北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

動物の生と死

重種繁殖牝馬の回腸捻転(3)

この馬の、

その後の対処を当直の獣医師に任せて、

私はその日の用事と、

翌日の用事をこなしたが、

その間中ずっとこの馬のことが頭に浮んできては、

ため息が出てくるのだった。

そして、月曜日の朝、

事務所に出勤して、

同僚のH獣医師と挨拶を交わしたとき

H獣医師が言った。

「◆さんの馬、昨日死んだそうです。」

「・・・そう・・・やっぱり、ダメだったか・・・。」

「腸捻転だったそうですね。」

「・・・そう・・・やっぱり・・・。」

「だいぶ、ひどかったんですか?」

「・・・うーん。フル二キシン打つと(症状が)よくなったんだけど・・・。」

そして

事務所には、馬のその後を託したK獣医師がいた。

「あの日の午後に、◆さんからすぐ電話が来ましてね・・・もう、立てなくなってて・・・」

以下

カルテから抜粋して経過を記載すると

同日午後

体温36.2℃ 心拍数84   呼吸数36

起立不能、意識朦朧、苦悶、眼結膜充血、心悸亢進不正、排便少。

リンゲル等補液、フルニキシン、投与。

K獣医師も

この馬はもう今夜、死んでしまうだろうと思ったそうだ。

そして、翌日の朝

体温38.2℃ 心拍数86 

自力起立し飲水する。

疝痛症状、心悸亢進、腸蠕動(+)、排便不明、加療後放牧地へ。

K獣医師は、この時点で

この馬はもしかすると、持ち直すかもしれないと思ったそうだ。

そして、その日の昼頃

再診にて上診する。

しかし、その時は放牧地の奥で横臥

死亡を確認した。

と、いうことで

万事休すとなった。

残念な結果になってしまったが

現在の我々の技術と

◆さんの抱えている家の事情と

を、考慮すれば

恥ずかしながら

これが精一杯の対処だったのではないか

と、これは自己弁護なのかもしれないが

そう思われた。

書いて居ながら

なかなか筆が進まない。

しかし、これも私の遭遇した一つの症例であり

症例は「一期一会」

それを書き留めて将来の糧にしようという

このブログの趣旨を

貫いておきたいと思う。

BlogPaintちなみに

初診と2診目の、この馬の

血液検査の結果の写真を添付しておこうと思う。

初診と2診目の、間の時間は

BlogPaintおよそ5時間。

その間に

目立った変化が見られたと思われるのは

WBC  9980  /μL   → 12240 /μL

Ht         37.0 %  → 38.7%

BUN    16.7 mg/dl → 20.3 mg/dl

CL       94 mEg/L    → 92  mEg/L

など、だろうか。

BlogPaint最後に

十勝化成場での解剖所見を添付しておく。

解剖に当たった先生のコメントは

「回腸にに捻転あり、一部に出血・壊死あり(写真3枚)」

 馬(回腸捻転)  馬(回腸捻転)  馬(回腸捻転)

ということだった。


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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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重種繁殖牝馬の回腸捻転(2)

1度事務所に戻って往診の受付をして、

その日の午前中の、

牛の往診をひと回りした後 、

再び◆さんの馬の様子を見に行った。

疝痛で、寝たままで、

きっと苦しんでいるのだろう・・・、

もうそのままあの世へ行ってしまったかもしれない・・・、

そんな暗い気持ちを抱いて、

馬の寝ていた場所をのぞいてみると、

そこには馬がいなかった。

「あれ?・・・立ってどこかへ行ったな・・・牧場のほうだべか・・・」

家から出てきた◆さんが言った。

◆さんと私は、放牧場の奥の方へ馬を探しに行った。

馬は、放牧場の最も奥の森との境界線に立っていた。

前足で土を掻く仕草などをして

やはりどこか腹の調子が悪そうだったが

足取りはしつかりとしていた。

牧場から連れ戻して

枠場に入れて診察した。

体温37.8 心拍数50 呼吸数約16

腸の蠕動は左側で短く聴こえるのみだった。

直腸検査では、宿便わずかで

直腸内はほぼ空虚だった。

「どうだい先生・・・。」

「・・・。」

馬の症状は改善したとは言い難かった。

しかし

今朝のような、横臥して苦悶している症状よりは

だいぶマシになったので

これはもしかすると

通過障害が改善する可能性があるのではないか

(腸捻転ではないかもしれない・・・)

という考えも

僅かばかり

脳裏に浮かんだのだった。

IMG_1699この馬に付いている仔馬は

立っている母の乳房をしきりに突いて

あまり泌乳しない乳首を何度も吸っていた。

いま・・・

パソコンに向かって

この記事を書いている私が思うには

この時点で

一か八かの開腹手術による外科的整復を

どこかの施設で実施することができたならば

この馬の命を救うことができたのかもしれない

と思うのである。

だが・・・

実際には

我々十勝NOSAI「東部」事業所の獣医師が

重種の繁殖牝馬の腸捻転を

開腹手術によって治癒させた症例は未だになかった。

また・・・

十勝NOSAI「北部」のA町では数例の治癒例があったと聞いていたが

今年は、たまたまタイミングが悪く

麻酔機器の更新準備をしているらしく

また、麻酔のできるスタッフの転勤や退職などもあり

対応が難しい状態であるとも聞いていた。

また・・・

飼主の◆さん側にも

色々な気の毒な、家庭内の事情があり

治癒の確率の低い開腹手術に踏み切るには

高いハードルがいくつも立ちはだかっている

という状況だった。

「・・・先生・・・注射と薬で、できること、やってくれや。」

「・・・うん・・・」

IMG_1701私は

押し寄せてくる無力感を振り払いながら

この馬に補液をはじめた。

そして

迷った挙句

流動パラフィンと整腸剤の経鼻投薬をした。

「・・・便が通じてくれるといいんだけれど・・・」

補液と経鼻投薬の治療を終えて

私は祈るような気持ちで

◆さんの家を後にした。

週末のこの日の

午後から、私は

どうしても抜けられない用事があり

この馬の

これから先のことは

同僚のK獣医師に託して

事務所でカルテを書き終えて

ずっと祈るような気持ちのまま

帰宅した。

(この記事続く)


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重種繁殖牝馬の回腸捻転(1)

先日の当直、

午後10時半過ぎに携帯電話が鳴った。

「親馬が腹イタなのですぐ来てくれ。」

という◆さんからの往診依頼だった。

到着すると、

馬はなるほどかなり痛がっていた。

唇に力が入らぬつらそうな表情で、

前屈みになったかと思ったら、

バッタリと倒れこんで、

仰向けになって中空を蹴り上げる、

IMG_1689疝痛である。

「とりあえず痛み止めの注射をしましょう。」

私は馬がごろりと寝転んでいる合い間に馬に近づき

採血と同時にフルニキシンの注射を打った。

数分すると

疝痛症状が治まってきた。

IMG_1692馬がおもむろに立ち上がると

傍にいたこの仔馬がすかさず

母馬の乳を探りに来て

乳房を鼻で突いて乳をせがんだ。

体温37.5℃ 心拍数60 呼吸数約20

聴診器を(けん)部に当てると、

弱く短い腸の蠕動音が聴こえた。

疝痛がほぼ消失したので

この馬を枠場に入れて直腸検査をし

直腸内部には馬糞の形にならない柔らかな宿便を認めた。

IMG_1695その量は約5〜6kgだった。

さらに直腸から内臓の触診をするが

手の届く範囲では

これといった異常な所見は触知できなかった。

馬の症状が落ち着いてきたので

◆さんと私はひと安心して

念のためにこの馬にリンゲルの補液と

整腸剤(ミヤリ菌製剤)をカテーテルで投与して

今夜はこれで

様子を診ることにして

私は帰路に付いた。

事務所の当直室に戻ったのは

午前1時を過ぎたところだった。

翌朝

午前5時半頃に携帯電話が鳴った。

「馬がまた痛がってるからすぐ来てくれ。」

という◆さんがらの電話だった。

到着しすると

IMG_1696馬は牧場の片隅の泥のある土の上で

首を横たえたかと思うと

また首を上げて

疝痛症状を示していた。

「やっぱり痛いんだな。糞はいちおう今朝一回出たけど。」

◆さんの示した馬の便は

正常な馬の便の量には程遠い

少量の宿便だった。

「馬をちよっと立たせてみてくれる?」

◆さんはこの馬に何度も気合を入れては

立たせようと試みたが

馬は立つ気はあるものの

立ち上がることが出来なかった。

「・・・。」

私はここで初めて

この馬は間違いなく通過障害を起こしている、と思い

暗澹たる気持ちになった。

(腸捻転かもしれない・・・)

いやな時間が流れ始めた。

IMG_1697傍にいる仔馬は

立てない母親の腹部へ鼻をこすりつけて

乳を探しては、前掻きを繰り返した。

疝痛で馬が立てないというのは

もうよっぽどのことであり

馬はもちろん、飼主さんも

大変な心身の苦しみと

経済的損失を被る事になる。

この時点で

体温37.5℃ 心拍数60 呼吸約20(伸吟)

いやな時間の中で

私はこの馬の再びの採血と

フルニキシンと補液と抗生物質を投与し

◆さんには

また昼前に来ると約束して

一度事務所へ戻ることにした。


(この記事続く)


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原発事故と家畜

東日本大震災の発生した年から数えて、

今年は6度目の3月11日を迎えた。

今年もまた様々な、

震災関係の催しが、

各地で開かれている。

そして、

震災直後に発生した、

福島第一原発の爆発事故は、

色々な問題を抱えたまま、

現在に至っている。 

先日、

私のブログにコメントを寄せてくれたこともある、

メイさんという、 

福島県南相馬市にお住いの方から、

IMG_1165一冊の本をいただいた。

タイトルは「被災牛と歩んだ700日」。

内容は

第一原発の爆発事故により

避難を余儀なくされた畜産農家の手記と

畜産関係者の方々の手記である。

酪農家や養豚家の方々が

自宅から避難するということは

飼っているいる家畜たちの世話ができなくなるということである。

畜産農家が飼っている家畜の世話を放棄しなければならないということが

IMG_1171一体どういうことなのかを

この本は教えてくれる。

それはもう、涙無しでは読むことのできない

とても悲しく衝撃的なことなのだが

畜産農家さんと関係機関の方々の

一人一人の手記を読んでいると

そこには一筋縄ではゆかない

色々な考え方や立場の違いも見えてくる。

悲しさや哀れさなどの感情的なことは

言うまでもないことなので

IMG_1170あえてそれは書かず

それ以外の事実で

私がここに書いておくべきだと思ったことを書く。

その一つ目は

牛や豚を置き去りにして避難するとき

飼い主さんたちの多くが

本当は囲いから

あるいは繋がれた状態から 

解放させてやりたかったのに

それをせずに避難したことである。

なぜ放さなかったのか

それは、もしそれをすれば

放たれた「放れ牛」や「放れ豚」によって

周囲に迷惑がかかるから、と

飼い主さんたちは考えたのである。

そうして結局、牛や豚の多くが餓死をしていった。

二つ目は

そうして置き去りにされた牛や豚たちの一部が

何者かによって放されたという事実。

動物保護団体などの外部の人々の手で

飼い主に断りもなく勝手に放された。

三つ目は

そうやって放たれた牛や豚を見て

畜産農家の人たちは

複雑な気持ちの中で

少しホッとした気持ちにもなったと言うこと。

四つ目は

しかし、そうして放たれた牛や豚たちは

やはり、予想通り町中を徘徊し

民家を荒らしまわるようになり

結局、「放れ牛」や「放れ豚」も

行政の指示で、全て捕獲され

殺処分をされることになったこと。

五つ目は

捕獲された牛のうちの一部は

研究機関の牧場に預けられ

獣医学の研究に提供されることになったが

その研究も資金面で継続困難になっているということ。

そのような事実が

この本には書かれている。

畜産農家が

そして畜産関係者と地域社会が

原発事故から受ける被害というものは

いかに恐ろしく

複雑な問題を抱えながら

当事者の飼主さん達と

それを取り巻く人々の

様々な考え方の渦巻く中で

結局は

救いようのない

悲惨な結果に終わることを

この本は伝えている。

表紙を1ページめくると

被災した畜産農家の方が詠んだ短歌が一首記されている。

IMG_1166 原発の
 二十キロ圏内
 避難する
 乳牛総べて
 置き去りにして

        渡部愛子


さらに1ページめくると

 一枚の写真が載っている。

IMG_1167繋がれて

置き去りにされ

餓死した牛が

空腹のために

かじっていた

牛舎の柱の写真である。


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2つの新聞記事(6)

乳牛の不健康。

乳牛の不足。

乳牛の輸入。

今、

酪農界は 

かつてないような異変が起きているように思う。

30年以上、酪農家に往診に回っている私はそう思う。

かつて、牛乳が生産過剰で、

生産調整をしたことは何回もあった。

たった5〜6年前にも、生産調整をしていたくらいだった。

それがどうだろう。 

酪農家の大規模化で

足腰を強くしたはずの酪農の

生乳生産力が

ガタ落ちしている。

乳牛は不健康になり

乳牛の寿命は短縮し

乳牛は不足し

乳牛の価格が高騰し

挙げ句の果てに

外国から乳牛を買ってくる始末。

この異変を

解決するためには

科学技術だけでは、もはやどうしようもない

獣医療だけでは、もはやどうしようもない 

農政担当の官僚の資質も、どうしようもない

そんな

出口の見えない状況になっているようだ。 

この異変を

牛乳を飲んでいる消費者の方々は

知っているのだろうか?

私は

この異変を

牛乳を飲んでいる消費者に

もっと知ってもらわねばならないと思っている。

消費者に知ってもらうためには

どうすれば良いか。

IMG_1063一番早いのは

値上げ、だろう。

それも

特殊なブランド牛乳の値上げではなく

誰もが普通に飲んでいる

IMG_1062最も売れている

「普通の牛乳」を

値上げしなければ意味がない。 

いちばん「普通の牛乳」の値段を

IMG_1053消費者が

「なぜ?」

と思うくらいまで

引き上げるのだ。

いつも飲んでいる牛乳が不足しているのだから

値上げは当然のはずだ。

そうすれば

マスコミも

IMG_1078異変を感じ

酪農界のことを

色々詳しく取材して

報道し始めるだろう。

先日の

2月11日(土)

近所のスーパーの乳製品コーナーでは

「普通の牛乳」が

1リットル175円で

相も変わらず

IMG_1060安売りされていた。

売り札には

「11日限り」

と書いてあった。

翌日の

2月12日 (日)

同じスーパーの乳製品コーナーで、また

同じ「普通の牛乳」が

1リットル175円で

またまた

安売りされていた。

IMG_1068売り札には

「12日限り」

と書いてあった。

あれ・・・?

2日続けて

1日限定(笑)

小売のスーパーさん

こんなことしてる場合じゃあないと思うんですけど・・・


(この記事、とりあえず、終わり)


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2つの新聞記事(5)

乳牛が足りなくなってしまったので、

乳牛をオーストラリアから輸入する。

そんな政策を進めている農水省の官僚の人たちとは、

いったい、どんな人たちなのだろう?、

そんな疑問を抱いていた矢先、

タイミングよくこんな時評が、

2月9日の十勝毎日新聞に掲載された。

IMG_1054筆者はおなじみの

元通産省官僚の古賀茂明氏。

古賀氏によると

官僚は3つのタイプに分けられるという。


第1は「消防士型」

第2は「中央エリート官僚型」

第3は「凡人型」


なのだそうだ。

そして

それぞれのタイプについて


ヾ盈修砲覆辰親圧

求める報酬

9駝院∋毀韻らの要請に対する態度

じ什澆梁垓に対する思い


という4つの項目についての違いで

3者を整理している。


「消防士型」は

〇毀韻鮗蕕襪海箸納匆颪帽弩イ靴燭ぁ

特別な報酬はいらない。強いて言えば、自分の仕事に対して「ありがとう」と感謝の気持ちを表してもらえればうれしい。

市民のニーズに何とか応えたい。今の仕組みで対応できなければ、予算、法律、条令などを変えてでも実現したい。

ずの待遇に満足、それ以上は望まない。

というタイプだそうだ。


「中央エリート官僚型」は

ー分が1番であることを証明したいので、1番難しいと言われる財務省に入った。

△舛笋曚笋気譴燭ぁ⊆分が偉いんだということを確認するためには、給料が高いということよりも、一般の人よりも大きな権限を持ち、みんなに頭を下げられるような地位にいることが大事。

市民はくだらないことを要求してくるので迷惑だ、しつこい奴らは「たかり」だ、1番優秀な俺たちが考えてやっていることに文句をつけやがって、うるさい連中だ。

て本一優秀な自分たちが夜中まで働いているのに、今の待遇は全く不十分だ、退職後においしい生活が待っているから何とか釣り合っている、天下り禁止なんて、全くおかしなことだ。

と考える、最もたちが悪いタイプで

これは財務官僚に多いそうだ。


「凡人型」は

\験彊堕蠅靴神験茲鯑世襪燭瓩砲聾務員が1番だ。

△修海修海竜詢舛搬狄Ω紊琉堕蠅靴神験菠歉磴ほしい。

F颪靴い海箸砲麓蠅鮟个靴燭ない、失敗したらバツがつくので、とにかく余計なことには関わらない。

い發少し給料を上げてほしい、天下りは生命線、何のために官僚になったのかわからなくなるじゃないか。

と考えるタイプだそうだ。


IMG_1054古賀氏は

この3つのタイプが

大体3分の1ずつ居る、という。

しかし、幹部クラスになると

「消防士型」の官僚はほとんどいなくなる、という。

ということは

「中央エリート官僚型」の多くが、財務官僚であることと

考え合わせると

農水官僚は

「消防士型」と「凡人型」がほとんどであるだろう。

さらに

農水省でも

幹部クラスには

「消防士型」がほとんどいなくなる

のであるから

農水省幹部の官僚は

ほとんどが「凡人型」の官僚

ということになる。

きっと

そういう「凡人型」の官僚たちが

今回の

乳牛のオーストラリアからの輸入

という政策を進めているのだ

と、思われる。

どおりで・・・

何も考えていない・・・

愚かな、政策・・・


(この記事、あと少しつづく・・・)


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2つの新聞記事(4)

声を荒げない 蹴飛ばさない 叩かない
フォークやスコップ等を持たない
観察が大事
人も牛も 同じ 生きもの
飼い主がしたくない されたくない事は
牛もされたくない
牛が喜ぶことは人も嬉しい それだけ
声かけが何よりも大事
生まれた瞬間から 声かけ」

これは、前々回の記事で、

うしらぶさんという酪農家の方から寄せられたコメントで、

あるベテランの70歳を過ぎた酪農家の言葉である。

この言葉はさらに続いて、

アニマルウェルフェア(家畜福祉、動物福祉)
動物の中には人間も入るんだもんね?
で、俺はね
酪農家のウェルフェア
やらなきゃいけないと思うよ。
やはり、酪農家が健全でなきゃ
健全な牛なんて
飼えるわけないのさ、うん。
この酪農家の健全性については
誰も問わないもんね。
規模拡大して、牛乳を沢山搾れって
税金使ったり、地域あげてやってるけど
やはり
酪農家の健全性を
どう皆で作り上げていくか?
で、どんなに頑張ったってね
人間が健全でなかったら
動物(牛)健全でなくなる。
じゃあ
酪農家の健全を
どうしたらいいか?」


前半の部分は

それぞれの農場で

いろいろな事情があるから

そっくりそのまま真似をすれば良いというものではないけれど

基本的な事として

「声かけが何よりも大事」

というのは

我々人間同士の付き合いもそうであり

核心をついていると思う。

さらに後半の部分で

「酪農家が健全でなきゃ、健全な牛なんて飼えるわけないのさ」

という言葉は

今とても必要なことを見抜いていると思った。

このベテランの酪農家さんの言葉をもって

乳牛のアニマルウェルフェア(動物福祉)についての話は

そろそろ終わりにしたいと思う。

ところが・・・

また、ところが、だ・・・

そんな矢先に

またまた新聞に

聞き逃すことのできない記事が出ていた。

乳用牛を生きたまま輸入するのに

補助金が出る

という話である。

輸入の相手国はオーストラリアだそうだ。

どういうことかというと

IMG_1008我が国の乳用牛の数が減り

乳用牛の値段が高くなってしまったから

外国から安い乳用牛を

輸入して

それを賄うというのだ。

こういう事をしたら

国内の

乳用牛を生産し

販売している酪農家の

個体販売の利益が

オーストラリアの酪農家に奪われてしまうことになる。

さらに

オーストラリアの牛の価格に引っ張られて

我が国の牛の市場価格が大幅に下がることが予想される。

いま

国内で乳用牛の個体販売で利益を得ているのは

多くが中小規模の

地道に子牛から乳牛を育てている酪農家である。

これに対して

子牛を育てることを放棄して

乳用牛を他所から買って

ただ搾っているだけの農場は

多くが大規模な酪農場である。

この新聞記事の内容は

売り手である中小規模の個体販売農家を苦しめ

買い手である大規模の搾乳しかしない農場を助ける

という政策のように見える。

外国で生まれ育った値段の安い乳用牛が

まるで奴隷のように

日本の大規模酪農場へ

次々と導入される。

日本の中小酪農家の

乳用牛の生産意欲はどんどん低下する。

その先には

日本の酪農全体が

乳用牛を外国から買わなくては生きてゆけない

巨大なギガファーム化してゆく

そんな姿も見えてくる。

こんなことを続けていれば

我が国の

「健全な酪農家」

どんどん減ってゆくだろう。

そして

我が国の

「健康な牛」

ますます減ってゆくだろう。


(この記事、もうちょっと続く・・・)


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2つの新聞記事(3)

「動物福祉」にしろ「アニマルウェルフェア」にしろ、

それを実践することは、

特別なことでもなんでもない、

と私は思うのである。

苦しそうな牛を見て「・・・かわいそうだ。」と思い、

その苦しみを解いてやろうとする心。

飢えている牛を見て「・・・そうかそうか。」と思い、

その飢えを満たしてあげようとする心。

そういう心がなければ、

「牛を愛する心」がなければ、

乳牛など飼育できるものではない、

と私は思うのである。 

自分は酪農ビジネスとして牛を飼育しているのだから、

そいうい心は必要がなく邪魔でさえある、

などと言う人もいるが、

そんなドライな感覚の酪農家にさえ

「牛を愛する心」がゼロの酪農家はいない、

と、私は信じている。

乳牛は我々と同じ赤い血が流れ

空気を吸っては吐き

水を飲み食物を食べては排泄し

我々人間となんら変わりのない生き方で生きている

と思えばなおさらである。

「牛を愛する心」を持って

酪農を実践することは

特別なことでもなんでもないだろう

と、私は毎日酪農家を往診して回りながら

そう思ってやってきた。

そういう現場に

突然登場したのが

家畜福祉、アニマルウェルフェアの考え方に基づく

認定制度だった。

「牛を愛する心」というものを

科学的に分析をして

いろいろな項目に分け

その実践の程度をチェックして

客観的に評価して

そこに線引きをして

合格不合格の差別化を図り

合格したもののみを

特別に「アニマルウェルフェア認定牧場」に認定し

そこから生産された乳製品に付加価値をつける。

という活動を始めたのが

アニマルウェルフェア畜産協会である。

この活動について

私は基本的には素晴らしい活動であり

これからもっと普及してほしいと思っている。

しかし、同時に

この活動は科学的手法の限界をよく表している

とも思うのだ。

「牛を愛する心」を科学的に分析して

いろいろな項目に分けて

その実践の程度をチェックして

客観的に評価して

そこに線引きをして

合格不合格の差別化を図り

合格したもののみを

特別に「牛を愛する心の程度の高い牧場」に認定し・・・

・・・そんなことをやっていれば

不合格になって認定されない牧場の人たちは

IMG_0357気分を害し

怒り出す人も少なくないだろう。

科学的手法というものは

多くがこういうものであると私は思っている。

科学的手法は

「愛する心」という奥ゆかしい感情を

上から目線で観察するだけなのである。

気分を害された人たちは

IMG_0358「口で言わずに、手本をやって見せてくれよ!」

と言い出す人もきっといるだろう。

ところが

実際のところ

酪農家の牧場形態は十人十色であり

牛の飼い方や接し方は十人十色であり

「牛を愛する心」の「お手本」と言えるものを

IMG_0910具体的に示すことなど、

そう簡単にできるものではないだろう。

「アニマルウェルフェア」の基準が

曖昧になるのはそのためだろうと思う。

ここに、私は

科学的手法の限界を感じるのである。

「愛」や「心」に対する科学的研究は

可能だが

その成果を現場に還元した時の

貧弱さ、底の浅さ、腹立たしさ、虚しさ、は

人の恋愛心理学などの成果を見れば、容易に想像がつく。

そんな、科学的手法の限界を感じつつ

IMG_0940毎日毎日

今回掲載した写真のような

疲れ切った牛達を前にして

私は

治療の薬を手にしたまま

暗澹たる気持ちになるのである。

科学的手法に頼ることなく

もっと広く

もっとあまねく

特別なことでなく

普通に「牛を愛する心」を持って

IMG_1020全ての酪農家が

それを忘れず

それを実践しながら

「健康な牛」を飼えるようになる方法は

ないものだろうか・・・

そのヒントになることが

実は

前回の記事に寄せられたコメントの

最後の方に書かれているコメントの中に

あるような気がするのだが・・・


(この記事続く)


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2つの新聞記事(2)

「牛は機械ではない。一緒に働く同僚のはず。農業は工業じゃないんです。」

アニマルウェルフェア畜産協会の、妹尾哲也代表のこの発言は、

酪農の効率優先、大規模化を進める国に対して、

それを考え直すことを促す、力強い言葉だと思う。

さらに、このアニマルウェルフェア畜産協会は、

牛の体の清潔さや牛舎の明るさや、尾を切らないーなど

IMG_100650項目の基準を独自に定め、

現在、3戸の酪農家を審査中で、

来年度中には、協会の認証マーク付きの商品が

市場に出る見通しだという。

協会の認証マークの付いた牛乳が一般市場に出回り

その美味しさが消費者に認められ

乳牛を大切に優しく飼われることの価値が

一般社会に広まってゆくことは

大変素晴らしいことであると思う。

こういう新しい価値を持った牛乳が

市場に出回ることを

私は大いに期待している。

もしそんな牛乳をスーパーの店頭などで見かけたら

普通の市販の牛乳よりも値段が高いことが予想されるが

必ず買って飲んでみたいと思っている。

そうすることによって

アニマルウェルフェア協会の認定農場が増える力になれる。

それは

牛を大切に飼う家族経営の小規模な酪農家の数が増えることを意味する。

まことに喜ばしいことで

私はこういう方向性に大賛成である。

大賛成である・・・のだが・・・

どうしてもそれだけでは・・・

満足できない・・・というか・・・

それだけではちょっと・・・

物足りない・・・というか・・・

どこか腑に落ちない・・・というか・・・

そんな思いを拭い去ることができない・・・

それは、どういうことかというと

アニマルウェルフェア協会の認定マークの付いた牛乳が

一体どれだけのシェアを取れるのか

という事とも関係している。

協会の認定マーク付きの牛乳は

認定マークの付いていない牛乳と比べると

非常に数が少なく

値段も割高であることが予想できる。

牛乳市場におけるシェアは

僅かなところに落ち着いてしまうことが想像できる。

つまり

認定マークの付いた牛乳は

高級ブランドの貴重な牛乳であり

贅沢品ということになる。

アニマルウェルフェア協会が認定した牛乳は

贅沢品とみなされてしまうことになる。

乳牛を大切に優しく飼って

健康な牛から搾った牛乳が

贅沢品・・・

というレッテルを貼られて店頭に並ぶことになる。

ここが

私の腑に落ちないところなのである。

アニマルウェルフェアの実践は

贅沢品を作るためだけの手段ではないはずだ。

高級ブランド牛乳があることには

私は大賛成だが

それを作るための手段としてのみ

アニマルウェルフェアが有るわけではないはずだ。

乳牛のアニマルウェルフェアの実践は

高級ブランド牛乳を生産する牧場だけではなく

普通の値段で飲める日常的な生乳を生産する牧場にも

乳製品への加工用の原料乳を生産する牧場にも

どんな牧場にも

なされなければならないはずだ。

それが私の願っている

「牛の健康」の姿である。

高級ブランドの認定マークの付いていない

圧倒的多数のシェアを持つ

圧倒的多数の「普通の生乳」を生産する牧場と

そこで飼養されている

圧倒的多数の「普通の乳牛」に対して

IMG_1004あまねく実践されるべき課題。

「牛の健康」を守るための

重要な課題が

我々の目の前に

立ちはだかっていることに

我々畜産関係者は

気が付かなければならないのではないか

と、私は思うのだ。


(この記事続く)



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2つの新聞記事(1)

先週の十勝毎日新聞の記事は、

我が町の、

そして十勝地方の、

酪農関係者にとっては、

聞き逃すことのできないニュースだったと思う。

ノベルズグループ(延與雄一郎社長)の、

「幕別デーリィファーム」が、

3年後の2020年までに

幕別町の駒畠(こまはた)地区の26ヘクタールの民有地に

IMG_1004牛舎20棟を建て

ロータリパーラー1箇所

パラレルパーラー1箇所

を設置し

4300頭の乳牛を飼い

47000トンの生乳の出荷量を目指す

大規模酪農場を作る計画を

正式に発表した。

生産した生乳の出荷先は

JA幕別町になる見通しだという。

1月23日に

幕別町役場で記者会見が行われた内容を

翌日の新聞が報じていた。

さて

その一方で

1月30日の

北海道新聞の帯広・十勝版には

このような記事が出ていた。

帯広畜産大学講師の瀬尾哲也氏が

昨年5月に

アニマルウェルフェア畜産協会を設立し

代表理事に就任した。

この記事もまた

我々十勝地方の

酪農関係者には

IMG_1006聞き逃すことのできない記事であろう。

そこには

「効率優先、大規模化を進める

国や日本酪農への問題提起。」

として

「牛は機械ではない。一緒に働く同僚のはず。農業は工業じゃないんです。」

というコメントが載っていた。

奇しくも

わずか数日の間に

私の住む地域のニュースとして

このような対照的な出来事を報じる記事が

新聞に掲載されたのだった。


(この記事続く)


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今年の死亡牛、廃用牛。

今年の1年間で、

私はどれだけの家畜の死亡を確認し、

どれだけの家畜の廃用に立ち会い、

その処理のために、

どれだけの診断書を書いて来ただろうか。

事務所でカルテを書き終わって、

ふと、そんな思いが湧いて来たので、

今年度の私が書いた、

死亡・廃用・の診断書の数を数えてみた。

今年度なので、

平成28年の4月から12月までの、

9ヶ月間に、私が書いた診断書の数である。

IMG_0864それらはほぼ全部

牛だった。

それは

103枚あった。

9ヶ月間に103枚ということは

103 ÷ 9 = 11.5

1ヶ月に約12頭の死亡診断書を書いている計算になる。

これを1年に換算すれば

103 ÷ 9 × 12  =  137.3

1年間で約137頭の牛たちの

死亡を確認し

廃用のに立ち会って

診断書を書いて来たことになる。

こんなことをわざわざ集計してみたのは

今年が初めてのことで

去年や一昨年は

そのようなことは考えもしなかった。

しかし、今年は

どういうわけか

死亡を確認した牛

あるいは廃用にした牛の

BlogPaint数が気になって仕方がなかった。

なぜかというと

その数が

年々増えているのではないかという感じがするからだ。

今年はこの、年間約137頭の死亡廃用という数が

どういう意味を持つのかということを考えてしまうのだった。

たとえば、人の医療現場の場合

年間137人の死人を扱う臨床医師など、いないと思う。

3日に1度のご臨終に立ち会う臨床医師など、いないと思う。

しかし牛の臨床獣医療の現場では

多くの臨床獣医師が、私とそれほど変わらない数の

死亡・廃用の診断書を書いていると思われる。

繰り返すが、「臨床」獣医師が、である。

牛の命を救うために

牛が健康を取り戻すために

働いているはずの「臨床」の獣医師が、である。

死亡・廃用野診断書を書いた牛というのは

屠殺場で食肉にすることさえ出来ない

哀れな死に方をした牛たちである。

「臨床」の獣医師が

これほどの数の牛の

「ご臨終」に立ち会っているのである。

今年の締めくくりの記事として

なんとも湿っぽい話ではあるが

これを書かずにはいられない

そんな思いが私にはある。

この記事をお読みの

獣医師諸君!

あなたは今年

何頭の牛の死亡を確認し

何頭の牛の廃用に立ち会いましたか?

教えていただけると嬉しいです。

では皆様

どうぞ良いお年をお迎え下さい。


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どこの牛馬の肉なのか?

牛肉が原料の「コンビーフ」と、

馬肉と牛肉が原料の「ニューコンミート」、

IMG_5736どちらもパッケージを新しく変えて、

スーパーマーケットの棚に並び、

月間お買い得商品になっていた。

「スマートカップ」という新しいパッケージなのだそうだ。

あの昔懐かしい独特のアルミ缶の

缶の裾をコキコキと巻き上げてゆく缶詰から

とうとうモデルチェンジしたのだ。

「コンビーフ」と「ニューコンミート」の味の差は

ちゃんと食べ比べたことがないので、

私はまだよくわからないが、

どちらもまぁ似たようなものではないかな、と私は思っている。

「ニューコンミート」と「コンビーフ」との味の差を

ちゃんと説明できる人に、私はまだ出会ったことがないし 

「俺は絶対にコンビーフだっ!」 、とか

逆に、「絶対にニューコンミートの方がうまい!」とか

両者の味の差にこだわっている人にも

私はまだ出会ったことがない。 

そんな商品で

この価格差。

コンビーフはニューコンミートよりも50%も高い。

驚くほどの価格差ではないか。

要は原材料。

コンビーフやニューコンミートの原材料になる

牛肉と

馬肉と

その原料価格の差が現われていると考えてよいと思う。

いったい

どんな牛肉がコンビーフになり

どんな馬肉がニューコンミートになるのだろう。

牛はホルスタインなのか和牛なのか

国産牛肉なのか輸入牛肉なのか

馬はサラブレッドなのか重種馬なのか小型馬なのか

国産馬肉なのか輸入馬肉なのか

どなたかご存知の方がいたら

教えていただきたい。


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必死に生きる不健康な乳牛

たとえば、乳牛の慢性肺炎は、とても厄介な病気である。

先日往診した▲牧場の乳牛は、

BlogPaint体調不良、

という稟告だった。

聴診器を当てると

肺の音が良くない。

血液検査からは低カルシウムのほかに、

血清タンパク質のγ-グロブリンの極端な上昇、

すなわちA/G比の極端な低下、

が見られた。

これは慢性の炎症が体の中のどこかにある事を示す数値だ。

治療をしながら、耳の個体識別番号を見て、ピンときた。

これは半年くらい前に

慢性の肺炎がなかなか治らず

抗生物質を一ヶ月近く打ち続けた牛だった。

その後、この牛はなんとか肺の病を持ちこたえて

抗生物質での治療を打ち切り

乾乳期を過ごし、分娩し

搾乳を始めていたのだった。

IMG_5230そしてその後 

完治はしないが

症状はそこそこ小康を得ているので

様子を見ながら搾乳牛として働き始めていたのだ。

しかし

ご覧の通りの痩せ細った体

乳房だけはなんとか乳を出すために膨らんでいるが

それ以外の体の各所は

筋肉の少ない骨と皮ばかりである。

そんな慢性肺炎牛が、牛群の中で

受胎し、分娩し、

必死に生きているのである。

慢性肺炎という病気を抱えつつ

必死に生きながら

毎日搾乳される生活に入っていたのである。

世間一般に知られている酪農家の乳牛というのは

みんな健康なイメージである。

毎日乳業会社に出荷される生乳や

乳製品のチーズやバターの原料の牛乳は

健康で元気な乳牛から絞った牛乳

というイメージがある。

だが、実際には

健康な牛の乳はばかりではなく

不健康で具合の悪い乳牛もいて

それらの牛の乳も混ざっているのである。

もちろんすべての酪農家にこのような牛がいるわけではない。

しかし

一部の酪農家にはこのような牛もいて

必死に生きており

その乳が搾られて

出荷されることもあるのである。


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和牛の蹄のレントゲン画像(1)

町内の酪農家▲牧場で生まれた受精卵の和牛が、

約1.5ヶ月齢になった時に、

突然右後足を着地できなくなったという。

1週間ほど様子を見ていたのだが、

IMG_4870全く良くならないという。

そんな状態になってから初めて、

たまたま別件で往診に来ていた獣医師に

この仔牛の状態をなんとかできないかと相談したという。

相談された獣医師は、

相談するのが遅すぎるよ・・・と思いながらも、

消炎鎮痛剤と抗生物質を投与し、

IMG_4872それを数日続ける治療を指示したという。

それから約1週間が経って

年が明けた。

正月気分の只中の1月2日

夕方の緊急往診で私が▲牧場に行ったとき

▲牧場のスタッフから、

再びこの牛が心配なので見て欲しいと言われ

この仔牛の今後について相談された。

IMG_4874相談するのが遅すぎるよ・・・と思いながらも、

私はその仔牛の肢を診た。

「歩き方がほとんど変わらなくて、全然着けないんですよ・・・」

「・・・うーん、これはずいぶん我慢したねぇ。」

「治りますか?」

「・・・それは、もう少し治療してみなければわからないよ。」

「治らなかったら、廃用ですか?」

「・・・そんなこといきなり言わないで、まずはちゃんと診断しないと。」

「骨折してるんですか?」

「・・・それはレントゲンを撮ってよく見てみないとわからないよ。」

「レントゲン撮るんですか?」

「・・・そう。骨折してるかどうかハッキリさせないとね。でも今すぐは無理だから、正月休みが終わった日の昼からレントゲンの装置持って来て、ここで撮るからね。」

「お願いします。」

かくして

私も、初診した獣医師と同じように、消炎鎮痛剤と抗生物質を投与し

レントゲンを撮る日まで、それを続けてもらった。

さて、正月休暇が終わり

image発病から半月近くを過ぎて

いまだに重度のな跛行が全く改善していない仔牛の

肢のレントゲン写真を、ようやく撮り終えて

私は、その日の午後に

画像データーが診療所のパソコンに送られてくるのを待った。

IMG_4963その結果が

左の2枚の写真である。

右後肢の基節骨(繋骨)と中節骨(冠骨)が白く濁っていて

その間の関節面は、異常に離れていてずれているようにも見えた。

これは、この部分に強い炎症があるのは間違い無いようだ。

IMG_4965しかし

各骨の骨折の所見は見られないようだった。

ただ・・・

私のレントゲン画像の診断力は

まったくお寒い限りで

正しい診断をする自信がない。

今この記事をお読みの獣医師で

エックス線画像の読解の得意な方がいらっしゃったなら

どうかご助言をいただきたいと思う。

この画像のような状態は

どのようにして起こり

どのような経過をたどり

どうしてこんな画像になってしまったのだろうか?

ご自由な発想と想像を巡らせて

是非コメントをいただきたいと思う。

(この記事続く)


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子宮脱牛の血中カルシウム濃度

先日の当直の深夜、早朝の3時半過ぎに

枕元の携帯電話が鳴った。

「子宮脱なんで、お願いします。」 

1日3回搾乳をしている規模の大きなD牧場の従業員さんからだった。

同じ事務所に泊まり込んでいる実習生と一緒に駆けつけてみると

乾乳牛のフリーバーンで、その牛は首を投げ出して倒れていた。

IMG_4387子宮は写真のごとく脱出し

首を上げる事も出来ないようだった。

「このままじゃ、子宮を元に戻せないから、牛を吊る道具とショベルが来て欲しい。」 

「わかりました。」 

子宮脱の緊急往診は、一刻を争う仕事である。

私はショベルを待つ間に

カッパと手袋を着用し子宮脱整復の出で立ちになり

子宮脱整復用の道具を準備した。

次に、この牛の血液を採取し

その後直ちにカルシウム剤とブドウ糖の投与をを始めた。

カルシウム剤とブドウ糖の投与が終る頃

牛を吊るカウハンガーと

パワーショベルがやって来た。

さぁこれから、牛の腰にハンガーをかけて

と思って、牛を見ると・・・

牛は異常に大きな息を吸っては吐き

あえなく、死んでしまった。

「・・・。」

「・・・じゃ・・また昼来るから・・。」

なんとも虚しい空気の中で

この牛の治療は終了してしまった。

後日・・・

IMG_4409この牛の血中カルシウム値の報告を見ると

3.7 (mg/dl)

という低値を示していた。

子宮脱の牛の血中カルシウム濃度を

必ず測るようになってから数年になる。

その感触として

子宮脱の牛は

非常に高い確率で低カルシウムになっているようなのだ。

今後さらに多数の症例を集め

その確率を求めてみたいという気持ちが

子宮脱の牛を治療するたびに強くなっている。

「子宮脱牛の血中カルシウム測定プロジェクト」というのは如何だろう?

往診で出逢った子宮脱の牛の採血をして

子宮脱牛が低カルシウムになっている「確率」と

子宮脱牛の血中カルシウム濃度の「平均値」

を、求めるという企画。

面白くないだろうか?

そういう調査的な仕事は1人でやるよりも

大勢でやったほうが良い。

興味のある臨床家の皆様(いるかな?)

コメントをお待ちしております。


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5日連続の帝王切開

大型の台風がかすめていったことが影響しているのか、

先週の日曜日から木曜日まで、

乳牛のお産がらみの厳しい症例が続いた。

我が診療地区の乳牛の頭数は6000〜7000頭ほどで

難産などで帝王切開になる症例は

今までのペースであればひと月に2〜3例程度。

それが先週から今週の1週間の間に、連日に5例が集中した。

こんなことはもちろん初めてだった。

日曜日の1例目は

搾乳牛約100頭のフリーストールA牧場。

お産の予定日まで来ていない乾乳の乳牛の子宮捻転。

子宮体部での強い捻転だったらしく

帝王切開をして胎児を摘出したものの既に死亡。

親牛もその2日後に死亡した。

IMG_4354月曜日の2例目は

搾乳牛約100頭の繋ぎ飼いのB牧場。

予定日が来て産気づくも、前肢、後肢、が複雑に屈折し介助不能

起立困難で、現地で帝王切開したが胎児は既に死亡。

親牛もその2日後の未明に死亡した。 

IMG_4360火曜日の3例目は

搾乳牛約150頭のフリーストールのC牧場。

お産の予定日を2週間過ぎていてようやく産気づくも

胎児が出ないまま、朝になって往診してみると

過大児で産道狭く、帝王切開したがETの和牛胎児は既に死亡 。

IMG_4363初産の牛で、この親牛はなんとか回復してくれたようだ。

水曜日の4例目は

搾乳牛約500頭のフリーバーンのD牧場。

もともと足の神経痛、痙攣を患っている牛で

手を入れてみると、子宮体部で180度以上の激しい捻転

IMG_4364即刻引きつけて帝王切開をするも、胎児は既に死亡。

親は命は取り留めたが、起立困難でまだ治療中。

木曜日の 5例目は

搾乳牛約120頭のフリーストールのE牧場。

分娩予定日40日以上も過ぎている長期在胎の牛に

IMG_4369分娩誘発処置をしたものの、産道開かず

帝王切開をして胎児を生きて摘出させたが

頭部に奇形のある胎児で、翌日死亡。

親牛はなんとか回復中。

以上のごとく

5日連続の帝王切開を実施。

これはうちの診療所の新記録となった。

大阪府立大学からたまたま実習生が来ていたので

実習生にとっては良い勉強になったと思う、が

それよりも

気になることは

今回、帝王切開をした5つの牧場は

かねてから私が最も心配をしている飼養管理形態

すなわち

A牧場は定員オーバーのフリーストール

B牧場は搾乳牛ばかりではなく乾乳牛も繋ぎっぱなし

C牧場は定員オーバーのフリーストール

D牧場は牛床不衛生な超過密フリーバーン

E牧場は定員オーバーで牛床不衛生なフリーストール

そして

揃いも揃って

ここ7〜8年の間に

急激に搾乳頭数を増やしてきた牧場ばかりなのだ。

それは何故なのか・・・

考えておかねばならないのではないかと思う。


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乳牛の寿命(6)

私は平成18年9月20日の、自分のブログでこんな記事を書いていた。

 『去年めでたく!?町村合併をした我が町の農業統計を
覗いてみた。これによると

  農家数 636戸 で、全耕地面積が 17,700ha  ということだから

  一戸あたりの面積は、17700 ÷ 636 = 27.8ha  となる。

  「日本国勢図会2004/05」によれば
  日本全国の一戸あたりの耕地面積は1.2ha
  さらに北海道全体では12.64ha ということだ。

  我が町はさすがに農業王国十勝のど真ん中の町だなぁ と、感心した。

  ・・・ところが・・・

  「世界国勢図会2004/05」をめくってみると

  アメリカ合衆国の農業者一人あたりの耕地面積は 141.7ha ・・・

  オーストラリアの農業者一人あたりの耕地面積は 1011.3ha ・・・

  これを一戸あたりに換算したら、最低でも2倍以上にはなるだろうから

  仮に倍にすると、アメリカは 一戸あたり 243.4ha 

  オーストラリアは 一戸あたりなんと 2022.6ha 

  そうすると、アメリカの農業規模は我が町の約9倍。(243.4÷27.8)

  オーストラリアの規模は我が町の約74倍になる。(2022.6÷27.8)

  もし我が町がアメリカ並になったら、農業人口は9分の1に減って、72戸。

  オーストラリア並になったら、農業人口は74分の1、たったの9戸に減ってしまう。

  我が町に農業者9戸のみ・・・淋しいなぁ・・・

  そんな国の農業、畜産業、その農産物や牛肉と、まともに勝負して
  規模を拡大して国際競争力をつけましょうなんて
  真剣になって言ってる農業指導者が、わが国にはまだいるらしい。』

この記事を書いてから

9年の歳月が流れた。

その間に、日本のそして北海道十勝の

農業人口はさらに減り続けているに違いない。

酪農についても、戸数が減っている。

我が町もその例外ではない。

我が町は北海道十勝地方の中央に位置し

畑作の盛んな地域であり

一戸あたりの耕地面積は今、およそ30〜50haだと思われる。

良い土地は畑になり、牧草地にするよりも収益が上がる。

酪農をやめて畑作と和牛繁殖にした農場も多い。

そのような土地で、酪農家の方々も乳牛を飼いながら頑張っている。

そこには、搾乳牛30頭程度〜500頭程度の酪農家まで色々な規模で

いろいろな管理方法で独自の道を進む酪農家があり

私はそれらの牧場を、日々訪問して仕事をさせてもらっている。

そんな日々の仕事のなかで

最近つくづく感じる事、それが

乳牛が病気や怪我をして、呼ばれて行って治療を施した時

どこの牧場の牛に対しても、全く同じように

私は全力で治療を施しているのに

いくら治療してもさっぱり治ってくれない牧場と

治療によく反応して治ってくれる牧場と

牛たちにはっきりと差が出はじめているという事だ。

その事は、共済の死亡・廃用事故や病傷の事故の数

すなわち、保険金請求書やカルテの数にもあらわれている。

IMG_0475乳牛の命が軽んじられている牧場と

乳牛の命が大切に扱われている牧場と

はっきりと差が出始めている。

そして

前者のような牧場が増え

後者のような牧場が減り

乳牛の寿命が短くなる。

それぞれの牧場の

飼養形態は・・・

あ・・・また同じ事の繰り返しを

言う事になってしまうようだ。

この話題・・・

そろそろ終わりにしましょうか。



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乳牛の寿命(5)

私が往診をして治療をする酪農家の乳牛たちの、

年齢がだんだん若くなっているのを感じることは最初に述べた。

乳牛たちが若くして病気を患うようになってしまったと言い換えることもできる。

しかし、その内訳を良く見てみると、

若い乳牛達が次から次へと病気になって、ほとんど毎日獣医師が通っている牧場があるかと思えば

獣医師を呼ぶことが少なく、往診に行っても病気の治療はなくほとんど繁殖検診ばかりという牧場もある。

前者の牛群の平均年齢は低い傾向にあり

後者の牛群の平均年齢は高い傾向にある。

すなわち

前者の牧場の乳牛の寿命は短く

後者の牧場の乳牛の寿命は長い。

IMG_4038この四半世紀の間に

私が特に感じるのは

前者のような牧場が増えてきたことである。

その割りに

IMG_2001後者のような牧場はあまり増えてはいないようなので

酪農家全体のトータルとしての

乳牛の寿命が短くなっているように感じるのだ。

私が往診で訪ねたことのある酪農家を

ざっくりと、2種類に分類するとそんな傾向が見られるのである。

搾乳牛の寿命が短い酪農家の牛群は、なかなか頭数が増えて行かないが

搾乳牛の寿命が長い酪農家の牛群は、だんだん頭数が増えてくる。

そして

前者の牧場は牛が思うように増えないので、搾乳牛を購入することが多いが

後者の牧場は牛が順調に増えてゆくので、初妊の牛を販売することが多い。

今、その2種類の酪農家の飼養形態を見てみると

BlogPaint前者は、大規模なフリーストールやフリーバーンで牛が定員をオーバーしている牧場が多く

後者は、家族経営で繋ぎの牛を放牧地等の運動場へ出し入れしている牧場であることが多い。

IMG_2999すなわち

前者の牧場は、牛乳を生産しながら乳牛を消費しているのに対して

後者の牧場は、牛乳を生産しながら乳牛も生産している。

簡単に言えば

前者の牧場は、乳牛の消費者であり

後者の牧場は、乳牛の生産者である。

本州では、家族経営の小規模な酪農家の廃業が多いと聞いている。

乳牛の消費牧場が増え

乳牛の生産牧場が減れば

乳牛は供給不足になり、牛の値段は上がるばかりである。

乳牛の供給不足は、とりもなおさず牛乳の供給不足も招く。

牛も、牛乳も、足りないという。

この現実は

ひところ酪農雑誌などでよく見かけた

「長命連産」などという言葉とは、まったく裏腹の現実だ。

また、5〜6年前まで業界を騒がせていた

「生産調整」とは、いったい何だったのだろう。

乳牛の平均寿命がどんどん短くなっている。

日本の酪農は

このままこんな方向で進んでよいのだろうか・・・?

この四半世紀の間に

私がいろいろな酪農家で仕事をさせてもらって

実に色々なことを感じて来たが

その中でも特に強く感じたことを

素直に記したまでである。

ついでに、もう一言

前者のような牧場は、他所から乳牛を頻繁に買うことで、伝染病などの病原菌が侵入しやすく危険であるが

後者のような牧場は、乳牛をめったに買うことがないので、伝染病が侵入しづらく安全である。

と、言えることも付け加えておきたいと思う。


(この記事、もう少し続く。)



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乳牛の寿命(4)

乳牛を繋ぎの牛舎で10数頭〜数10頭ほど飼い、

1頭ごとのきめ細かな管理をする。

そして、搾乳の時間以外はできるだけ、

放牧地やパドック(運動場)などの空の下に放ち、

乳牛たちの心体をリフレッシュさせる。

私が就職した、今から30年ほど前は、

そのような酪農が定着していたように思う。

いま思うと、その飼養形態は一つの完成度の高い方法であったのかもしれない。

そんな繋ぎ飼い方式が、経営規模拡大の波の中で

だんだんといろいろな変化をして行くようになる。

乳牛の繋ぎ飼い方式の変化の中で

私が最も心配なのは

乳牛を運動場に出し入れする繋ぎ飼い方式から

乳牛を終日繋ぎっぱなしにする方式への変化である。

天気の悪い日や、冬の寒い時期に

乳牛を数日の間牛舎に繋ぎっぱなしにする、というのであれば仕方がないが

そうではなく

もはや、乳牛たちを、天気の良い日であっても、どんなに気持ちの良い日であっても

繋ぎから解放することをせず

ほぼ永久に、繋ぎ牛舎の1頭分のスペースの中に牛を監禁し続けるのである。

飼主には、いろいろな理由があって

この方式へ転換することを決めたのだろう、が

きっと忸怩たる思いがあったに違いない。

そして乳牛たちは

どんな気持ちでこの生活環境の変化を受け入れたか

それを思うと・・・。

IMG_2660 (1)繋ぎっぱなしにすると

牛を出し入れする労力が省略できるばかりではなく

牛群全体の乳量が増えるそうである。

乳牛が運動しなくなった分のエネルギーが

乳量となって出てくるのだという。

IMG_2550しかし

牛が運動しなくなったことによるそれ以外の影響は

目には見えづらいが、計り知れないものがある。

乳牛が外で運動しなくなれば

IMG_0830足腰の筋肉は弱り

血液循環が悪くなれば

内臓機能も弱まる。

四肢は歩くことにはもはや使われず

狭いスペースで寝るか起きるかにだけ四肢を使う。

同じ姿勢ばかり取らされるので

関節や蹄の異常が多くなる。

終日繋がれたままになっているので

行動は極端に制限されて

発情がわかりづらい。

この10年ほどで

そんな、繋ぎっぱなしにされた牛たちを

治療する事が、なんと多くなったことか・・・!

彼らの足腰や内臓の弱さ

そして精神的なストレスは

計り知れない。

その、結果として

当然のように

乳牛の寿命は、短くなる。


(この記事、もう少し続く)



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乳牛の寿命(3)

酪農の経営規模拡大の波に乗って、

繋ぎの古い牛舎からフリーストール牛舎へと、

一大転換をした酪農家がいる一方で、

繋ぎ方式のまま、酪農を続けて、

現在に経っている牧場ももちろん多くある。

IMG_4266繋ぎ牛舎は、フリーストールよりも

乳牛の自由意思は制限されるものの

強い個体を制御し、弱い個体の面倒を見るのには適していて

それぞれ個体の能力に合わせた、きめ細かな管理をすることが出来る。

繋ぎ牛舎の牧場では、朝と夕の2回の搾乳時までの間は

IMG_4267乳牛たちを、牛舎の外の放牧地やパドックに出して

空の下の、広い空間に開放することにより

乳牛たちに適度な運動をさせて

ストレスを発散させることができる。

そして、飼い主はその時の行動を日々観察することによって

発情や体調の変化をいち早く察知することができる。

そんな理由で、繋ぎ飼い方式のにこだわっている酪農家は多い。

しかし、そんな酪農家にも、経営規模拡大の波は

否応なしに打ち寄せてくる。

牛の個体管理を、繋ぎ方式で維持しつつ

繋ぎ牛舎の牛床を増やし、牛舎を伸ばすように増築する酪農家が

ひところ大変多かった。

IMG_1916そうやって、繋ぎ牛舎のままで

搾乳牛の頭数を増やしてきた酪農家たちが

そろって突き当たる問題があった。

搾乳牛を増やすということは

それに授精をした妊娠牛を増やすということであり

搾乳を終えて分娩を控えた乾乳牛が増えることになる。

乾乳牛が増えれば、乾乳牛の居場所も増やさねばならない。

IMG_0623その乾乳牛が皆、分娩をするから

分娩をする場所も増やさねばならない。

分娩する牛が増えれば、仔牛が増える。

仔牛が増えたら、哺乳施設を増やさなければならない。

哺乳が終わった仔牛たちは、育成牛となる。

IMG_3852育成牛の施設も増設しなければならない。

そしてそれぞれのステージの牛に対して

世話をする働き手、すなわち人員が必要になる。

牧場の働き手を、もっと増やさなければならない。

さらに、理想を言えば

牛たちが運動できる広い敷地も

その頭数が増えた分だけ増やさなければならない。

搾乳牛を増やすということは

牧場の全ての施設、全ての人員、全ての敷地面積

を増やさなければ、本当の経営規模拡大ではない。

繋ぎ牛舎の搾乳牛を増やすとは、そういうことであり

当然予測できることではあるが

繋ぎ牛舎を増設しはじめた時に

直ちに、その他の施設や人員や運動場までも増やす準備をするような

そんな用意周到な酪農家は、ほとんどいなかったのが実感である。

多くの酪農家は、まず搾乳牛を増やし

搾乳施設以外の施設や人員は増やさぬままに

だんだんと、色々なステージの牛たちが

それぞれの施設で満員の定員オーバーになって

それぞれのステージの牛が全て満杯で窮屈になり

いよいよどうにもならなくなって

そこで働く人たちの疲労も極限になり

そんな状態になって、ようやく

周囲の施設や人員や運動場をやむなく増やして対応してきた。

さらに牧場の敷地面積までも増頭数に合わせて広げるような牧場は、ほとんどなかった。

牧場で働く適正な人員の確保も

家族だけで頑張るか、従業員を雇うか、で悩むことになる。

今まで頑張ってきた祖父母は老い

自分も妻も老い始め

子供達は後を継ぎそうもない。

そんな状況の中で

これ以上の牛の増頭、増築、増員、は

経済的、肉体的にもう限界。

しかし、ただちに廃業を考える気も起こらない。

今までの繋ぎ牛舎のままで

従業員は雇わず、家族経営のままで

自分のこだわってきた酪農をやれるところまで

続けてゆくためには、どうするか。

これからは、自分たちの体は老いるばかり。

かつてのようなバリバリの体力はもうなく

日々老いてゆく。

そんなことを

ついに悟った酪農家が

繋ぎ牛舎の酪農で、苦渋の選択する

切り札的な、画期的な飼養管理方法が

ここに、ついに出現することになる。

経営規模拡大の波にのまれて、大変な思いをしつつ

しかも、後継者はいない、先行きは見えない

そんな、施設不足、人員不足の

繋ぎ牛舎の酪農家が、苦渋の選択をする

切り札的な、画期的な飼養管理方法が

そこに、ついに出現することになる。

それは、しかし

じつは・・・

乳牛たちにとっては

悪夢のような

天国から地獄へ変わってしまうような

辛く悲しい飼養管理方法でもある。

酪農関係者の皆さんならば

もうお分かりでしょう・・・

(この記事続く)


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