北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

学者と臨床家

新生子牛への狐の食害

ショッキングな画像なので、

閲覧注意と言わざるを得ないのだが、

新生子牛への狐の食害は、

相変わらず後を絶たない。

私1人だけでも年間に数頭の症例があるのだから、

北海道の獣医師が遭遇する数は、

相当な数になるだろう。

親牛が産気づいて横臥すると

破水した後

胎胞が破れて

まず前足2本の蹄先が出て

それから鼻先と舌が出てくる。

IMG_1465そこから

胎児の頭部が完全に出るまでが

陣痛の山場で

胎児の鼻と舌は

親牛の外陰部から

IMG_1466しばらくは全く

無防備なまま露出される。

産道の狭い初産の親牛では特に

お産に時間がかかるので

胎児の鼻と舌が無防備なままで

露出される時間が長くなる。

BlogPaintこの状態が

狐にとっては

美味しい子牛を食べる

絶好のチャンスとなる。

お産している親牛のお尻の傍に

そーっと近づき

無防備な子牛の鼻の肉と

無防備な子牛の舌(タン)が

目の前に出てくるのを待つ。

IMG_3418これはもう

狐にとっては最高のご馳走である。

狐はきっと

出てきた子牛の鼻の肉と

柔らかな子牛の舌(タン)を

目を細めて

美味そうに食べるのだろう。

飼主や従業員の

分娩の監視が疎かになる

深夜から明け方にかけてが

狐にとっては

格好の食事の時間になるのだろう。

私が経験した

今までの症例を

振り返ってみると

分娩の監視が行き届いていない

大規模な農場に

狐が棲み着いて

繰り返し繰り返し

被害を及ぼしていることが多いようだ。

そういう牧場は

狐に居座られないような

工夫が必要だろう。


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「かけ」と「もり」の明と暗

日本全国で入学式が行われる季節である。

その中で今、

最も話題になっている加計学園・獣医学部の、

初めての入学式も先日行われたようだ。

入学した獣医学部の学生は147名だったという。

1つの大学の1学年の人数としては日本最大の規模である。

今後は毎年毎年、

140名前後の獣医学部の学生が増え続け、

5年後には約840名の学生が学ぶ日本最大のマンモス獣医学部になる。

6年後からは毎年140名前後の卒業生が国家試験を受けて、

おそらくその8割程度は合格するであろうから、

毎年120名程度の新卒の獣医師が、

我が国に一気に増加することになる。

今から6年後、

新卒の獣医師たちは、

どのような職業を希望し、

どのような職場に身を置くことになるのだろう。

彼らの選ぶ職場は、

それぞれの個人の自由なのはいうまでもない。

しかし

獣医師業界としては

家畜衛生関係などの

人手の足りていない職場の

人員確保をしたいという思惑があるようだ。

果たして

思惑通りに

獣医師が不足している職場へ

新卒獣医師たちは就職してくれるのだろうか?

思惑通りに就職してくれるためには

加計学園をはじめその他の獣医学部の

6年間の教育内容が

大きく影響するのは間違いないと思われる。

聞くところによると

加計学園で教鞭をとる先生方は

東大獣医学部の関係者が多いという。

東大閥の先生方の実力がどのように発揮されるか

注目したいところである。

ともあれ

A24CC550-6E71-4A30-AE62-5E1A6737BB76加計学園獣医学部が

めでたく開学して

学校の授業が始まった途端に

この大学の設立の経緯に関する

色々な報道が一気に吹き出てきた。

IMG_3457なぜか今まで

鳴りを潜めていた様々な疑惑に関する

情報や物的証拠が

加計学園の開学を待っていたかのように

一気に表沙汰になって吹き出してきた。

IMG_3458一連の疑惑の中心人物である安倍首相は

膿を出し切ると言っているようだが

来年の8月まで国政選挙も無い

今のタイミングこそ

膿を出し切るには最良の時期であろう。

IMG_3459首相案件の

加計学園獣医学部の設立は

まんまと成功してしまった。

一方で

昭恵夫人案件の

森友学園の設立は

ものの見事に頓挫した。

「かけ」と「もり」の明と暗

が、ここへ来て

顕著になったようだ。

039AF912-18D7-4715-A5B6-BE85E8D6EB2D一連の疑惑は

きちんと説明されることがなく

モヤモヤとした不快感ばかりが残る。

しかし

一年半も先の

来年の夏の参議院選挙の頃には

そんなモヤモヤも

消えてしまって

この問題が選挙の争点になることは

きっと無いのだろう。

国民の「記憶の限り」

きっとそんな選挙になるのだろう。


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近道を選べば・・・

先日の往診の1軒目の、

沢沿いにあるЖさんの仔牛を診終わって、

2件目の高台にあるЧ牧場へ向かおうというとき、

ふと、

冬の間は通れなかった近道を行ってみようという考えが浮かんだ。

積雪期にЖさんからЧさんへ行くには、

登ってきた谷沿いの道を引き返して、

また別の谷沿いの道を登って行かなければならないのだが、

雪が解けて暖かくなったここ数日ならば、

沢に下りないで尾根づたいに行く道が使えるようになっているはずだ。

私はハンドルを山道のほうに切り

尾根づたいにЧ牧場へと向かい始めた。

途中いくつかのぬかるんだところは有るものの

道路をふさぐような残雪は全く無かった。

視界のよい場所へ出る少し前に

かなり深いぬかるみと轍が有った。

思ったよりスピードが出ていた私の車は

そこへ普通の速度で進入

・・・ガクン!・・・

前輪がわだちに入ってしまった。

あわててブレーキを踏んで停車。

これ以上前進したら立ち往生するのがわかったので

ギアをバックに入れて慎重に後進して

この場所から退散しようとしたその時

・・・ガクン!・・・

後輪も轍に入り込んでしまった。

アクセルをいくら踏んでも

シフトギアを変えていくら動かしても

車輪は空回りするばかりとなった。

・・・やってしまった・・・

918C0352-EF6F-4FD4-8121-584CEBBB39FF私はポケットの携帯を取り

「すぐ上の道で、ハマって動けなくなっちゃったんだけど・・・助けに来てくれる?」

私は1件目のЖさんの息子に、救助を要請した。

しばらくすると

Жさんの息子がトラクターで助けに来てくれた。

D413BE3C-D7F5-4BFB-AB96-0970F1F3C6CFワイヤーをかけて牽引。

診療車はめでたく

ぬかるみから脱出することができた。

「いやーどうも、ありがとう。行けると思ったんだけど・・・甘かった・・・」

8A7476AC-AA09-455C-868F-2ED6EE7D27DB「安田さん、この道はまだ駄目ですよ(笑)」

「申し訳ない・・・」

その後

沢伝いの道に戻って

Ч牧場へ着いて診療をしていると

Жさんからケータイに電話がかかってきた。

点滴中のЖさんの仔牛の

針が抜けてしまったという。

Ч牧場での仕事を終えて

再びЖさんに戻り

子牛の点滴の留置針を差しなおした。

「針の刺し方が甘かったんだろうか・・・」

「いや、仔牛がね、急に立ち上がって首が動いて抜けちゃったのさ。」

そこに居たのはЖさんの父さんだった。

「でも、針の刺し方も甘かったんだろうね、申し訳ない・・・」

「車は大丈夫かい?」

「お恥ずかしいけど、息子さんのおかげで助かったよ・・・」

「安田さん、上の道はまだ駄目だって(笑)」

「はい。申し訳ない・・・」


 近道を選べば春の泥深し   豆作



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牛の臀位の難産

「産気づいているんだけど、足が出てこない。手を入れてみたら、尻尾(シッポ)しか触らない。」

そんな稟告で往診に行ったФ牧場。

手を入れてみると、

なるほど尻尾しか触らない。

臀部が産道に座り込むように進入し、

両後肢の先端は前方へ向いてしまっている。

いわゆる臀位(でんい)の胎児失位の難産である。

このままではどうしようもないので、

手を入れて後肢の腿から先を探ってゆくと、

胎児の右後肢の飛節に触れた。

飛節からさらに先の中足骨部にはなんとか手が届くものの

いきなり中足骨を手で握ることは不可能だった。

「まずは飛節に産科チェーンを掛けますね。」 

こういう手元から遠いところは

産科ロープよりも産科チェーンの方が操作しやすい。

軽い産科ロープの先端は飛節の上から向こうへ落としにくいが

重い産科チェーンの先端は飛節の上から向こうでタラリと垂れ下がる。

垂れ下がったチェーンの先端を

こんどは飛節の下から手を回して指で拾って手繰り寄せれば

産科チェーンを飛節に掛けることができる。

産科チェーンの操作は

重力を味方につけることができるのだ。 

めでたく産科チェーンを飛節に掛けることができたら

掛かったチェーンの手元をФさんに持っていてもらって

こんどは胎児の臀部を押して押して押しまくる。

飛節をチェーンで固定しておいて臀部を押せば

次第に飛節が産道近くへ引き出されてくる。

再び後肢を手で探ると

中足骨部から球節まで触れるようになっていた。

そこで産科チェーンのかかっている部分を

できるだけ中足骨の遠位に押しやって

もう一度チェーンを固定してもらって

私は再び胎児の臀部を押しまくる。

そして手を入れると

後肢の球節からさらにその先の蹄まで手が届くようになる。

そこでさらに産科チェーンのかかっている部分を球節にセットする。

セットした球節の部分の蹄が骨盤の内側へ向くように手で補助して

Фさんにチェーンを強く引いてもらい

それと同時にもう片方の手で胎児の臀部を強く押す。

ここが勝負どころだ・・・

グググっと胎児の右後肢が曲がって産道を通り抜け

右後肢の蹄が陰部から外に出てきた。

「よし、これで後肢が1本整復できたね。じゃもう1本。」

今度は左後肢の整復である。

もう片方の肢も

全く同じ操作をして整復をするのだが

最初の右後肢の整復の時よりも

胎児の位置と産道内に余裕ができているので

左後肢の整復は最初の右後肢の整復より

それほど時間がかからなかった。 

7BA576D9-702C-45F7-A404-15460148542Cついに後肢が2本

産道から外へ出た。

「これで、普通の逆子(さかご)と同じになったから、あとは引っ張るだけ。」

私とФさんは滑車を用意して

後肢の牽引の準備をした。

「ちょっと待って・・・、チェーンをロープに掛け替えるから。」

26F6478D-E236-41B7-AEF1-41920147725Aここは念のためなのだが

強く牽引するときは

産科チェーンよりも産科ロープの方が

胎児の肢へのダメージが少ない。

万が一とてもキツくて中足骨の骨折が起こるかもわからないと思った私は

念のために掛かっているチェーンをロープに掛け替えた。

「よし、引っ張って。」

尾位(逆子)胎児の後肢と臀部が

476D3DAC-A65E-4702-870D-8E6FF4C95D5D陣痛と共に現れて

胎児が牽引娩出された。

「お、まだ生きてるね。」

「ぶら下げて、羊水を吐き出させよう。」

私とФさんは2人で大きな胎児を抱きかかえ

近くにあった鉄柵に胎児の後半身を引っ掛けて 

1DA90C9D-18EC-4ADE-9198-7CD29201A4E2しばらく宙吊り状態にして

羊水を吐き出させた。

尾位では胎児の頭が最後まで子宮の中にあるので

羊水を飲み込んでいることが多い。

胎児が目をパチクリさせはじめたので

Фさんは胎児を床へ下ろし

E3597D2D-8D01-4146-913D-73F64336BA8B親の顔をそこへ導いた。

親牛は胎児を舐め始めた。

「そこそこの大きさの胎児だね、♂、♀、どっち?」

「・・・♀だ・・・♪」

「ちょっと待ってよ。もう1匹腹の中にいるかもしれないから。」

「え、双子だってかい?、おい、それは勘弁だなー・・・」 

「でもね、子牛がシッボから出てくるときって、双子が多いんだよ。」 

「もう片方が♂だったら、がっかりだな・・・(笑)」 

私は過去の経験から

双子の可能性を強く疑った。

恐る恐る

陰部から手を入れて

胎児がもう1つ入っていないかどうか

手をいっぱいに伸ばして子宮内を探った。

「あー・・・いないね、これ1匹だけだね。」 

「良かったー・・・♪」 

Фさんと私は

顔を見合わせて安堵した。

Фさんは60代前半

私は50代後半

息子さんと奥さんは外出中で

初老男子2名だけの

難産介助の仕事だった。


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重種馬の帝王切開 (3年ぶり)

先週の月曜日、

午前の往診の最中の携帯に、

珍しく隣町の先輩のO獣医師から電話がかかってきた。

「馬の難産なんだけど、変だ。胎児は死んでるみたいで、陣痛が全く無い。」

私は、電話口から帝王切開を一緒にやろうという雰囲気を感じた。

とりあえずもう一度、経膣の分娩介助を試みて、

駄目だったら、また電話をしてくるという事で一度携帯を切った。

しばらくしてまた電話が鳴った。

「やっぱり駄目だ。切るしかないから、頼むわ。」

「わかりました。じゃあ、2時に連れて来て下さい。」

案の定の展開だった。

私も覚悟を決め

こちらの診療所の若い獣医師たちに

手術の準備と麻酔の準備としておくように頼み

午前中の往診を終えて

昼食を急いで食べ終えたところへ

隣町のИさんの馬が運ばれてきた。

牛用の手術台を使う、重種馬の帝王切開が始まった。

導入はドミトールとケタラール

維持はGGE+ドミトール+ケタラールのトリプルドリップ

879134D4-C072-468E-A431-0EAE1C9CAC2F右横臥で左下部を切開。

保定は牛よりも頑丈に縛る。

麻酔がしっかりできれば

あとは牛の帝王切開と同じ流れで

腹腔をあけて

子宮をあけて

胎児を縛って吊り上げて摘出。

今回の胎児はすでに死亡して時間がたっており

F224476D-6952-420D-AE4E-2FEF42D2A3C270キロ以上はあろうかという胎児で

胎位は尾位だった。

母馬は2日前まで乳を漏らしていたが

その後乳か上がって陣痛も全く消えてしまっていたという。

羊水はほとんど消えて粘調の悪露になりつつあった。

胎盤は無理に剥がすと出血多量になるので臨機応変にすべきだが

今回は胎盤も簡単にはがれたので全部摘出した。

C5D99E86-1961-45B2-A8AA-DF68BEC1FA36子宮の縫合も牛と同様の一層縫合。

子宮を生食でよく洗い腹腔へ戻した。

腹壁から皮膚までの縫合は

牛よりも頑丈に

腹膜、筋層筋膜、皮筋皮下、皮膚、の4層をそれぞれに縫った。

縫い終わる頃に維持麻酔を止め

7571B35C-61AA-4876-92DF-A0AA195276A8リンゲルなどの補液に切り替えた。

右横臥のまま寝ている母馬をそのままにして

スタッフ一同後片付けを始めた。

牛の帝王切開と違って

全身麻酔をしているので

手術が終わってから直ぐに叩き起こしてはいけない。

A69DAA24-52E2-4DEE-8F10-BD62F3BB773C麻酔が覚めるのをゆっくりと待つことが大切である。

今回は横臥から座位になるまで約30分かかった。

座位になってから起立するまで約10分かかった。

起立してから歩行し始めるまでさらに約10分かかった。

術後約50分でようやく家畜車に乗り

馬は隣町へと帰っていった。

FB2109BD-5556-4118-A458-CC80E9BC50BDそれから3日後

先輩のO獣医師から

電話がかかってきた。

母馬は

食欲も回復し

経過は順調だという事だった。

仔馬は駄目だったけれども

CE90DEFB-CA36-43F5-9A31-C718E5FA3EC1親馬が助かったことで

また次の繁殖への望みをつなぐことができたのは

良い事だった。

診療地区の重種馬の数が

激減してしまった中で

自分の執刀した帝王切開は

じつに3年ぶりだった。


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育成牛の中足骨骨折(その後)

「先生、去年骨折したあの牛なんだけど・・・」

⌘牧場の妊娠鑑定をしていたら、

息子さんがそう言い出した。

「なんだか少し足が曲がってきたみたいなんですよね・・・」

去年の6月末に、

IMG_136115ヶ月齢の育成ホルスタインが、

右の中足骨を骨折して、 

キャストによる外固定の治療を施し、

治癒した症例を、

ブログの記事にしたのだが、

その牛の事だった。

「曲がってきたの?」

「なんとなく最近そう見えるんですよね・・・」

「右の後足だったよね、骨折は治っているはずだけど。」

「そうなんですけどねー、種付けして妊娠して、そろそろ売りたいんですけど・・・」

「足が曲がってたら売り物としては、買い叩かれるか。」

「ええ、まぁそれは市場に出すときに言うからいいんですけど・・・」

「どんな感じ?、今その牛どこにいるの?」

「そこの隣の仕切りの中に居ますよ・・・」

IMG_3322私は⌘さんの息子の指差す方へ向かって

右後肢の中足骨部分に注目した。

「あれからもう9ヶ月か、大きくなったねぇ。」

「はい、右後肢のところ、わかりますか?・・・」

IMG_3323「・・・曲がってる?」

「後ろから見ると、なんとなく凹脚になってません?・・・」

「・・・あー、そう言われてみればそーかなー。」

私はこの牛の骨折の部位が

IMG_1513どこだったかを思い出せずに居た。

事務所に帰ってから

この牛のことを書いたブログの記事

を見直してみた。

IMG_1364骨折部位は

右の中足骨の近位だった。

⌘牧場の息子さんが

「なんとなく凹脚になってきた・・・」

と言ったのは

IMG_1512きっとこの骨折部位から遠位の中心軸に

内側方向へわずかな角度がついてしまったことで

飛節から下が成長するにつれて

だんだんと凹脚が目立つようになったのではないか

と思われた。

IMG_3325牛は元気でピンピンしているし

きっと普通の搾乳牛として育ってくれると思うが

市場に出る・・・

と言うことになると

目敏い買い手から

アラを探されて

買い叩かれることは

間違いないだろう。

IMG_3324私としては

あの牛の骨折が治って

ここまで大きくなってくれたことが

嬉しかったが

完全に現役復帰となるためには

なかなか色々なハードルがあるものだと思った。


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牛の発汗とミネラル代謝

先日の当直の朝、

和牛繁殖農家の◎さんの牛が起立不能、

という往診が入った。

この日の朝はよく晴れていて、

放射冷却で気温は氷点下10℃を大きく下回る、

シバレついた朝だった。

真冬のきついシバレ程ではないが、

まだまだ3月の朝は気温が下がる。 

IMG_3328起立不能になった親牛は

舎外のパドックでうずくまっていた。

周りの他の牛たちと様子が違い

この牛だけは

体毛が真っ白に霜がついていた。

この牛だけ発汗して

その汗の水分が体毛に付着して

毛に付着した水分が

朝の冷気によって急激に冷やされて

真っ白い霜となって

黒毛の牛の体表を覆っていた。

これぞホントの「霜降り」牛である・・・

体温37.8℃、心拍数80、呼吸数約10 

「ずいぶん汗かいてるね。お産はいつ?」

「分娩は確か去年の暮れだったと思うけど・・・」 

「お産は関係ないか。でも、こんなに汗かいて。」 

「体温が下がってる・・・」 

「これはきっと低カルシウムだと思うから、カルシウムを打つね。」 

「お願いします・・・」 

IMG_3330牛は馬と比較すると

あまり汗をかく動物ではない。

牛が汗をかく時というのは

私の経験的に感じているのは

ミネラルの代謝が異常な時が多いようだ。

特に多いのは分娩前後のミネラルの代謝異常の時で

低カルシウム血症をはじめ

低リン血症の時も

モウモウと湯気を上げて汗をかくことが多い。

「今回はお産は関係ないけれども多分低カル、念のために血液とって調べてみるね。」

私は、この牛の血中ミネラル濃度が

どのような状態になっているのか

ちょっと楽しみだった。

きっと異常な値を示すに違いない

そうなれば

牛の発汗の機序が少し分かるかもしれない。

翌日、この牛は起立して

食欲も回復したので

もう1度カルシウムなどのミネラルを投与し

様子を見ることになった。

牛はあっさり治ってくれた。

これはやはり

思惑通り

投与したカルシウムなどのミネラルが効いてくれたのだろう。

そう思って

検査センターから送られてきた検査結果を見た。

初診時の血中濃度は・・・


BlogPaint カルシウム     8.9 mg/dl

 無機リン         3.9 mg/dl

 マグネシウム  1.8 mg/dl


あれっ・・・???

どれも正常値の範囲内だった。

牛が発汗をしている時によくあると感じていた

ミネラルの異常が見られなかった。

私の経験則は

全くあてにならないことが判明した・・・

そして私は

牛が汗をかく機序が

ますます分からなくなってきた・・・

牛の発汗と

ミネラル代謝について

どなたか詳しい人がいたら

教えて欲しい・・・


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NOSAI保険の切り替え

1年毎に掛けられるているNOSAIの保険は、

今月末で終了し、

来月からはまた新しい年度の保険が始まる。

昨日から、

うちの診療所の事務室と会議室は、

その保険の年度切り替えの業務で大忙しである。

入れ替わり立ち替わり、

組合員さんがあらわれ、

手続きを終えて帰ってゆく。

私のような下々の獣医師が、

その引き継ぎ業務の手続きに関わる仕事は、

デスクワークではなく、

実際に牧場へ赴いて、

事務所で交わした契約内容に間違いがないかを確認する作業である。

すなわち

保険にかけた家畜の個体に間違いがないか

その頭数に間違いがないかを確認する作業である。

IMG_3230昨日は

町内の組合員さんの中で

主に馬を飼育している牧場を中心に

その個体の確認と

頭数の確認に回って来た。

IMG_3231病気やケガの往診と違って

あまり切迫感のない仕事ではあるが

1頭たりとも間違ってはならない

重要な仕事でもある。

少しでも疑問点があれば

IMG_3233飼い主さんを呼ぶか

あるいは電話をかけて

疑問点を解決しなければならない。

昨日はたまたま

うちの診療所に実習に来ている学生さんを連れて

IMG_3235個体と頭数の確認作業に回った。

学生さんは馬が好きだということで

馬屋さんを回る私の車に同乗した。

種雄馬の農家さん

繁殖牝馬の農家さん

IMG_3237育成馬の多い農家さん

乗馬やポニーの多い農家さん

などを順に回り

最後のオマケに見て回ったのは

驢馬も飼っている農家さん

馬小屋に驢馬を飼って

驢馬の繁殖をしているのだ。

IMG_3241驢馬の親子は

馬よりも長い耳を動かして

とても可愛らしい(笑)

もっとも

驢馬は

NOSAIの保険の対象ではないので

加入はできないのだが。


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牛の黒色便

「黒い便をして、餌を全く食べなくなった・・・」

当直の夜、そんな電話が入った。

酪農家のЭさんからだった。

IMG_3125「昼間はまだ餌食べてたので、様子見てたんですけど・・・」

「便が真っ黒だね。」

「急にこんな炭みたいな色の便になって、夕方からは全然食べなくなって、これはヤバイなと思って・・・」

「これは、小腸のどこかから出血してるようだね。出血性腸炎かもしれない。」

IMG_3121「腸炎ですか・・・」

「うん、それも胃に近い方のね、便が真っ黒だから。」

「コーサイレージがちよっとカビてたんですよね・・・」

「それは関係あるかもしれないね。」

私は10年近く前に、このブログで

牛のHBS(出血性腸症候群)について記事を書いたことがある。

それから年に数例

IMG_3123HBS(出血性腸症候群)を疑うような症例に

出会うことがあるのだが

今回の症例のように

飼主さんの

「餌のコーンサイレージがカビていた。」

IMG_3124という情報があると

これはHBS(出血性腸症候群)の可能性が

グンと高まってくる。

私はHBS(出血性腸症候群)を強く疑った。

体温 38.5℃   心拍数 110  

普段よりも量の多い補液とトラネキサム酸と抗生物質を投与。

初診の血液検査で

Ht(ヘマトクリット)17.4%  Hb(ヘモグロビン)6.2 g/dl

だった。

翌日からも同様の治療が続いたが

牛の可視粘膜は貧血感を増してゆき

寝起きも困難になってフラフラ状態が数日続いた。

便は黒色泥状便。

第5病日の血液検査では

Ht(ヘマトクリット)7.6% !    Hb(ヘモグロビン)2.4 g/dl !

これは・・・ひどい貧血だ。

この日から牛はとうとう起立不能となってしまった。

半ば諦めムードの中で

さらに3日間の治療が続けられた。

すると牛の顔つきがやや良くなり

食欲が出てきた。

便の色が次第に正常な色へと回復してきた。

しかし、自力起立ができず

可視粘膜は真っ白な貧血感のままだった。

第8病日の血液検査では

Ht(ヘマトクリット)12.6%      Hb(ヘモグロビン)3.6 g/dl 

これは・・・貧血が改善してきた。

さらに治療を続けると

食欲は少しづつ増加し

便の色は正常な色となった。

さらに4日間治療が続けられ

牛の顔つきは良く

食欲は1/2程度まで回復。

しかし

可視粘膜の色は蒼白

そして

どうしても自力で起立することができなかった。

四肢は脱力

麻痺が進行していた。

そして

初診から14病日

飼主のЭさんとの相談の結果

この牛を廃用処分にすることにした。

残念な結果になってしまった。



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乳房からの出血(六たび!)

朝の往診の準備をしていると、

「乳房から血が噴き出しているのですぐ来て欲しい・・・」 

という電話、

£牧場からだった。

 「乳房から血が・・・」

という言葉で、

すぐピーンと来るのは

カラスの突っつきである。

私はこの約一年間で

カラスに突っつかれたことによる

乳房からの出血を

5回も経験している。

過去の5回の乳房出血の記録は

以下の通りである。


 2月24日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月8日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月17日の乳房からの出血(♯牧場にて) 


 8月20日の乳房からの出血(∩牧場にて)


 10月1日の乳房からの出血(♯牧場にて)


♯牧場での症例が4回

∩牧場での症例が1回

今回は初めて£牧場だったが

「乳房から出血・・・」 

という言葉 で

きっとカラスによるものだろうという事が

容易に想像できたのだった。

£牧場に着いて

繋がれている牛を見ると

IMG_3174案の定

乳房の側面の

乳静脈の

お決まりの位置からの

IMG_3176出血だった。

これはカラスの突っつきによる出血に

間違いがなかろうと思った。

牛が横臥をしている時に

乳房が後ろ脚の脇からはみ出して
IMG_3177
乳静脈が露出される。

その乳房に走っている乳静脈が

脚に止まったカラスから

突つきやすいような

IMG_3178乳房の真上に露出された時

カラスが突っついて

出血させるのだ。

過去5回とも

IMG_3181出血する位置が

見事に一致している。

「これは間違いなくカラスだね。」

「・・・そうですか。」

IMG_3186私は従業員君に

牛を保定してもらい

ここ1年間の

過去の5回の症例と

全く同じように

出血している部分の縫合処置をした。

「最近カラス多いでしょ?」

「・・・はい、追い払ってるんですけど。」

「一度覚えたカラスは、何度もやるみたいだから注意してね。」

「・・・はい、わかりました。」

過去に

この症例が

4回も繰り返し起こった

♯牧場のようなことに

ならないことを願いつつ

私は£牧場を後にした。
 

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往診中の風景

毎日毎日、

町内を往診して回っていると、

色々な景色に出会う。

IMG_3146その多くは、

美しい自然の景色である。

特に、

この頃の我が町の雪景色は、

IMG_3167厳しい冬から、

明るい春へと、

少しづつ変わってゆく。

美しさに加えて、

新しい春へ向けての、

希望が混ざったような、

待ちどおしさがあり、

思い入れがひとしおである。

そんな美しく明るく待ちどおしい景色はもちろんであるが

それに加えて

何やら不思議な景色もたまに見られる。

先日

隣町のI町の診療の応援に行った時

昼食をどこかで食べようと

詳細をよく知らない街中を

ゆっくり走りながら

食堂を探しつつ

とある場所を通りかかったら

何やら怪しげな看板を見つけた。

一見なんの変哲も無い

IMG_2357「そば屋」

の看板であるが

周囲を見渡しても

そば屋が見当たらない。

その看板をよく見ると

「やってません」

の文字が付いている。

「・・・?」

そば屋が無いのに

そば屋の看板だけがあり

ご丁寧に

営業していないというお知らせが書いてある。

なんとご丁寧な看板であろう。

こんな看板は初めて見た。

こんな風景は初めてで

なんだか周りの全ての景色が

狐につままれたような

不思議な気分にさせてくれる

そんな看板だった。

エイプリルフールには

まだ1ヶ月以上早い・・・


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春寒(はるさむ)の診療所の風景

「立春」はとっくに過ぎているので、

暦の上では、

IMG_3155今はもう春、

少なくとも早春、

の頃である。

確かに日中は、

どこかしら春らしい陽光が、

戸外を包み始めて、

明るい春の日脚が伸びてきたという実感がある。

しかし

ひとたび夕日が落ちて 

暗い夜になると

春の気配は

すぐさまどこかへ消え去ってしまい

外気温は一気に下がり

周囲は冬の姿に戻ってしまう。

春なのに寒い。

これを歳時記では

「春寒(はるさむ)」あるいは「余寒(よかん)」などと言い

早春の季題となっている。

特に

1日の気温差(日較差)の激しい内陸性気候の

我が十勝地方では

この時期の夜の寒さは半端ではなく

真冬の寒中の気温と

ほとんど変わらない程に冷え込む。

「春寒」「余寒」どころではない(笑)

昨日の

宿直当番の時もそうだった。

日中の気温は

そこそこ温かく

氷点下から抜け出しそうな気配だった。

ところが

夜になり

また厳しい冷え込みがやってきた。

私はつい、うっかりと

診療車に積んでいたリンゲルなどの

液体の薬品を

車の中に入れっぱなしにして

そのまま寝てしまった。

そのままにしておくと

IMG_3152翌朝には

凍ってしまう。

翌朝

起きてすぐそれに気づき

IMG_3149慌てて

夜明け前の寒さの中で

診療車内に積みっぱなしだった薬品を

診療所内のパネルヒーターの上に乗せて

IMG_3148凍りかけた薬品を「救出」した。

夜明け前だったので

何とか凍結は免れることができた。

一連の写真はその時に撮っもの。

うちの診療所の

冬から春にかけての風景は

IMG_3150リンゲルなどの補液剤がパネルヒーターの上に置かれ

その他の薬品も凍らないように

準備室の片隅に

邪魔にならないように

IMG_3151あちらこちらに置いてある。

この診療所内の風景は

私共には

全く当たり前の風景なのだが

九州や四国などの暖かい地方の

家畜診療所では

決して見られない風景

なのだろう。



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子牛の耳下腺(?)の腫脹

「子牛の喉が腫れている・・・」

という稟告で診たのは、

生後3ヶ月のホルスタイン♀ 。

なるほど、

左の喉というか耳下腺付近が、

大き目のみかんのように腫れている。

IMG_2349触診してみると、

かなりの硬度で、

波動感はない。

「耳下腺炎だろうか?」 

「昨日くらいから急に腫れが大きくなってきたんだけど・・・」 

「かなり硬いね。」

「耳下腺炎といえば・・・」

「オタフク風邪。」

「えっ、マジ?、俺オタフク風邪まだやってないんだけど・・・」

「それは気をつけないと。」

「牛にもオタフク風邪ってあるの?・・・」 

「いや、無い(笑)」 

飼主の★君に冗談を飛ばしつつ 

私はこの腫れの正体を

色々考えていた。

普通よく経験するのは

子牛の奥歯から黴菌が入り

アメ玉をしゃぶったように

ピンポン玉くらいの大きさの腫れが

上顎や下顎にできるパターンなのだが

今回のように

耳の下が大きく腫れるのは

ちょっと珍しいと思った。

この腫れは

耳下腺の組織なのか

唾液が溜まっているのか

血が溜まっているのか

化膿しているのか

それとも腫瘍なのか

確定診断する必要がある。

「針を刺してみよう。」 

IMG_2351私は穿刺検査をすることにした。

注射器につけた18Gの長針を

硬い腫れ物の半ばまで

差し込むと

白く濁った液体が

IMG_2352注射器の中に入ってきた。

「あ、膿瘍だね。」

「オタフクじゃなかった(笑)」

「切開しよう。」

「お願いします。」

 IMG_2353確定診断ができたところで

あとの治療は一本道である。

子牛の頭を動かぬように保定して

膿瘍の最下部を

メスで

IMG_2354切開排膿

創は大き目に3〜4センチ

膿汁を中に残さぬように

創は開放したままにして

後は

IMG_2356抗生物質の数日投与を指示し

治療を終えた。

後日

この膿汁の

細菌培養結果が来た。

BlogPaint菌は2種類

Streptcoccus agalactiae(無乳性レンサ球菌)

Pasteurella multocida (パスツレラ)

が検出された。

今まで私がよく経験した

E.coli (大腸菌)や Pseudomonas (シュードモナス)は

検出されなかった。


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単なる通過点

今日の往診中に、

何気なく診療車のスピードメーターを見ると、

写真のごとく、

走行距離が、

7万7千7百7十5キロ、

という数字を示していた。

48B6E199-DE66-4C82-B891-1EAFA60098A0おお、

これは、

あとわずか2キロを走れば、

数字の7が全て揃うではないか。

今まで全く気にしていなかった診療車の走行距離だったが、

こういうものを見てしまうと

いきなりなにやら大切な節目のような気がしてくるから不思議なものである。

スピードメータの表示を気にしながら

往診中にしばし徐行などをしながら

走行距離が77777キロになるのを待ち

ついにその表示が現れたところで

73B3E51E-F6FB-4882-BA69-3D964A520AAB診療車を停止させて

記念の写真を撮った。

今までにも

診療車の走行距離の表示が

同じ数字の横並びになる事は何度も有ったが

「7」という数字の横並びは記憶が無かった。

スロットマシンではないけれど

1から9までの数字の中で

横並びになって一番見栄えがするのは

やはり「7」であろう。

私は気分良く

次の往診先へと向かった。

良く考えてみると

こんなことは

単なる数字のお遊びで

77777キロなどというのは

単なる通過点に過ぎない。

77776キロだって

77778キロだって

単なる通過点であり

その意味では同じ価値であるはずなのに

こういう事に特別な価値を付けてしまう

人の心というのは

いったい何なのだろう

などど

しばし考えているうちに

次の往診の家に到着し

仕事モードに戻った。


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繁殖牝馬がやってきた♪

重種馬の高値が続いている。

当才馬も1才馬も繁殖牝馬も、

4〜5年前と比べたら、

約3倍というバカ高値である。

妊娠している繁殖牝馬が軒並み200万円というから驚きである。

4〜5年前が安すぎたとも言えるのだが、

いずれにせよ、

現在は高い相場が続いている。

高い相場が続くということは

需給のバランスからいえば

需要が伸びているか

供給が不足しているか

のどちらかになるわけだが

現在の状況というのは

明らかに「供給不足」である。

重種馬を生産する人がいないのだ。

生産者の高齢化

後継者の不足

という以前から言われていて解決できない問題が

いよいよ切羽詰まってきたところへ

追い討ちをかけるように

輸入馬の激減という国際状況が重なっている。

重種馬というのは牛と違って

ずっと前から完全に

輸入自由化商品だった。

国内で不足すれば

外国産の重種馬が輸入されて

価格は安定していた。

ところが最近はどういうわけか

主な供給元であるカナダ産の馬が輸入されなくなっている。

重種馬の需要は大きく分けて2つ。

1つは「ばんえい競走馬」

2つ目は「馬肉」である。

どちらの需要も安定しているのだが

輸入馬が入らなくなったということで

ばんえい競走馬を欲しがる人と

馬肉用の馬を欲しがる人が

国内の市場でぶつかり合う。

いま

北海道の重種馬は

この2種類の買い手によって競争が起こり

価格がつり上がっている状況なのだ。

北海道の馬産にとって

「ばんえい競走馬」と

「馬肉用の馬」と

どちらの需要も大切なのだが

あえて優先順位をつけるとすれば

「ばんえい競馬」>「馬肉用の馬」

IMG_2330とするべきで

その方が健全な馬産であろう。

ところが今

馬肉用の馬の需要が強く

ばんえい競走馬としての素質を持った馬たちが

若いうちに馬肉用の馬として買われてしまうことがあるらしい。

これはちよっと困ったことである。

IMG_2328馬の相場が高いということは

そういう事情もあるのだ。

そのような状況の中で

先日わが町のある畜産農家さんが

重種馬の繁殖牝馬を5頭導入し

NOSAIの保険に加入して頂いた。

IMG_23355頭のうち4頭が妊娠ブラス。

今年の春には

仔馬が生まれる予定だ。

久しぶりの馬の頭数の増加に

私は素直に嬉しかった。

IMG_2334ただし

生まれてくる仔馬たちは

いきなり「馬肉用の馬」ではなく

まずは「ばんえい競走馬」として

立派に育って

競馬場で活躍してもらいたい。


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雪しまく夜の往診

前回の夜間当番の日は、

日本列島を低気圧が通過して、

北日本ばかりではなく、

東日本や西日本まで、

まんべんなく雪が降った日だった。

十勝地方は夕方から雪が降り始め、

夜になってその雪が、

だんだんと本格的に降り始めた。

当直で事務所に泊まっていた私は

今日の往診はもう無いかな・・・

と、たかをくくっていた。

大きな低気圧が通過するときの

緊急往診の傾向として

何となく感じているのは 

天気これから悪くなり始める頃は

緊急往診の依頼が多いが

天気がいよいよ悪くなった最中には

緊急往診の依頼はぱたりと止んで

落ち着いてくるものだ ・・・

ということを

長年の経験から感じていた。

そこで、勝手に

今夜はもう往診はないだろう・・・

と、たかをくくっていたら

夜の10時近くに電話が鳴った。

酪農家の◎さんの牛の産後起立不能だった。

私の長年の経験など

全くあてにならず・・・(笑)

私は雪の激しく降っている夜道を約18キロ

診療車で◎さん宅へと向かった。

IMG_2323雪が激しくフロントガラスに迫り

視界が不良だった。

風はないので

地吹雪のようなホアイトアウトこそないものの

視界はずっと不良だった。

IMG_2321今どの辺りを走っているかは

長年同じ所を何度も走っている経験から

だいたい判るのだが

曲がらなければならない十字路が

いつ、目の前に現れるか

IMG_2319だんだんと不安になってくる。

またたどり着くまでに

積もる雪の深さが増して

深い雪でハンドルを取られて

途中で立ち往生してしまうのではないか

IMG_2311という不安も出てきた。

それでも何とか

長年の勘を頼りに

◎さんの牛舎の前まで

迷わず立ち往生もせずに

IMG_2308たどり着いた時は

正直ホッとした。

目的の牛には

産後の低カルシウム血症を中心の

ありふれた診療内容をこなし

IMG_2309また同じ道を約18キロ

往路にできた自分の車の

ワダチをたどるように

復路を運転した。

降る雪の勢いは

IMG_2313幸いにも

少し落ち着いていた。

対向車は

1台も来なかった。



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ツチノコの正体はコレだ!(新説)

ツチノコといえば、

ヒバゴンやクッシーと並んで、

日本の謎の3大珍獣の1つであり、

まだ誰も、

その正体を暴いたことがないという、

摩訶不思議な、

伝説的な、

動物である。 

これだけスマホが普及している現代人でさえ

その正体を

画像に捕えることができないのだから

これはまさに

珍獣中の珍獣である。

あまりにも珍らしく

目撃者もごく少数に限られているので

近頃は

その存在自体を

疑問視する人も多くなっているようだ。

しかし

先日

なんと

私は

そのツチノコの正体を

自分の携帯で

写真に捕えることができた!

その日時は

平成30年1月9日午後12時10分頃。

その場所は

北海道中川郡幕別町S地区の♭牧場

追加の仕事で呼ばれて

IMG_2268駆けつけた

育成牛舎。

未経産の牛の

産道から

頭が出かかっていたので

その部分を従業員2人と一緒に

IMG_2266引っ張り出した

出てきたものがこれ。

いったいなんだろう?

これは

流産胎児であるが

まるで

ツチノコ!?

IMG_2267生きているかと思ったが

残念ながら

すでに死亡しており

鼻の曲がるような

悪臭を放つ

気腫胎だった。


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黒毛和種の第四胃変位

先日助手をした手術は、

黒毛和種の4ヶ月齢の、

第四胃左方変位(いわゆるヨンペン)の手術だった。

IMG_2276四変(ヨンペン)の手術といえば、

ホルスタインの搾乳牛が圧倒的に多く、

その中でも特に、

産後数ヶ月以内に頻発する、

というのが、

我々十勝の獣医師たちの常識であり、

おそらく誰も異論を挟まないだろうと思われる。

四胃変位の主な原因の1つとして

IMG_2274産後の乳牛の泌乳量を

できるだけ速く生産レベルまで引き上げるために

カロリーの高い飼料を急激に増給することが挙げられる。

その結果

搾乳牛の胃がその要求に応えることができず

胃に大きなストレスがかかり

胃内のガスを処理しきれなくなり

第四胃の変位を引き起こす。

IMG_2273この発病機序は

ホルスタインの搾乳牛の典型的なパターンである。

我々十勝の酪農地帯では

その発病パターンで引き起こされる

搾乳牛の

産後の

第四胃変位がほとんどなのだが

たまには

産後とは関係のない泌乳期に起こる四変もあるし

搾乳をしていない育成牛や乾乳牛に起こる場合もある。

そういうパターンでは

産後以外に胃が弱るような要因がある。

その最たるものが

肢の痛みであろう。

また過密飼いのような群のストレスも

関係しているようだ。

さらには

ホルスタインではなく

黒毛和種で

第四胃変位が起こる場合もある。

IMG_2272その中には

今回の症例のように

生後まだ4ヶ月ほどの黒毛和種が

第四胃変位になってしまうことも

稀にある。

稀にある、と言っても

我々十勝の獣医師が遭遇する頻度から

そう感じるだけのことである。

黒毛和種の多い地域

例えば九州地方の獣医師は

黒毛和種の第四胃変位に遭遇する機会は

きっと我々より多いに違いない。

黒毛和種の多い地方の獣医師の方々に

第四胃変位の発症パターンを

聞いてみたいと思う。

IMG_2271また

ホルスタインに比べて

黒毛和種の場合には

子牛にも多いように感じるのだが

どうなのだろう?


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アルコールチェッカー

昨日は職場の忘年会で、

帯広の街へ出て飲んだ。

職場のメンバーと帯広で飲むのは、

年に数回くらいあるだろうか。

今回は、出席した職員全員が、

翌日も勤務することになっていた。

翌日が仕事納めと大掃除の日なのだった。

帯広の街で忘年会のお酒を堪能し、

その翌日は皆で最後の仕事を頑張りましょう

ということになっていた。

うちの診療所には、

アルコールチェッカー

という機械が置いてある。

前夜にお酒を飲んだ人は、

この機械に備わったストローを吹いて、

自分の呼気中のアルコール濃度を測定する。

ある濃度以上のアルコールが検出されると

IMG_2249この機械は

「ブー」

という音を立て

我々職員は

その日の車の運転ができなくなる。

アルコールが検出されない時は

「ピンポーン」

という音がして

その日の車の運転が可能であることを知らせる。

考えてみれば

恐ろしい機械である。

私は職場にこの機械が据え付けられてから

5年間以上ずっと

「ブー」を鳴らしたことはなかったのだが

今年の7月にとうとう

その時も職場の飲み会だったのだが

その翌日

不覚にも「ブー」を鳴らしてしまい

同僚のみなさんに

ご迷惑をかけてしまったことがあった。

さて今日は

また飲み会の翌日である。

前科一犯の私は

いつもよりも緊張して

アルコールチェッカーのスイッチを入れた。

機械に備え付けのストローを取り出して

機械の中へ息を吹き込み

IMG_2250アルコール濃度測定を開始した

前科一犯の私の行動に

周りの同僚獣医師たちの注目が集まった。

ここでまた私が

「ブー」と鳴らしてしまったならば

今日1日の

職場の仕事のチームワークに

また悪い影響を与えてしまう。

一年の締めくくりの仕事納めの日に

アルコールチェッカーに引っかかった

などという事になれば

1日同僚に迷惑をかけるばかりではなく

再びの失態が

語り草になることは

容易に想像できる。

さて

息を吹き入れると

機械が測定を開始し

結果が表示されるまで

数秒の時が流れた。

そして・・・

IMG_2251その結果は

「ピンポーン」

だった

(笑)

今年もなんとか

平穏無事な

仕事納めをすることができた。

それではみなさま

良いお年をお迎え下さい。


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超・過大児!

酪農家の⌘牧場からの電話で、

稟告は、

「数日前から尻尾を上げて、産気づいているようなのだが・・・」

というものだった。

朝の往診の振り分けをしていた我々獣医師たちは、

皆それを聞いて、

共通した病名をを頭に思い浮かべていた。

「(子宮)捻転ですかね・・・」

「気腫胎かも・・・」

⌘牧場にはK獣医師が往診することになった。

「昼からの帝王切開も、ありですね。」

「そうですね。」

午前中の

自分の往診を終えて

診療所に戻ってみると

手術室には手術の準備がされていた。

「やっぱり手術ですか?」

「ええ。捻転ではなかったんですけど、全然出なくて。化け物かも・・・」

「奇形ですか?」

「尾位なんだけど、何だかおかしいんですよ。」

牛が運ばれてきて

K獣医師とT獣医師が手術室に入った。

昼の弁当を食べ終えた私は

準備室で

午後からの往診の用意をしていると

隣の手術室で助手をしていたT獣医師が来て

「安田さん、ちょっと手伝ってもらえますか?」

「・・・出ないの?」

「何だかおかしいんで。」

「・・・やっぱり奇形?」

急いで手術用の手袋を履いて

牛の腹腔内の

子宮を探り

胎児の前足らしきものを掴み

T獣医師のメスが

子宮を切りやすくなるまで引き上げた。

「重いですね・・・」

子宮の創口から

前肢を1本出して掴んでも

もう1本の前肢がなかなか掴めなかった。

K獣医師の手がようやくもう1本の前肢を掴み上げ

2本の前肢が創口に現われたが

「なんだか曲がってませんか・・・」

「奥に頭があるんですけど・・・」

「デカイですね・・・」

「眼窩には指がかかるんですけど・・・」

「鈍鈎(どんこう)使いますか・・・」

我々の後ろで見ていたS獣医師に

IMG_2240鈍鈎を用意してもらい

それを胎児の眼窩に掛けて

術創を鋏でさらに開大して

前肢と同時に引いてゆくと

ようやく

IMG_2241子熊の頭のような

巨大な頭部が現われた。

前肢を縛り付けたロープを

チェーンブロックのフックに付け替えて

さらに胎児を吊り上げてゆくと

IMG_2242巨大な胸部が現われ

さらに巨大な臀部が続いて現われ

最後に太い後肢2本が現われ

見上げるほどの

過大児の全貌が現われ出た。

IMG_2243「・・・。」

あまりの大きさに

我々は一瞬言葉を失った。

「・・・うわー、で・・・っかい。」

「生きてますよ・・・。」

IMG_2244床に降ろされた巨大な胎児は

鼻で大きな呼吸を開始した。

しばらくすると

頭を上げようとしては

その大きな頭部を

床に投げ打っては四肢を動かし

とうとう頭を上げた。

IMG_2248「・・・何キロありますかね。」

「80キロ、いや90キロ・・・」

「これだけ太くてデカかったら100キロあるかも・・・」

「ところで、この牛の分娩予定日は?・・・」

「来年の1月7日だそうですよ・・・」

IMG_2245「えっ?・・まだ予定日来てなかったの?・・」

「まだ2週間も早い・・・」

「そんなことあるのか・・・」

我々はあまりの胎児の大きさと

その異常さに

ただただ

驚くばかりだった。


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