北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

馬の診療

最後の1頭、誕生♪

昨夜の深夜1時半頃、

枕元の携帯電話が鳴った。 

「・・・袋が見えてきたから、大至急頼む。」 

分娩遅延の馬のいるΑさんからの往診の依頼だった。

急いで馬小屋まで車を飛ばして、

到着した時には、

IMG_5650写真のように、 

すでに生まれていた。

仔馬の後肢2本はまだ胎胞に覆われて、

臍帯(へその緒)はまだ微かに脈を打っていた。 

生まれたばかりの仔馬と

産んだばかりの親馬は

共に寝そべり

鼻で呼吸をしていた。

その傍らに

飼い主のΑさんがしゃがんでいた。

「無事に出てよかったね。」 

「・・・。」 

「オス、メス、どっち?」

「・・・まだわからん。」 

「おっきな子だね。」

「・・・そうでもないんでないか。」 

「いやぁ結構でかいよ。」 

 「・・・ずいぶん遅れたからな。」

IMG_5663「何日遅れたの。」 

「・・・24日。」 

「予定日は?」 

「・・・24日。」 

「5月24日・・・が予定っていうことは・・・」 

「・・・だから24日だって。」 

「そっか(笑)じゃあ発情1周期まるまる遅れたっていうことだ。」

「・・・そうだ。」 

仔馬が頭を上げ始め

親馬が仔馬のことを気にし始めた。

「いま頃のお産は、寒くなくていいね。」 

「・・・。」

「メスみたいだね。」 

「・・・そうか、ま生きとったら、どっちでもいいわ。」 

「やっぱりでかいよ。」 

「・・・メスにしては肢が太いかもな。」 

「種馬はどこの?」

「・・・Mさん。」 

「いい子できたね。」 

「・・・ま、こんなもんでないか。」 

「こいつだけどうしてこんなに遅れたのかね。」 

「・・・この親は、おととしも遅れて、その時は死産だったからな。」 

「それで心配で、アリナミン何度も打ってたんだ。」 

「・・・そうだ。それが効いたんでないか。」 

「それはどうかわかんないけどね。結果オーライだね。」

「・・・この親、自分ばかり肉つきやがって。」

「そういう親、いるよね。お腹の仔がなかなか育たないのかね。」 

「・・・だから遅れんのか。」

「栄養分の行き先のちがいで、遅れたり早くなったりなのかもね。」

「・・・。」 

親馬が仔馬を舐め始めた。

「・・・一服するべ。」

私たちは

Αさんの家に上がり

居間の監視モニター画面の前に座り

この親仔を引き続き見守りながら

お茶で一服することにした。 

1時間ほど経ったところで

再び馬小屋へ行ってみると

IMG_5667親は立ち上がり

引き続き仔馬を舐めていた。

胎盤(後産)がまだぶら下がっていたので

オキシトシンの注射を打ち

そのまま帰路に着いた。

翌朝

往診の1番最初にΑさん宅に寄ってみた。

昨日の親子は

特に問題なく

普通の親仔馬の姿で

馬小屋の中に立っていた。

「後産は出たの?」 

「・・・今朝、おまえが帰ってからすぐ出た。」

「仔馬のうんち出た?」

「・・・でた。浣腸もした。」

「じやあもう大丈夫だね。」

「・・・なかなか乳首に吸い付かんのよな。」

「これだけ元気に乳探ってれば、大丈夫だよ。」

IMG_5668仔馬は親の乳を探り

親馬は仔馬の鼻先へ白い乳を漏らしていた 。

仔馬が乳首に吸いつくのは

もう時間の問題だった。

私はひと安心して

次の往診地へと向かった。 

かくして

わが町の重種馬の

今年最後のお産も 

ようやく無事に終わったのだった。 


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馬の分娩遅延

我が町内で飼養されている重種の繁殖牝馬の、

IMG_5514今年のお産も、

とうとう残す所あと1頭 となった。

かつては毎年100頭近く生まれていた仔馬も、

今では20頭を割ってしまった。

さみしい限りの状況だが、

せめてその仔馬たちの全てが、

無事に生まれてほしい。

今年は今のところ、全頭無事に生まれている。

しかし、気がかりなのは

この最後の1頭の

分娩予定日は5月の24日だということだ。

今日は6月11日だから

もう予定日から18日も遅れていることになる。

馬の分娩が、予定日から大きくずれるのはよくある事で

私も過去にそれに関する記事を書いたことがある。

しかし、よくある事と言いながら

その理由は未だによくわかっていない。

よくわかっていないから

予想ができなくて苦労をする。

苦労をしながら、みんないろいろ考える。

そして

馬の分娩遅延の理由には色々な俗説が生まれる。

例えば

(1)交配時の排卵遅延説・・・

最終交配日から排卵が大きくずれて、そのまま分娩も遅れるという説だ。

しかし、排卵は遅れてもせいぜい1週間が限度だろうし

分娩の遅延は説明できても、分娩が予定より早まる事は説明できない。

(2)個体差説・・・

妊娠期間が先天的に長い個体がいるという説。

これは、調べればそういう傾向を持つ個体が見つかるかもしれない。

逆に妊娠期間の短い個体も見つかるかもしれない。

しかし、本気で調べたデーターにはお目にかかっていない。

(3)栄養説・・・

妊娠中に摂取した栄養(エネルギー)が少ないと、分娩が遅れるという説。

母馬の栄養ばかりではなく、胎児の成長にも影響している事は推測できる。

この説はまるで、桜の開花予想に積算気温が関係しているという説に似ている。

高栄養の馬群は分娩が予定より早く

低栄養の馬群は分娩が予定より遅れる

あるいは

なんらかの理由で長期間採食量が落ちている個体は

分娩が予定より遅れる傾向がある

というのは、私の過去の経験を振り返っても

その傾向は、無くは無い・・・ような気もするのである。

しかし、これも本気で調べたデーターにはお目にかかってはいない。

他にも、どんな俗説があるのか

興味深い所ではある。

ともあれ、今はわが町の

残りあと1頭となった重種牝馬のお産が

無事に終わってくれる事を

祈るのみである。


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ミニチュアホースの腹膜炎(3)

1枚目の写真は腹腔洗浄した翌日。

それから3日間、この馬は餌を全く食べなかった。

IMG_5299排便はほとんどなく、

下腹部の術創周辺には、

盤状の冷性の浮腫(むくみ)があらわれ、

縫い終わった創部からは、

僅かだがポタポタと漿液(腹水か)が漏れ出ていた。

ドレーンを装着していれば

そこからスムーズに廃液されたと思われた。

体温は37℃台に下がり、心拍数は遅めの50台

血液検査で目立ったのは、血清たんばく質の低下だった。

リンゲル液とアミノ酸製剤の輸液と

抗生物質を投与し続けた。

2枚目の写真は腹腔洗浄をしてから5日目。

IMG_2076食欲が現れた。

便の量は僅かに増えたが、

硬い便と泥状の軟便を繰り返し排泄した。

下腹部の浮腫は少しづつ縮小し

漿液の漏出も止まっていた。

体温は37 ℃台で、心拍数も5〜60台だった。

血清タンパク質は上昇傾向に転じた。

さらにリンゲル液とアミノ酸製剤と

抗生物質の投与をし続けた。

3枚目の写真は腹腔洗浄してから10日目。

IMG_2075食欲は上昇し、活気が出てきた。

便の量も増え、形状も安定した。

外に出たがる仕草をするようになったので

日中は放牧することにした。

体温は38℃台、心拍数は7〜80台になった。

血清たんばく質も6mg/dl台に回復。

治療を中止して

様子を見ることにした。

IMG_54384、5枚目の写真は

それから1ヶ月以上経った時のもの。

他の馬たちとは、別の牧区に入れられていたが

元気、食欲、排便、歩様

全て問題はなかった。

普通の健康なミニチュアホースと同様に

IMG_5440牧場の中を元気に走り回っていた。

やっとの事で捕まえて

下腹部の術創を見たが

創部の状態も良好だった。

(今回の症例は、今年9月の上旬、旭川で開催される北海道獣医師会の学術三学会で演題発表をする予定です。興味のある方は、どうぞ聴きに来てください。)

(この記事おわり)


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ミニチュアホースの腹膜炎(2)

災いは忘れた頃にやってくる・・・

という言葉もあるように、

私はこのミニチュアホースのことをほとんど忘れかけていた。

図3そんな私の眼の前に、

救いようのなさそうな腹部の膨隆している、

苦しそうなその馬と再会してしまったのだ。

これはもはや、ダメではないのか・・・

図4そんな第一印象だった。

だが、飼主の△さんは、なんとか命だけでも助からないかという。

ダメもとで、外科的な処置をするほかはない・・・

そんな思いで、診療所に戻り

午後からの開腹手術の準備をした。

ドミトール+ケタラールで倒馬し

GGEとのトリプルドリップ法で麻酔を維持する。

推定の体重がわずか50圓覆里如普段使う量の10分の1だ。

IMG_2997仰臥保定して、バリカンで毛を刈り

パンパンに膨らんでいる腹部に超音波を当ててみた。

どこを当てても、エコーフリーな黒い画面がほとんどで

どこがどうなっているのかは全く把握できなかった。

「切ってみますね。」

私は立ち会っていた△さんにそう言って

正中部を約5僂曚廟擲した。

IMG_5240その途端・・・

黄色く混濁した腹水が飛び出てきた。

まるで、液体を入れた風船に穴を開けたような勢いで

創口から噴水のようにアーチを描きながら飛び出てきた。

IMG_2002「すごい量だ・・・」

手術に参加した人たちの視線が、腹水のシャワーに釘付けになった。

「やっぱり腹膜炎だ・・・」 

黄色い腹水に混ざって

卵とじのようなフィブリン様の絮片も

時折創口から飛出してきた。

腹水がほとんど出終わったところで 

助手をしているS獣医師が

創口から手を入れて、腹腔内を探索した。

すると、骨盤腔の付近に20僉15冂度の塊に触れ

その周りにフィブリン様の物質が付着していたので

それを手で剥がした。

それは、腹腔内膿瘍の自壊であることが想像できた。

(実は、一昨日の十勝獣医師会の学術研究発表会の時、「腹腔内の所見はどうだったのか」、というご質問をいただいた。その時私は、自分では腹腔内に手を入れていなかったので、はっきりした探索所見を答えることができなかった。そこで昨日助手をしたS獣医師に、腹腔内を探索した所見を聞いたところ、上記のような腹腔内の様子を語ってくれたので、ここにあらためて、質問の答えを書かせていただきました。) 

この後はもう

腹腔内を大量の洗浄液で洗うしかない・・・

「タンク、使いましょうか。」

そこで、機転を利かせたのはもう1人の助手のO獣医師だった。

重種馬の子宮洗浄に使う20リットル入りのタンクに生理食塩水を作り

IMG_5245その中に抗生物質を入れて、腹腔洗浄液とし

その液をシリコンチューブで創口へ導き

洗浄液が溢れ出てくるまで注入した。

注入したところで、腹腔内に手を入れて、液を隅々まで行きわたらせ

その後、馬を手術台ごと傾けて、洗浄液をほぼ全量排出させ

その操作を2回繰り返したところ、排液は透明感を帯びてきた。

排液が全て終わった後、生理食塩水のボトルに抗生物質を入れたものを

IMG_5249腹腔内へ注入し、閉腹した。

術後、馬は直ぐに立ち上がり

車に乗って、帰宅した。

(この記事続く)


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ミニチュアホースの腹膜炎(1)

1枚目の写真は、今から約2年前の、

図2平成26年4月に診療した△さんのミニチュアホース。

「後産が残っている」という禀告で、

手を入れてみたら、まだ胎児が居た。

側頭位の難産だった。

プラ二パートの投与と粘滑剤の注入によって、

失位した頭部を整復して、

なんとか娩出させることが出来た。

胎児は死亡していたが

その後、数日の治療で

親馬は元気を取り戻した。

このときの様子は

2014.4.20.の私のブログ記事に書いたとおりである。

2枚目の写真は

図1
それから半年たった平成26年9月、

△さんから、この馬の子宮洗浄の依頼が来たときのもの。

「発情が来たので交配したが、その後、血の混ざった粘液が出ておかしい。」という禀告。

子宮洗浄をしようとして、膣の中へ手を入れたら

子宮頚管外口部が穿孔しているのを発見。

子宮洗浄を中止した。

私は暗澹たる気持ちになった。

△さんには、

この馬はもう助からないかもしれない

と告げて、抗生物質の投与を

数日間続けた。

そうしたところ

この馬はなんと

その3日後には餌を食べ始め

元気に走り回るようになった。

このときの様子も

2014.10.17.の記事に書いた通りである


それから

1年と6ヶ月の歳月が流れた。

そしてこのミニチュアホースが

図3突然、体調を崩したのは

今年の平成28年4月だった。

△さんの禀告は

「お腹がパンパンに膨らんで、異常な大きさになっている。」というものだった。

図4熱発して呆然佇立。

腹腔を穿刺してみたところ

化膿性の腹水が吸引されてきた。

このミニチュアホースの2年前からの病歴を考えれば

腹膜炎であろう事は、容易に想像できた。

「これはもう、このままにしていたら死んじゃいますよ。」

「なんとか命だけでも助からんかい?」

「うーん、こうなったらもうお腹を切って、中の悪いものを出すしかないか。」

「手術かい?」

「はい、もうそれしか方法はない・・・、ダメもとでやってみましょうか。」

「お願いします。」

かくして私たち診療所のスタッフは

この日の午後

この馬の開腹手術をすることになった。

(その結末は・・・明日・・・十勝NOSAI本所で開催される「十勝獣医師会・学術研究発表会」でも発表します。)

(この記事続く)


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新種牡馬がやってきた!

今年の春から、わが診療地区のM畜産で、

新しく供用されている重種馬の種牡馬(しゅぼば)、

すなわち種馬(たねうま)の評判が上々で、

種付けの依頼が続々と集まっている。

IMG_5205その名は「インフィニティー」。

ばんえい競馬ファンの人であれば、

この馬が

一昨年のばんえい記念の1着馬で

去年のばんえい記念の3着馬で

今年のばんえい記念の4着馬という

輝かしい実績をもって引退してきた馬であることは

ご存知だと思う。

ばんえい競馬の最高峰のレースに3年連続で出場して

この好成績は伊達ではない。

先日我が町に到着して

私がその個体確認にM畜産へ行った時にも

巡回種付けの準備で、外に繋がれていた。

インフィニティの父方の祖父は

我が町で生まれた名種牡馬センショウリ(その父はジャンデュマレイ)

母方の祖父は

これも名馬ヒカルテンリュウ(その父はマツノコトブキ)

という十勝の名血統で、申し分がない。

IMG_5179数日後にまた、馬房へ行くと

インフィニティーは、飼槽の窓から顔を出して

私の手や顔に食いつかんとばかりに

顔を伸ばして、戯れるようなしぐさをした。

その精悍な顔つきが

ちょっとお茶目な悪戯小僧に見えた。

IMG_5174「インフィニティー」という言葉は

日本語で「無限大(∞)」という意味がある。

良い馬には、自然と

良い名前が付いているものである。

極度の生産不足に陥っている、今の重種馬の生産地で

数少ない繁殖牝馬をことごとく受胎させて

IMG_5215生産力回復のための

期待の星として活躍して欲しい。

種馬としての

まさに、「無限の」可能性を秘めた

新種牡馬が

我が町にやってきたのだ。


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重種繁殖牝馬の高騰

我が診療地区でもようやく、

仔馬の姿を見ることが出来る季節になった。

馬はご存知の通り、季節繁殖動物である。

馬の居る地域で仕事をしていれば、

IMG_5154生まれたばかりの仔馬を見ると

あぁ、やっと春が来たんだな、と思う。

昔は、ほとんどの日本人が

生活の中で、仔馬を見て

そこで皆、同じような季節感を抱いていたに違いない。

仔馬から感じる季節感が

そういう人たちの手で、色々な文芸に表現されることで

仔馬というものが、春の季題として

自然に選ばれて、定着して

歳時記に掲載されるに至ったのだろう。

IMG_5157仔馬と同じように

昔から、日本人は

生まれたばかりの仔牛の姿も、見ていたであろうけれども

仔牛というのは、季題にはなっていない。

昔から、日本では

生まれたばかりの仔牛は

季節を問わずに1年中見られていたのだろうと推測できる。

さて

IMG_5158そんな仔馬であるが

今、その値段がうなぎのぼりに高騰しているという。

重種馬で、それは特に著しいらしい。

その理由は、以前のブログ記事「需給バランスの、崩壊。」を読んで頂きたい。

ここではさらに

新しい情報として

重種馬の仔馬をこれから産むという母親の繁殖牝馬の値段が

今、とんでもないらしい。

どんなに血統的に悪かろうと、無名であろうと

重種の繁殖牝馬は今、受胎さえしていれば

150万円以上なのだという。

去年や一昨年であれば

おそらく50〜60万円だった孕みの繁殖牝馬が

軒並み、3倍近い値段で売買されているらしい

というのだから、驚きである。

と、同時に

重種馬の生産現場においては

農政による流通の混乱予防の対策などは皆無であり

全くの野放し状態であることで

こんな状態になっているというのが

情けなく、残念で、呆れてしまうのである。

このような有様では

これからの若い重種馬の生産者は

生業が安定して続くなどとは、とても思えないだろう。

重種馬生産の後継者が育たないのは

そんな理由も有るのではないかと思う。


 骨太の仔馬ぞ母はペルシュロン    豆作



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需給バランスの、崩壊。

牛の価格が高騰しているが、

馬の価格もなぜか高騰している。

IMG_5101ここで言う馬とは、

サラブレッドではなく

ばんえい競馬用や肉用の重種馬のことである。

初妊牛の値段がひと頃の倍になっているのと同じように、

重種馬の値段もひと頃の倍になりそうな勢いである。

その理由は

十勝馬事振興会のS々木会長さんの言葉を借りれば

「需給バランスの、崩壊。」

だそうである。

IMG_5108「需要」とはすなわち

ばんえい競馬に走らせる馬、と

九州で肉料理にする馬、である。

ばんえい競馬の厩舎には年間4〜5百頭の重種馬が入厩するが

その数には大きな変化はない。

九州の肉業者には年間数千頭の重種馬が買われてゆくが

その数は増える傾向にあるという。

日本の馬肉産業は年間7〜8千頭の重種馬を消費しており

その半数以上はカナダなどからの輸入でまかなっていたが

円安で輸送コストがかかることと

カナダ国内の馬の数も生産者の減少で減っているということで

九州の肉業者は北海道の重種馬を

今まで以上に買いに来ているらしい。

IMG_5107一方

「供給」はどうかいうと

これが最も深刻で

生産者の数はここへ来てもますます減る一方である。

これは私が日々の馬の診療の中で

強く感じていることである。

往診先がどんどん減っている。

今年のわが町の重種馬のNOSAI保険の加入頭数も

またまた過去最低を更新してしまいそうな状況である。

既存の馬の飼主さんたちは馬を増やす体力がなく

廃業を余儀なくされる馬産家が後を絶たない。

一方で、馬産を新規で始める人もなかなか現われない。

供給不足は出口が見えない状況なのだ。

そんな理由で

「需給バランスの、崩壊。」

と言う現象が起こっているのである。

この先、重種馬産業のはどうなるのか

なかなか先は読めないが

需要は底堅いものがあるのだから

供給の崩壊を食い止めれば

復活してくるのかもしれない。

IMG_5102これをお読みの畜産農家の皆さん

牛もいいけれど

馬も、今

飼ってみたら面白いかもしれませんよ。


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同世代♪

北海道獣医師会雑誌の今月号。

IMG_5027「短報」のトップに、我が親愛なるドクターH氏の報告が載っていた。

「分娩による直腸裂創を縫合した繁殖雌馬の1症例」

という臨床現場からの症例報告だ。

相変わらず、事あるごとにこのような新しい学術知見と新技術を探求し

IMG_5025それを弛まずに論文にまとめておられる姿に敬意を表し、見習いたいと思った。

ドクターH氏は、ご存知の通りこの分野では我が国の権威であり、

八面六臂の活躍をされていることは、いまさら言うまでもない。

私が素晴らしいと思ったのは

IMG_5026ドクターH氏ばかりではなく

共同報告者として名を連ねているお二人(HH氏とUT氏)とも

私と同世代の50半ばの獣医師である事だ。

そんな同世代の仲間が、学術研究の分野において

臨床現場の第一線の知見を、弛まず報告し続けている

ということの意義は非常に大きいと思う。

我々同世代の獣医師たちの励みになることはもちろん

それ以外の世代の獣医師にも

それ以外の分野の獣医師にも

大いに刺激になることである。

御三方に改めて、敬意と賞賛の意を表したいと思う。

ちなみに

この号の、この記事から30ページ程めくっていただくと

IMG_5028こういう紙面が現われる。

毎度失礼つかまつりーの

小さな文芸欄(笑)

今回は、我が敬愛する文芸派獣医師

頑黒和尚の作品と

私豆作の作品との

両者並記の揃い踏みとなった。

獣医「学術」分野と共に

獣医「文芸」分野において

同世代の50半ばの獣医師が

このように弛まず(?!)作品を書いて載せ続けている

ということの意義は

大いにある(?!)

と、思いたいのだが・・・


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非加入馬の妊娠鑑定

午前中の往診が終わる頃、

*牧場の親方から電話がかかってきた。

「先生、馬の妊娠鑑定1頭してくれるかい。」 

「・・・いいよ。」 

「おれの馬じゃないんだけどさ。」 

「・・・。」 

「あれ、あそこの〓の沢で馬飼ってる調教師の▼さんとこに来てる馬で、保険入ってないんだよ。」

「・・・、NOSAIの保険入るつもりはないの?」

「いや、ないわ、きっと。」

「・・・じゃあそれなりの料金掛かっちゃうけれど、いいの?」 

「うん。そのことは▼さんにちゃんと言ってあるから。」 

「・・・了解。じゃあ、昼から行きます。」 

 〓の沢の馬厩舎は、かつてある土建屋の社長さんが馬の生産していたが

景気が悪くなって手を引き、立派な施設だけが残っている。

そこへ、ばんえい競馬の調教師の▼さんが馬を入れているのだった。

▼さんが引いてきたのは立派な青毛の牝馬だった。

IMG_4973「この馬の登録書とかありますか?」

「今は、手元にないんだけど、11才だ。」

「料金は、非加入の料金になりますけど・・・」

「あぁ、それはわかってるよ。」

非加入畜の診療料金と支払い方法を確認してから

私は、カッパを着て直検手袋を履いて

枠場に入れられたこの馬の肛門に手を入れ

妊娠鑑定をした。

「種付けしたのはいつですか?」

「5月に産む予定とかいってたかな。」

「じゃあ、6月の種付けですね、何ていう種馬かわかりますか?」

「いや、わからない。」

私は大方の見当をつけて、馬の腹腔を探った。

妊娠7ヶ月の馬だと、胎児に直接触れればラッキーだが

胎児に触れることができなければ

子宮の大きさと下がり具合

そして、卵巣を掴んで、その位置と遊走性等を診て

妊娠か非妊娠かを判断することになる。

これには何頭も妊娠鑑定をした経験がものをいうのである。

馬糞を掻き出しながら、大きくて深い腹腔を探っていると

想像していたより手前の方に、子宮を確認した。

さらにその子宮から辿って、左右の卵巣を掴んだ。

子宮も卵巣も、発情期に触診するものと

さほど変わらない位置と大きさだった。

「あーこれは、とまってませんね。妊娠マイナスです。」

「そうかい、わかった。どうもありがとう。」

老調教師の▼さんは、大きくうなづき

厩舎へと馬を引き連れて行った。

さて、ここで

十勝NOSAIの組合員以外の非加入の馬を

直腸検査のみで妊娠鑑定した場合

その料金がいくらになるかは

事故外カルテの料金表によって計算される。

今回の場合は

車両負担金(非加入ー大)      ・・・1,575円

妊娠鑑定・直検法・馬(非加入ー大) ・・・5,796円

となり、合計 7,371円 となる。

ちなみに

これがもし

十勝NOSAIの保険の加入馬であった場合は

車両負担金(加入事故外)      ・・・315円

妊娠鑑定・直検法・馬(加入事故外) ・・・1,050円

となり、合計 1,365円 となる。

加入馬と非加入馬で

まったく同じ診療行為をして

その差は、7,371 - 1,365  =  6,006円

となる。

私は個人的に

この差は大きすぎるのではないかと思っている。

こんなに差があるのならば

保険に入って安く診てもらおうと思う飼主さんもいるかもしれないが

それよりも、今、目の前の保険に入っていない馬が

妊娠しているかどうか知りたいのに

妊娠鑑定料金のあまりの高額に

その依頼をためらってしまう飼主さんも

多いのではないかと思うからだ。

馬の飼主さんが、妊娠鑑定の依頼をためらえば

我々獣医師の、馬の妊娠鑑定の仕事の機会が減る。

馬の妊娠鑑定間の機会が減れば

我々獣医師は、妊娠鑑定の経験を積むことが難しくなる。

経験を積むことが難しくなれば

若い獣医師の技術がなかなか向上せず

その結果、我々NOSAIの獣医師の技術は

馬の飼主さん達から信頼されなくなる。

信頼されなくなれば

ますます診療の機会が減る。

これは

馬の診療技術の継承に

悪影響を及ぼしているのではなかろうか。

そんな悪循環が

十勝地方の獣医師と馬の飼主さんの間で

ずっと続いてきたのではなかろうか。


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捻転去勢捧の馬への応用(2)

牛用の捻転去勢捧は、

サラブレッドの去勢にも充分使えることが、

hig先生のブログ記事によって明らかになったのは、

大変嬉しい事である。

サラブレッドの去勢に使えるものであれば、

十勝地方の重種馬やその他の種類の馬にも、

充分使えるであろう事は、容易に想像できる。

実は、去年

そのチャンスが巡って来たのだった。

それは、1才のドサンコだった。

しかし、安価なドサンコの場合

高価ななサラブレッドのように

完璧に麻酔を掛けて眠らせて

衛生的な施設で仰臥位にして

安全で理想的な去勢を実施することが

経済的に難しいという現実がある。

飼主さんと色々話し合った結果

実験的な試みも加えて

去勢をさせて頂けることになった。

その実験的な試みとは・・・そう

ニコイチ捻転法である。

hig先生がサラブレッドで採用した捻転法は

いわゆるヘンダーソン式といわれる

精巣を1個ずつ2回に分けて捻リ取る方法だが

実は、以前からずっと

私がやってみたかった方法は

精巣2個を同時に捻り取る

ニコイチ捻転法だった。

馬の精索を2本まとめて捧のフックに掛けて

手でゆっくりと回し

2個の精巣をいっぺんに捻り取るニコイチ捻転は

おそらく馬では

まだ誰もやっていない方法のはずだ。

枠場に入れたドサンコに

鎮静剤を投与し

さらに鼻捻と肢・肩・腹に保定ロープを取り付け

股間を洗浄消毒して、

陰嚢の正中線を1箇所

縦に切開し

皮下の結合組織を鈍性に剥がしながら

総しょう膜に覆われたままの精巣を

IMG_40532つ同時に露出させる。

精巣と皮下の結合組織は

牛よりも馬のほうが強靭に結合しているので

ここまでの作業が

牛を去勢するときよりも時間が掛かった。

しかし、ひとたび

IMG_40562つの精巣を露出させることができたならば

あとは、牛の去勢と同じように

掴んでいる2本の精索に

捻転捧のフックを掛けて

回し始めればよい。

ゆっくりと調節しながら

IMG_406120回以上回すと

回す手の抵抗がふっと消えて軽くなる。

更に捻転捧を10回も回せば

2つの精巣がその棒の先に付いて

馬の本体から離れる。

捻り取られた部位を消毒して

IMG_4063抗生物質を投与し

保定を解き放って終了。

その後5日間

抗生物質を打ってもらうことにした。

数日後、術部は若干腫れたらしいが

その後は、特に問題はなかったようだ。

IMG_4064以上で

私の初めての試みである

馬のニコイチ捻転による去勢は

無事に終了したのだった。


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「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画を撮りました

写真をクリックして

ご覧いただけます。


捻転去勢捧の馬への応用(1)

私の敬愛する日高の馬医者、hig先生が、

我々十勝の獣医師の考案した「牛用捻転去勢捧」を、

040b117511090270d81600d006756d13_sサラブレッドの去勢に使ってもらった♪

ということを知り、

大変うれしく光栄に思っている。

その、実際に使用したときの報告は

去年アップされた「馬医者修行日記」に

2回にわたって、詳しく書かれている。

そのページをリンクしたので

興味のある方は、ぜひご覧になって頂きたいと思う。

587703c6d1772bbb1bbd8972983f252c_s高価なサラブレッドの去勢となると、さすがに

全身麻酔下の仰臥位で

局所麻酔もしっかり行って

痛みを与えず

ab93da78225f2f0fec5cb69e809aa757_s安全に行っている。

こういう意識と技術は

我々重種馬生産地の獣医師は、

もっと多くを学ばねばならないところだと思う。

hig先生は、記事の中でこう言っている。

2cba405933529b81888b5cfa8c4e7d94_s「電動ドリルも要らないし、回転の調節がしやすいし、数万円するSTONE社の去勢具も要らない。

捻転式去勢ではあるが、STONE社の器具とはまったく違う器具なので、特許上の問題もないだろう。


しかし、ステンレスの頑丈な棒を180度曲げるのはHow toと器材が要るので、自作するのは難しい。」

a139d25e6a385578410f2652198abd23_sそうなんです。

とても安く出来るのですが

私達も自作できず

とある大変器用な方に作ってもらっています。

How to はその人しか知りません。

hig先生はさらに

「北海道発の牛と馬の去勢具が、世界を席捲するようになったら、それだけで愉快だと私は思う。」

と言っている。

そうですね♪

そうなれば、もちろん

私達も、とても愉快ですね♪


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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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「白帯病」をなぜ「砂のぼり」と言うのか。

前回の記事のごとく、白帯病の治療を施した当歳馬。

左前蹄底の外側の白線(白帯)に穴を開け、排膿させて、

抗生物質を打つこと4日目。

「昨日まではずいぶん痛そうにしとったんだが、今日はなんぼかいいみたいだ。」

というÅさん。

仔馬の傍に行って、足の状態をよく見てみると

患肢の蹄冠部の一箇所から

化膿汁が吹き出して

蹄を伝わって垂れていた。

image「上から抜けたかもしらんな。」

「あ・・・本当だ。抜けたねこれは。」

写真をよく見てもらうと

蹄冠部から白濁した化膿汁が垂れているのがわかる。

二枚目の写真は、黄色い矢印で

蹄冠部の自壊して化膿汁が吹き出した部分を示し

4日前に白線をこじ開けて

蹄底から排膿させた部分を赤い矢印で示した。

BlogPaint部分からこじ開けた病巣は

蹄底側は治療できたが

蹄冠側はそのままになるので

病巣の化膿は

蹄壁の白帯部分を

蹄の伸びる方向と平行に

だんだんと上方へ進み

蹄冠部の組織に到達して

そこで自壊して、化膿汁を噴出する。

これは馬の蹄では普通に見られる現象であり

かつ、この病状は馬の蹄で特徴的であり 

「白線裂」あるいは

「砂のぼり」などとも呼ばれている。 

しかし今では、白帯病(White line desease)というらしい。 

この三つの病名を比べてみると

「砂のぼり」という俗称が

私のような世代の古い獣医師にはしっくりくる。

この病気の特徴と現象を 

うまく捉えたネーミングだと思う。

まあ、のぼって行くのは砂ばかりではないのだが

覚えやすく、捨てがたい言葉だ(笑)

「今日は、枠に入れんのか?」 

「いや、もう入れなくていいよ。もう一度抗生物質を打って、あとは様子見てね。」

抗生物質を打とうとして近づいたら

 imageこの当歳馬は、耳を寝かせて

すごい形相で私を警戒した。 

「もうこれで終わりだから。」 

私は当歳馬を、なだめて、なだめて

治療を終えた。 



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とねっこ(当歳馬)の白帯病の1例

「とねっこの足が痛い・・・」

そんな往診依頼で向かったÅ牧場に到着するやいなや、

「とねっこ、連れてくるの手伝ってくれ・・・」 

私が手渡されたのは、ナスカンのついた引き綱だった。

Åさんと私は、馬の放牧してあるパドックに入り

足の痛い当歳馬よりも、まずその親馬を捕まえた。

この当歳馬は、まだ親から離してはいないのだった。

Åさんが親馬をつかんだ後、私が当歳馬に近づいて、頭絡に綱をつけた。

「枠馬まで連れてくから・・・」

私は、Åさんの引く親馬の後から、足の痛い当歳馬を引いて行こうとした。

ところが・・・

この当歳馬の跛行がひどく、なかなか歩こうとしない。

左の前肢を着地するのを嫌う、重度の支跛だった。

「引っ張らないで、後ろからボッてくれんか・・・」

私は当歳馬の後ろに回り、尻や尻尾を押した。

ところが・・・

パドックから枠場までの道が

先日の雪と雨と、今朝のシバれで

つるつるのスケートリンク場になって、うまく押す事ができない。

当歳馬は足が痛いから、依然として歩くのを嫌っている。

歩きを嫌がる当歳馬は、当歳といっても

すでにもう7ヶ月齢にもなっている重種馬だから

体重は300キロはゆうに超えている。

そんな当歳馬を私一人で押しても、足元が滑るだけだった。

「親の尻尾に、とねっこ結ぶから、引き綱こっちへかしてくれ・・・」

Åさんは私の持っていた綱をとって、親馬の尻尾へ結び

IMG_4812親馬を、枠場のほうへと歩かせ始めた。

すると、さすがに重種馬の1馬力である。

当歳馬はいやがおうにも、親に引っ張られて

左前足をかばいながら、ピョヒピョコと跛行しながら歩き出した。

やっとの思いで、枠場に入れて

肩ロープをして、さらに後ろ足を跳ねて飛び出さぬように縛り

IMG_4798鼻ネジをかけて、ようやく

患肢を挙上させる事ができた。

検蹄器で左前蹄を挟んで行くと

蹄外側のすこし割れているような部分の鉗圧に反応があった。

そこを軽く削蹄し、白線の部分の汚れを取り

黒さが消えないところに、葉状刀を差し込んで穴をこじ開けて行くと

「!!!・・・」

当歳馬は激しく痛がり、枠の中でバタバタと暴れた。

しかし、大きく暴れる0コンマ数秒前に

私の葉状刀は、患部の病巣を捉えていたので

IMG_4794そこから灰色の化膿汁が出た。

さらにもう少し、こじ開けると

黒っぽい血の混じった液が出てきた。

「もういいんでないか・・・」

「うん。蹄病軟膏つけたガーゼ、詰めとくから。」

IMG_4795「やってくれ・・・」

私は、蹄病軟膏をたっぷりとガーゼに取り

こじ開けた穴にそれを充填した。

「抗生物質、打つからね。」

ベニシリンを筋注し、残ったペニシリンを差し出して

IMG_4799「明日から三日間、打っといてくれる?」

「俺がか?・・・」

「無理?」

「おまぇ無理に決まってるべや、こんなウルサいとねっこ・・・」

「そうだね(笑)・・・わかった。明日は注射だけ打ちにくるね。」

IMG_4807「頼んだぞ・・・」

かくして、われわれ診療所の獣医師は

しばらくÅさんの、この当歳馬の治療に

毎日通う事になった。

Åさんについて一言付け足すと

IMG_480580歳を超えた、超ベテランの馬屋さんである。

老夫婦二人で、まだ重種馬の生産をしているのだ。

重種馬を、飼ってくれているだけで

私にとっては大変ありがたい存在なのである。

私を含めて、獣医師達は

IMG_4803Åさんの馬でどれだけ馬の勉強をさせてもらったことか

その感謝の気持ちを持って

この馬の治療をしなければならないと

私は思っているのである。


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中標津出張

根室地区青年獣医師会の会長さんから、

勉強会の講師の依頼があったのは約2ヶ月前だった。

内容のテーマは「馬の診療」ということだったので、

喜んで承諾し、楽しく準備をしていた。

IMG_4605それが先日の、11月19日 の夜

中標津町の、北海道ひがしNOSAI根室北部事業所で行われた。

十勝管外への出張講師は今年はこれが2回目で

内容もだいたい同じ「重種馬」の事だったので

準備するプレゼンなどは、少し改訂しただけでよくありがたかった。

IMG_4606時間はおよそ、19時00分〜20時30分の予定だった。

最初の30分は、主に「重種馬生産地の現状」について

(これは去年の秋、札幌の俳句集団【itak】で使ったプレゼン)

次の30分を、主に「重種馬の繁殖」について

(これは今年の春、釧路農協連で使った生産者向けのプレゼン)

最後の30分を、主に「重種馬の診療」について

(これは、ブログネタの馬関係の症例をかき集めたプレゼン)

という時間割で、喋らせていただいた。

青年獣医師会、という事だけあって

聴きに来ていただいた方は

20歳代〜30歳代の若い獣医師ばかりで

総勢40名ほどが、真新しい会議室の椅子を埋めて

みなさん最後まで、とても真剣に聴いていただいている感じが

喋っている私の席まで終始、伝わってきた。

途中で飽きのこないように

「ここで一句!」の俳句(?!)短冊と嘶き効果音を散りばめていたが

そんな事をしなくても、途中で質問が入ったりして

とても面白そうに、楽しそうに聴いて頂けていたようだった。

特に、後半の「日頃よく診る馬の診療」の時は

皆さんの経験や疑問点を解決したいという意欲が

いろいろな質問となって飛び出してきて

それに対する私も、過去の経験と頭をフル回転させて

なんとか、冷や汗をかきながらも答えて

とても良いディスカッションができたように思った。

「以上で全て終了です。」

と私が、プレゼンを終えた時には

柱時計の針は、21時頃を指していた。

さらにその後、4人の方から質問をいただき

質疑応答が終了したのは21時半頃だった。

IMG_4604それから

中標津市街地へ場所を移し

懇親会を開催していただいた。

ここにも若い獣医師の皆さんが

IMG_4607総勢12人も集まってくれた。

乾杯をしてから、しばらくは

皆さん、ひたすら箸と口を動かして

食べ物を口に入れていた。

全員、お腹が空いていたのだ(笑)

IMG_4611空腹が満たされた後は

楽しい話に花が咲き

私は、至福の時間を過ごす事ができた。

そんな中でも、やはり獣医師。

日頃の馬の診療の質問や意見がまだまだ続き

例えば、瀉血の是非、去勢法、麻酔法、PGの容量、牛馬の違いなど・・・

そして、やはり嬉しいのは、北獣会誌の俳句や漢詩や都々逸の話など・・・

IMG_4613若い獣医師の皆さん方と飲むお酒は

いつも楽しいが

今回の根室の青獣の皆さんとのお酒は

とびきり楽しかった♪

皆さんどうもありがとうございました。


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種馬の疝痛

この日最後の仕事であった@牧場の繁殖検診を終えた直後

胸の携帯電話が鳴った。

「〆さんの種馬(たねうま)が腹痛(はらいた)らしい・・・」

「わかりました。」

早速、T字路を事務所と逆の方向へ曲がって

〆さん宅へ直行し、種馬のパドックの横に車をつけた。

「さっき帰って来たら、馬小屋の中でゴロゴロしてたんだ。」

「あれが、そう?」

IMG_4595「外に出してもまだ痛がって・・・あ、また寝たな。」

「痛がってるね。」

「でもさっき立った時に、たくさん糞したんだ。」

「そうなの?」

IMG_4597「だから、少し楽になったべと思うんだけど。」

「まだ痛がってるね。」

「あー、そうみたいだね。」

「じゃあまず、ちょっと枠場に入れてもらえるかな。」

IMG_2005「はいよ、わかったよー、今つかまえるから。」

〆さんが、馬を捕まえようと

パドックの中に入って行ったが

IMG_2008種馬は、相変わらず

寝転んでは、唸って

ごろんと仰向けになったと思えば

足を中空に蹴り上げて

IMG_2003またごろんと横になる

そんなことを数回繰り返し

なかなか近寄るのが危険そうに見えたが

馬の扱いの上手な〆さんは

IMG_4598種馬が立ち上がった隙に

何なく捕まえて、パドックから連れ出して

そばにある固定の枠場へ誘導し

その中に種馬をスッと入れた。

T 38.5     P 58      R 20

聴診により腸の蠕動は

左側のけん部はほぼ正常、右側は聞こえづらかった。

直腸検査では普通の硬さの宿糞があり

腸管の触診で特に異常な形の物には触れなかった。

種馬は、枠場の中でも

前がきをしたり

後肢をばたつかせたりしていたが

直腸検査の終わる頃には

それも少し治まった。

「とりあえず、痛み止めの注射を打っておくから。」

「はいよー、頼むわ。」

私はフルニキシンを静注した。

頸静脈に注射する時

馬はたいそう嫌がり

私は危うく腕を噛みつかれそうになった。

鼻捻(はなねじ)をなかなかさせないので

耳捻(みみねじ)をして再度挑んで

ようやくフルにキシンの注射が完了。

「これで、様子みてね。」

「はいよ、わかったよー。どーもありがとー。」

その夜

当番の獣医師の携帯電話には

〆さんからの電話はかかってこなかった。

翌日

〆さんからの往診依頼の電話は

かかってこなかった。

以上をもって

この種馬の疝痛を

治癒と判定した。


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十勝当歳馬展示会

先日は朝から外勤だった。

IMG_4541音更町の家畜共進会場へ出向き

十勝当歳馬展示会場での救護当番をした。

この展示会は毎年行われていて、

十勝地区の優秀な当歳馬(重種馬)を一同に集めて

体高、胸囲、管囲、を測尺し

さらに、歩かせて歩様を見るなどして

その中から、さらによい馬を選んで表彰する

IMG_4535共進会方式の催しである。

かつては、当歳馬が50頭以上も集まったというが

今回は、雌雄合わせても20頭に満たなかった。

ちょっと寂しい感じがしたが、それでも

十勝の重種馬の馬産をがんばって続けている生産者の皆さんをはじめ

IMG_4532馬産関係機関の職員や、家畜商、ばんえい調教師、その他

馬の頭数よりずっと多い人たちで盛り上がっていた。

私も、その中の一人として見学させてもらった。

出品された仔馬たちは皆

将来のばんえい競馬を背負って立つ仔馬たちである。

ここで上位に選ばれた馬は、さすがに品があり

IMG_4530見飽きることがない。

その中に1頭だけ

まだ、乳離れ(親離れ)をしていない馬もいた。

その馬は測尺から、歩様審査、比較審査、と続く間中

母馬が、傍を離れずに付き添っていたのだが

それがとても、IMG_4536仔馬の展示会らしくて

ほほえましかった。

ここでの、私の仕事は

救急の患畜が出たときの診療である。

だが、幸いなことにこの日は

IMG_4540全ての馬たちが健康で出品され

何事もなく、診療も0件。

最後まで、楽しくのんびりと

展示会を楽しむことが出来た。

馬の診療の仕事を十勝管内で30年近くもやっていると

集まって来た多くの人たちが顔見知りで

懐かしい方たちと再会したり

いろんな情報交換などで会話が弾んだ。

「馬の値段も急に、高くなったね。」

「そうだ。もう馬が居ないんだよ。」

今年の秋の十勝市場は、25年ぶりの高い水準だつた。

これで、生産意欲が高まることは間違いないだろうが

皮肉なことに、生産者の減少に歯止めがかからない。

「もう少し早くこうなってくれてたらね。」

「値が高いからっておまぇ、牛みたいにすぐ増産するなんてむりだべ。」

さらに、皮肉なことに

ばんえい競馬の馬券の売り上げも

今年は、過去最高額を記録しているらしい。

「九州が買いに来てるって?」

「円安だしな、肉馬をカナダから買わなくなったらしいな。」

重種馬の大消費地は、じつは

ばんえい競馬のある北海道ではなく

馬刺し王国の九州である。

九州の馬肉屋さんも

重種馬の市場に大きな影響を与えている。

いまや重種馬の供給と需要のバランスは

大きく崩れてしまったようだ。

社会情勢に翻弄されながら

重種馬の生産地は

今後どうなって行くのだろう。

「忙しいか、先生。」

「いや全然ヒマだよ。」

「仕事でなくてよ、しゃべるのがよ、忙しそうだ。」

「(笑)。」

この場に集まってくる人たちは

全員馬好き

という共通点がある。

「先生、久しぶりだなぁ。」

「ほんとそうだね。」

「今夜、青年部で飲み会あるから、よかったらおいで。」

「ほんと?、久しぶりにお邪魔しようかな。」

「つもる話もあるしなぁ・・・」

「・・・うん、じゃあよろしく♪」

馬事振興会の飲み会に誘ってくれたのは

OファームのS々木H文さんだった。

展示会が終わり

診療所に帰った後

残った仕事を片付けて

五時を過ぎたところで

そそくさと帰宅し

着替えてから

帯広行きの汽車に乗り

帯広駅から夜の街へ向かった。

朝から晩まで

一日一杯

馬の生産者の方々と共に

どっぷりと馬の話に浸りきった

幸せな一日だった。


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サラブレッド種雄馬の夏休み

先日、午前中の往診を終えて事務所に戻ろうとしている途中、

追加往診が入った。

「種馬(たねウマ)がハライタ(腹痛)のようだ・・・」

という稟告。

軽種馬(サラブレッド)の種馬所(種付け場)に飼養されている中の1頭だった。

到着したときは、馬房の中で坐り、頭を上げていた。

体をゴロゴロと回転させるような疝痛症状は見られず

たてがみに寝藁なども付いておらず

普通にうずくまって坐っているだけのようだった。

飼主さんが近づくと、種馬は立ち上がって口をとられまいと、馬房内を動いたが

やがてすぐ頭絡(モクシ)をとられておとなしくなった。

聴診器を当てて、検温をしているあいだ

種馬は前足で何度か軽く前掻きをしたが

それ以上の、痛みを示すしぐさは特に見られなかった。

腸の蠕動は、左右の腹部で普通に聞こえていた。

体温 38.4℃ 、心拍数 42回/分 、食欲不振。

「ウンチ(便)は、しましたか?、まわりに落ちてないようだけど。」

「さっきまで、外にいたからね、今ここのボロ(便)は片付けたけど、朝はしてたよ。」

「どれくらい?」

「この馬はいつも朝来ると、だいたい8箇所くらいしてるんだ。今朝もそのくらいはしてたと思うけど。」

「そうですか。お腹は動いてますね。気になるのは体温・・・種馬にしてはちょっと高い。」

「咳や鼻水は全然無いし風邪じゃないと思うけどな。でも食わないな。」

「前足上げて、前掻きしたいみたいですね。」

「この馬はね、具合悪くなると、すぐこうやって前足挙げるんだよ。」

「何か他に、いつもと変わったこと無いですか?」

「昨日ね、いつもより干草多く食ってた。でもこの馬たまにやるんだよ。あ、またやったなって。」

「じゃあやっぱり食いすぎかなぁ・・・。」

私は過食から来る軽い疝痛と見当をつけて

とりあえず、フルニキシンと補液と抗生物質を投与することにした。

鎖のハミをかけて保定して、馬房内で補液を開始。

治療中、種馬は、前足をしきりに上げていたが、それ以上の症状は見せなかった。

治療を終えて、馬の口を解き

夕方4時過ぎに、又様子見に来ることを告げて、帰路についた。

そして、その夕方

再び種馬所へ向かった。

種馬は耳をピンと立てて

馬房内から外を覗いていたかと思うと

私の姿に気づき、振り向いて

いつものように、馬せん捧の上から顔を出した。

眼光は昼よりも生き生きとしていた。

IMG_4084「あれからね。15分くらいしたら、もうエサ食べ始めたよ。」

「そうですか。」

体温 37.6℃ 、心拍数 28回/分、食欲回復。 

「良くなったみたいですね。もう大丈夫。サラブレッドは反応が早いなぁ(笑)」 

「たいしたこと無くてよかったわ。そういえば、この馬ね、昨日ファンが沢山来てたんだ。」

「相変わらず、人気あるんですね。」

「そこの箱の中に、ニンジン入ってるんだけど。」

「食べさせちやった・・・。」

「少しなら、なんとも無いんだが。でも、お客さん一杯来るとね、やりすぎるから、隠すのね、それ忘れてたのよ。」

「あー、なるほど、人気ある馬は大変ですね。」

「夏休みだから(苦笑)。」



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馬の種畜衛生検査

先日は町の職員の方の車に乗って、

IMG_4081半日で町内の種馬の採血をして回った。

馬の種畜衛生検査の中の、伝貧・馬パラの検査のための採血である。

かつて、町内の種馬(種雄馬)の採血をするとなったら、

IMG_4084丸1日かかったものだが

今では10頭程度になってしまったので

半日であっさりと終わる。

馬の種類も、かつては

IMG_4086多くがペルシュロンやブルトンなどの重種馬だったものが

今では小さなミニチュアホースや道産子の頭数が多くなった。

それでも

6件の農家さんで大事に飼養されている彼らの元気な顔を

IMG_4089採血という名目で半日かけて見て回れるのは

楽しく嬉しい仕事である。

種馬が頑張っていられるのは

IMG_4092馬産がまだ健在な証拠だ。

種畜衛生検査を受けるという事は

これからまた1年間、種馬としての仕事があるという事である。 

IMG_4093すなわち、種付けをする繁殖牝馬がいる、ということだ。

種付けをする宛てのない馬の場合は、種畜検査を更新はせず

飼養目的が変わってしまうことになる。

IMG_4096種畜検査を更新しなければ、種馬としてはクビになってしまうことを意味する。

しかし、この日に採血した馬たちは

まだまだこれから少なくとも1年間は現役でバリバリと種付けする予定のある

IMG_4101恵まれた馬たちなのだ。

それはたとえば、プロ野球選手が

シーズン終了後に契約を更新することに似ている。

期待度に左右されて、年俸は変わるものの

また来シーズンの戦力として認められたという証しで

喜ばしいことなのである。

私は、いつもこの採血の日は

そんな喜ばしい種馬たちに挨拶をして回るような気持で

楽しく採血をしている。

そして、その気持ちは

年々、強くなってくるのだった。





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帯広市民の馬

先日の昼からの休日に、

帯広市の中央公園(セントラルパーク?!)を徘徊していたら、

まったく偶然に、馬車が通過していった。

IMG_4025馬は、芦毛のミルキー君。

馬車には、二人の御者が乗っている以外、客の乗っていない空馬車だった。

しかし、人馬も馬車も、気持ちよさそうに

帯広市内の公道を、ゆっくりと駆け抜けていった。

どのようなスケジュールで、馬車が運行されるのか

私には、詳しいことはわからない。

土日にはいつも走っているのか

帯広平原まつりに備えての予行練習なのか

馬の運動のためなのか

馬車の経費は帯広市が持っているのか

いろいろ思い巡らせて

すべて定かでは無いのだが、いずれにせよ

街中を馬車が通って行く光景というのは、いいものである。

帯広の街が、文化の香り高いものになったような

なんだか由緒ある街並みに見えてくる。

何よりも、馬と人が一緒になって街を盛り上げていることが

私にはとても嬉しいのだった。 

IMG_3681約2ヶ月前の5月の始めの、帯広市内のグリーンパークで

花見のイベントが開かれた時、そこで馬車を引いていた馬は

黒鹿毛のリッキー君、だった。

今回の真夏の市内を練り歩く予定の馬は

IMG_4026その同僚の芦毛のミルキー君。

2頭とも、確か

「帯広市民 」のばすである。

人間以外の市民が住んでいる帯広市

素晴らしいと思う♪ 


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