北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

学者と臨床家

「牛の乳房炎」のガイドブック

北海道はすっかり秋らしい気候になって来た。

普段なら、

秋の爽やかな空の下で、

夏バテ気味の牛たちの健康は回復し、

日々の往診件数は少なくなり、

獣医師の仕事は時間的に余裕が出来る。

出来た余裕で、

秋の学会シーズンを迎え

新しい勉強に励んだり(学問・読書の秋)

色々なイベントに参加して

自分の趣味に打ち込んだり(芸術・スポーツの秋)

する季節である。

しかし

今年はちよっと勝手が違う。

先日の大地震と

それに伴う大停電によって

牛たちの、特に乳牛たちの健康が

いつものように回復していない。

我が診療地区の乳牛たちは

JA(農協)や出荷先(よつ葉乳業)の

停電に対する防災意識が比較的高かったおかげで

大事に至る事は無かった。

しかし、乳牛の職業病である

乳房炎はなかなか減ってくれない。

そのような中で

麻布大学のK合先生をはじめ

私の身近に居る

乳房炎に詳しい獣医師の方々から

IMG_4263「乳房炎抗菌剤治療ガイドブック」 

という冊子が

紹介されたので

ここに貼り付けることにした。

酪農関係者の方々に目を通していただき

活用して頂いて

乳牛の健康を少しでも取り戻す為に

役立てて欲しいと思う。 


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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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難産胎児の誤嚥性肺炎

「和牛の難産で側頭位、昼から帝王切開。」

昨夜の当直だったK獣医師から、

そんな連絡を受けていた。

IMG_3965午後から手術室で待機していると、

△さんの牛が運ばれて来た。

「ちょっと手を入れてみるかい?」

「はい。」

胎児を探ってみると

側頭位だったという胎児の頭部の

眼窩と鼻梁を簡単に触れることができ

それを掴んで

押し引きしていると

胎児の頭部がこちら向きに変わり

失位を整復することができた。

「直りましたよ。」

「そうかい!、じゃあそのまま牽引しよう。」

二人の獣医師と△さんの3人で

胎児を経膣で

簡単に引き出すことができた。

「お、まだ生きてるよ。」

「心臓は動いてますね。」

「でも、呼吸がない・・・」

私とK獣医師は

直ちに子牛の蘇生に取り掛かった。

K獣医師が人工呼吸をしている間に

私はジモルホラミン(呼吸刺激剤)を投与。

さらに人工呼吸を繰り返し

子牛はようやく自発呼吸を始めた。

IMG_3963「なんとか助かった!」

親牛を手術室へ運ぶと決めた時点から

約6時間が経過していた。 

側頭位ということで

胎児は死亡している可能性が高かったが

この胎児の場合は

生きていたので

自発的に首を動かし

手術室に連れてこられる間に

胎位が直ったのだと思われた。

IMG_3964「生きててよかったですね。」

飼主の△さんも

喜んで親子を荷台に運び入れ

めでたく帰路に着いた。

ところが

それから3日後

「子牛の様子がおかしくなった・・・」

という連絡が入り

この子牛が

誤嚥性肺炎を引き起こしていることが判明。

高熱と呼吸の速迫が続いた。

それから毎日

点滴と抗生物質の投与を繰り返し

懸命な看病を続けた。

しかし

この子牛は

とうとう

生後9日目に

死亡してしまった。

残念な症例になってしまった。


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乳牛の過敏(アレルギー)症

「牛の顔が腫れて来た・・・」

そんな往診依頼の電話が来た。

酪農家の♭さんの、

その牛の顔を見ると、

両目が開けられないほどに、

IMG_3831眼瞼が腫れていた。

良く見ると、

眼瞼ばかりではなく、

鼻腔や外陰部などにも、

充血と熱性の浮腫があった。

外傷は全く見当たらない。

これは何かの過敏(アレルギー)反応の結果であることは間違いなかった。

IMG_3827頻度はあまり高くはないが

牛ではたまに

過敏反応による体表の軟部組織の

充血と浮腫が起こり

それが顔に出て

治療を依頼されることがある。

IMG_3828「何か変なものを食ったんでしょうかね・・・」

「・・・かもしれないねー」

「カビてるサイレージかな・・・」

「・・・それならまず下痢するかなー」

「何か虫にでも刺されたんでしょうかね・・・」

「・・・どうなんだろうねー」

IMG_3832「ハチとかアブとかかな・・・」

「・・・まぁこういうのは夏に多い気もするけどねー」

「あまりヤバそうな虫は飛んでないですけどね・・・」

「・・・山の中でもないしねー」

「やっぱり何か変なもの食ったんですかね・・・」

「・・・うーん、でも何でこの牛だけこうなるのかなー」

「こいつだけ過敏なんですかね・・・」

「・・・まぁ、そういうことになるのかなー」

飼主さんとの話は

だいたい何時も

堂々巡りになり

ちやんとした診断や

原因の究明は

できぬままになる。

一体、何がどのように

牛の体を刺激して

それがどのような仕組みで

このような過敏反応を起こすのだろう?

いつもよく解らぬままである。

しかし

治療法はといえば

単純明快で

抗ヒスタミン剤の投与

それだけでよかった。

翌日には

顔の腫れもすっかり引いて

食欲もめでたく回復し

元の牛になったという連絡をもらった。

こういう往診は

いつもこのような流れで

大事に至らず終わるので

記憶にも記録にも

とどまりづらい。

せめて

出た症状の写真を撮り

この場にUPしておくことにした。


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遠藤誠一のこと

「安田さん。ボクは、ノーベル賞を取りますよ!」

コンパの席で隣に座った遠藤が、

IMG_3841真面目な顔をして、

私にそう言った。

その言葉は

今でも忘れられない。

オウム真理教幹部の、

先日死刑になった遠藤誠一は、

帯広畜産大学の獣医学科で、

IMG_3840私の1年後輩だった。

私は微生物学研究室に所属し

遠藤は公衆衛生学研究室に所属していた。

両研究室は、隣同士で仲が良く

忘年会やコンパを合同ですることが多かったので

私は遠藤とは何度か一緒に酒を飲んだことがあった。

彼は体がとても華奢で小さく 

ちょっと見は、まるで小学6年生のような雰囲気があった。

コンパが終わって、数人で

大学キャンパスの隣にある遠藤の住んでいる下宿屋に流れ

そこでまた遠藤も交えて二次会をしたことがあった。 

酒があまり飲めない遠藤は

終始目立つこともなくその場にいた。

遠藤と交わした会話はほとんど憶えていないが

その日、私は酔っ払って

その下宿屋の遠藤の部屋まで行ったのを憶えている。

遠藤誠一の部屋の中はとてもシンプルで

勉強机と備え付けのタンスと本棚があるばかりの

非常にあっさりとした印象の部屋だった。

趣味やポスターなどで壁を飾ることもなく

ちよっとシンプルすぎるほど普通の勉強部屋だった。 

ただ一つだけ印象に残っているのは

本棚にある雑誌だった。

遠藤の本棚には

「Big Tommorow (ビッグ・トゥモロー)」 という雑誌が

創刊号からズラーっと並んでいた。

1つの本棚に

この雑誌だけが

几帳面に並んでいたのを

私はよく憶えている。

私の記憶の中の遠藤誠一は

とても純粋で、幼い

青年というよりは

少年、だった。

その後彼は

帯広畜大の大学院から

京都大のウイルス研究所へ出向き

そこへ通っている間に

オウム真理教にスカウトされたのは

マスコミの報じている通りである。 

その後、数年経って

私は遠藤誠一という名前を

オウム真理党の党員として

衆議院議員選挙の千葉3区の

立候補者名簿の中に見つけた。

そして、その数年後に

地下鉄サリン事件が起こった。 

IMG_3842




この北海道新聞の

コラムにある通り 

オウム真理教によって引き起こされた

この事件を

風化させてはならない。


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研修医制度

先日、

帯広畜産大学の、

研修医の先生たちと一緒に、

IMG_3845往診に回る機会があった。

大学を卒業して、

その後数年、

色々なところで働いていた獣医師の中で、

再び学問の道をメインに、

IMG_3847進もうとされている、

若き精鋭である。

大学病院における二次診療ばかりではなく

我々のような現場の末端の獣医師の

一次診療の経験を

IMG_3849少しでも積み上げたいという事のようだ。

今回は特に

産業動物の獣医療の中でも

今やなかなか経験することの少なくなった

重種馬の診療を

IMG_3850一緒に経験したいという事だった。

この日はたまたま

午前中に1件(蹄葉炎)

午後から2件(発情鑑定と蹄病)

重種馬の診療が有ったので

IMG_3853研修医の先生たちは

私の診療車の後に付いて回ることになった。

研修医の先生たちは

さすがに社会人の経験もある方ばかりなので

IMG_3854往診もスムーズだった。

右も左もわからない大学生の実習生を

手取り足取りしながら連れて歩くのも

それなりに面白いけれども

現場の事情をある程度わかっている

IMG_3856研修医の若い先生たちとの仕事は

受ける質問の内容なども鋭くて

とても充実した中身の濃い

仕事ができたように思う。

私としては

IMG_3857特別な事は何もするわけもなく

ただ普段どおりの事をしただけなのだが

それが

研修医の先生たちには

初めてのことが多かった。

IMG_3860これはつまり

いかに重種馬の診療の機会が減ってしまったのか

ということであり

ちょっと寂しい思いもしたが

それはまた有意義な機会を提供できた

IMG_3862という事でもあり

私は複雑な思いだった。

この日の最後の往診先に

たまたまタイミングよく

重種馬の削蹄師のN坂さんがいた。

IMG_3863一連の写真は

全道を股にかけて

重種馬の削蹄している

N坂削蹄師の

削蹄と蹄病治療の技である。

IMG_3866これを

研修医の先生たちに

体験してもらったのは

この日の

予定外の

収穫だったと思う。



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ボロボロな牛たちの涙

牛が涙もろい動物であることは、

あまり知られていない。 

IMG_3766小中学校の授業でも、

大学の講義でも、

そんなことは教えない。

だが

牛が涙を流しているところを

写真に収めようと思えば

いくらでも集めることができる。

IMG_3761牛が涙を流すのは

不本意なことをされた時のようである。

不本意なことをされて

不愉快になったり

恐怖心が湧いたりした時に

涙を流すようである。

牛の涙の写真を撮るためには

頭をロープで縛らないと

動かれてしまってうまく撮れない。

写真に撮る時は

頭をロープで縛らざるを得ない。

IMG_3762牛の涙は

頭をロープで縛ることによって

涙が涙管を逆流して

物理的に涙が溢れ出るだけだ

という説もあるが

鼻先を目より低く縛った時にも

牛は涙を流すので

その説明には無理があると思われる。

IMG_3844先日は

起立不能で

ボロボロになっている牛が

滂沱の涙を流していた。

この牛は

頭をロープで縛っていないが

弱って大人しく

写真のような

滂沱の涙を流していた。



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ボロボロな乳牛たち

チーズやバターやヨーグルトなどに、

IMG_3649加工しない「牛乳」、

すなわち「生乳(せいにゅう)」の需要が、

本州では、

年を追うごとに、

高まっているという。

IMG_3826それを受けて、

北海道内の酪農は、

減産から増産へと、

大きく転換している。

IMG_3826道内から道外への

生乳の移出の量は 

平成15年を境に

グンと上昇し始めた。

本州の酪農家と

北海道の酪農家は

かつては生乳生産で対抗し

南北戦争

などと言われたものだが

それが平成15年に決着がつき

北海道の酪農の勝利に終わった

と言うこともできる。

勝利に歓喜しているわけではないが

北海道の酪農家は今

生乳の買い取り価格の上昇

子牛の価格の上昇

などで景気が良い。

搾乳すればするだけ収入が増え

そのためにお産させた乳牛は

IMG_3050せっせと乳を搾られる。

生まれた方の子牛も

将来の乳牛候補として

飛ぶように売れてゆく。

北海道の酪農家にとって

IMG_3049これは良いことなのだろう。

しかし

それぞれの酪農家を

一軒一軒よく見てみると

IMG_3048一概に良いとは言えない部分がある。

特に

牛の健康管理

という面から眺めてみると

IMG_1909それは顕著である。

搾乳した生乳を

どの酪農家も同じように販売していて

出荷乳量だけを見れば

IMG_1020どの酪農家も同じように見える。

ところが

搾乳する乳牛の

健康状態には

IMG_0940それぞれの酪農家によって

雲泥の差がある。

私は、最近

よく思うことがある。

IMG_0358「ボロボロの牛が増えたなぁ・・・」

北海道の牛たちは

以前よりも

ボロボロになってきているのではなかろうか。

IMG_0357それは

生乳の需要の増加に伴う

増産体制と

密接に関係しているように思われる。



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新しいタイプの往診依頼

「食欲不振の牛が4頭いるんですけど、診てもらえますか・・・」

∀牧場の息子さんから、そんな往診依頼が来た。

∀牧場は牛の総数が50頭程度の育成牧場である。 

そんなところの牛が4頭も、

食欲不振になったというのは尋常ではない。

私はとっさに伝染病や食中毒などの、

集団的な病態を思い浮かべた。

∀牧場に着くと

息子さんがやって来た。

「4頭も食欲がないって・・・どうしたの?」

「$さんの預かりの牛なんですけど・・・ファームノートの反芻量が落ちてるんで・・・」 

「ファームノート?」 

「はい・・」 

ファームノートというのは

帯広市に本社のあるIT企業が売り出している牛群管理システムである。

農場の牛の1頭1頭の首にセンサー(首輪型ウェアラブルデバイス、という)を取り付けて 

IMG_3792そのセンサーが感知する情報(歩行数、休息時間、反芻量、など)を

本社にある人工知能へ発信してそこで集約し

契約者のスマートフォンへそのデーターを還元するシステムである。

飼主はその牛群のリアルタイムのデーターを24時間活用することができる。

「ファームノート、か・・・」

私は、これは新しいタイプの稟告だ、と思った。
IMG_3794
「ここ数日、反芻量が落ちている牛がいるんで、ちょっと気になって・・・」

「ファームノートの反芻量・・・ってどうゆう数字なの?」

 「単位はわからないんですけど、正常な時は「6」で、それより下がると落ちているらしいです・・・」

「で、今回の4頭はどれくらいの数値なの?」

IMG_3791「上がったり下がったりするんですけど、「1.7」とか「4.3」とか・・・」

ファームノートが発信する反芻量は

グラフ化されて飼主のスマートフォンに届くようになっている。

私は、その端末の画面を見せてもらった。

「なるほど、これがそのグラフなのね。」

IMG_3793「はい、そうです・・・この緑の棒グラフが反芻量です・・・」

「反芻量が落ちてる4頭、診せてもらおうか。」

「はい。」

私は、連動スタンチョンに入っている牛たちの中から

反芻量の落ちているという4頭を

順次、診察していった。

1頭目は、体温38.7、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。

2頭目は、体温38.8、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。

3頭目は、体温38.7、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。 

4頭目は、体温39.2、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。

であった。

4頭すべて妊娠牛だった。

私はこれらの牛たちが

伝染病や食中毒ではないことを確認した。

「反芻量が落ちてるっていうのは、暑さなのか・・・理由はよくわからないな。」 

「そうですか、$さんから獣医に診てもらってくれって言われたもんですから・・・」

「とりあえず、健胃剤出しておくから、それを飲まして様子見てね。」

「わかりました・・・」 

かくして私は

ファームノートのデーター上で変化の見られた牛の治療(?)を終えた。

治療・・・といってもこれは従来の治療ではなく

予防的な診療行為になるだろう。

考えて見ると

こういう仕事は

私のようなNOSAI診療所の治療型(火消し)獣医師のする仕事ではなく 

牧場専属のコンサルタントの予防型(火の用心)獣医師のする仕事であろう

と、思った。

ちなみに

診察した4頭の中で

2番目に診た牛は非常に気性が荒く 

体温計を肛門に入れようとする時大暴れして

後脚を何度も蹴り上げる牛だったので

私は危うく

1発蹴りを喰らうところだった。 

フアームノートの首輪のセンサーは

牛の気性の荒さは

感知してくれないようだ・・・


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足元清浄装置

¢さん宅の子牛の治療を終えて、

いつものように、

足を洗おうと牛舎の入り口付近に戻り、

水道の蛇口を探していると、

IMG_3779なにやら見慣れぬ物を発見。

それは、

排水溝の上に置かれ、

四角い縦長の二枚組の箱状物で、

内側の左右と底に白いブラシが出ており、

IMG_3782水道からのホースが付いていて、

ブラシの部分に水が噴出するようになっていた。

「これ、足を洗う装置?」

「そう。」 

「へー、すごいなー。」 

「いいでしょ。」

「初めて見たなー。」 

「このあいだ市場に行ったときあって、いいなと思ってね。」

IMG_3780「こうやって足を入れるのね。」

「そう。」 

「あ、キレイになる。」 

「なるでしょ(笑)」 

「これはいい。」 

パイプの手摺りがついているので

それを掴んでいると

足を動かしても体が楽である。

良い装置があるものだと感心して

私は左右の足を洗った。

IMG_3781「でも値段が(笑)」

「いくら?」 

「5万くらい。」 

「やっぱり結構するねー」

「うん。」 

「でもそれだけの値はあるかなー。」 

我々のように

毎日牧場を訪問する獣医師にとって 

どの家にもこのような装置があったら

どんなにか衛生的で

かつ仕事が楽になるか 

そう考えると

各JAさんには

補助を出すなどして

足元清浄装置の

設置を推進してほしいものだ

と思った。 

ただ

ひとつ気になるのは

厳冬期に

凍結しないかどうか

である。


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病気の総合デパート

「お産なんですが、子宮捻転みたいなので、来て欲しい・・・」

そんな電話が診療所にかかって来たのは、

午後3時を過ぎた頃だった。

「・・・わかりました、すぐ行きます。」

電話の主の♭牧場の分娩用の古い牛舎で、

牛は産気づいて少し苦しんでいるようだった。

手を入れると、

産道が普通に捻れていた。

用手法でしばらく

子宮を押していると

何度かの陣痛のうちに

胎児の頭が産道に乗って来たので

子宮捻転は整復され

普通のお産となった。

産道は狭かったが

滑車を使って

F1の♀の胎児を

無事に出産させることができた。

「有難うございます、よかったです!」 

臨床獣医師は

難産介助が成功した後

飼主さんからこう言われるのが1番嬉しい。

「よかったー!」

という

飼主さんの

この一言を聞くと

我々臨床獣医師は生き甲斐を感じる。

この一言を聞くために

我々は仕事をしていると言ってもいいだろう。

満たされた気分で帰路につき

診療所でカルテを書き

夜間当番の時間帯に

入ろうという矢先に

電話がかかって来た。

「さっき子宮捻転で診てもらった牛なんですけど・・・」

♭牧場からだった。

「・・・どうしました?」

「子宮脱になっちゃったんですけど・・・」

「・・・えええーっ!、わかりました、すぐ行きます。」

 ♭牧場に着くと

さっきの牛の産道から

子宮が間違いなく脱出していた。

「・・・立てないですか?」 

「産んでからは立っていないです・・・」

「・・・ハンガーで吊りましょう。」

♭さんが牛を吊る準備をしている間に

私はこの牛に注射するための

カルシウム剤を車から取って来た。

子宮脱の牛は低カルシウム血症になっていることが多いので

いつものように

牛の頸静脈に針を刺すために

頭部を保定しようとした

その瞬間 

牛は大きく頭を振り上げ

私と反対側の床に

バッタリとその頭を打ち付けて

深い息を吐いて 

視線が中空を泳ぎはじめた。

IMG_3685「・・・あっ・・・これは・・・」 

「なんか変ですね・・・」 

「・・・これは、まずいな・・・死んじゃうな・・・」 

「え、マジですか・・・」

「・・・あ・・・だめだ・・・」 

「・・・」 

牛は最後の大きな息を吐いて

あれよという間に死んでしまった。

子宮脱を整復している途中や

子宮脱を整復した直後に 

その牛が死んでしまうことは

私は何度も経験しているが

今回はまだ整復にとりかかる前に

死んでしまうという

あっという間の出来事だった。

IMG_3687「・・・マイッタな、これは。」

「・・・」

「・・・指示書を書きますね。」

「・・・」

私は数時間前の満たされた気分とは真逆の

飼主さんの沈黙「・・・」という

最悪の雰囲気の中で

死亡畜処理の指示書を書いて

♭さんに渡し

解剖の依頼をすることにして

帰路に着いた。

後日

処理場の獣医師から剖検の書見が送られて来た。

BlogPaintそれによると

私が最も疑った腹腔内の出血はなく

うっ血型の心筋症

という所見が記されていた。

この牛はどうやら心臓も相当弱っていたらしい。

それにしても

1頭の牛が1回のお産で

子宮捻転と子宮脱が立て続けに起こったのを

診療した経験は

私には

過去を振り返っても

なかったように思う。

そしてさらに剖検によって

うっ血型心筋症が顕著だったとは

過去の記憶を辿っても

あまりなかったように思う。

この牛は

疲れ切ってボロボロになってしまっていたようで

まさに

病気の総合デパートのような症例だった。



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重種馬の下顎骨切歯部の骨折(2)

「今日治療している時に写真を撮ればよかったです、あれほど酷かったとは思えないくらい落ち着いています。」

さらに、

「草はがっつり詰まっていましたが・・・。感染や過形成に注意します。」

この馬が帰って行った数日後、

競馬場のF獣医師からそんな連絡が入った。

さらに数日後、

「調子よく食べているようです。」

再びF獣医師から連絡が入り、

32243674_1973453589635316_540315991167467520_n撮った写真を送ってくれた。

左の写真がそれで

詰まった食べ物を洗い流した後の

傷口がまだ生々しい。

「こんなことがあっても懲りずに鎖を噛んでいる、と厩務員氏がぼやいていました。」

ということだった。

それからさらに

1週間後

「ここ1週間来院していないので、経過を見せに近々来てもらうようにお願いしてみます。」

という連絡が入り

それから、しばらくは

音沙汰がなかった。

便りのないのは良い便り・・・

と思って

約1ヶ月経過した頃

F獣医師から久々に連絡が来た。

「臭いもなく、過形成もなく順調です。レースにも勝ってます。相変わらず綱を噛む癖はあり、懲りてませんが(笑)、厩務員氏はよろこんでます。ありがとうございました。」

というメッセージとともに

IMG_3680数枚の写真が送られて来た。

経過はとても順調のようだ。

今回私は

たまたま初診を担当したが

IMG_3682創部の摘出以外は特に何もしていない。

それよりも

怪我の後の

F獣医師の続けた丁寧な治療によって

IMG_3683順調に回復することができたと思われる。

したがって

お礼を言いたいのは

こちらの方である。

どうもありがとうございました!


(この記事おわり)



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重種馬の下顎骨切歯部の骨折(1)

「下顎の歯が折れて、骨も折れたみたい・・・」

という稟告の、▽さんの若馬。

競馬場から下げてきたという現役競走馬だった。

枠馬に入れて、

鎮静剤を打って、

IMG_3526下唇をめくってみると、

下顎の右側の3本の切歯が、

根こそぎ外側へ変位していた。

「・・・これは、どうして」

「頭絡を左右の鎖で繋いでたら、その鎖を口でイジっていて・・・」

「・・・鎖ですか」

「何かに驚いて暴れた時に、鎖が口に引っかかったみたいで・・・」

IMG_3529「・・・歯が根こそぎエグれてますね」

「もうビックリしちゃって・・・」

「・・・グラグラしてますね」

「直らないですか・・・」

「・・・顎は動かすところだから、取ってしまうしかないでしょう」

「大丈夫ですか・・・」

「・・・鎮静剤が効いているうちに取っちゃいましょう」

「そうですか・・・」

IMG_3530私は

有り合わせの道具で

グラついている3本の切歯の根元を削ぎ落とし

最後はメスを使って結合組織を切断し

変位している部分を摘出した。

「あ、取れた・・・」

「・・・大きな骨には異常がないから、噛めるでしょう?」

「それは大丈夫みたいです・・・」

「・・・歯が抜けた穴からばい菌が入るから、抗生物質を続けてください」

IMG_3533「わかりました・・・」

「・・・抜歯したようなもんですから、大丈夫ですよ」

「そうですか・・・」

「・・・あとは競馬場の先生にお任せしましょう」

抗生物質の注射をして

競馬場へ戻して

今後はそこの診療所の先生に

経過を診てもらうようにした。

治療を終えて

事務所に戻った。

IMG_3536事務所には馬の下顎の骨格標本があったので

摘出した部分の切歯部をよく洗い

それを並べて置いて

標本と比べてみた。

切歯3本ばかりではなく

下顎骨の先端もかなり削げ落ちていた。

IMG_3537「抜歯したようなもんですよ・・・」

などと軽く言ってしまったが

こうやって見ると

摘出した部分は意外に大きくて深く

今後のことが

ちよっと心配になってきた・・・


(この記事続く)



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ついでの難産

この日の午前中の最後の往診は、

和牛繁殖農家の〓さんの、

妊娠鑑定だった。

やっている最中に、

「1頭お産前の牛がいるんだけど・・・ちょっと診てくれます?」 

ついでの仕事を頼まれた。

よくあることである。

妊娠鑑定を全て終え、

その牛に手を入れてみると、

胎児の足がすでに産道に来ていた。

しかし

「中で死んでるみたいで・・・」 

〓さんの話では

ここ数日忙しくて

分娩の監視が疎かになっていて

今朝気づいたらこんな状態だったという。

胎児の足はやや膨れた感じで

手を奥に入れると

死んで膨れ気味の頭部に触れた。

気腫胎のようだった。

「・・・このまま引っ張ってもきっと無理だから、粘滑剤を入れますね。」 

私はバケツ1杯の粘滑剤を作って

それをカテーテルで胎児と子宮の隙間に注入。

胎児と子宮の間に粘滑剤が 行きわたるように手を添えながら 

粘滑剤が溢れてくるまで注入。

「・・・これで引っ張ってみましょう。」

胎児の足に産科ロープを付けて

その先に牽引の滑車をつけて

胎児を牽引する

が、胎児はほとんど動かなかった。

牽引の力に耐えられず

親牛が寝てしまった。

「・・・これは引っ張っても無理だから、帝王切開しましょう。」

 「はい、お願いします・・・」

「・・・胎児はもうダメだけど、親をなんとか助けるということで。」 

「わかりました・・・」 

親牛はその後

なんとか立つことができたので

〓さんの家畜車に乗って

この牛は、診療所の手術室に運ばれて来た。

私は大急ぎで昼飯の弁当を食べて

IMG_3559帝王切開に取り掛かった。

同僚のK獣医師とT獣医師が助手に入ってくれた。

重たくパンパンに張っている子宮から

大きな死亡している気腫胎児を摘出し

子宮と腹膜と筋層と皮膚を縫い上げ

IMG_3560牛が乗った手術台を下ろし

寝ている牛に

起立を促した。

しかし

牛は立つことができなかった。

IMG_3561「・・・ハンガーをつけて吊り上げましょう。」

牛の腰角にハンガーを取り付けて

チェーンブロックで吊り上げた。

しかし

牛は前足を踏ん張ることができず

IMG_3562立つことができなかった。

「・・・ちょっと休ませて、補液治療ましょう。」

リンゲル、ブドウ糖、を投与し

30分程経った頃

再び起立を促した。

しかし

牛は立つことができなかった。

「・・・このままここに置いておきましょう、私は今日当直なんでずっと居ますから。」

〓さんには自宅に帰ってもらうことにして

今日はこの牛が立てるまで

このまま手術室に置いておくことにした。

「・・・牛が立ったら、連絡しますから取りに来てくださいね。」

「わかりました・・・」

私達は牛が寝ているままの手術室を片付け

勤務を終えた。

夜になり

私は手術室に居る牛と

同じ診療所の中で夜を明かすことにした。

午後8時頃、水を与え、補液治療をした時は

IMG_3563牛はまだ立てなかった。

午後11時頃、水を与え、治療をした時は

牛はまだ立てなかったが

牛の頭の向きが変わって居た。

立とうとする意思はあるようだった。

午前1時頃、様子を見に行ったとき

牛の呼吸が少し荒くなって居た。

しばらく観察していたが

牛はやはり立つことができなかった。

午前4時頃、様子を見にゆくと

牛は頭を横に倒し

動いていなかった。

死んでしまった。

私は直ぐ、〓さんに電話を入れた。

「・・・牛、死んでしまいました。」

「そうですか、じゃあ取りにゆきます・・・」

「・・・いや、取りに来なくてもここから処理場へ持ってゆけますから。」

「そうですか・・・」

「・・・指示書のコピーを後で届けます。」

「安田さん、やっぱり取りにゆきますよ・・・」

「・・・ここからそのまま処理場へ持ってゆけますけど。」

「うん、そうだけど、やっぱり取りにゆきます・・・」

私は、それを断る理由はなかったので

〓さんの言うことに従った。

「・・・そうですか、じゃあ指示書を書いて待ってますね。」

30分ほどたち

〓さんは自らこの死亡した牛を取りにやって来た。

そして黙々と

牛の足にワイヤを取り付けて

牽引滑車で牛を荷台に乗せて

死亡した牛とともに

自宅へ帰って行った。

手術室で死亡した牛は

ここから直接

処理場へ運ぶこともできるので

こんな手間をかけることは

無駄な作業と言えるのだが

〓さんは

この牛を

どうしても、もう1度

自宅に連れて帰りたかったのだろう。


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「牛に感謝」(6)

牛の死体が毎月何頭も出て、

それに慣れてしまう、

大規模酪農場。

IMG_3577そこで働く人の

「牛に感謝」

をする気持ちは乏しくなってしまう。

そんな大規模な酪農を、

世界にさきがけて始めたのは、

欧米諸国、

特にアメリカの酪農である。

結論を先に言おう

アメリカ人は

「牛に感謝」

をしない人たちなのだ。

何千頭規模の巨大な酪農場では

おそらく

牛の死体が毎週運び出されては

処理されているはずである。

そこで働く人たちの

心は痛まないのだろうか。

「牛に感謝」

の気持ちがある人であれば

心が痛むはずである。

しかし

彼らの心は痛んではいないように見える。

だからこそ

巨大な規模の酪農を考案し

牛の死体がたくさん運び出されるような

大規模酪農を平然と実践している。

そこで働く従業員もさることながら

そのような大規模な酪農場の

責任者(経営主)には少なくとも

「牛に感謝」

をしない人であろう。

「牛に感謝」をしていないので

牛に申し訳ないことをしている

とは思っていないのであろう。

欧米諸国の人たちは

「牛」に申し訳ない

とは思わず

「神」に申し訳ない

と思っているのである。

日頃から

「牛に感謝」をするのではなく

「神に感謝」をしている人たちである。

欧米の自然観の根底にあるキリスト教では

人間以外の動植物には

魂(霊)が存在しない。

魂(霊)が存在しない「牛」という動物に向かって

申し訳ないと謝罪する意味がないのである。

「牛」という魂のない動物を創って

人間の日々の食糧として提供してくれる

「神」に対して感謝するのが

欧米人の考え方である。

欧米諸国で行われる謝肉祭は

「神に感謝」する儀式であり

「牛に感謝」する儀式ではない。

全ての心の痛みは

神の前で懺悔することによってのみ解消される。

牛の前で懺悔をすることはない。

したがって

牛の魂(霊)を慰める牛魂の碑などは

欧米には存在しない。

すべては

神の前で懺悔するだけでよい。

実に合理的な考え方だ。

そしてそれは

実に都合の良い考え方だ。

人が牛を殺してしまう罪は

目の前の牛には謝罪せず

教会の神の前で懺悔をすれば

それで許されるのである。

そんな都合の良い考え方がまかり通るほど

この世は甘くない

と、「牛」そのものに感謝をしている私は思う。

欧米人の心は

特にアメリカの大規模酪農家の心は

牛が死んで死体が運ばれてゆくとき

きっと

「オー・マイ・カウ(牛)!」

ではなく

「オー・マイ・ガー(神)!」

と叫んでいるのだろう

・・・

IMG_3578牛たちが本当にかわいそうで

牛たちに気の毒な

まことにゆゆしい

酪農の大規模化である。

・・・

我が国で

酪農の大規模化を推進する方々に

このシリーズ記事を捧げたいと思う。


(この記事おわり)



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「牛に感謝」(5)

「牛に感謝」をする気持ちが、

だんだん乏しくなってゆく、

「ゆゆしい」事態の、

日本の酪農業界の現実を、

説明してきた。

その「ゆゆしい」事態

を招いている原因が、

酪農の大規模化であることを、

説明してきた。

では

そもそも

酪農の大規模化というのは

detail_farming_draw03いったい誰が

やり始めたのだろうか?

乳牛を飼い

その乳を搾ってそれを売るという酪農家の

人口が減ってゆく中で

出荷乳量を維持するためには

1戸あたりの搾乳頭数が増えるのは当然だが

それを「ゆゆしい」ものとは認識せず

むしろ

その大規模化に拍車をかけているのは

大規模化を良しとする考え方である。

酪農の大規模化を良い事と考え

それを我が国の酪農に導入し

推し進めてきた人たちの

模範(モデル)になった酪農は

欧米の酪農

それも特に

アメリカの酪農である。

USFOOD020_435j我が国の酪農業界は

ここ数十年にわたって

アメリカの酪農に大きな影響を受け続け

それを良いものとして見習い

それを必死に勉強して

自国の酪農に取り入れてきた。

アメリカの酪農技術を取り入れる中で

同国の乳牛の獣医技術も

同時に勉強して取り入れてきた。

それによって

我が国の酪農の生産性というものは飛躍的に伸びた。

detail_farming_draw04牛1頭あたりの乳量

酪農家1戸あたりの乳量

共に目を見張るような伸びを見せてきた。

そのこと自体はおそらく良い事であろう。

だが・・・

良い事と思われるものの中には

必ずと言ってよいほど

弊害があることを知らねばならない。

我が国の酪農がお手本としてきた

欧米の酪農

特にアメリカの酪農にも

いろいろな弊害があることを

我々はそろそろ

気づかなければならない時が来た

と私は思っている。

模範として来ただけに

その弊害に気づかず

detail_farming_draw02むしろ

その弊害に目をつむって

アメリカの酪農をひたすら良いものとして

盲目的に取り入れて来た

という側面が

我が国の酪農業界にはある。

ここに「ゆゆしい」事態を招いている

根本的な原因がある

と私は思っている。

根本的な原因というのは

今回ずっと書いて来たテーマである

IMG_3577「牛に感謝」

をするという

気持ちの問題であり

心の問題であり

思想の問題であろう

と私は思っている。

そこをもう少し

掘り下げてみたい。 


(この記事続く)



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「牛に感謝」(4)

前回は、

酪農の大規模化が、

牛の死体に対して鈍感になる行為であり、

牛を大切にしなくなる行為であり、

IMG_3577「牛に感謝」する気持ちを乏しくする、

「ゆゆしき行為」であることを説明した。

「ゆゆしい」というのは、

「そのまま放っておくと、取り返しのつかないことになる」、

という意味である。

酪農の大規模化の「ゆゆしさ」の、

裏付けになっている事は、

まだ他にもある。

例えばまた

飼養頭数50頭のA牧場と

飼養頭数500頭のB牧場があるとする。

いま

A牧場で伝染病が1頭発生したとすると

それが接触感染してゆく恐れのある頭数は50頭である。

B牧場で伝染病が1頭発生したとすると

それが接触感染してゆく恐れのある頭数は500頭である。

もう少し具体的にいうと

例えば 

A牧場で口蹄疫が1頭見つかったとすると

殺処分する頭数は50頭であるが

B牧場で口蹄疫が1頭見つかったとすると

殺処分する頭数は500頭である。

023どちらがダメージが大きいかは

一目瞭然であろう。

(写真は動衛研HPより)

A牧場の50頭の殺処分と

B牧場の500頭の殺処分では

人員の派遣規模も

補償金額も

10倍になる。

口蹄疫は相変わらずアジアの隣国で発生しているので

いつこのような事態になるかわからない。

また、口蹄疫ではなくて

ヨーネ病の場合は

すでにもう現実に

日本のあちらこちらの酪農家で発生している。

我が町も例外ではない。

具体的な農場名はもちろん言えないが

A牧場のような50頭規模の酪農家では

定期的に

1日で50頭のヨーネ病検査のための採血と採便を続けているし

B牧場のような500頭規模の酪農家でも

定期的に

1日で500頭のヨーネ病検査のための採血と採便を続けている。

A牧場のヨーネ検査は数時間で済むが

B牧場のヨーネ検査は丸1日かかる。

検査に訪れる関係機関の労力には

10倍の開きがあり

牧場のスタッフの協力も労力も

00510倍の差があり

その疲労度は10倍になる。

(写真は動衛研HPより)

大規模酪農家の伝染病対策は

小規模酪農家の伝染病対策よりも

効率が悪くなる。

大規模酪農家の生産性が高いのは

その農場が健全に機能している時だけであり

いったん伝染病などの機能の麻痺が起こると

そのダメージは

逆に

非常に大きくなることを

理解していなければならない。

小規模酪農家よりも

大規模酪農家の方が

伝染病に弱いのである。

酪農の大規模化は

まことに

「ゆゆしき行為」

である。


(この記事続く)


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「牛に感謝」(3)

加入しているNOSAI保険の、

牛の死亡率が、

毎年毎年、

常に高いような酪農家は、

「牛に感謝」する気持ちが乏しい、

ということを前回の記事に書いた。

ここではさらに

そんな死亡率の高い酪農家の中でも

IMG_3577とりわけ

「牛に感謝」する気持ちが乏しい

と思われる酪農家に

焦点をしぼり込んでみたいと思う。

例えば今

牛の死亡率が4%の酪農家A牧場と

同じ死亡率が4%の酪農家B牧場があるとする。

A牧場の飼養頭数は50頭

B牧場の飼養頭数はその10倍の500頭であるとする。

そうすると

A牧場では1年間に2頭の牛が死に

B牧場では1年間に20頭の牛が死ぬことになる。

A牧場は約半年に1頭のペースで

牛の死体の処理をする。

B牧場は約3週間に1頭のペースで

牛の死体の処理をしなければならない。

半年に1度死体を処理する牧場主と

3週間に1度死体を処理する牧場主と

どちらが

牛の死体を処理する事に慣れているかは

一目瞭然である。

A牧場とB牧場を比べて

BlogPaintどちらが

牛の死体に対して

鈍感になっているかは

誰でもわかるはずだ。

牧場全体が

牛の死体に対して鈍感になりやすいのは

A牧場よりもB牧場のほうである。

規模の大きい牧場が

牛の死に対して鈍感になっていることは

私は日頃いやというほど感じている。

牛の死に鈍感になるということは

牛の命を大切にしない傾向になっているのであり

牛を大切にしなくなっているのである。

規模の小さい酪農家よりも

規模の大きい酪農家のほうが

IMG_2340「牛に感謝」する気持ちが

より乏しくなっているというのは

私は日頃いやというほど感じている。

半年に1頭牛が死んでゆくA牧場と

毎月1頭〜2頭の牛が死んでゆくB牧場と

NOSAI保険の死亡率が同じであっても

牧場主がと牧場のスタッフが

牛の死に直面する

その回数は

10倍の開きがある。

「牛に感謝」

をする気持ちの差も

10倍とはいわぬまでも

A(中小規模)牧場とB(大規模)牧場では

かなりの気持ちの差が有ることは

容易に想像できるだろう。

いま

依然として酪農業界は

牧場の規模拡大を推し進めている。

だが

酪農の規模拡大は

牛の死体に対して鈍感になる行為であり

牛の命を軽んじる行為であり

牛を大切に飼えなくなる行為であり

牛を不健康にする行為であり

「牛に感謝」

をする気持ちを減らしてゆく行為である

DD208694-BB64-4D20-B12C-96C24DD548BA酪農の規模拡大は

「ゆゆしき行為」

と言わざるを得ない。


(写真の記事は、5月18日北海道新聞朝刊)

酪農規模の拡大には

莫大な資金が必要であり

後戻りのできない行為でもある。

これから

自分の農場の規模拡大を

真面目に考えている

酪農家の方たちは

この事実を

もう1度

よく考えていただきたいと思う。

本当に

「牛に感謝」

の気持ちのある酪農家ならば

本当に

牛を大切にする酪農家であれば

規模の拡大とは違う道を

考えるのではないか

と私は思うのだ。

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「牛に感謝」(2)

前回の記事で、

人類は「牛に感謝」をすべきである、

ということを書かせてもらった。 

人類・・・などというと、

あまりにも漠然としているので、

これから少し対象をしぼって、

IMG_3577我々畜産関係者、

その中でも酪農に関わるの人達にしぼって、

「牛に感謝」

をすることについて 、

もう少し書かせて頂こうと思う。

 本来は子牛が飲むべき母牛の乳を

子牛に直接に飲ませることなく

その乳を売って生計を立てている酪農家と

その酪農家に出入りして仕事をしている我々獣医師

あるいは酪農関係の業者や団体の人々は

「牛に感謝」

をするべきである。

牛がいなければ仕事のない人たちである。

しかし、それらの人々の外見を見ただけでは

本当にこの人たちが

「牛に感謝」

の気持ちを持って働いているかどうかは

よくわからない。

口では感謝の意を表していても

行動が伴っていない人というのは居るものである。

それを何で判断すれば良いか。

「牛に感謝」をしているのであれば

「牛を大切にする」のは当然であり

出来るだけ「牛を健康に」飼うはずである。

その酪農家の牛が

健康であるかどうかの目安の一つとして

私は、NOSAI保険の死亡率をあげたい。

多くの酪農家はNOSAIの保険に加入している。

IMG_3644加入している酪農家と

そこに出入りしている人たちが

どれだけ「牛に感謝」をしているかの目安として

その農場の牛がどれだけ健康でいるかを示す

NOSAI保険の事故率、病傷率、死亡率、廃用率

は、良い指標になると思う。

中でも特に、死亡率が高ければ高いほど

その農場の牛たちは不健康と言うことができる。

IMG_3645保険という性格上

止むを得ない災害や

いろいろな事情によって

一時的に

NOSAI保険の死亡率が高くなることはあるだろう。

しかし、長期的に

何年間もNOSAI保険の死亡率を見てゆくと

毎年コンスタントに死亡率の高いままの酪農家が

一定の数だけ、必ず存在する。

毎年毎年、慢性的に死亡率が高く

保険金の支払いが

毎年必ず限度を超えてしまうような酪農家。

そんな酪農家に飼われている牛たちは

ほぼ間違いなく不健康であり

その牛たちは「大切にされていない」と判断できる。

牛を大切に飼っていないから

死亡率が高いのであり

その酪農家は

「牛に感謝」

をする気持ちが乏しい

と言うことができるだろう。


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「牛に感謝」(1)

我々人類は、

家畜たちに感謝をすべきである。

家畜と一言で言ってしまうと範囲が広いが、

その家畜の中でも牛は、

代表的な家畜である。

先日たまたま

職場の雑誌棚を整理していたら

明治グループが発行している機関誌があり

IMG_3578 そこに

「牛に感謝」

という言葉を見つけて

これは良い言葉だなと思った。

「牛に感謝」

をすべきことは沢山あるが

そのなかでも酪農に関しては

我々人類の多くが

その乳を飲んでいるわけである。

本来は牛の母親が

我が子に与えるための乳である。

そのような母乳の99パーセント以上を

我々人類は

牛から分けて頂いているのである。

分けて頂いている乳のはずなのに

本来それを飲むべきの子牛のほうは

母親の母乳を直接に飲むことができず

加工した粉末ミルクを

人の手から飲まされている。

我々人類は

子牛たちが飲むべき乳までも

子牛に飲まさずに

牛の母親が出す生乳の99パーセント以上を

まるで横取りするように

自分たちだけで飲んでいるのである。

その行為は

良い事なのだろうか?

その行為について

あえて善悪を問えば

現代酪農というのは

あまり良い行為をしていないように思える。

子牛が飲むべき乳までも

横取りするような

現代酪農について

我々は反省すべきではないだろうか。

IMG_3577反省した先には

「牛に申し訳ない」

という気持ちが湧いてくるはずだ。

その気持ちが

「牛に感謝」

という言葉となって

現れるのは

当然のことだろう。


(この記事続く)


 
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搾乳牛の肩の外傷

「今朝産んだ牛が立てない・・・」

そんな、とてもありふれた稟告で、

§牧場に着いて、治療の牛を探した。

「あっちです・・・」 

§さんの指さすD型倉庫の中で、

牛が立っていた。

「・・・立ったんだね。」

「ええ。立ったんですけど・・・」

牛をよく見ると

IMG_3588左の肩に大きな傷があった。

「・・・これはどうしたの?」 

「搾乳牛舎で寝てる時に、自動給餌機が来て・・・」 

「・・・自動給餌機!、停止しなかったの?」

「はい・・・」

§牧場は繋ぎ飼い牛舎で 

牛の飼槽部を巡るように

箱型のモノレールのような

自動給餌機が

一日何回も行き来して

搾乳牛に餌を与えている。

最近よく見かけるスタイルの

繋ぎ飼い牛舎である。 

IMG_3591自動給餌機というのは障害物があると

センサーが働いて停止する。

この牛が

どんな格好をして寝ていたのかはよくわからないが

自動給餌機は停止せずに

IMG_3592産後起立不能になっていたこの牛の

左の肩の部分をえぐって行ったようだ。

私はこのような牛の怪我を見るのは初めてだった。

「・・・とりあえず、縫っておいたほうがいいね。」

「お願いします・・・」 

IMG_3600鎮静をかけて

傷を見ると

長さは約15僂世 

肩甲骨の軟骨部分が

筋層の切れ目の奥深くに見え

IMG_3602深さもそこそこあるようだ。

まずは筋層を縫合し

それから皮膚の縫合。

皮膚の縫合は四胃変位の時と同じ

吸収糸による皮内縫合をした。

IMG_3605牛がおとなしく

楽に縫い終えることができたが

この傷の部分はよく動く場所なので

傷がちゃんと閉じてくれるかどうかは

全くわからなかった。

抗生物質を5日間駐車するように指示して

治療を終えた。

3日後

IMG_3612この牛の傷の状態は

縫合部の腫れもなく良好で

元気も食欲も正常だった。

さらに

2週間後

この牛の傷の状態を

IMG_3630往診のついでに見ると

縫合部がやや膨れて

触ると波動感があった。

これはもしや

化膿したか・・・

そんな心配が頭をよぎったので

IMG_3632腫れた部分に注射器を指して

内容を吸って見ると

淡黄色透明な漿液だった。

なんとか

化膿は免れているようだった。

 
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