北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

動物の生と死

「動物愛護週間」

明日から「動物愛護週間」が始まる。

動物はいつでも愛護すべきだが、

その意識の確認をする意味でも、

「動物愛護週間」というものがあるのは、

良いことだと思う。

動物愛護への理解と実践の一環として

最近お世話になっている

地元の帯広市民ラジオ・FMウイングさんの

動物愛護キャンペーンという企画の中で

スポット放送を流してもらうことになった。

その内容は以下の通り


IMG_0925「9月20〜26日は動物愛護週間 動物と共に生きること 考えよう
 幕別獣医師会です。
 新しく犬を飼ったら、飼い犬の登録をしましょう。
 幕別町内の犬は、「防災環境課」へ。
 飼い犬は、年に一度 狂犬病予防注射を受けさせるのが法律で義務付けられています。
 狂犬別府は恐ろしい病気です。
 年に一度の予防接種は必ず受けましょう。」 


我々町内の獣医師が担当している

狂犬病予防注射の巡回接種は

例年だと毎年5月に行っているのだが

今年は、コロナウイルスの関係で

8月にずれ込んでしまい

狂犬病ワクチンの接種頭数も

約3割も減ってしまった。

その状況を改善したい意味も込めて

このようなスポット放送をさせて頂く事にした。 

「狂犬病は恐ろしい病気です。」

IMG_0929というのは本当で

致死率の非常に高い狂犬病ウイルスが

もし国内に蔓延するようなことがあれば

コロナウイルスどころの騒ぎではないのである。

自分の飼い犬に

狂犬病の予防接種をしていない方は

どうぞ早めに

お近くの獣医師にご相談を。


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十勝人の「心」に生きる象

おびひろ動物園の開園も、

コロナウイルスの影響で遅れてしまったが、

先日の地元の新聞記事に、

3月に亡くなった象のナナの記事が出ていた。

それによると

室内獣舎に献花台が設置され

来園者が訪れて献花をしているという。

IMG_0385おびひろ動物園では

初めての事だそうだ。

それだけ

象のナナは長生きをして

おびひろ動物園では

大きな存在だったと言えるだろう。

またこれからもまだまだ

大きな存在であり続けるのだろう。

動物の献花台といえば

例えば

競馬で活躍したサラブレッドの名馬の献花台などは

しばしば話題になる。

象の献花台というのも

かつてどこかの動物園で

話題になったような気がする。

サラブレッドの名馬や

動物園の象は

人々が関わる動物の中でも

特に存在感が大きく

人々の心を掴む。

それは「家畜」としての存在

というよりは

「同胞」としての存在

という意味合いが強い。

「家畜」という言葉では

カバーしきれない何かが

そこには

あるように思える。
 

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万物の霊長?!

牛の胃袋は大きく四つに分かれ、

非常に優れた消化能力を持っている。

人間よりもはるかに進化した胃袋である。

馬の四肢は長く強靭に発達し、

非常に優れた走行能力を持っている。

人間よりもはるかに進化した四肢である。

鳥の翼は高度に進化し

空を高く飛ぶことができる。

人間も飛行機で鳥のように高く飛べるというのは

IMG_0404間違いである。

あれは

人間が飛んでいるのではなく

飛行機が飛んでいるのである。

飛んでいる飛行機に乗るのならば

犬でも猿でも可能である。

人間の実際の飛翔能力というのは

走り幅跳びでせいぜい数メートルを飛べるに過ぎない。

人間が他の動物よりも進化しているのは大脳皮質である。

生物学の教科書などで大脳皮質が司っている機能の

模式図を見たことのある方は多いと思うが

Unknownほとんどが

手と口に対応している

グロテスクな模式図である。

人間の手と口の機能が

他の動物よりも進化していると言えるのだが

進化しているのは

手先と口先だけとも言えるのである。

手先と口先ばかり進化した人間という動物が

「万物の霊長」などと

自称するのは

いかがなものだろうか。


(俳句雑誌「円虹」6月号に寄稿したコラムより)


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象のナナが残したもの。

いくら象の知能が高いといっても、

子象の時から北海道に憧れて、

北海道に住みたい、

などとは夢にも思っていなかっただろう。

子象のナナは人の手によって、

生地から遠い北海道へ強制的に連れられてやって来た。

それから58年間、

十勝おびひろ動物園の象として生きた。

58年間も生きていれば

周りの環境や人々の考え方も

446ADC15-8B27-469D-A8E5-51B66EF59E15大きく変わってゆく。

動物園の存在意義も変わり

動物福祉の考え方も広がり

今後もそれはさらに変わってゆくだろう。

その中で

ナナは一時代を生き抜いた貴重な象である。

私が帯広畜産大学の学生だった時

16921D73-9479-47A1-B659-3D79E013227A同級生がナナに嵌まり

動物園へ通い詰める友人がいた。

今その友人は

野生動物学の先生になって

人と野生動物の関係を説く人になっている。

新聞記事によれば

おびひろ動物園の野生動物の

BAD143EF-2926-43C9-A1A7-4E0B16D7A2EB飼育方法について

動物愛護団体などから

最近は批判的な意見が相次いでいるようだ。

しかし

この地球上で

象という動物の存在は

人間の思考と行動だけで

どうこうできるものではない

と私は思う。

象の体は人間よりはるかに大きい。

象の足は人間よりはるかに太い。

象の鼻は人間よりはるかに進化している。

象の妊娠期間は人間よりはるかに長い。

象が怒り出したら人間は手に負えない。

そんな象という動物は

人間よりもスケールか大きい。

地球には人間よりもスケールの大きな動物種が

多く存在している。

その代表格が

象だと言えるのではなかろうか。

象のナナの姿に見惚れ

象のナナを好きななり

象のナナを愛し

象のナナの死を悼む人たちは

象のナナのスケールの大きさに気づいた人たちだと思う。

と同時に

自分のスケールの小ささに気づかされた人たちだと思う。

我々人間は

自分よりもスケールの大きな動物の存在に気づき

それらの動物たちに

もっと尊敬の念を持って

接してゆくべきだろう。

象のナナの死をきっかけに

新聞紙上には様々な記事が書かれた。

その中で

十勝毎日新聞の

上・中・下の3回にわたる特集記事は出色で

B7DBA067-1CCB-458E-AB5C-E5D4F0B1C4AF素晴らしい内容だと思った。

象のナナの事をずっと取材し

記事の中で

多くの問題提起をしてくれている。

全て写真に撮って

このページに貼り付けたので

クリックしてぜひ読んでいただきたいと思う。

記事を書き続けた松田亜弓さんという記者と

私は面識がないけれど

私は最後に

松田記者に

心から敬意を表したいと思う。


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お疲れ様!象のナナ、やすらかに。

おびひろ動物園の、

象のナナが亡くなった

「亡くなった」あるいは、

「死亡した」
という言葉は、

テレビ・ラジオや新聞などでは、

人間だけに使われる言葉らしく、

象のナナが亡くなった事は、

IMG_0049新聞では

「象のナナ、死ぬ。」

と表現されていた。

しかし当ブログでは

そのような業界の言葉の縛りはないので

象のナナの死をどう表現するかというのは

私の一存で決めることができる。

私の気持ちに一番近い言葉は

「亡くなった。」

なのである。

IMG_6926享年59歳。

この「享年」という言葉も

テレビ・ラジオや新聞などでは

人間だけに使われるらしく

象のナナが死んでも

「推定59歳。」

IMG_6986とだけ書かれており

「享年」の文字はない。

しかし当ブログでは

業界用語の縛りも何もないので

象のナナの死亡時の年齢については

「享年59歳。」

と書かせていただく。

IMG_7014





その方が

私の気持ちとして

しっくり来るのである。

IMG_0004象のナナは

私と同世代であり

今の私と同じだけの時間を

この世に生きてきた。

自分と同じ年の動物に出会うと

特別な感情がが湧いて来るものである。

おびひろ動物園の象のナナは

そんな存在だった。

IMG_0054そして

今後のおびひろ動物園で

そのような存在の動物が飼育されることは

もう無いだろう。

何かもう胸がいっぱいで

書きたいことが書けなくなってきているのだが

IMG_0053ひとつだけ

書いておきたいことがある。

それは

ナナが立てなくなったのが、1月19日。

亡くなったのは、3月4日。

その間

45日間もの間

寝たきりで生きていた。

この事実は

「象が起立不能になったら自らの内臓の重みで数日で死んでしまう」

IMG_0058という既成の見解を覆した。

看病した飼育スタッフの方々の努力と

象のナナ自身の生きる力によって

この事実が

打ち立てられたのだ。

お疲れ様!象のナナ

どうぞ

やすらかに。



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同世代の十勝の住人からの最後のメッセージ

おびひろ動物園には、

象が1頭飼われている。

名前は「ナナ」ちゃん、

IMG_558259歳の雌の象。

59歳ということは、

私と同じ歳である。

同世代・同期・なので

「ナナ」ちゃん

と呼んでも良いのだが

IMG_5586実際に会ってみると

とても貫禄があり

「ナナ」さん

と呼びたくなるような

独特の圧倒的な雰囲気を持っている。

そんな「ナナ」ちゃんが

十勝毎日新聞によると

1月19日から体調を崩し

起立不能状態になっているそうだ。 

IMG_6925先日の十勝毎日新聞の第1面にも

「選抜高校野球に十勝から2校が出場決定」

という大きな記事の隣に

「ナナ」ちゃんの起立不能の記事が載っていたので

IMG_6926気になっていた。

牛や馬はもちろんのこと

ましてやそれよりも大きくて重い

象が

10日以上も起立不能状態が続いたら

それはもうほぼ間違いなく

予後不良であり

死が近いことを意味している。

過去の例では

動物園に飼育されていた多くの象たちは

起立不能になってから数日で

死んでしまったそうだが

IMG_5583「ナナ」ちゃんは現在

立てなくても

10日以上生き長らえ

意識がはっきりしており

食欲も排泄もあるらしい。

「ナナ」ちゃん自身の生命力もさることながら

動物園のスタッフの皆さんの介護が

寝たきりの命を支えているのだろう。

IMG_5584私は、去年の夏

おびひろ動物園で

「ナナ」ちゃんに会ってきたのだが

もうこれで

会えることはないだろう。

IMG_5585彼女からは

象として

そして

同じ十勝の住人として

色々なメッセージをいただいて来た。

今は1日でも長く生きて

命を全うして

最後の生のメッセージを

発信し続けて欲しい。

そう祈るのみである。 


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「馬肉料理専門店」in 蒲田

羽田空港に夜遅く着く便で行って、

品川駅付近の交通の便の良い安い宿に泊まると、

翌日の行動が楽になる。

今回はその宿を初めて、

大田区の蒲田駅付近にしてみた。

晩飯を食べずに夜の10時を回り、

腹が空いていたので、

ホテルの周囲で何か食べようと、

IMG_5650ぶらりと歩き出して、

たったの数分で、

魅力的な店を発見した。

「馬肉料理専門店」

の看板だった。

こんな店は十勝帯広には無い。

さっそく入って

IMG_5647メニューを見ると

値段も安くて美味しそうな

馬肉料理と酒の数々♪

夜は食べ過ぎないように

馬刺しと日本酒を注文した。

酒のメニューには

九州の地酒が紹介されていた。

その中の銘柄ひとつに

IMG_5654「三井の寿」

という酒があった。

「みいのことぶき」

と読むらしいが

私はこの名前に釘付けになってしまった。

かつて十勝帯広に

とても有名な重種馬の生産牧場があり

IMG_5658その名と同じではないか!

さらに「寿」と言えば

ばんえいの名種牡馬

「マツノコトブキ」

を連想する。

こんな銘柄の酒が

馬肉専門店にあるなんて

なんという巡り合わせだろう。

私はコップからあふれるこの酒を

IMG_5653口に含みながら

その淡麗辛口な味をかみしめた。

そして、次に

生姜醤油につけた馬刺しを

口に含みながら

柔らかで深みのある肉の味をかみしめ

再び「三井の寿」を

口に含みながら

その淡麗辛口を味わいながら

十勝のばんえい競馬と

九州の馬肉産業に

思いを馳せて

感慨にふけっていた。


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十勝に生きるゾウ(象)

帯広動物園に行って来た。

とても久しぶりだった。
 
20数年ぶりではないかと思う。

それだけ、

私は帯広動物園に対して、

無関心だった。

旭川の旭山動物園には、

5年ほど前に俳句の仲間と行ったことがあるが、

それは仲間に付き合って、

有名な人気のある動物園に行ったまでのことだった。

旭山動物園とは違って

帯広動物園は

行こうと思えばいつでも行ける動物園だ。

にも関わらず

20数年もそこへ行かなかったのは

無関心だったと言わざるを得ない。

そして

先日帯広動物園に入った時

私は

自分が帯広動物園に無関心だったことを大いに反省した。

帯広動物園の動物達を目の前にした時

私は

1人の十勝に生きる人間として

というか

十勝に生きる1動物としての自分

という存在を考えざるを得なかった。

帯広動物園には

動物園では定番になっている

ライオン、トラ、サル、キリン、など・・・

・・・そして、ゾウがいる。

IMG_5586特に

ゾウのナナと対面した時

ゾウのナナの年齢を知った時

胸が一杯になった。

ゾウのナナは私と同じ58歳だったのだ。

この事実に

私は言葉を失い

しばらくゾウのナナの顔を眺めながら立ちすくむしかなかった。

ゾウのナナは私の人生と同じ時間

いやそれ以上の時間を

十勝の帯広の動物園内という敷地の中で暮らし

ごく稀に園外へ出かけたことがあったというものの

その生涯をこの園内の敷地の中で

IMG_5582おそらく命絶えるまで

この中で生きてゆくのだろう。

ゾウのナナの飼育場の周りには

写真のようなメッセージの看板が

いくつも掲示されていた。

読んでいただければわかるが

IMG_5583ゾウのナナという存在自体から

発信されるメッセージに加えて

看板に書かれているメッセージを読むと

なおいっそう

ゾウのナナを見直した時に

胸が一杯になってしまったのだった。

IMG_5584ゾウのナナは

唯1頭十勝に生きるゾウなのだ。

そんなナナが私たちに発するメッセージは

計り知れないものがあった。

ナナの顔を見ると

もはや自分の境遇に不満はなさそうに

悟りきった仏のような顔をして

たまに観客に長い鼻を振って鼻水を飛ばし

そしてまた元の位置に戻って立っている。

IMG_5585その繰り返し

どこにも行かない

どこにも行けない

どこにも行こうとしない

余計な望みは全て消えた顔をして

腹が減ったら草を食べ

喉が乾いたら水を飲み

小便をし糞をして

IMG_5586この十勝で生きている

私と同じ年の

同じ十勝の住人(動物)

として

十勝の空気を吸い

十勝の水を飲み

圧倒的な存在感を持って生きている

十勝に生きるゾウなのだ。

ゾウが実際何を考えているかは

ゾウになってみないと絶対にわからない。

だが

人どうしが相互に理解するためには

実際に会う事が一番大切であるのと同じように

ゾウへの理解を深めるためには

ゾウに実際に面会することが一番である。

十勝に住む人は

十勝に住むゾウのナナに

1度は必ず

会いにゆくべきだ

と思った。


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ある馬産家の死

先日、

町内の馬産家の#さんが亡くなった。

成績の良い種牡馬を何頭も飼養し、

重種馬の生産界では知らない人は居ない、

全道的にあまねくその名を知られた種馬屋さんだった。

私は若い頃から#さんの種馬所に通い、

全道各地から集まってくる繁殖牝馬の

発情鑑定や妊娠鑑定をしながら

重種馬の繁殖を勉強させてもらった。

#さんは

私の馬の繁殖検診の技術を

育ててくれた恩人のひとりだった。

背が高く逞しく豪快な風貌で

まさに荒くれ男という感じの人だったが

馬に対してはとても優しく

種馬の扱いが抜群に上手な人だった。

短気で怒りっぽく

獣医師なら皆一度は怒鳴られた経験を持ち

恐ろしい存在でもあったが 

後腐れのない気持ちの良い性格の人だった。

良い馬を見ると目を細めて

心から馬を褒め

馬談義が止まらなくなる

馬一筋に生きている人だった。

晩年は体調を崩し

経営は息子さんに譲りつつも

春の繁殖シーズンになり

私が馬の直検をしていると

必ず家から出て来て

「お茶飲んでゆきなさい。」 

と、声を掛けてくれる人だった。 

そんな#さんが

今年の春は姿を見ないな

と思っていた矢先 

訃報が届いた。

私はその晩お通夜に参列した。

翌日

仕事にかかったところで

事務所から電話がかかって来た。

IMG_5567#さんの牝馬の1頭が

今朝から急に倒れて立てないという。

我々診療所の獣医師は

緊急の往診でその牝馬を懸命に治療したが

IMG_5568治療に反応せず

頭を投げ出し苦悶して

とうとう死んでしまった。

#さんのお葬式当日の出来事だった。

血液所見には特に異常値は見当たらなかった。

004 2019.05. 馬解剖所見には

「結腸〜小結腸粘膜出血」

とだけ書かれており

それ以外の箇所には異常が見られなかったようだ。

005 2019.05. 馬2急性の腸炎だったと思われたが

それにしてもあっという間の出来事だった。

よく言われることだが

馬屋の親父さんが亡くなると

その家の馬を1頭

道連れにして逝くものだ

と言われている。

今回もまさに

そうだったようだ。


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ホルスタインの選別精液からジャージーが!

「安田さん、聞いてくださいよ・・・」

◎ファームの牛の乳熱の治療をしている時、

従業員の♯君が話しはじめた。

「このあいだホルの雌ダネを付けた牛から、ジャージーが生まれたんですよ・・・」

「・・・え?、どういうこと?」 

「ホルの雌ダネなのに、どう見てもジャージーみたいなメスが生まれたんですよ・・・」 

雌ダネ、というのは、

メスが生まれる確率が高くなるように、

加工された牛の精液のことである。 

性選別精液と言われるもので

酪農家のあいだでは広く普及され市販されている。

ホルスタインの人工授精に

普通の精液を使うと

オスとメスがほぼ1対1で生まれてくるが

この選別精液(雌ダネ)を使うと

メスが約90%の確率で生まれてくる。

精液というのは

オスの遺伝子を持った精子(Y精子)と

メスの遺伝子を持った精子(X精子)の

2種類が1対1で含まれている。

その精液を

特殊な機械に通すことによって

Y精子とX精子をふり分けて

雄の生まれやすい精液とメスの生まれやすい精液を作るのである。

メスの生まれやすい精液は

酪農家にとって

搾乳牛を確保するために好都合で

選別精液(雌ダネ、X精液ともいう)は

あっという間に全国に普及した。

◎ファームの牛の授精にも

選別精液が使われていたのである。

IMG_5216「・・・でも、何でジャージーが生まれて来たの?」

「繁殖台帳を確認したら、1回しか付けて(授精して)いないんです・・・」

「・・・その1回が雌ダネ(X精液)だったの?」

「そうなんです。最初は授精師さんが間違えたんじゃないかって思って問い合わせたんですけど・・・」

「・・・じゃないの?」

「JAの授精師さんは間違ってなくて、話は仕入先のABS(アメリカンブリーディングサービス)まで行ったんです・・・」

IMG_5217「・・・。」

「そうしたら、関東の方の牧場でも、この精液で同じような事があったらしいんですよ・・・」

「・・・ジャージーが生まれて来たの?」

「そうなんですよ。正確にはジャージーとホルスタインのF1ですけど、茶色くて小さくて・・・」

「・・・それでしっかりメス?」

「そうらしいです、製造元ではジャージーの雌ダネも作っているらしいんですよ・・・」

IMG_5218何でこんなことが起こったのか。

謎であるが

その原因を想像してみると

ホルスタインの選別精液を製造する工程で

ジャージーの選別精液が混入した

という可能性がある。

選別精液の製造所で

ジャージーの選別精液と

ホルスタインの選別精液が

IMG_5220同じ機械でられていて

何かの理由で

それが混ざってしまった

と考えられる

混入事件である。

これをお読みの畜産関係者の皆さんは

選別精液を使っていて

こんな経験したこと

ありますか?

あったら教えて欲しいです。


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バレンタイン・ミート

バレンタインデーから、

2日も経ってしまえば、

世間のチョコレート熱もとっくに冷めている。

今後はさらに、

バレンタインデーの話題などは、

どんどんと時季外れになるから、

ここらで書いておいたほうが良いかなと思って、

記事にすることにした。

大したことではないのだが

先日の日本農業新聞に

バレンタインデーにちなんだ

ハート形の牛肉の写真が掲載されていた。

1C8CDEAA-CA35-40F2-B18C-B1F2D5AD1DFD霜降りのたくさん入った

すばらしい牛肉だ。

もちろんこういうものは

たくさん作って売ろうとするものではなく

話のタネとして

少しだけ作って

ウケを狙うものであるのだろう。

ただ

それが

1200セットも売れたというのは

ちょっと驚きだ。

面白い試みであると思う。

そう思うのであるが

私としては

ちょっと物足りないかな

とも思った。

この肉の部位は

特Aの霜降りのロースだという。

それもいいとは思うのであるが

ハート形の肉というのであれば

私としては

ここはやはり「ハツ」

すなわち

「心臓の肉」を使ってほしかった!?

霜降りのロースに比べて

味はだいぶ淡泊だろう

だが

何よりもリアリティーが違う。

話題づくりのために

やるのであるならば

そこまでやってほしかったかな

と思った。

本物のハートであれば

ハート形に切ることもなく

無駄もなく

心臓は内臓肉だから

値段も安い。

話題になることは間違いない!?

でも

かなり悪趣味だな・・・


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「牛の足音」冨田美穂さんの木版画展

かねてから生で見たいと思っていた牛の木版画を、

とうとう見る機会に恵まれた。

冨田美穂さんという版画家による、

「牛の足音」という牛の木版画の展示会が、

十勝管内鹿追町の神田日勝記念美術館で開催されているのだ。

神田日勝という伝説的な画家と、

冨田美穂という新進気鋭の版画家との、

牛というテーマでつながった展示会である。

7007B159-58DF-4628-896C-AAB1C9C43BD8会場に入ると

まずは冨田美穂さんの

等身大のホルスタインの木版画が

目の前に待ち構えていて

初めからその迫力に圧倒された。

普通の絵画でさえ

これだけのリアリティーがあれば圧倒されるわけだが

それがなんと木版画であるということで

7AD696B9-7901-44D6-81A7-A1004594FE88さらにその驚きは大きくなる。

木版画であるということは

この大きな実寸大の牛の原画を用いて

何頭も何頭も印刷することが可能なのであろう。

詳しいことは版画の素人なのでわからないが

こんな大きな牛の版画が

何頭も何頭も作品として世の中に出現すると考えると

こんなことは未だかつて無い

驚異的なことだと思う。

そんな牛の版画を量産し続けている

冨田美穂さんというアーティストのすごいパワーを

いきなり最初の版画を見た時から

ドーンと感じてしまった。

その横奥にはさらに別の牛の

これまた等身大の牛の版画があり

その流れに合わせるように

今度は神田日勝の牛や馬の絵が

並べられていた。

そこから順路に従って見てゆくと

神田日勝の作品が多く並べられているコーナーを通り

二階へと続く階段のところから

再び冨田美穂さん版画のコーナーに戻ってゆく。

場内は撮影禁止だったので

それらの作品をカメラに収めることはできなかったが

神田日勝の牛馬の絵に負けない

冨田美穂さんの牛の版画の迫力が

場内にみなぎっていた。

階段を上がってゆくと

牛の版画は小さいサイズのものとなり

階段を登りきったところには

今度ははがきサイズの牛の絵がぎっしりと並んでいるコーナーがあった。

それは冨田美穂さんが

酪農場の従業員として働きながら

毎日一枚ずつ牛の絵を書いていたという

「一日一牛」のコーナーだった。

作品は小さくても

一枚一枚に牛への愛情が感じられ

それが日記の代わりとして

毎日毎日描かれていたものだということを知ると

そこでまた新たな感動がこみあげて来るのだった。

前半の木版画の圧倒的なパワーと

後半の絵と版画に込められた牛への愛情と

それに加えて絵と版画に対する

冨田美穂さんの強い情熱を感じた。

すべての作品を見終わったとき

私は得も言われぬ感動に包まれていた。

感動冷めやらぬままに

私は最初の大きな牛のところへ再び歩み寄り

牛の体に顔を近づけて

その緻密な皮膚と斑紋の描かれている筆跡

というか、版画であるから

彫刻刀による彫り跡

というべきものを観察した。

すると驚いたことに

すべての毛の一本一本が

同じような長さで彫られ

黒い斑紋の部分はその密度が低く

白い斑紋の部分ではその密度が高く

黒と白の部分それぞれに

皮膚の皺や血管の走りや筋肉のもの上がりによる

微妙な濃淡が描かれているのだった。

この緻密な彫り跡が

牛全体の本物感(リアリティー)をつくりあげているのだった。

それを見て私は

再々度の感動に襲われてしまった。

私は木版画には全然詳しくないが

生の木版画を見ることでこんなに強く感動したことは未だかつてなかった。

私は最後に

この大きな牛の

耳に描かれている個体識別番号を

BCD0399B-4229-4DF6-A996-6E270BCB690Cメモ帳に記した。

「0497503886」

帰宅してから

この識別番号をインターネットの検索で調べてみたら

この牛はオホーツク地方の小清水町の酪農家で

2006.10.1.に生まれ

乳牛として

約10年間飼養され

2015.9.13.に同牧場で死亡した牛だった。

冨田美穂さんはこの牛と多くの時間を共有し

この牛の木版画作品を創作し

その作品に

この牛の命を

永遠に吹き込むことに

成功したのである。


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ロバ(驢馬)の難産 (3)

残念な結果になってしまったロバ(驢馬)の難産だったが、

我々農業共済組合(NOSAI)の獣医師にとっては、

珍しい症例だと思ったので、

あえて記事にしてみた。

BlogPaint血液検査も一応しておいたので

ロバの難産後の血液所見も

ここに貼り付けておく。

ロバはポニーと大きさがほぼ同じであり、

ロバの診療はポニーの診療をするようなイメージでやれば、

それほど間違うことは無いと思われる。

使う薬品の量なども

ほぼポニーの診療に準ずればよいと思われる。

ただ

ここで問題なのは 

ポニーは共済の保険診療ができるのだが

ロバは共済の保険診療ができない

という事である。

ボニーは馬なので共済保険に加入できるが

ロバは馬とは見なされず

したがって

ロバの診療については

保険の効かない非加入畜の診療料金を

飼主に請求しなければならない。

実は

これがべらぼうな金額設定になっている。

共済保険に加入していない動物

すなわち、非加入畜の診療料金の設定は

我が組合では大きく分けて3つに分類されている。

すなわち

「小」動物・・・犬や猫など

「中」動物・・・羊や山羊など

「大」動物・・・牛や馬など

BlogPaintだが、これが

実はべらぼうな金額設定になっている。

ざっと比較すると

保険加入畜の料金を1とすれば

非加入畜「小」は、その約2倍

非加入畜「中」は、その約3倍

非加入畜「大」は、その役5倍

の診療費が請求される設定になっている。

もし

保険に加入していないポニーの診療があったら

ポニーは馬なので

「大」動物という料金設定の中で、診療費が計算される。

ポニーは成馬でも体重が100キロ程度の小さな体な馬なのだが

馬であるという事で

サラブレッドや重種馬と同じ診療料金が掛かり

ちょっとべらぼうな診療料金になってしまう。

だからポニーを飼う畜主は

自分のボニーを共済保険に加入して

何かあったときにべらぼうな診療費を払わずに済むようにしている。

では

ロバの飼い主はどうかというと

ポニーのように保険に加入することが・・・できない。

農業共済保険の対象としてロバは馬とは見なされないのである。

ところが

今回のように

ロバが病気になり

共済の獣医師の診療を受けなければならなくなった時は

診療料金はボニーに準じた計算方法

すなわち、非加入畜「大」が適用されて

べらぼうな診療費がかかってしまうことになる。

IMG_3241ロバは

保険の対象としては馬と見なされず、保険に加入できないのに

診療費を計算する時は馬のような「大」動物と見なされて

べらぼうな金額の診療費が請求される

これは

何かおかしくないだろうか?

ポニーであれば保険に加入すればいいが

IMG_3240ロバにはそれができないのである。

ロバに何かがあった時には

まったく何の保障も無い

無保険診療を受ける他は無いのである。

今の診療料金体制は

見直すべきではないだろうか。

ロバの診療を経験して

そんなことを思った

今回の症例だった。


(この記事終わり)


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牛のピアス

日本で飼われている牛は、

必ず耳にピアスをしている。

ピアスと呼べば洒落てはいるが、

かなりダサいピアスであり、

正式な名前?は、

個体識別番号が印字された、

黄色い下地の四角い耳標である。

全国共通の10ケタの番号で、

個体の識別のために用いられている番号だから

同じ番号の牛は

当然どこにも居ない。 

この耳標は

かつてBSE(牛海綿状脳症・いわゆる狂牛病)の牛が

日本で発見されたとき

牛の生産履歴(トレーサビリティ)すなわち

牛の出どころを突き止めるための法律が整備され

日本国内の全ての牛の耳に

装着することが義務付けられた。

それはとても画期的なことで

私は当時の畜産農政をすばらしいと思ったのを

今でも覚えている。

この牛のピアスに書かれている番号によって

日本の全ての牛の出どころが判るので

伝染病の蔓延などの問題の出どころを

突き止める事が出来るようになったのである。

その事で

日本の牛肉や乳製品は 

他国の牛肉や乳製品よりも 

安心と安全が守られているといっても良い。

外国から輸入する牛肉や乳製品は

日本のような生産履歴はない。

外国から生体で輸入される牛たちも

日本の検疫所で初めて耳標が装着されるので

IMG_3820それ以前の出どころは定かではない。

日本の牛はこのピアス(耳標)によって

外国ら輸入される牛よりも

安全と安心のレベルを保っている。

しかし、最近

この耳標が

IMG_3821外れている牛をよく見かけるようになった。

耳標が外れているものばかりではなく

耳がちぎれて耳標が取れてしまっているものも

少なくない。

どこの飼主の家でも

IMG_39411頭や2頭の

耳標落ちの牛を見かける。

牛の耳標か外れやすい材質になっている

とも聞いている。

日本の牛の安全安心レベルを保つためにも

IMG_3943牛の耳標の落ちた牛は

直ちに装着しなおしていただきたい

と同時に

耳から落ちにくいように

耳標の改良を進めていただきたいものである。



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「牛に感謝」(6)

牛の死体が毎月何頭も出て、

それに慣れてしまう、

大規模酪農場。

IMG_3577そこで働く人の

「牛に感謝」

をする気持ちは乏しくなってしまう。

そんな大規模な酪農を、

世界にさきがけて始めたのは、

欧米諸国、

特にアメリカの酪農である。

結論を先に言おう

アメリカ人は

「牛に感謝」

をしない人たちなのだ。

何千頭規模の巨大な酪農場では

おそらく

牛の死体が毎週運び出されては

処理されているはずである。

そこで働く人たちの

心は痛まないのだろうか。

「牛に感謝」

の気持ちがある人であれば

心が痛むはずである。

しかし

彼らの心は痛んではいないように見える。

だからこそ

巨大な規模の酪農を考案し

牛の死体がたくさん運び出されるような

大規模酪農を平然と実践している。

そこで働く従業員もさることながら

そのような大規模な酪農場の

責任者(経営主)には少なくとも

「牛に感謝」

をしない人であろう。

「牛に感謝」をしていないので

牛に申し訳ないことをしている

とは思っていないのであろう。

欧米諸国の人たちは

「牛」に申し訳ない

とは思わず

「神」に申し訳ない

と思っているのである。

日頃から

「牛に感謝」をするのではなく

「神に感謝」をしている人たちである。

欧米の自然観の根底にあるキリスト教では

人間以外の動植物には

魂(霊)が存在しない。

魂(霊)が存在しない「牛」という動物に向かって

申し訳ないと謝罪する意味がないのである。

「牛」という魂のない動物を創って

人間の日々の食糧として提供してくれる

「神」に対して感謝するのが

欧米人の考え方である。

欧米諸国で行われる謝肉祭は

「神に感謝」する儀式であり

「牛に感謝」する儀式ではない。

全ての心の痛みは

神の前で懺悔することによってのみ解消される。

牛の前で懺悔をすることはない。

したがって

牛の魂(霊)を慰める牛魂の碑などは

欧米には存在しない。

すべては

神の前で懺悔するだけでよい。

実に合理的な考え方だ。

そしてそれは

実に都合の良い考え方だ。

人が牛を殺してしまう罪は

目の前の牛には謝罪せず

教会の神の前で懺悔をすれば

それで許されるのである。

そんな都合の良い考え方がまかり通るほど

この世は甘くない

と、「牛」そのものに感謝をしている私は思う。

欧米人の心は

特にアメリカの大規模酪農家の心は

牛が死んで死体が運ばれてゆくとき

きっと

「オー・マイ・カウ(牛)!」

ではなく

「オー・マイ・ガー(神)!」

と叫んでいるのだろう

・・・

IMG_3578牛たちが本当にかわいそうで

牛たちに気の毒な

まことにゆゆしい

酪農の大規模化である。

・・・

我が国で

酪農の大規模化を推進する方々に

このシリーズ記事を捧げたいと思う。


(この記事おわり)



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「牛に感謝」(5)

「牛に感謝」をする気持ちが、

だんだん乏しくなってゆく、

「ゆゆしい」事態の、

日本の酪農業界の現実を、

説明してきた。

その「ゆゆしい」事態

を招いている原因が、

酪農の大規模化であることを、

説明してきた。

では

そもそも

酪農の大規模化というのは

detail_farming_draw03いったい誰が

やり始めたのだろうか?

乳牛を飼い

その乳を搾ってそれを売るという酪農家の

人口が減ってゆく中で

出荷乳量を維持するためには

1戸あたりの搾乳頭数が増えるのは当然だが

それを「ゆゆしい」ものとは認識せず

むしろ

その大規模化に拍車をかけているのは

大規模化を良しとする考え方である。

酪農の大規模化を良い事と考え

それを我が国の酪農に導入し

推し進めてきた人たちの

模範(モデル)になった酪農は

欧米の酪農

それも特に

アメリカの酪農である。

USFOOD020_435j我が国の酪農業界は

ここ数十年にわたって

アメリカの酪農に大きな影響を受け続け

それを良いものとして見習い

それを必死に勉強して

自国の酪農に取り入れてきた。

アメリカの酪農技術を取り入れる中で

同国の乳牛の獣医技術も

同時に勉強して取り入れてきた。

それによって

我が国の酪農の生産性というものは飛躍的に伸びた。

detail_farming_draw04牛1頭あたりの乳量

酪農家1戸あたりの乳量

共に目を見張るような伸びを見せてきた。

そのこと自体はおそらく良い事であろう。

だが・・・

良い事と思われるものの中には

必ずと言ってよいほど

弊害があることを知らねばならない。

我が国の酪農がお手本としてきた

欧米の酪農

特にアメリカの酪農にも

いろいろな弊害があることを

我々はそろそろ

気づかなければならない時が来た

と私は思っている。

模範として来ただけに

その弊害に気づかず

detail_farming_draw02むしろ

その弊害に目をつむって

アメリカの酪農をひたすら良いものとして

盲目的に取り入れて来た

という側面が

我が国の酪農業界にはある。

ここに「ゆゆしい」事態を招いている

根本的な原因がある

と私は思っている。

根本的な原因というのは

今回ずっと書いて来たテーマである

IMG_3577「牛に感謝」

をするという

気持ちの問題であり

心の問題であり

思想の問題であろう

と私は思っている。

そこをもう少し

掘り下げてみたい。 


(この記事続く)



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「牛に感謝」(4)

前回は、

酪農の大規模化が、

牛の死体に対して鈍感になる行為であり、

牛を大切にしなくなる行為であり、

IMG_3577「牛に感謝」する気持ちを乏しくする、

「ゆゆしき行為」であることを説明した。

「ゆゆしい」というのは、

「そのまま放っておくと、取り返しのつかないことになる」、

という意味である。

酪農の大規模化の「ゆゆしさ」の、

裏付けになっている事は、

まだ他にもある。

例えばまた

飼養頭数50頭のA牧場と

飼養頭数500頭のB牧場があるとする。

いま

A牧場で伝染病が1頭発生したとすると

それが接触感染してゆく恐れのある頭数は50頭である。

B牧場で伝染病が1頭発生したとすると

それが接触感染してゆく恐れのある頭数は500頭である。

もう少し具体的にいうと

例えば 

A牧場で口蹄疫が1頭見つかったとすると

殺処分する頭数は50頭であるが

B牧場で口蹄疫が1頭見つかったとすると

殺処分する頭数は500頭である。

023どちらがダメージが大きいかは

一目瞭然であろう。

(写真は動衛研HPより)

A牧場の50頭の殺処分と

B牧場の500頭の殺処分では

人員の派遣規模も

補償金額も

10倍になる。

口蹄疫は相変わらずアジアの隣国で発生しているので

いつこのような事態になるかわからない。

また、口蹄疫ではなくて

ヨーネ病の場合は

すでにもう現実に

日本のあちらこちらの酪農家で発生している。

我が町も例外ではない。

具体的な農場名はもちろん言えないが

A牧場のような50頭規模の酪農家では

定期的に

1日で50頭のヨーネ病検査のための採血と採便を続けているし

B牧場のような500頭規模の酪農家でも

定期的に

1日で500頭のヨーネ病検査のための採血と採便を続けている。

A牧場のヨーネ検査は数時間で済むが

B牧場のヨーネ検査は丸1日かかる。

検査に訪れる関係機関の労力には

10倍の開きがあり

牧場のスタッフの協力も労力も

00510倍の差があり

その疲労度は10倍になる。

(写真は動衛研HPより)

大規模酪農家の伝染病対策は

小規模酪農家の伝染病対策よりも

効率が悪くなる。

大規模酪農家の生産性が高いのは

その農場が健全に機能している時だけであり

いったん伝染病などの機能の麻痺が起こると

そのダメージは

逆に

非常に大きくなることを

理解していなければならない。

小規模酪農家よりも

大規模酪農家の方が

伝染病に弱いのである。

酪農の大規模化は

まことに

「ゆゆしき行為」

である。


(この記事続く)


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「牛に感謝」(3)

加入しているNOSAI保険の、

牛の死亡率が、

毎年毎年、

常に高いような酪農家は、

「牛に感謝」する気持ちが乏しい、

ということを前回の記事に書いた。

ここではさらに

そんな死亡率の高い酪農家の中でも

IMG_3577とりわけ

「牛に感謝」する気持ちが乏しい

と思われる酪農家に

焦点をしぼり込んでみたいと思う。

例えば今

牛の死亡率が4%の酪農家A牧場と

同じ死亡率が4%の酪農家B牧場があるとする。

A牧場の飼養頭数は50頭

B牧場の飼養頭数はその10倍の500頭であるとする。

そうすると

A牧場では1年間に2頭の牛が死に

B牧場では1年間に20頭の牛が死ぬことになる。

A牧場は約半年に1頭のペースで

牛の死体の処理をする。

B牧場は約3週間に1頭のペースで

牛の死体の処理をしなければならない。

半年に1度死体を処理する牧場主と

3週間に1度死体を処理する牧場主と

どちらが

牛の死体を処理する事に慣れているかは

一目瞭然である。

A牧場とB牧場を比べて

BlogPaintどちらが

牛の死体に対して

鈍感になっているかは

誰でもわかるはずだ。

牧場全体が

牛の死体に対して鈍感になりやすいのは

A牧場よりもB牧場のほうである。

規模の大きい牧場が

牛の死に対して鈍感になっていることは

私は日頃いやというほど感じている。

牛の死に鈍感になるということは

牛の命を大切にしない傾向になっているのであり

牛を大切にしなくなっているのである。

規模の小さい酪農家よりも

規模の大きい酪農家のほうが

IMG_2340「牛に感謝」する気持ちが

より乏しくなっているというのは

私は日頃いやというほど感じている。

半年に1頭牛が死んでゆくA牧場と

毎月1頭〜2頭の牛が死んでゆくB牧場と

NOSAI保険の死亡率が同じであっても

牧場主がと牧場のスタッフが

牛の死に直面する

その回数は

10倍の開きがある。

「牛に感謝」

をする気持ちの差も

10倍とはいわぬまでも

A(中小規模)牧場とB(大規模)牧場では

かなりの気持ちの差が有ることは

容易に想像できるだろう。

いま

依然として酪農業界は

牧場の規模拡大を推し進めている。

だが

酪農の規模拡大は

牛の死体に対して鈍感になる行為であり

牛の命を軽んじる行為であり

牛を大切に飼えなくなる行為であり

牛を不健康にする行為であり

「牛に感謝」

をする気持ちを減らしてゆく行為である

DD208694-BB64-4D20-B12C-96C24DD548BA酪農の規模拡大は

「ゆゆしき行為」

と言わざるを得ない。


(写真の記事は、5月18日北海道新聞朝刊)

酪農規模の拡大には

莫大な資金が必要であり

後戻りのできない行為でもある。

これから

自分の農場の規模拡大を

真面目に考えている

酪農家の方たちは

この事実を

もう1度

よく考えていただきたいと思う。

本当に

「牛に感謝」

の気持ちのある酪農家ならば

本当に

牛を大切にする酪農家であれば

規模の拡大とは違う道を

考えるのではないか

と私は思うのだ。

(この記事続く)


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「牛に感謝」(2)

前回の記事で、

人類は「牛に感謝」をすべきである、

ということを書かせてもらった。 

人類・・・などというと、

あまりにも漠然としているので、

これから少し対象をしぼって、

IMG_3577我々畜産関係者、

その中でも酪農に関わるの人達にしぼって、

「牛に感謝」

をすることについて 、

もう少し書かせて頂こうと思う。

 本来は子牛が飲むべき母牛の乳を

子牛に直接に飲ませることなく

その乳を売って生計を立てている酪農家と

その酪農家に出入りして仕事をしている我々獣医師

あるいは酪農関係の業者や団体の人々は

「牛に感謝」

をするべきである。

牛がいなければ仕事のない人たちである。

しかし、それらの人々の外見を見ただけでは

本当にこの人たちが

「牛に感謝」

の気持ちを持って働いているかどうかは

よくわからない。

口では感謝の意を表していても

行動が伴っていない人というのは居るものである。

それを何で判断すれば良いか。

「牛に感謝」をしているのであれば

「牛を大切にする」のは当然であり

出来るだけ「牛を健康に」飼うはずである。

その酪農家の牛が

健康であるかどうかの目安の一つとして

私は、NOSAI保険の死亡率をあげたい。

多くの酪農家はNOSAIの保険に加入している。

IMG_3644加入している酪農家と

そこに出入りしている人たちが

どれだけ「牛に感謝」をしているかの目安として

その農場の牛がどれだけ健康でいるかを示す

NOSAI保険の事故率、病傷率、死亡率、廃用率

は、良い指標になると思う。

中でも特に、死亡率が高ければ高いほど

その農場の牛たちは不健康と言うことができる。

IMG_3645保険という性格上

止むを得ない災害や

いろいろな事情によって

一時的に

NOSAI保険の死亡率が高くなることはあるだろう。

しかし、長期的に

何年間もNOSAI保険の死亡率を見てゆくと

毎年コンスタントに死亡率の高いままの酪農家が

一定の数だけ、必ず存在する。

毎年毎年、慢性的に死亡率が高く

保険金の支払いが

毎年必ず限度を超えてしまうような酪農家。

そんな酪農家に飼われている牛たちは

ほぼ間違いなく不健康であり

その牛たちは「大切にされていない」と判断できる。

牛を大切に飼っていないから

死亡率が高いのであり

その酪農家は

「牛に感謝」

をする気持ちが乏しい

と言うことができるだろう。


(この記事続く)



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「牛に感謝」(1)

我々人類は、

家畜たちに感謝をすべきである。

家畜と一言で言ってしまうと範囲が広いが、

その家畜の中でも牛は、

代表的な家畜である。

先日たまたま

職場の雑誌棚を整理していたら

明治グループが発行している機関誌があり

IMG_3578 そこに

「牛に感謝」

という言葉を見つけて

これは良い言葉だなと思った。

「牛に感謝」

をすべきことは沢山あるが

そのなかでも酪農に関しては

我々人類の多くが

その乳を飲んでいるわけである。

本来は牛の母親が

我が子に与えるための乳である。

そのような母乳の99パーセント以上を

我々人類は

牛から分けて頂いているのである。

分けて頂いている乳のはずなのに

本来それを飲むべきの子牛のほうは

母親の母乳を直接に飲むことができず

加工した粉末ミルクを

人の手から飲まされている。

我々人類は

子牛たちが飲むべき乳までも

子牛に飲まさずに

牛の母親が出す生乳の99パーセント以上を

まるで横取りするように

自分たちだけで飲んでいるのである。

その行為は

良い事なのだろうか?

その行為について

あえて善悪を問えば

現代酪農というのは

あまり良い行為をしていないように思える。

子牛が飲むべき乳までも

横取りするような

現代酪農について

我々は反省すべきではないだろうか。

IMG_3577反省した先には

「牛に申し訳ない」

という気持ちが湧いてくるはずだ。

その気持ちが

「牛に感謝」

という言葉となって

現れるのは

当然のことだろう。


(この記事続く)


 
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