馬文化の一つであるから

それを啓蒙してゆくための

5CC17CAF-C314-4DDD-BEE1-6F015BD7F401同じような団体があって良い。

JRAの財団とは比べ物にならないほど小さな団体だが

その志は大きい。

北海道開拓の主役だった農耕馬(重種馬)たちが

トラクターにその役を奪われて久しい。

もし、ばんえい競馬がなくなってしまったら

重種馬たちは食用だけの存在になってしまう。

「北海道の原野を開拓してくれた馬たちに対し

 それでは、あまりにも礼儀が無いのではないか。」

C31E0630-F109-4CA1-B9FC-ABC6233C135Dとは、この会のパンフレットに載っている

対談の中での佐々木啓文理事の言葉である。

佐々木氏はまた

「人も家畜も、能力を極めることが生きている価値。」

であるとして

単に、重種馬を保護する

という考え方に疑問を投げかけている。

また、三宅陽一理事長も

「動物園で数頭飼えばいいということになれば、

 馬が人間の生活から離れていってしまう。」


9BF4F9E7-514D-4BE2-9337-D86051647C87と、ばんえい競馬をはじめとする

十勝の馬文化存続の重要性を語っている。

私も、もちろん

このお二方の考えに100%賛同する者である。

重種馬と人との関係が

単に、保護するというのではなく

この地に共に生きる、という関係を保ちながら

それをいつまでも続けてゆくための

力になりたいと、私はいつも思っている。

私が重種馬の診療をすることも

微力ながらその一つである。

それに加えて

NPOとかち馬文化を支える会に参加することも

微力ながらその一つである。

今このブログを読んでいる方で

この考えに賛同していただけるのならば

ぜひ

当会の会員になっていただきたいと思う。

詳しくは

ホームページを御覧ください。


1人でも多くの方の力で

馬文化を支えてゆきたいのです。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。  
 

重種馬の蹄病治療用ドリル

重種馬の蹄病を治療する機会は減ってしまった、

しかし、減ったとはいっても、

我が診療地区に重種馬が飼われている限り、

ゼロになることは無い。

1年に数回くらいの頻度ではあるが、

重種馬の蹄病治療の依頼が、

忘れそうになる頃にやってくる。

それに備えて私なりの準備をしていることは

以前の記事にも書いている。

約8年前の私のブログに書いた

電動ドリルを使った蹄病の治療法である。


その記事には

当時の私の蹄病治療の考え方と

IMG_2217手動ドリルではなくて

電動ドリルを使った治療法が書いてある。

基本的な考え方は当時と今と変わっていないのだが

8年前に比べて

重種馬の蹄病治療の機会は

明らかに減ってしまい

そして

私は8年前から比べて8歳年をとった(当たり前だ)。

その間

私の蹄病治療の考えや方法を

私よりも若い獣医師たちに

どれだけ伝達することが出来たのか・・・

と、考えると

これが大変お寒い状況であることに

今更ながら気付いた。

今もし

重種馬の蹄病の治療の依頼があったとき

私が出勤していれば私が対応することになるが

それだけでは若い獣医師たちに伝達することができないので

若い獣医師たちと一緒に往診へ向かい

彼らと一緒に治療の場に臨まなければならない。

そこで実際に治療をやって見せなければならない。

しかしそれだけではまだダメで

やって見せた手技を

こんどは彼らが実際にやってみなければ

本当の技術の伝達ができたことにはならない。

さらにそのためには

私の使っている道具を

いちいち私から借りて使うのではなく

私の使っている道具と同じ道具を

若い獣医師たちにも常に持っていてもらわなければならない。

ここでちょっと思案をした。

重種馬の蹄病治療のポイントは

蹄の炎症箇所を特定することであり

さらに特定した箇所に向けて

蹄底からドリルで穴を開けることが重要になる。

そのために必要な道具が

治療用のドリルである。

しかし

若い獣医師たちにいきなり

私が使っている電動ドリルを勧めるには

技術の取得の流れとしてはちょっと無理がある。

まずは手動ドリルを持ち歩き

それを使いこなせるだけの経験を

ある程度積んでからでないと

この技術を伝達することは難しいと考えた。

そこで

いつも懇意にしている重種馬の削蹄師

N坂氏に電話をして

手動のドリルを作ってもらうことにした。

自分でドリルを作れない私は情けないが

こういう事はその道のスペシャリストに頼んだ方が

良いものを作ってくれるものである。

IMG_2185左の写真は

そのN坂削蹄師に作ってもらった

重種馬の蹄病治療用の

手動ドリルの3点セットである。

IMG_21843点セットを3人分

我々獣医師のために

作ってくれた

削蹄氏のN坂氏に感謝!



人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。  


 

重種1才馬の鼻梁の外傷(2)

「安田君、@さんの馬の傷、化膿してるよ。」

私が初診してから4日目、

@さんに往診に行って来た同僚のK獣医師がそう言った。

「・・・そうですか。」

「あれじゃあ、共進会は出られないな。」

「・・・そう・・・ですか。」

今回の馬の外傷の処置について、

私はきれいに治せる「強い自信」は持ってはいなかったものの

なんとか治ってくれるだろうという「普通の自信」はあり

その漠然とした期待の中で

この馬の傷についてさほど気にかけていなかった。

しかし、同僚の獣医師からそう言われると

これは、失敗してしまったか・・・

という反省の気持ちが急に膨らんできた。

それから3日後

私が今度は@さんの馬を診た。

枠馬に入れて傷をよく見ると

IMG_1901なるほど、傷口は

きれいに縫い合わさってはおらず

10cmほどに渡って

腫脹して肉芽が盛り上がり

痛々しい状態になっていた。

「・・・化膿させてしまって、申し訳ない。」

「・・・。」

「・・・縫った糸は、ほどけちゃった?」

「取れてはいないようだ。」

「・・・でも、共進会は出せないか。」

「いや、出すよ。」

「・・・そうなの?」

「だから治してくれって言ってるべや。」

私は@さんがまだ

この馬の共進会出場を諦めていないことを確認した。

しかし、こうなってしまった以上

あとは、抗生物質を注射し続けて

この馬の傷口が早く

目立たなくなるのを待つことしかできなかった。

その次の@さんの診療日は

同僚のS獣医師に行ってもらった。

「安田君、@さん、共進会に出すの断念したよ。」

帰ってきたS獣医師がそう言った。

「・・・そうですか。」

「結構、傷が深かったみたいだね。」

「・・・ええ、上手く縫えたかと思ったんですけど。」

「あの腫れはなかなか引かないね。」

それから3日後

私は再び@さんの馬を診に行った。

やはり傷はきれいに治っていはなかった。

IMG_1906「・・・共進会、出すのやめたの?」

「ああ。」

「・・・そうなの?」

「これじゃお前、カッコ悪いべや。」

「・・・。」

私は@さんに

きれいに治すことができなかったことを詫びた。

最善を尽くしたつもりだったが

創口を縫合する前に

もっと清潔に洗い

メスなどで新鮮な創面を作ってから

もっと慎重に縫合すべきだったと

反省点を挙げた。

それから

数日後

共進会が終わり

この馬を治療する予定だった日に

@さんから連絡があった。

この馬を、育成屋さんに売ったので

もう治療に来なくても良いという連絡だった。

私は、売れてよかったという気持ちもあったが

無事に売れたというわけではない、と思った。

本当であれば

@さんは、この馬を共進会に出品し

商品価値が最も高くなったところで

高い値段で売りたいと思っていたに違いない。

しかし、それはできなかった。

いろいろと

反省点の多い症例となってしまった。

買われて行った先がどこかわからないので

この馬の傷の状態は

もはや確認するすべも無くなってしまった。

あとはこの馬の鼻の腫れが引いて

きれいに治ってくれることを

祈るのみとなってしまった。

反省点の多い症例だった。


(この記事終わり)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。 

重種1才馬の鼻梁の外傷(1)

「・・・共進会に出す馬が、顔に怪我をした・・・」

そんな電話が、

馬産家の@さんからかかって来たのは、

夜間当番の早朝だった。

IMG_1866馬を枠場に入れて顔を診ると、

馬の長い鼻梁に約15cm程度の切り傷があった。

よくみると、ヨードチンキを塗布した後の色が付いており、

傷口からは出血と漿(しょう)液が垂れた後のような汚れがあった。

「これは・・・何時頃、怪我したの?」

「・・・きのうの晩。」

「ヨーチン付けてあるね。」

「・・・ああ。でも治りそうもないから、縫ってくれ。」

「たしかこの馬、共進会に出すやつだったよね。」

IMG_1862「・・・そう。」

「共進会は何日だっけ?」

「・・・あと2週間。」

「そっかー、うーん。」

「・・・縫って治してくれ。」

「まぁ、やれるだけやってみるか。」

「・・・きれいに治してくれよ。」

「うーん、まぁやってみるか。」

IMG_1869馬に鎮静剤を投与し

鼻捻をかけて保定し

傷の周囲を

ビルコン液を染み込ませたスポンジで

ジャブジャブと洗い

汚れを落として

再び傷を良く見ると

何か鋭利なもので

鼻梁をザクッと切ってしまったような傷だった。

IMG_1876長さは上下に15cm程度

頭部に近いところの傷がもっとも深く

その深さは2cmほどあった。

出血は無く

薄いピンク色の創の断面は

皮下組織がほとんどで

奥のほうは骨に達しているようだった。

私は過去に

こういう筋肉の無い鼻梁の切創を縫合した経験を

思い出せなかったので

行き当たりばったりの処置となった。

IMG_1877洗浄した創口の頭側の深い部分に

角針を刺して、吸収糸をかけて

そこを起点に連続で皮内縫合をしてゆく。

この方法は

牛の開腹手術の最後の

皮膚を皮内縫合する方法と同じだった。

熟慮してそういう縫合法を選択したのではなく

とっさに思い浮かんだのが、この縫合方法だった。

しかし、いつも牛の手術で慣れている方法なので

スムーズに縫いすすみ

縫合処置は数分で終わった。

IMG_1879縫合処置をした切創は

手で広げようとしても広がらないように

針の縫い目もわからないように

皮内縫合された。

この縫合処置によって

なんとかこの1才馬を

十勝共進会に出品させたいという

@さんの願いが叶えられるかどうか。

私は、きっとこれで何とかなるだろうと

抗生物質を投与し

あと三日間の抗生物質の投与を指示して

帰路についた。


(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。 

重種繁殖牝馬の回腸捻転(3)

この馬の、

その後の対処を当直の獣医師に任せて、

私はその日の用事と、

翌日の用事をこなしたが、

その間中ずっとこの馬のことが頭に浮んできては、

ため息が出てくるのだった。

そして、月曜日の朝、

事務所に出勤して、

同僚のH獣医師と挨拶を交わしたとき

H獣医師が言った。

「◆さんの馬、昨日死んだそうです。」

「・・・そう・・・やっぱり、ダメだったか・・・。」

「腸捻転だったそうですね。」

「・・・そう・・・やっぱり・・・。」

「だいぶ、ひどかったんですか?」

「・・・うーん。フル二キシン打つと(症状が)よくなったんだけど・・・。」

そして

事務所には、馬のその後を託したK獣医師がいた。

「あの日の午後に、◆さんからすぐ電話が来ましてね・・・もう、立てなくなってて・・・」

以下

カルテから抜粋して経過を記載すると

同日午後

体温36.2℃ 心拍数84   呼吸数36

起立不能、意識朦朧、苦悶、眼結膜充血、心悸亢進不正、排便少。

リンゲル等補液、フルニキシン、投与。

K獣医師も

この馬はもう今夜、死んでしまうだろうと思ったそうだ。

そして、翌日の朝

体温38.2℃ 心拍数86 

自力起立し飲水する。

疝痛症状、心悸亢進、腸蠕動(+)、排便不明、加療後放牧地へ。

K獣医師は、この時点で

この馬はもしかすると、持ち直すかもしれないと思ったそうだ。

そして、その日の昼頃

再診にて上診する。

しかし、その時は放牧地の奥で横臥

死亡を確認した。

と、いうことで

万事休すとなった。

残念な結果になってしまったが

現在の我々の技術と

◆さんの抱えている家の事情と

を、考慮すれば

恥ずかしながら

これが精一杯の対処だったのではないか

と、これは自己弁護なのかもしれないが

そう思われた。

書いて居ながら

なかなか筆が進まない。

しかし、これも私の遭遇した一つの症例であり

症例は「一期一会」

それを書き留めて将来の糧にしようという

このブログの趣旨を

貫いておきたいと思う。

BlogPaintちなみに

初診と2診目の、この馬の

血液検査の結果の写真を添付しておこうと思う。

初診と2診目の、間の時間は

BlogPaintおよそ5時間。

その間に

目立った変化が見られたと思われるのは

WBC  9980  /μL   → 12240 /μL

Ht         37.0 %  → 38.7%

BUN    16.7 mg/dl → 20.3 mg/dl

CL       94 mEg/L    → 92  mEg/L

など、だろうか。

BlogPaint最後に

十勝化成場での解剖所見を添付しておく。

解剖に当たった先生のコメントは

「回腸にに捻転あり、一部に出血・壊死あり(写真3枚)」

 馬(回腸捻転)  馬(回腸捻転)  馬(回腸捻転)

ということだった。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。

重種繁殖牝馬の回腸捻転(2)

1度事務所に戻って往診の受付をして、

その日の午前中の、

牛の往診をひと回りした後 、

再び◆さんの馬の様子を見に行った。

疝痛で、寝たままで、

きっと苦しんでいるのだろう・・・、

もうそのままあの世へ行ってしまったかもしれない・・・、

そんな暗い気持ちを抱いて、

馬の寝ていた場所をのぞいてみると、

そこには馬がいなかった。

「あれ?・・・立ってどこかへ行ったな・・・牧場のほうだべか・・・」

家から出てきた◆さんが言った。

◆さんと私は、放牧場の奥の方へ馬を探しに行った。

馬は、放牧場の最も奥の森との境界線に立っていた。

前足で土を掻く仕草などをして

やはりどこか腹の調子が悪そうだったが

足取りはしつかりとしていた。

牧場から連れ戻して

枠場に入れて診察した。

体温37.8 心拍数50 呼吸数約16

腸の蠕動は左側で短く聴こえるのみだった。

直腸検査では、宿便わずかで

直腸内はほぼ空虚だった。

「どうだい先生・・・。」

「・・・。」

馬の症状は改善したとは言い難かった。

しかし

今朝のような、横臥して苦悶している症状よりは

だいぶマシになったので

これはもしかすると

通過障害が改善する可能性があるのではないか

(腸捻転ではないかもしれない・・・)

という考えも

僅かばかり

脳裏に浮かんだのだった。

IMG_1699この馬に付いている仔馬は

立っている母の乳房をしきりに突いて

あまり泌乳しない乳首を何度も吸っていた。

いま・・・

パソコンに向かって

この記事を書いている私が思うには

この時点で

一か八かの開腹手術による外科的整復を

どこかの施設で実施することができたならば

この馬の命を救うことができたのかもしれない

と思うのである。

だが・・・

実際には

我々十勝NOSAI「東部」事業所の獣医師が

重種の繁殖牝馬の腸捻転を

開腹手術によって治癒させた症例は未だになかった。

また・・・

十勝NOSAI「北部」のA町では数例の治癒例があったと聞いていたが

今年は、たまたまタイミングが悪く

麻酔機器の更新準備をしているらしく

また、麻酔のできるスタッフの転勤や退職などもあり

対応が難しい状態であるとも聞いていた。

また・・・

飼主の◆さん側にも

色々な気の毒な、家庭内の事情があり

治癒の確率の低い開腹手術に踏み切るには

高いハードルがいくつも立ちはだかっている

という状況だった。

「・・・先生・・・注射と薬で、できること、やってくれや。」

「・・・うん・・・」

IMG_1701私は

押し寄せてくる無力感を振り払いながら

この馬に補液をはじめた。

そして

迷った挙句

流動パラフィンと整腸剤の経鼻投薬をした。

「・・・便が通じてくれるといいんだけれど・・・」

補液と経鼻投薬の治療を終えて

私は祈るような気持ちで

◆さんの家を後にした。

週末のこの日の

午後から、私は

どうしても抜けられない用事があり

この馬の

これから先のことは

同僚のK獣医師に託して

事務所でカルテを書き終えて

ずっと祈るような気持ちのまま

帰宅した。

(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。


 

重種繁殖牝馬の回腸捻転(1)

先日の当直、

午後10時半過ぎに携帯電話が鳴った。

「親馬が腹イタなのですぐ来てくれ。」

という◆さんからの往診依頼だった。

到着すると、

馬はなるほどかなり痛がっていた。

唇に力が入らぬつらそうな表情で、

前屈みになったかと思ったら、

バッタリと倒れこんで、

仰向けになって中空を蹴り上げる、

IMG_1689疝痛である。

「とりあえず痛み止めの注射をしましょう。」

私は馬がごろりと寝転んでいる合い間に馬に近づき

採血と同時にフルニキシンの注射を打った。

数分すると

疝痛症状が治まってきた。

IMG_1692馬がおもむろに立ち上がると

傍にいたこの仔馬がすかさず

母馬の乳を探りに来て

乳房を鼻で突いて乳をせがんだ。

体温37.5℃ 心拍数60 呼吸数約20

聴診器を(けん)部に当てると、

弱く短い腸の蠕動音が聴こえた。

疝痛がほぼ消失したので

この馬を枠場に入れて直腸検査をし

直腸内部には馬糞の形にならない柔らかな宿便を認めた。

IMG_1695その量は約5〜6kgだった。

さらに直腸から内臓の触診をするが

手の届く範囲では

これといった異常な所見は触知できなかった。

馬の症状が落ち着いてきたので

◆さんと私はひと安心して

念のためにこの馬にリンゲルの補液と

整腸剤(ミヤリ菌製剤)をカテーテルで投与して

今夜はこれで

様子を診ることにして

私は帰路に付いた。

事務所の当直室に戻ったのは

午前1時を過ぎたところだった。

翌朝

午前5時半頃に携帯電話が鳴った。

「馬がまた痛がってるからすぐ来てくれ。」

という◆さんがらの電話だった。

到着しすると

IMG_1696馬は牧場の片隅の泥のある土の上で

首を横たえたかと思うと

また首を上げて

疝痛症状を示していた。

「やっぱり痛いんだな。糞はいちおう今朝一回出たけど。」

◆さんの示した馬の便は

正常な馬の便の量には程遠い

少量の宿便だった。

「馬をちよっと立たせてみてくれる?」

◆さんはこの馬に何度も気合を入れては

立たせようと試みたが

馬は立つ気はあるものの

立ち上がることが出来なかった。

「・・・。」

私はここで初めて

この馬は間違いなく通過障害を起こしている、と思い

暗澹たる気持ちになった。

(腸捻転かもしれない・・・)

いやな時間が流れ始めた。

IMG_1697傍にいる仔馬は

立てない母親の腹部へ鼻をこすりつけて

乳を探しては、前掻きを繰り返した。

疝痛で馬が立てないというのは

もうよっぽどのことであり

馬はもちろん、飼主さんも

大変な心身の苦しみと

経済的損失を被る事になる。

この時点で

体温37.5℃ 心拍数60 呼吸約20(伸吟)

いやな時間の中で

私はこの馬の再びの採血と

フルニキシンと補液と抗生物質を投与し

◆さんには

また昼前に来ると約束して

一度事務所へ戻ることにした。


(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

 
 見ることが出来ます。














なつかしき獣医師スタートの日

今から33年も前の話。

昭和60年、

4月1日の朝、

私はM別町農業共済組合の、

新規採用の新人獣医師として、

臨床獣医師としてのスタートを切った。

この日の朝、

診療所に初出勤した私は、

完全に二日酔いだった・・・ 

それはなぜかというと

3月31日の夜

いよいよ明日から社会人として働くのだなーと

胸を膨らませながら

軽く寝酒を飲み

布団に入ってウトウトしていたところへ 

玄関のベルが鳴った

と、思うまもなく 

鍵をかけていない家の中へ

その日の夜間当番だった獣医師のM川所長が

ドヤドヤと入ってきて

「馬のお産だから、すぐ起きろ。行くぞ。」 

と、叩き起こされて

そそくさと助手席に乗って

仕事へ向かったのだった。

馬屋のH坂さん宅に着いて

早速助産開始。

正常位であることは確認できているが

なかなか出てこないので

痺れを切らせたH坂さんと

手伝いに来ていたG嶋さんと

我々2名の獣医師とで

仔馬の足にロープをつないで

牽引介助を始めた。

初産の親馬で

牽引の途中に仔馬が止まってしまった。

仔馬の骨盤が引っかかり

ヒップロック状態になったのだ。

牽引していた4人は

ここぞとばかりに

渾身の力でロープを引いた。

ドッ・・・と

仔馬の下半身が全て現われた時

ロープを引いていた我々4人は

もんどり打って

寝わらの中に倒れこんだ。

「いやーきつかったな。」

「仔っこは大丈夫だべ?」

「オンつか?」

「いや、メンつだ。」

「良かった良かった。」

「まぁ、上がっていっぷくするべ。」

時計の針は午前0時を過ぎ

4月1日になっていた。

「あんたは、今度新しく来た獣医さんかい。」

「はい。」

「そうかい、まぁ飲みなさい。」

「あ、どうも。」

目の前に出されたガラスのコップには

大きなペットボトルから直接注がれた甲類焼酎が

なみなみと入っていた。

(飼主さんから出されたお酒はできるかぎり飲むべし)

そう教えられていた私は

コップに注がれた甲類焼酎をくいくい飲んだ。

H坂さんとG嶋さんはニコニコしながら

私のコップの焼酎がなくなる前に

すぐに注ぎ足してくれるのだった。

しばらくは

M川所長とH坂さんとG嶋さんの馬談義を聞いていた。

教科書に載っていない専門用語が飛び交い

その内容はほとんど理解できなかった。

そのうちに

焼酎が体全体に廻り始め

私の記憶はそこから曖昧になった。

ただ、最後に

ふらふらと酔いながら

IMG_1275心地のよい夜風の中を馬小屋まで行き

先ほど生まれた仔馬が立ち上がって

母馬の乳を探り始めたのを見たことだけは

よく覚えている。

IMG_1277そうして迎えた

4月1日の

朝の初出勤の朝礼は

完全な二日酔いだった・・・

IMG_1280というわけだ。

当時は

M別共済に加入していた馬は

900頭以上いた。

それから

IMG_132333年の歳月が流れ

現在

我が診療区域内で共済に加入している馬は

50頭以下になってしまった。

これからの

IMG_1330我が町の馬産は

そして

十勝の馬産は

どうなってしまうのだろう・・・


人気ブログランキング


IMG_2775








 

重種馬つながりの新年会

「研修所のM木先生が講義に来られるので、その晩飲みませんか?」

帯広畜大のN保先生からの電話だった。

私は二つ返事でもちろんOK。

その日を楽しみに待ち、

先日、帯広の居酒屋へ集合した。

私が小上がりで待って居ると、

まずN保先生がやってきた。

続いて、M木先生がやってきた。

「あともう一人は・・・?」

「I井先生です。もう少し待ちますか。」

「I井先生と飲むのは、久しぶりですねー♪」

しばらくして、I井先生がやってきた。

「どうも、お待たせしました。」

「お久しぶりですねー。」

「この面子と聞いたら、外せないですよ(笑)」

 「・・・では、乾杯。」

和やかにはじまったプチ新年会は

私の敬愛する先生方ばかりの

嬉しい飲み会だった。

今回の4人の獣医師の共通項といえば

重種馬の繁殖である。

かつて重種馬の繁殖管理や分娩管理についての

データーを集めて共同研究をしたことがあった。

その後

M木先生は十勝NOSAIから野幌の研修所へ

I井先生は畜大から開業へ

N保先生はJRAから畜大へ

と、それぞれの道を進まれて

重種馬の繁殖に止まらず

皆さん、多方面で

八面六臂の活躍をされている。

そんな獣医療界の最先端をゆく3人の先生方と

気のおけない飲み友達で居られる私は

つくづく幸運であると思った。

これも、重種馬の繁殖に興味を持って

今まで仕事をしてきたおかげかなと思った。

重種馬に感謝である。

M木先生とは、もうかれこれ30年近い付き合いになるし

I井先生とN保先生とも20年以上、いろいろとお世話になってきた。

若い頃は

このメンバーで飲んだ時は

仕事の話ばかりをしていたような記憶がある。

各地方の色々な獣医学会などへ

私がたまに参加する時には

3人の先生方は、必ず講師や座長などで参加されているので

私にとっては、3人とも学問の師という思いがある。

夜遅くまで飲んでも

学問と仕事の話ばかりをしていたのは

皆さん本当に、真摯に仕事に打ち込まれているからだろうと思う。

今回の飲み会も、そういう感じで始まったが

少し違ってきたのは

それぞれのご家庭のことやら趣味のことやら

プライベートな話題でも

いろいろと盛り上がるようになってきたことだ。

私もついつい、日頃の由無し事を話しまくって

気持ちよく発散をさせていただいたような気がする。

みなさんそれぞれ

色々な人生の荒波を乗り越え?!

IMG_0987円熟味を増して

ますます進化し続ける

3人の先生方なのであった。

「またやりましょう!」

楽しい時間は瞬くまに過ぎ

またの再会を約束して

それぞれ

深夜の帯広の街を

後にしたのだった。


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして








 

hig先生・来帯(5)

「骨が折れようが、腸が捻れようが、産道に穴が開こうが、治す方法はあります。」

IMG_0491hig先生は講演会の最後を、

こんな言葉で締めくくった。

死亡原因の上位を占める難しい症例でも、

治す方法は「ある」、

というメッセージである。

多くの難しい症例に立ち向かって来たhig先生の言葉には重みがある。

それは、長年培ってきたサラブレッドの個体診療技術に対する

hig先生の経験と自信に裏付けられた言葉だと思われる。

IMG_0501では、これに対して

我々十勝の

あるいは牛の診療の多い地区全ての

獣医師たちの個体診療技術は

自らどれだけの経験と自信を持っているだろうか。

目の前の馬が、目の前の牛が、

骨が折れたら・・・本気で治療せず(できず)に・・・廃用・・・

腸が捻れたら・・・本気で治療せず(できず)に・・・廃用・・・

産道に穴が開いたら・・・本気で治療せず(できず)に・・・廃用・・・

我々は、そんなことを繰り返してきたのではないだろうか。

死亡原因の上位を占める難しい症例を前にして

我々牛の診療主体の地域の獣医師は

それらの牛や馬を廃用にすることで終りとし

その症例の詳しい記録を残さず

未来の症例治療に役立たせるデータの蓄積もせず

繰り返し襲ってくるそれらの症例を

繰り返し右から左に

同じ様に廃用にするばかりで

治癒に向けて本気で個体診療をするのを怠ってきたのではないだろうか。

我々牛の診療が主体の獣医師たちは

ある時期から・・・

病牛を治療をすることよりも、病牛の発生を予防をすることに重点を置くようになり

病牛の個体を診ることよりも、病牛の少ない牛群を管理することに重点を置くようになり

そのような牛群のなかで

不幸にして病気になってしまう個々の牛に対しては

個体診療技術を駆使して治癒させる方法を選ばず

生産性、コスト低減、群管理、などという大義名分の下に

病気の個体を安易に抹殺処分にしてきたのではないだろうか。

ある時期から・・・

その「ある時期」とは

いつ頃からなのか、といえば

プロダクションメディスン(生産獣医療)という考え方や

ハードヘルスマネジメント(牛群健康管理)といった考え方が

わが国の酪農業界に入ってきた時期と

一致するのではないかと

私は考えている。

当時はこの新しい考え方が業界内を席巻し

予防獣医学・生産獣医療こそ

これからの新しくて輝かしい獣医療であり

個体診療をしている獣医師というのは「火消し屋」に過ぎない

などと揶揄されたものである。

しかし、今

慢性的な牛不足による

牛の個体価格の高騰がつづく酪農業界の中で

我々牛の獣医師が求められるようになってきたのは

かつて「火消し」と揶揄されていた

個体診療の技術なのである。

個体診療というものは

薬物や医療施設や医療器具を駆使した

獣医師でなければできない

獣医師本来の仕事といえるだろう。

それに対して

生産獣医療や疾病予防というものは

薬物や医療施設や医療機器などはほとんど使わない管理技術であり

本来は畜産経営者や経営コンサルタントがするべきもので

獣医師が本来すべき仕事とは違うものなのではないかと思われる。

牛の診療が主体の獣医師たちは、今

獣医師本来の仕事である

個体診療の技術に

もう一度立ち返って

個体診療の技術を

真剣に学び直す時期に来たのではないだろうか。

主にサラブレッドを診療する獣医師である

hig先生の講演を拝聴して

私は

そういう思いを強くした。


(このシリーズ終わり)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。
 
 



















hig先生・来帯(4)

hig先生の講演の三番目の山場は、

骨折の話だった。 

馬の三大死亡原因の一つに数えられる骨折は

四肢をよく動かす馬に非常に多い外傷事故であり

特にサラブレッドのような気性の激しい競走馬では

職業病的な大怪我と言えるだろう。

そんな骨折に立ち向かい

数々の難しい症例を治癒させてきた

hig先生の骨折治療の話は

たいへん説得力があるが

一方で

サラブレッドをほとんど診ることのない我々十勝の獣医師たちにとっては

雲の上の存在かもしれない。

しかし、そんなレベルのhig先生が

IMG_0488今回は

雲の下まで降りてきて

重種馬の骨折の治療

さらには

牛の骨折の治療について

IMG_0498非常に丁寧に

解説してくれた。

我々が骨折の治療をするといえば

今現在は、キャストを巻く外固定ばかりである。

そのキャストの巻き方にはまだまだ間違いが多いとhig先生は言う。

「下巻きの綿は不要。」

綿をグルグルと厚く巻き

それからキャストをぎゅうぎゅう圧迫して巻くのは間違いで

骨折部が固定されず、かえって骨癒合の妨げになる。

「下巻きはストッキネットで薄く、キャストはコロコロと転がすように」

巻いてゆくのがよいと言う。

それは、重種馬や牛でも同じことで

馬や牛の四肢は解剖学的に言うと

「足ではなく指である」

からである、とhig先生は言う。

ただし

そのようなキャスト巻きによる外固定が成功するのは

筋層の薄い、中手骨や中足骨の骨折である。

筋層の厚い、橈骨や脛骨さらに上腕骨や大腿骨は

「キャストによる外固定では限界が」

あり

たとえ骨癒合しても、変形して癒合するなど

きちんと治癒しない確率が高い。

そこで登場するのが

プレートによる内固定の技術である。

hig先生は、Bovine orthopedics(牛の整形外科)という本の中から

「牛では、プレート固定が通常もっとも安定した内固定を提供する。」

「内固定は、経済的に高価な牛の骨折だけでなく、いくつものタイプの骨折において、外科手術による、速く、問題のない治癒が達成される。」

IMG_0503という言葉を引用して

我々十勝の獣医師たちに

プレートによる内固定技術の習得を

強く勧めている。

「牛の骨折で、今までは治せなかった骨折が治せるようになる」

という技術。

それが

IMG_0502プレートによる内固定の技術である

と、hig先生は明言しているのだ。

その詳しい内容は、ここでは書ききれないが

hig先生が、今回の講習会でもっとも言いたかったことの一つが

これだったことは間違いないと思う。

IMG_0495それは

今回の講習会のために

hig先生はわざわざ、和牛子牛の後ろ足を一本と

必要最小限のプレート固定の道具を持ってきて

我々の目の前で、プレート固定を実際に披露してくれた

ということでもよくわかる。

この時

私と、後輩のS本獣医師が

子牛の足を保定・保持する役目をやったのだが

私が全く初めての経験だったせいで、要領を得ず

骨折部位の仮止めまでの時間をかなり長引かせてしまった(汗)

NEC_0034ただ、そのおかげで

私はこの歳で初めて

牛の内固定術の実習をすることができ

なんとなくこんな感じで進めてゆくものなのだ

ということを、身を以て体験することができた♪

会場にいた獣医師のの中でも、私と同じように

牛の内固定技術を実際に見るのは

全く初めてだったという獣医師が

きっと

多くいたに違いない。


(この記事もう少し続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。
 
 



 

hig先生・来帯(3)

馬の3大死亡原因の中の、

IMG_0488「分娩事故」は、

我々十勝の獣医師をはじめ、

どこの獣医師でも経験することがあるだろうと思う。

それは、飼主さんが馬をなぜ飼っているかといえば、

その多くが、仔馬の生産のために飼っているからである。

重種馬を飼う農家さんも、その例外ではない。

我々は、重種馬の生産地で働いているのである。

ところが今・・・

その重種馬の生産が大きな転機を迎えつつある。

重種馬を生産する農家さんが

いよいよ居なくなってしまったのである。

多くが高齢で廃業してしまった、

おきまりの後継者不足である。

その理由はいろいろだが

最も大きな理由は、おそらく

生産した重種馬の値段がずっと安く低迷し

重種馬を飼っていても利益が出なかった事だと思う。

そんな状態が10年以上も続いていた。

重種馬農家の後継者たちは

多くが馬の生産をやめ

安定収入を得るために、和牛の生産に切り替える家も多かった。

重種馬生産の辛抱も限界を超えていたのだ。

ところが、去年あたりから

重種馬の値段が、一気に上昇してきたのである。

重種馬の供給が、とうとう需要に追いつかなくなったのである。

詳しい理由は省略するが

数年前の倍以上の値段で重種馬が取引されるようになった。

とうとう値段が底を打ったのだ。

今後は、きっと

我々獣医師にも、重種馬の診療依頼が増えて来るに違いない。

IMG_0532そのような状況の中で

hig先生の「馬の分娩事故」への獣医療についての

さまざまな言葉には

我々重種馬の生産現場の獣医師にとって

とても重要な事が含まれていると思った。

まずは

「正常な分娩について知る必要がある。」

これは全く当たり前のことである。

異常なお産の時ばかり呼ばれていては

どこか異常なお産で、どこが正常なお産なのか

認識できないのでは、話にならない。

ところが、今の若い獣医師たちの実際は

馬の正常な分娩にさえ、立ちあう機会が激減してしまっている。

いちいち獣医師を呼ぶほどではない、馬の正常なお産を

若い獣医師諸君は、自ら積極的に

体験できるような働きかけが重要であると思う。

臨床獣医師として、何事もそうであるが

特にお産については

いくら本を読んで勉強しても

いくらビデオを見て勉強しても

それでは不十分なのである。

とにかくまずは、1人でも多くの獣医師が

馬の正常なお産を、実際の現場で体験してほしいと思う。

これが、「分娩事故」に対応できる獣医師になるための

最初の一歩であると思う。

それができてから、ようやく

難産介助、帝王切開、などの技術を

習得してゆくのが良いと思う。

難産介助については、hig先生曰く

「2人以上で行う。」

「20分で進展がなければ全身麻酔を考える。」

また、帝王切開については

「止血をしっかりする、胎盤は剥がさない!」

これについては

私も痛い経験があったので

全くその通りだと、身に沁みて思った。

馬の全身麻酔をする機会は

我々十勝の獣医師にはそれほど多くない。

しかし

全身麻酔の話の時に、hig先生から

「麻薬施用者の免許を取っている方はどれだけいますか?」

と、問われて

その場で手を挙げたのは

なんと、私1人だった・・・

ということは

麻薬に指定されている麻酔薬(主にケタミン)を取り扱える獣医師が

今回の聴衆の中では、私だけ、ということ。

BlogPaintこれにはちょっと、私が驚いてしまった。

十勝の獣医師全員が、麻薬施用者になる必要はないけれども

少なくとも、1診療所に1人くらいは

麻薬施用者を配置しておくべきではないかと

私は思った。


(この記事続く)


人気ブログランキング


IMG_2775
左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

ご覧いただけます。
 
 





 
Profile

豆作(まめさく)

ギャラリー
  • 藍生×【itak】合同イベント
  • 藍生×【itak】合同イベント
  • 藍生×【itak】合同イベント
  • 藍生×【itak】合同イベント
  • 藍生×【itak】合同イベント
  • 藍生×【itak】合同イベント
  • 研修医制度
  • 研修医制度
  • 研修医制度
蓄 積
1日1回クリック宜しく!

願援助為自己満足
livedoor 天気
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

感 謝
牛馬語の俳句

  • ライブドアブログ