北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

学者と臨床家

往診中の風景

毎日毎日、

町内を往診して回っていると、

色々な景色に出会う。

IMG_3146その多くは、

美しい自然の景色である。

特に、

この頃の我が町の雪景色は、

IMG_3167厳しい冬から、

明るい春へと、

少しづつ変わってゆく。

美しさに加えて、

新しい春へ向けての、

希望が混ざったような、

待ちどおしさがあり、

思い入れがひとしおである。

そんな美しく明るく待ちどおしい景色はもちろんであるが

それに加えて

何やら不思議な景色もたまに見られる。

先日

隣町のI町の診療の応援に行った時

昼食をどこかで食べようと

詳細をよく知らない街中を

ゆっくり走りながら

食堂を探しつつ

とある場所を通りかかったら

何やら怪しげな看板を見つけた。

一見なんの変哲も無い

IMG_2357「そば屋」

の看板であるが

周囲を見渡しても

そば屋が見当たらない。

その看板をよく見ると

「やってません」

の文字が付いている。

「・・・?」

そば屋が無いのに

そば屋の看板だけがあり

ご丁寧に

営業していないというお知らせが書いてある。

なんとご丁寧な看板であろう。

こんな看板は初めて見た。

こんな風景は初めてで

なんだか周りの全ての景色が

狐につままれたような

不思議な気分にさせてくれる

そんな看板だった。

エイプリルフールには

まだ1ヶ月以上早い・・・


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春寒(はるさむ)の診療所の風景

「立春」はとっくに過ぎているので、

暦の上では、

IMG_3155今はもう春、

少なくとも早春、

の頃である。

確かに日中は、

どこかしら春らしい陽光が、

戸外を包み始めて、

明るい春の日脚が伸びてきたという実感がある。

しかし

ひとたび夕日が落ちて 

暗い夜になると

春の気配は

すぐさまどこかへ消え去ってしまい

外気温は一気に下がり

周囲は冬の姿に戻ってしまう。

春なのに寒い。

これを歳時記では

「春寒(はるさむ)」あるいは「余寒(よかん)」などと言い

早春の季題となっている。

特に

1日の気温差(日較差)の激しい内陸性気候の

我が十勝地方では

この時期の夜の寒さは半端ではなく

真冬の寒中の気温と

ほとんど変わらない程に冷え込む。

「春寒」「余寒」どころではない(笑)

昨日の

宿直当番の時もそうだった。

日中の気温は

そこそこ温かく

氷点下から抜け出しそうな気配だった。

ところが

夜になり

また厳しい冷え込みがやってきた。

私はつい、うっかりと

診療車に積んでいたリンゲルなどの

液体の薬品を

車の中に入れっぱなしにして

そのまま寝てしまった。

そのままにしておくと

IMG_3152翌朝には

凍ってしまう。

翌朝

起きてすぐそれに気づき

IMG_3149慌てて

夜明け前の寒さの中で

診療車内に積みっぱなしだった薬品を

診療所内のパネルヒーターの上に乗せて

IMG_3148凍りかけた薬品を「救出」した。

夜明け前だったので

何とか凍結は免れることができた。

一連の写真はその時に撮っもの。

うちの診療所の

冬から春にかけての風景は

IMG_3150リンゲルなどの補液剤がパネルヒーターの上に置かれ

その他の薬品も凍らないように

準備室の片隅に

邪魔にならないように

IMG_3151あちらこちらに置いてある。

この診療所内の風景は

私共には

全く当たり前の風景なのだが

九州や四国などの暖かい地方の

家畜診療所では

決して見られない風景

なのだろう。



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子牛の耳下腺(?)の腫脹

「子牛の喉が腫れている・・・」

という稟告で診たのは、

生後3ヶ月のホルスタイン♀ 。

なるほど、

左の喉というか耳下腺付近が、

大き目のみかんのように腫れている。

IMG_2349触診してみると、

かなりの硬度で、

波動感はない。

「耳下腺炎だろうか?」 

「昨日くらいから急に腫れが大きくなってきたんだけど・・・」 

「かなり硬いね。」

「耳下腺炎といえば・・・」

「オタフク風邪。」

「えっ、マジ?、俺オタフク風邪まだやってないんだけど・・・」

「それは気をつけないと。」

「牛にもオタフク風邪ってあるの?・・・」 

「いや、無い(笑)」 

飼主の★君に冗談を飛ばしつつ 

私はこの腫れの正体を

色々考えていた。

普通よく経験するのは

子牛の奥歯から黴菌が入り

アメ玉をしゃぶったように

ピンポン玉くらいの大きさの腫れが

上顎や下顎にできるパターンなのだが

今回のように

耳の下が大きく腫れるのは

ちょっと珍しいと思った。

この腫れは

耳下腺の組織なのか

唾液が溜まっているのか

血が溜まっているのか

化膿しているのか

それとも腫瘍なのか

確定診断する必要がある。

「針を刺してみよう。」 

IMG_2351私は穿刺検査をすることにした。

注射器につけた18Gの長針を

硬い腫れ物の半ばまで

差し込むと

白く濁った液体が

IMG_2352注射器の中に入ってきた。

「あ、膿瘍だね。」

「オタフクじゃなかった(笑)」

「切開しよう。」

「お願いします。」

 IMG_2353確定診断ができたところで

あとの治療は一本道である。

子牛の頭を動かぬように保定して

膿瘍の最下部を

メスで

IMG_2354切開排膿

創は大き目に3〜4センチ

膿汁を中に残さぬように

創は開放したままにして

後は

IMG_2356抗生物質の数日投与を指示し

治療を終えた。

後日

この膿汁の

細菌培養結果が来た。

BlogPaint菌は2種類

Streptcoccus agalactiae(無乳性レンサ球菌)

Pasteurella multocida (パスツレラ)

が検出された。

今まで私がよく経験した

E.coli (大腸菌)や Pseudomonas (シュードモナス)は

検出されなかった。


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単なる通過点

今日の往診中に、

何気なく診療車のスピードメーターを見ると、

写真のごとく、

走行距離が、

7万7千7百7十5キロ、

という数字を示していた。

48B6E199-DE66-4C82-B891-1EAFA60098A0おお、

これは、

あとわずか2キロを走れば、

数字の7が全て揃うではないか。

今まで全く気にしていなかった診療車の走行距離だったが、

こういうものを見てしまうと

いきなりなにやら大切な節目のような気がしてくるから不思議なものである。

スピードメータの表示を気にしながら

往診中にしばし徐行などをしながら

走行距離が77777キロになるのを待ち

ついにその表示が現れたところで

73B3E51E-F6FB-4882-BA69-3D964A520AAB診療車を停止させて

記念の写真を撮った。

今までにも

診療車の走行距離の表示が

同じ数字の横並びになる事は何度も有ったが

「7」という数字の横並びは記憶が無かった。

スロットマシンではないけれど

1から9までの数字の中で

横並びになって一番見栄えがするのは

やはり「7」であろう。

私は気分良く

次の往診先へと向かった。

良く考えてみると

こんなことは

単なる数字のお遊びで

77777キロなどというのは

単なる通過点に過ぎない。

77776キロだって

77778キロだって

単なる通過点であり

その意味では同じ価値であるはずなのに

こういう事に特別な価値を付けてしまう

人の心というのは

いったい何なのだろう

などど

しばし考えているうちに

次の往診の家に到着し

仕事モードに戻った。


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繁殖牝馬がやってきた♪

重種馬の高値が続いている。

当才馬も1才馬も繁殖牝馬も、

4〜5年前と比べたら、

約3倍というバカ高値である。

妊娠している繁殖牝馬が軒並み200万円というから驚きである。

4〜5年前が安すぎたとも言えるのだが、

いずれにせよ、

現在は高い相場が続いている。

高い相場が続くということは

需給のバランスからいえば

需要が伸びているか

供給が不足しているか

のどちらかになるわけだが

現在の状況というのは

明らかに「供給不足」である。

重種馬を生産する人がいないのだ。

生産者の高齢化

後継者の不足

という以前から言われていて解決できない問題が

いよいよ切羽詰まってきたところへ

追い討ちをかけるように

輸入馬の激減という国際状況が重なっている。

重種馬というのは牛と違って

ずっと前から完全に

輸入自由化商品だった。

国内で不足すれば

外国産の重種馬が輸入されて

価格は安定していた。

ところが最近はどういうわけか

主な供給元であるカナダ産の馬が輸入されなくなっている。

重種馬の需要は大きく分けて2つ。

1つは「ばんえい競走馬」

2つ目は「馬肉」である。

どちらの需要も安定しているのだが

輸入馬が入らなくなったということで

ばんえい競走馬を欲しがる人と

馬肉用の馬を欲しがる人が

国内の市場でぶつかり合う。

いま

北海道の重種馬は

この2種類の買い手によって競争が起こり

価格がつり上がっている状況なのだ。

北海道の馬産にとって

「ばんえい競走馬」と

「馬肉用の馬」と

どちらの需要も大切なのだが

あえて優先順位をつけるとすれば

「ばんえい競馬」>「馬肉用の馬」

IMG_2330とするべきで

その方が健全な馬産であろう。

ところが今

馬肉用の馬の需要が強く

ばんえい競走馬としての素質を持った馬たちが

若いうちに馬肉用の馬として買われてしまうことがあるらしい。

これはちよっと困ったことである。

IMG_2328馬の相場が高いということは

そういう事情もあるのだ。

そのような状況の中で

先日わが町のある畜産農家さんが

重種馬の繁殖牝馬を5頭導入し

NOSAIの保険に加入して頂いた。

IMG_23355頭のうち4頭が妊娠ブラス。

今年の春には

仔馬が生まれる予定だ。

久しぶりの馬の頭数の増加に

私は素直に嬉しかった。

IMG_2334ただし

生まれてくる仔馬たちは

いきなり「馬肉用の馬」ではなく

まずは「ばんえい競走馬」として

立派に育って

競馬場で活躍してもらいたい。


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雪しまく夜の往診

前回の夜間当番の日は、

日本列島を低気圧が通過して、

北日本ばかりではなく、

東日本や西日本まで、

まんべんなく雪が降った日だった。

十勝地方は夕方から雪が降り始め、

夜になってその雪が、

だんだんと本格的に降り始めた。

当直で事務所に泊まっていた私は

今日の往診はもう無いかな・・・

と、たかをくくっていた。

大きな低気圧が通過するときの

緊急往診の傾向として

何となく感じているのは 

天気これから悪くなり始める頃は

緊急往診の依頼が多いが

天気がいよいよ悪くなった最中には

緊急往診の依頼はぱたりと止んで

落ち着いてくるものだ ・・・

ということを

長年の経験から感じていた。

そこで、勝手に

今夜はもう往診はないだろう・・・

と、たかをくくっていたら

夜の10時近くに電話が鳴った。

酪農家の◎さんの牛の産後起立不能だった。

私の長年の経験など

全くあてにならず・・・(笑)

私は雪の激しく降っている夜道を約18キロ

診療車で◎さん宅へと向かった。

IMG_2323雪が激しくフロントガラスに迫り

視界が不良だった。

風はないので

地吹雪のようなホアイトアウトこそないものの

視界はずっと不良だった。

IMG_2321今どの辺りを走っているかは

長年同じ所を何度も走っている経験から

だいたい判るのだが

曲がらなければならない十字路が

いつ、目の前に現れるか

IMG_2319だんだんと不安になってくる。

またたどり着くまでに

積もる雪の深さが増して

深い雪でハンドルを取られて

途中で立ち往生してしまうのではないか

IMG_2311という不安も出てきた。

それでも何とか

長年の勘を頼りに

◎さんの牛舎の前まで

迷わず立ち往生もせずに

IMG_2308たどり着いた時は

正直ホッとした。

目的の牛には

産後の低カルシウム血症を中心の

ありふれた診療内容をこなし

IMG_2309また同じ道を約18キロ

往路にできた自分の車の

ワダチをたどるように

復路を運転した。

降る雪の勢いは

IMG_2313幸いにも

少し落ち着いていた。

対向車は

1台も来なかった。



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ツチノコの正体はコレだ!(新説)

ツチノコといえば、

ヒバゴンやクッシーと並んで、

日本の謎の3大珍獣の1つであり、

まだ誰も、

その正体を暴いたことがないという、

摩訶不思議な、

伝説的な、

動物である。 

これだけスマホが普及している現代人でさえ

その正体を

画像に捕えることができないのだから

これはまさに

珍獣中の珍獣である。

あまりにも珍らしく

目撃者もごく少数に限られているので

近頃は

その存在自体を

疑問視する人も多くなっているようだ。

しかし

先日

なんと

私は

そのツチノコの正体を

自分の携帯で

写真に捕えることができた!

その日時は

平成30年1月9日午後12時10分頃。

その場所は

北海道中川郡幕別町S地区の♭牧場

追加の仕事で呼ばれて

IMG_2268駆けつけた

育成牛舎。

未経産の牛の

産道から

頭が出かかっていたので

その部分を従業員2人と一緒に

IMG_2266引っ張り出した

出てきたものがこれ。

いったいなんだろう?

これは

流産胎児であるが

まるで

ツチノコ!?

IMG_2267生きているかと思ったが

残念ながら

すでに死亡しており

鼻の曲がるような

悪臭を放つ

気腫胎だった。


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黒毛和種の第四胃変位

先日助手をした手術は、

黒毛和種の4ヶ月齢の、

第四胃左方変位(いわゆるヨンペン)の手術だった。

IMG_2276四変(ヨンペン)の手術といえば、

ホルスタインの搾乳牛が圧倒的に多く、

その中でも特に、

産後数ヶ月以内に頻発する、

というのが、

我々十勝の獣医師たちの常識であり、

おそらく誰も異論を挟まないだろうと思われる。

四胃変位の主な原因の1つとして

IMG_2274産後の乳牛の泌乳量を

できるだけ速く生産レベルまで引き上げるために

カロリーの高い飼料を急激に増給することが挙げられる。

その結果

搾乳牛の胃がその要求に応えることができず

胃に大きなストレスがかかり

胃内のガスを処理しきれなくなり

第四胃の変位を引き起こす。

IMG_2273この発病機序は

ホルスタインの搾乳牛の典型的なパターンである。

我々十勝の酪農地帯では

その発病パターンで引き起こされる

搾乳牛の

産後の

第四胃変位がほとんどなのだが

たまには

産後とは関係のない泌乳期に起こる四変もあるし

搾乳をしていない育成牛や乾乳牛に起こる場合もある。

そういうパターンでは

産後以外に胃が弱るような要因がある。

その最たるものが

肢の痛みであろう。

また過密飼いのような群のストレスも

関係しているようだ。

さらには

ホルスタインではなく

黒毛和種で

第四胃変位が起こる場合もある。

IMG_2272その中には

今回の症例のように

生後まだ4ヶ月ほどの黒毛和種が

第四胃変位になってしまうことも

稀にある。

稀にある、と言っても

我々十勝の獣医師が遭遇する頻度から

そう感じるだけのことである。

黒毛和種の多い地域

例えば九州地方の獣医師は

黒毛和種の第四胃変位に遭遇する機会は

きっと我々より多いに違いない。

黒毛和種の多い地方の獣医師の方々に

第四胃変位の発症パターンを

聞いてみたいと思う。

IMG_2271また

ホルスタインに比べて

黒毛和種の場合には

子牛にも多いように感じるのだが

どうなのだろう?


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アルコールチェッカー

昨日は職場の忘年会で、

帯広の街へ出て飲んだ。

職場のメンバーと帯広で飲むのは、

年に数回くらいあるだろうか。

今回は、出席した職員全員が、

翌日も勤務することになっていた。

翌日が仕事納めと大掃除の日なのだった。

帯広の街で忘年会のお酒を堪能し、

その翌日は皆で最後の仕事を頑張りましょう

ということになっていた。

うちの診療所には、

アルコールチェッカー

という機械が置いてある。

前夜にお酒を飲んだ人は、

この機械に備わったストローを吹いて、

自分の呼気中のアルコール濃度を測定する。

ある濃度以上のアルコールが検出されると

IMG_2249この機械は

「ブー」

という音を立て

我々職員は

その日の車の運転ができなくなる。

アルコールが検出されない時は

「ピンポーン」

という音がして

その日の車の運転が可能であることを知らせる。

考えてみれば

恐ろしい機械である。

私は職場にこの機械が据え付けられてから

5年間以上ずっと

「ブー」を鳴らしたことはなかったのだが

今年の7月にとうとう

その時も職場の飲み会だったのだが

その翌日

不覚にも「ブー」を鳴らしてしまい

同僚のみなさんに

ご迷惑をかけてしまったことがあった。

さて今日は

また飲み会の翌日である。

前科一犯の私は

いつもよりも緊張して

アルコールチェッカーのスイッチを入れた。

機械に備え付けのストローを取り出して

機械の中へ息を吹き込み

IMG_2250アルコール濃度測定を開始した

前科一犯の私の行動に

周りの同僚獣医師たちの注目が集まった。

ここでまた私が

「ブー」と鳴らしてしまったならば

今日1日の

職場の仕事のチームワークに

また悪い影響を与えてしまう。

一年の締めくくりの仕事納めの日に

アルコールチェッカーに引っかかった

などという事になれば

1日同僚に迷惑をかけるばかりではなく

再びの失態が

語り草になることは

容易に想像できる。

さて

息を吹き入れると

機械が測定を開始し

結果が表示されるまで

数秒の時が流れた。

そして・・・

IMG_2251その結果は

「ピンポーン」

だった

(笑)

今年もなんとか

平穏無事な

仕事納めをすることができた。

それではみなさま

良いお年をお迎え下さい。


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超・過大児!

酪農家の⌘牧場からの電話で、

稟告は、

「数日前から尻尾を上げて、産気づいているようなのだが・・・」

というものだった。

朝の往診の振り分けをしていた我々獣医師たちは、

皆それを聞いて、

共通した病名をを頭に思い浮かべていた。

「(子宮)捻転ですかね・・・」

「気腫胎かも・・・」

⌘牧場にはK獣医師が往診することになった。

「昼からの帝王切開も、ありですね。」

「そうですね。」

午前中の

自分の往診を終えて

診療所に戻ってみると

手術室には手術の準備がされていた。

「やっぱり手術ですか?」

「ええ。捻転ではなかったんですけど、全然出なくて。化け物かも・・・」

「奇形ですか?」

「尾位なんだけど、何だかおかしいんですよ。」

牛が運ばれてきて

K獣医師とT獣医師が手術室に入った。

昼の弁当を食べ終えた私は

準備室で

午後からの往診の用意をしていると

隣の手術室で助手をしていたT獣医師が来て

「安田さん、ちょっと手伝ってもらえますか?」

「・・・出ないの?」

「何だかおかしいんで。」

「・・・やっぱり奇形?」

急いで手術用の手袋を履いて

牛の腹腔内の

子宮を探り

胎児の前足らしきものを掴み

T獣医師のメスが

子宮を切りやすくなるまで引き上げた。

「重いですね・・・」

子宮の創口から

前肢を1本出して掴んでも

もう1本の前肢がなかなか掴めなかった。

K獣医師の手がようやくもう1本の前肢を掴み上げ

2本の前肢が創口に現われたが

「なんだか曲がってませんか・・・」

「奥に頭があるんですけど・・・」

「デカイですね・・・」

「眼窩には指がかかるんですけど・・・」

「鈍鈎(どんこう)使いますか・・・」

我々の後ろで見ていたS獣医師に

IMG_2240鈍鈎を用意してもらい

それを胎児の眼窩に掛けて

術創を鋏でさらに開大して

前肢と同時に引いてゆくと

ようやく

IMG_2241子熊の頭のような

巨大な頭部が現われた。

前肢を縛り付けたロープを

チェーンブロックのフックに付け替えて

さらに胎児を吊り上げてゆくと

IMG_2242巨大な胸部が現われ

さらに巨大な臀部が続いて現われ

最後に太い後肢2本が現われ

見上げるほどの

過大児の全貌が現われ出た。

IMG_2243「・・・。」

あまりの大きさに

我々は一瞬言葉を失った。

「・・・うわー、で・・・っかい。」

「生きてますよ・・・。」

IMG_2244床に降ろされた巨大な胎児は

鼻で大きな呼吸を開始した。

しばらくすると

頭を上げようとしては

その大きな頭部を

床に投げ打っては四肢を動かし

とうとう頭を上げた。

IMG_2248「・・・何キロありますかね。」

「80キロ、いや90キロ・・・」

「これだけ太くてデカかったら100キロあるかも・・・」

「ところで、この牛の分娩予定日は?・・・」

「来年の1月7日だそうですよ・・・」

IMG_2245「えっ?・・まだ予定日来てなかったの?・・」

「まだ2週間も早い・・・」

「そんなことあるのか・・・」

我々はあまりの胎児の大きさと

その異常さに

ただただ

驚くばかりだった。


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ユニークな従業員

先日はまた、

隣のI田町の診療の応援だった。

今度の応援内容は一般診療ではなく、

JAと役場の農林課の職員と一緒に各農家さんを巡回して、

牛の予防接種とヨーネ病検査のための採血をする、

というものだった。

飼主さんたちも

我々のすることは事前に知らされているので

注射と採血をする牛たちは

既にしっかりと捕まえて繋がれてあり

私はそれらの牛たちに針を刺すだけ。

単純作業の連続で頭を使わずに

IMG_2232体だけを使うという

小手先の技術だけの仕事である。

自分で診療車を運転して回る一般診療と違って

予防接種と採血の時は

役場の職員が車を運転してくれるので

大変ありがたい。

行ったことのない家ばかりの地区を

IMG_2231巡回していると

新しい景色が目に飛び込んで来て

小旅行をしているような気分になり

楽しくなってくる。

そんな中

先日巡回した和牛農家さんで

実にユニークな従業員のいる家があった。

IMG_2224牛舎の中の飼槽の前で

いつまでも立っている。

声をかけても反応がない。

立っているだけで手足を動かさない。

作業着を着ているが

その着こなしがイマイチ。

よく見てみたら

マネキン人形だった。

その1人は少年だった。

IMG_2225また別の牛舎には

艶かしく唇を開き帽子を斜めにかぶった

若い女性が居た。

カラス対策として立っているらしい。

「でもね。カラスはすぐ慣れちゃって・・・」

「・・・あーやっぱり。」

「カラスよりもね。うちに来るセールスの人とかが声をかける・・・」

「・・・人が騙される?」

「そう。で、返事しないから、なんて無愛想なやつなんだろーって・・・(笑)」

「(笑)」

あまりにユニークなので

写真を何枚か撮らせてもらった。

IMG_2226カメラを向けたら

母さんがマネキンに寄って行き

帽子の角度を直しておめかしをしてくれた。

マネキン人形たちは

まるで家族のように

可愛がられているのだ。


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ワインの町へ往診応援

我が診療地区の西隣にある、

I田町の家畜診療所のスタッフが、

さらにその北隣にあるH別町の家畜診療所の人員不足で、

頻繁に、往診の応援に借り出されている。

その人員の穴を埋めるために、

我が町の家畜診療所のスタッフが、

月に何日か往診の応援に行くことになった。

先日はその応援役を私が承り、

朝から1日間、

I田町の畜産農家の牛の往診に回った。

どの農場でも

飼主さんたちとは初対面であるから

往診車から降りたら

「初めまして。」

という挨拶から始まることになる。

十勝NOSAIが広域合併されてからは

こういうことは茶飯事になっている。

どの家でも初対面は少し緊張するものだが

飼主さんも獣医師も、今はもう

お互いに心得たもので

緊張の空気はたちまち消えて

すぐに普通の診療作業に入ることが出来た。

先日もそんな感じでスムーズに1軒目を終えて

2軒目の牛の診療へと進み

そこで治療する牛の首に

ペニシリンの筋肉内注射をしようと針を刺した

その瞬間

牛が予想外な方向に動いて

私の手元が狂い

注射針の根元がポキッと折れて

中の注射液が私の顔面に飛び散った。

私の上半身と顔面は

ペニシリンの注射液で

真っ白いまだら模様が出来てしまった。

とりあえずそのまま

何食わぬ顔で残りの仕事を終えて

濡れタオルで顔を拭いて

車のルームミラーを覗いてみると

IMG_2212私の顔と帽子には

やはりまだ

真っ白いまだら模様が残っていた。

(2件目の農家の奥さんはきっと笑いをこらえていたに違いない・・・)

そんな事を考えつつ

3件目に向かう途中で

いったん車を止めて

私はもう1度ぬれタオルで

念入りに顔を拭いて

帽子を脱いで帽子も念入りに拭いて
 
さらに上半身に飛び散った真っ白いペニシリンの

まだら模様を丹念に消していった。

(3件目以降もみんな初対面なのだから、白いまだら模様の顔では恥ずかしい・・・)

思いもよらぬ失態を

空しく1人で拭いながら

往診時間は刻々と過ぎていった。

3件目を終えた頃には

焦りと動揺はしだいに消えて

普段のペースに戻ってきた。

往診の途中ではさらに

IMG_2210気を取り直すために

しばしばこの町の

美しい雪景色を眺めたりして

いつもと違う往診途中の雰囲気を

楽しむ余裕が戻ってきた。

IMG_2209I田町は

全国的にも有名なワインの町である

往診の途中には

いたるところで

ワインの町らしい看板や

IMG_2211標識や建物がみられ

ちょっとした旅心を味わうことが出来た。

前半のトラブルを

忘れさせる楽しい景色だった。

その日の夜は

IMG_2206I田町の特産品のひとつ

町民還元用のロゼワインで

1人反省会をすることにした。

このワインの近頃流行の飲み方

「ロゼロック」の爽やかな酸味が

ことのほか喉に沁みた。


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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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牛の捻転式去勢の比較

今月の「家畜診療」誌の、

C3281B64-D7C0-4B1B-AE27-AEC7216C3B5Bワンポイント質問のコーナーに、

捻転式去勢の注意点、

と題して、

左右両精巣の同時捻転去勢法(いわゆるニコイチ捻転法)と、

片精巣ずつの捻転去勢法(電動ドリルの捻転法)とを、

比較して考察した記事が掲載された。

筆者は(株)Guardianの伏見康生氏。

C37C2DBC-5637-4094-8404-1242AC041DC6牛の精巣の解剖学から始まり

旧式の結紮法と新式の捻転法の比較を述べ

それから本題の

ニコイチ捻転法(両側同時)と電動ドリル捻転法(片側法)の

比較考察が書かれている。

掲載誌の文章を写真に撮り

33E60A22-FD5B-4A31-80B4-A29DB901CA33ここに転載させて頂いたので

クリックして大きくして

是非読んでいただきたいと思う。

ニコイチ捻転法と電動ドリル法の

それぞれのメリットとデメリットと思われることが

図や写真を通して比較考察されている。

A8725DFC-5957-4C28-B8F2-E7AC8EF22BEE二つの方法の紹介と

実施する際の注意点が

詳しく述べられている。

ただし、今回は

科学的な数値データーによる

客観的な比較検討までには至っておらず

どちらの方法が優れているか

という処までは

残念ながら言及されておらず

両者の去勢法の紹介というところで止まっている。

まだ両者を客観的に比較するデーターは

蓄積されていないようだ。

客観的なデーターがなかなか蓄積できない理由としては

一人の獣医師が

両方の手技を同時に使うということはせず

どちらかの手技を習得してしまえば

それだけを熟練して

日々の診療に用いているからだろう。

私は、いうまでもなく

普段はニコイチ捻転法ばかりをやっており

電動ドリル法の経験は一度もない。

そして

この記事の筆者の伏見氏は、逆に

普段は電動ドリル法を採用されているようだ。

今後

両者がどのように普及してゆくかは

それぞれの獣医師諸氏の手に委ねられるが

今回の記事のような比較検討が

さらに進んで

より良い去勢法が普及してゆくことを願っている。

掲載記事の文末には

以下のような記述があった。

「最後に、従来から鉗子による子牛の捻転去勢を実施する獣医師は存在していたが、ごく限られた範囲の特殊な手技に過ぎなかった。そこへ両側同時捻転去勢専用ツールを開発し、個人でweb発信を行い、手技の一般化と普及をさせた十勝農業共済組合の安田峰獣医師の功績は大きく、獣医療界のこれまでの情報と技術の浸透のあり方に変革をもたらしたケースといえる。」

BlogPaint最近は

俳号の豆作ばかりだったので

本名が活字になるのは

なんだか恥ずかしい(笑)

筆者の伏見氏には

心から感謝を申し上げたい。


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何かが変わった!?

牛の産後起立不能症における、

低カルシウム血症と、

それに関連する、

低リン血症に対する治療薬として、

グリセロリン酸カルシウム製剤(商品名・ネオニューリン)がある。

私はこの業界に就職してから、

30年以上にわたって、

この薬品を使い続けている。

それだけお世話になっている薬品なのであるが

近頃、このネオニューリンに

なにやら異変が起こったようである。

先日、同僚の獣医師2名から

ネオニューリンが白く固まってしまった

という話を聞いた。

極寒の1月ならばともかくも

まだ寒くなり始めの11月に

この薬品が白く固まるというのは

初耳だった。

気になったので

私が診療車で持ち歩いている自分のネオニューリンが

白く固まっていないかどうか確認したところ

IMG_2184それは白く固まってはいなかった。

同僚の白く固まったネオニューリンと

私の白く固まらないネオニューリンと

何かが違うということで

その製造番号(ロット番号)を見ると

前者は

製造番号  110916

使用期限  2019.11

後者は

製造番号  110425

使用期限  2018.12

IMG_2183であった。

私の持っていたものはずいぶん古いロットで

ラベルがずいぶん汚れてしまっていた。

使用上の注意をあらためて読んでみたら

「本剤は寒冷時、白色沈殿物を生じることがあるので、なるべく温暖な場所に貯蔵することが望ましい・・・」

と、ある。

この薬は本来

寒いと白濁沈殿が出来る薬剤であったようである。

それを今まで数十年間

私は全く気にも止めずに

この薬を使っていたのだ。

それも、ただの一度も

白く固まることなく使い続けてきたのだった。

いくら寒くても

何の問題も無く

ネオニューリンは透明のままだった。

ところがそれが

今年になって

何か変わったことが起こったようだ。

私の汚れたラベルのネオニューリンを

公開するのはちょっと恥ずかしいけれども

それはさて置き

ネオニューリンの製造過程で

最近

何か変わったことが有ったのは

間違いないようである。

皆さんがお持ちの

ネオニューリンは

いかがでしょうか?


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17ヶ月齢の牛の上腕骨骨折

稟告は「起立不能」、

酪農家の★さんの、

生後17ヶ月齢の育成牛だった。

初診をした同僚獣医師のカルテには、

起立不能に加えて、

右上腕部の腫脹、硬結、熱感と書かれており、

原因は不明だが転倒か?

という記載があり

消炎鎮痛剤が投与されていた。

翌日

私がこの牛を診に行った時

A1275439-3DF0-4463-BF0D-3043DE5C330Bこの牛は起立していた。

状態が少し良くなったのか

と、思いきや

その歩く姿は

3本足での痛々しいものだった。

E2C99B72-49C1-4CE9-9D40-5FCEC25C1ECB右前肢は全く着地することができず

ブラブラと肩から垂れ下がっている感じで

肘から肩にかけて

大きく腫れていた。

上腕骨の骨折が強く疑われる症状だった。

E1CE1D36-92F7-4CDB-ABED-7A026B7899A8「昼からレントゲン写真を撮りましょう。」

「はい。」

「それで、腕の骨(上腕骨)あたりが折れていたら、もう・・・」

「あきらめた方がいいですか?」

「・・・うん、そう、だね。」

「この牛、17ヶ月でまだ種付けもしてないし、しょうがないです。」

午後から

X線装置を持って来て

★さんの牛の上腕部を撮影した。

しかし

17ヶ月齢の牛ともなれば

体重は500kg程度あり

3本足といえども

走り出したら手に負えない。

かと言って

鎮静剤をかけて

横臥してしまった時

どういう体位で上腕部を撮影するかという

経験が私には無かった。

結局、鎮静剤を打たず

立位のまま

4人がかりで

患肢を前方に牽引して

上腕部にX線を当てて撮影したのが

D212BDC3-6291-43CF-8690-98E49969AC0E左の2枚の写真である。

全部で4枚撮影したが

うち2枚は全くの失敗撮影で

辛うじて患部が写ったのがこの2枚だった。

2枚目の写真の黄色い矢印で示した部分に

BlogPaint上腕骨の骨折らしいものが写っている。

翌日、この写真を元に

この牛を廃用に認定してもらった。

さらに、翌日の解剖の結果

上腕骨遠位の骨折は間違いなかった。

79C58BB0-039D-4DB8-B235-7C858692BE32しかし

それにしても

正直もっと上手な写真を撮りたかった。

今から考えると

C22B5DD2-A6C2-455A-9A00-D5FD59790BCCちゃんと鎮静剤を使うべきだった・・・

もっと保定をしっかりして撮影すべきだった・・・

撮影角度と方向は適切だったのか・・・

X線量ももっと多くすべきだったのか・・・

などという

初歩的な反省点が

たくさん挙げられる症例になった。

これをお読みの

X線撮影の経験豊富な諸先生方に

アドバイスをいただいて

もっと撮影が上手になりたいと思うので

どうかコメントを

よろしくお願いいたします。


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子牛の急性鼓腸症

「子牛の腹が、また張ってきた・・・」

家畜商の〆さんの父さんからの電話だった。

「昨日の朝にも診てもらって、おさまってたんだけども・・・」

「わかりました。」 

カルテを見ると、

昨日の朝に初診された急性鼓腸症だった。 

その時は、

経口カテーテルで第1胃内のガスを抜き、

生菌製剤と胃腸薬を投与してあった。

「それで1回おさまって、もう治ったと思って、昨日の晩、配合飼料やったんだよな・・・」 

IMG_2162「あーそう」

「そして今朝餌やりに来てみたら、またこんなに腹張って・・・」

「なるほど」

私は、子牛用のカテーテルと

子牛用のオーラルクロスを

BlogPaint診療車から取り出して

子牛の第1胃に溜まったフリーガスを

カテーテルから排泄し始めた。

「あ、臭え・・・」

「でも、このくらいのガスなら普通だよ」

BlogPaint私と〆さんの父さんとで

この子牛の腹部を左右から挟んで

強く押すと

カテーテルから吹き出す

透明のガスがまた勢いを増した。

IMG_2165カテーテルの先端をバケツのお湯に浸すと

その吹き出す勢いが良く見えた。

勢いがなくなるまで押し続け

その先端に

漏斗を取り付け

今度は薬剤投与となる。

生菌製剤でもよかったのだが

ここはもう少し刺激が強くて

IMG_2166薬効の幅の広い

中森獣医散「Z」を選択。

薬品名にいつのまにか「Z」が付いて

その効果が一段とパワーアップしたような気がするが

それは気のせいかもしれない(笑)

IMG_2167ともあれ、こういう場合は

子牛の第1胃の微生物叢の状態が

まだ不安定で

一部の微生物による異常な発酵が起こっているので

それを鎮める効果のある薬剤を投与しておくのが良い。

投与を終えて

カテーテルを引き抜き

〆さんの父さんに

配合飼料はしばらく与えないよう指示して

帰路についた。

その

翌日の

今度は夕方に

また〆さんの父さんから電話がかかってきた。

「いやー、またあの子牛の腹が張ってきて・・・」

「あらら」

「まちがって配合飼料を嫁さんがやっちゃって・・・」

「あらら(笑)」

私はまた再び

〆さん宅へ往診し

昨日の朝と全く同じ内容の診療を

繰り返し施して

帰路についた。


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牛は泣き虫

牛は泣き虫である。

特にホルスタインは泣き虫である。

酪農家へ往診に行き、

健康を損ねた搾乳牛を診て、

点滴治療をすることになり、

その牛にモクシをかけて、

近くの柱に頭を縛りつけ、

長い首を引き伸ばして、

その頸静脈に、

太い針を刺そうとしたその瞬間、

針を持った手の上に、

温かい雫が、

ぽとり

と落ちてきた。

牛の涙だった。

体調が悪くて

ややくぼんだ目に

透明な涙を溜めて

E15EC11F-575F-434C-AD35-0146C12BE6F8その涙が

ぽろりぽろり

と落ちてくる

牛が泣いているのだ。

声はほとんど出さず

45F3E6B6-5AC3-4BAE-BE7A-24F00C2908A8不安げに

悲しげに

私の方を

じっと見ながら

牛が

静かに

泣いているのだ。


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診療車のクラクション

昨日の往診で、

酪農家の◯さんの牛舎の前に到着し、

誰も近くにいる気配がなかったので、

診療車のクラクションを鳴らして、

あたりを伺っていたら、

「あ、やっぱり安田さんだ。」

と言いながら◯さんの息子がやってきた。

「え?、俺って判ったの?」

「うん。」

「どうして?」

「クラクション鳴らす獣医さんは安田さんしかいないから。」

「え?、そうなんだ。」

「うん。」

「それは知らなかった。」

「クラクション鳴らす人は、むかしの幕別の先生たちだけ。」

「へー、そうなんだ。」

「他の人はみんな鳴らさないですよ。」

「そういえば、どこかの獣医で、往診に来てクラクション鳴らしたら、親方に怒られたっていう話聞いたことある。」

「そういう家があるんでしょうね。」

「やっぱりクラクション鳴らされたら、うるさいの?」

「僕は牛舎の奥に居て、気づかなかったりするから、鳴らしてもらったほうがいいですけどね。」

「今の獣医は、クラクション鳴らしたらダメ、って教わってるのかな?」

「みんな鳴らさないですから、そうかも。」

「俺はクラクション鳴らして、一度も怒られたことはないけど。」

「怒る家もあるから、鳴らさなくなったんでしょうね。」

「そっかぁー、そういえば俺も、怒られはしなかったけど・・・」

実は一度だけ

怒られこそしなかったが

記憶に残っていることがある。

それは転勤したT町で働き始めた頃の

夜間当番のとき

搾乳の時間帯にある酪農家に往診にゆき

つい、いつもの癖で

到着の合図のクラクションを鳴らしてしまったことがあった。

そして牛舎に入って行ったら

中で搾乳していた親方から

「搾乳してんだから、中にいるに決まってるでしょ!」

と、ちょっと不快そうに言われたことがあった。

私の不注意だった。

それ以来

私は搾乳時間中だけは

決してクラクションを鳴らさないように注意している。

それはちょっと考えれば当たり前のことであり

全く私の不注意であった。

しかし

搾乳時間以外の昼間の往診では

牛舎に到着してあたりを伺って

誰も居ないようであれば

クラクションを鳴らすことはよくある。

そのほうが早く気づいてもらえると思っている。

IMG_2161でも

やっぱりそれは

うるさいと思われているのかもしれない・・・

なんだか

心配になって来た。

これをお読みの皆さんは

どう思っているのだろうか?

診療車のクラクションを鳴らされたら

嫌ですか・・・?


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微研学術セミナーin帯広(2)

「新生子牛へワクチン接種した場合、

ワクチンブレイクという現象によって、

その病原体に対する抗体価は上がらないけれども、

抗体価が上がらないからといって、

免疫力も上がらないのではなく、

細胞性免疫はしっかりと獲得され

免疫力が増強される。

したがって、

新生子牛へワクチンを接種する時、

ワクチンブレイクを気にして、

接種を遅らせる(生後3ヶ月〜)必要はなく、

新生子牛へ早期からのワクチン接種が、

有効である。」

今回のセミナーで

私が教わった新知見である。

講師の大塚先生は

この説を唱えるきっかけになったのが

人医療における小児のワクチン接種法だったという。

人の新生児には母親の胎盤を介して

IMG_2552IgGが移行しているにもかかわらず

できるだけ早く

数種類のワクチンを接種することが推奨されているという。

その理由は当然

ワクチン接種の効果が期待できるからである。

IMG_2553その効果とは

発症率の低下という形で現われたり

発症した後の症状の軽減という形でも現われるもので

血中抗体価の高低とは必ずしも一致しないものだった。

講演時間の関係で詳しいデーターの解説は省かれたが

結論として、前回の記事に書いた通り

ワクチンブレイクによって出来た抗原と抗体の結合物は

マクロファージに貪食され

その抗原情報がTリンパ球に記憶され

細胞性の免疫機能が準備される

という新知見が示された。

したがってワクチンブレイクを気にして

新生児へのワクチン接種の時期を遅らせる必要はなく

むしろ生後の早い時期に積極的にワクチンを接種すべきである

というのである。

この理論を裏付けるものとして

実際の現場のワクチネーションの

実例で示したのが

次の講師の加藤先生だった。

加藤先生のデーターの1つは

なかなか衝撃的だった。

それは

サルモネラ症によって

新生子牛が生後数日で次々と重篤な症状を示し

高い確率で死亡してゆくある農場で

サルモネラ症不活化ワクチンを

出生直後に接種し始めた時の

死亡率の変化を示したものだった。

詳しい数字は省略するが

IMG_25552ワクチン接種を開始した時点で

サルモネラ症による子牛の死亡率が

有意に低下している。

その劇的な変化に私は驚いてしまった。

ちよっと読みづらいが

IMG_2532プレゼンテーションの写真に示されているのが

そのワクチネーションプログラムである。

是非参考にしていただきたいと思う。

ちなみに

このサルモネラ症不活化ワクチンは

主催者の京都微研の製品ではなく

他社の製品だった。

ともあれ

サルモネラ症以外の

他の細菌やウイルス感染症においても

新生子牛への早期のワクチン接種で

同じような効果が期待できる

と考えるのが自然ではなかろうか。


(この記事終わり)


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微研学術セミナーin帯広(1)

第6回微研学術セミナーという講演会が、

ホテルグランテラス帯広で開催された。

IMG_2524そのテーマは、

「若齢牛における感染症コントロールの最新知見」

として、

 講演1「子牛の免疫とワクチンに対する新しい考え方」

            酪農学園大学  大塚浩道 先生

 講演2「生産現場から見た子牛の疾病対策と課題」

            酪農学園大学  加藤敏英 先生

IMG_2528という二つの講演を聴く機会に恵まれた。

大塚先生は北里大学から酪農学園大学へ招かれた気鋭の獣医学者。

加藤先生はNOSAI山形の臨床家から酪農学園大学へ転身した気鋭の先生。

どちらも大変興味深く役に立つ情報が満載の話だった。

IMG_2521その中で、特に

私がここで書いておきたいと思った新知見

二人の先生にのそれぞれ講演に

共通する一つの新知見、があった。

それは

新生子牛へのワクチン接種についての新知見だった。

新生子牛というのは

生後1〜2ヶ月間は母乳からの移行抗体を持っているから

その時期にワクチン接種をしても

移行抗体によってワクチンの抗原物質は中和され

その時期の子牛の抗体価は上昇しない、という現象

いわゆるワクチンブレイクという現象が起こることが知られている。

抗体価が上がらないのだから

その間の子牛の免疫力は上がらないだろう

そう考えて

子牛にワクチンを接種するのは

母乳の移行抗体が消失する

生後3ヶ月程度まで待ってからの方が良い

という常識のようなものがあった。

今までのワクチン接種法の常識的なこととして

広く知られていたことだった。

ところが両先生の講演は

その常識をくつがえすものだった。

例えば

新生子牛へBVD-MDのワクチン接種をすると

ワクチンブレイクが起こり

新生子牛のBVD-MDに対する抗体価は思うように上がらない。

今までの常識では

抗体価が上がらないということは

免疫力が上がらないということである

と理解されて来た。

ところが、両先生の話はそうではなかった。

ワクチンブレイクという現象によって

抗体価は上がらないけれども

その子牛が持っている母牛からの移行抗体と

BVD-MDワクチンの抗原物質との結合物が多数生産される。

その後、その結合物が

マクロファージに貪食されて

その結果、BVD-MDの抗原情報がTリンパ球に伝達されて記憶され

その子牛はTリンパ系の細胞性免疫を獲得する

というのである。

つまり

新生子牛にワクチンを接種すれば

ワクチンブレイクによって抗体価は上昇しないけれども

細胞性免疫のほうはしっかりと準備ができるから

いざ本物の病原体の攻撃を受けた時

症状は軽度で済み

ワクチン接種の効果は

十分に現われるのだという。

二人の先生の講演内容は

ワクチンブレイクを気にして

新生子牛にワクチンを打たないという

今までの常識を

くつがえすものだった。

出生後(10日後〜)にはもうワクチンを接種してよい。

その時起こるワクチンブレイクを気にしなくてよい。

むしろ積極的にワクチンを接種すべきである。

ということを

我々に示すものだった。


(この記事つづく)


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