北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

学者と臨床家

分娩後6日目の子宮脱!(2)

分娩後6日も経過した乳牛の子宮脱に、

CB007284-036E-4787-8E93-35BFE9A8F1291.2mほどある子宮脱整復棒を押し込み、

反転を整復し治癒させることができた、

と、思っていた翌日、

飼主のРさんからその牛の診療依頼の電話がかかってきた。

「昨日の牛の、食欲が全くない・・・」

とのことだった。

私はそれを聞いて、

嫌な予感がした。

そして、最悪な状況、すなわち

長い整復棒を根元まで押し込んだことによる

子宮穿孔・・・

腹腔内出血・・・

さらにその後の腹膜炎・・・

が頭の中をよぎった。

この日からしばらく、私は

往診へ行けない用事が続いたので

Рさんの牛を見に行った同僚獣医師から

後で、話を聞くと

「ただボーッとして、立ってました・・・」

とのことだった。

そしてカルテには

T38.6  P84   食欲不振、呆然起立、被毛粗、子宮脱の影響か?

とあり

抗生物質とブドウ糖等の輸液が施されていた。

さらに、その翌日のカルテには

T38.3  P100   食欲廃絶、起立不能、直検にて子宮輪郭不明瞭

とあった。

牛が起立不能になってしまった・・・

これはまずいことになっている・・・

やはり、子宮穿孔からの

腹腔内出血、腹膜炎になってしまったのではないか・・・

私は、暗澹たる気持ちで

カルテをさらに見ると

血液検査の所見があり

その中で目立った異常値があった。

BlogPaintCa 4.7m/dl・・・

これはかなりの低カルシウム血症だ。

そして、その日から

抗生物質と輸液の治療に

カルシウム剤が加わっていた。

それからさらに2日間の治療が施されたが

牛の食欲は回復せず・・・

自力では起立することができず・・・

腹膜炎の疑いを

拭い去ることができなかった。

「でも、熱発しないし・・・腹膜炎ではなさそうなんですけどねぇ・・・」

5診目にこの牛を治療した同僚獣医師が

そんな感想を言った。

そして、第6病日目

私はようやくРさんの牛を

自分の目で診て

治療する機会が巡ってきた。

牛の目の前に立って

顔の表情を観察すると

眼の輝きは悪くはなかった。

食欲もそこそこで、便もかなりの量を排泄していた。

T39.1  P90  

腹膜炎・・・ではなさうに見えた。

しかし、自力で立つことができなかった。

「この牛、お産してからずっと、立つのが下手になってしまって・・・」

飼主のРさんから、さらに話を聞くと

「前脚がうまく踏ん張れなくて、前の方に行っちゃうんです。」

「・・・吊起すれば立てる?」

「吊起までしなくても、牛を後ろにずらしてやると、いつのまにか立ってるんです。」

「・・・今日はずっと寝てるようだけど。」

「今朝は立ってたので、搾乳したんです。」

「・・・今はうまく立てないし、この牛舎と天井では吊るのは面倒?」

Рさんの牛舎の天井は、吊起をする手がかりがなくて、狭かった。

80D69910-C61D-461B-8371-F671A3FB9A4B「はい、ここではちよっと・・・」

「・・・なんとか吊起できるようにしたいよね。」

「はい、今朝立っている時、外へ出せばよかったんですけど・・・」

「・・・じゃあ、明日までには。」

「はい、外の広くて足場のよい所に出しておきます。」

「・・・じゃあ、今日はまた注射しておきますね。」

私はこの牛に抗生物質を投与し

リンゲル液とブドウ糖とカルシウム剤をセットして

明日また来ることを告げた。

この牛が立てないのは

どうやら

腹膜炎によるものではなさそうだった。

そして

分娩後6日目という珍しい時期の子宮脱の

原因も少し見えた(?!)ような気がした。


(この記事つづく)



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分娩後6日目の子宮脱!(1)

「今夜の当番、安田さんですよね、往診入ったんですけど。」

終業間近の事務所の掃除をしていると、

同僚のT獣医師がそう言いながらやってきた。

「Рさんの牛が子宮脱だそうです。」

「はい・・・」

「それが、お産して6日目・・・の子宮脱だそうです。」

「・・・えっ?・・・何それ・・・、」

私は耳を疑ったが、

それを隣で聞いていた同僚のベテラン獣医師数人は、

産後数日経過してからの子宮脱を治療した経験があると言った。

しかし、私は30年以上牛の臨床をやっているが、

産後6日目の子宮脱を治療するのは始めての経験であった。

Рさんへ向かう途中

(きっと膣脱なんじゃないのかな・・・)

という疑いをずっと持って

Рさん宅に到着して

牛の後ろに立つと

牛の陰部からは何も露出していなかった。

「立つと見えないんですけど、寝てるときに出るのが、子宮みたいなんで・・・」

Рさんの言葉を聞きながら

膣内へ手を挿入してみると

膣内には、膣壁ばかりではなく

硬くしまりかけている肉塊に触れた。

3D751B9A-EF29-4E88-AE87-2FC372E4ED5Cそれを手で掴んで

膣外に引っ張り出してみると

写真のような

小さな宮埠がいくつか付いた

明らかな子宮の内壁だった。

「・・・こりゃ、ほんとに子宮だ・・・」

6BEE0D15-4DD0-4B73-B258-AC58AFD1A884私は驚きつつ

この小さな子宮脱部分の反転を直そうと

押したり引いたりしてみたが

反転した子宮に固定感と支点がないので

私の手の動きと一緒に子宮もただ前後に動くだけで

反転部分は一向に戻る気配はなかった。

「・・・こりゃ、手だけじゃ直せないな・・・ちょっと待ってて・・・」

7786E1F0-6499-464D-A964-8EF1642D3BEE私はいったん診療車に戻り

子宮脱整復捧をもって牛の後に戻った。

そして、1.2mほどある子宮脱整復捧を

膣の中へと押し込んでいった。

途中50cmほど入れたところでかなり強い抵抗が有ったが

819AAD7E-6659-4DE6-A37C-5405FD52E098さらに強く力を入れて押し込んだら

ぐぐぐっという感触から

ずぼっという感触に変わったと思ったら

整復捧がほぼ根元近くまで一気に入ってしまった。

こんなに深く入ってしまって大丈夫だろうか・・・と思い

CB007284-036E-4787-8E93-35BFE9A8F129あわてて整復捧を抜き出し

また手で膣内を触診すると

子宮の肉塊は消えてなくなっていた。

子宮頚管が普通の産後の牛のように閉じ気味にこちらを向いていた。

「とりあえず、子宮脱は治ったみたい、後はその中に抗生物質を入れときますね・・・」

3815B564-1177-477E-AB00-FEE573401729私はそう言って、言ったとおりの治療を施して

帰路についた。

うまく子宮が整復できていれば

明日はあえて診察に来なくてもいいと思った。

そう思っていた私の頭の中から

Рさんの牛の事は

かなりのスピードで消え去ろうとしていた。

ところが

翌日の朝

Рさんから

電話がかかって来た・・・


(この記事つづく)


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難産介助の強い味方

夜間当番の終了時間の間際、

◇牧場の従業員のS君から電話が入った。

「子宮捻転なんですけど・・・」

私は朝の診療所の通常の受付時間までには、

帰って来れないことを覚悟して、

◇牧場へ車を走らせた。

着いて手を入れてみると、

S君の言うとおりの子宮捻転ではあったものの

捻れはそれほど強くはなく

胎児の足と頭部には何とか触れることが出来た。

2次破水は終わっているようだった。

こういう場合も、まずは

用手整復法を試みる。

胎児の前肢を反捻れ転方向へ押す

胎児の頭部を反捻れ転方向へ押す

子宮の内壁を反捻れ転方向に押す

などの技を繰り出していると

胎児があるタイミングで

ぐるっと動いた。

子宮の捻れが解消されたようだった。

その拍子に胎水もあふれ出てきた。

そして

胎児の前肢が2本

産道へ押されて進入してきた

さらに頭部も押されて産道へ

進入してくる

はず

なのに・・・

「あれ?、頭はどこだ?」

頭部がうまく触れなくなった。

先ほど胎児が自分で動いたとき

胎児の頭部が前肢の陰に回り

そのまま子宮の奥のほうへ行ってしまったようだ。

ここで、頭部をキープしないとまずいことになる。

私はとっさに前肢2本を産道深く押し込み

スペースの空いたところで腕を奥に入れて

胎児の頭部を探った。

「あー、あったあった、頭が、でも、鼻先と下顎は触れるんだけど、その先が・・・」

鼻先や下顎に指先が触れるだけでは不十分であった。

頭部をキープするには、耳から後頭部にかけて

ワイヤーをまわすのがベストであり

それが出来なければ

せめて眼窩(眼の窪み)に指がとどかなければならない。

眼窩に指がとどけば

12D9EF2C-6433-4A83-9A41-9D6304704911そこに

難産介助の強い味方である

鈍鈎(どんこう)を引っ掛けて

胎児の頭部をキープすることが出来る。

ところが今

私の指先は、眼窩まではとどかず

下顎さえも、指で掴むことが出来なかった。

「・・・ちよっとS君・・・手袋はいて・・・手を入れてみてくれる?・・・」

「はいー」

「・・・S君なら、頭の下顎を掴めるだろ?・・・」

「どうかわかんないですけどー」

S君は身長183cmの大男で

手足も非常に長く

◇牧場のちょっとしたお産なら

簡単に介助できる腕を持っている。 

私は産道から手をぬいて

S君にバトンタッチをした。

「・・・頭のどこでもいいんだけど・・・手で掴める?・・・」

「はいー、なんとかー、」

「・・・掴めたら・・・少し揺さぶって・・・」

「こーですかー、あー、」

「・・・少し引っ張れる?・・・」

「こーですか、あー、なんとかー、」

「・・・よし、替わって!・・・」

S君から交代した私は

再び産道に手を入れた。

すると

胎児の眼窩が

私の手にとどく位置来ていた。

「おー、頭が来てるよ、さすがS君!。」

私は直ちに

鈍鈎を眼窩に引っ掛けて

胎児の頭部をキープした。

キープしてから

胎児の前肢2本に産科ロープを装着。

前肢2本をまだ引かずにそのままにして

キープした頭部の眼窩にかかっている紐を

7101953F-5ADA-4BAD-BD35-566198B7B283ゆっくりと牽引するよう指示。

すると

胎児の頭部が

ぐぐぐと、産道に乗ってきた。

「よし。これから先は、普通のお産と一緒。」

63B7E9D9-B48E-44D7-B08C-2E236E1168BE私はS君と共に

胎児を無事に介助娩出させた。

おおきなF1の♀の胎児だった。

産後の一通りの仕事を終えてから

私はS君と肩をくっつけ合わせて

BF0B3993-A4DE-4315-A6D5-27289406EF1B自分の腕とS君の腕の

長さを比べてみた。

写真のとおり

S君の腕はとても長く

私よりも

3688FD43-CC42-4C5A-BF88-EEA9EFB84ADC5cm近く長かった。

このS君の腕は

鈍鈎とともに

難産介助の強い味方

であった。

予想よりも早く仕事が終わり

帰路についた。

診療所の朝の始業時間までには

帰って来れないことを覚悟していたが

S君の腕のおかげで

遅刻せずに間に合うことがてきた。


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和牛の乳頭先端の腫瘤

「親牛の乳頭が腫れている、イボだろうか?」、

黒毛和種の繁殖をしている★さんからの往診以来だった。

乳頭の腫瘤や損傷の治療は、

乳牛では頻繁にある事だが、

肉牛ではそう滅多にあるものではないというのが、

我々十勝の酪農地帯で仕事をする獣医師たちの、

普通の感覚ではないかと思う。

和牛の乳頭には

ミルカーが装着されることもなく

IMG_2311仔牛の口以外のものに吸われることはない。

乳牛の乳頭のように

遺伝的に改良をされたり

酷使されることが全くない

IMG_2313自然な器官のままの乳頭である。

そんな和牛の乳頭が

今回は

異常な様相を見せていた。

IMG_2315先端に白くコリコリした腫瘤物があり

乳頭の二倍ほどの直径に肥大していた。

「だんだん大きくなってきたみたいなんだよね。」

「この牛、経産牛ですよね。妊娠してる?」

IMG_2318「そう。あと2ヶ月で産むんだけど、こんな乳頭じゃ・・・(笑)」

「仔牛も吸いづらいですよね。先っぼを切り落としますか?」

「お願いします。」

牛を枠場に保定して

IMG_2323鋏で切断。

切り口からポタポタと出血があったので

輪ゴムで止血処置。

輪ゴムは夕方外してもらい

IMG_2317抗生物質をあと3日間打つよう指示。

切り取った腫瘤物を

鋏で割ってみると

その中身は

IMG_2326均一な白い組織だった。

脂肪組織の塊のようだった。

和牛の体にはこのような

脂肪代謝に異常を来す部分が

IMG_2325多いのかもしれない。

それにしても

その場所が乳頭の先端とは

治療するには簡単な場所で

まことに有り難かった(笑)


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乳房からの出血(五たび!)

先日の往診の1件目は、

♯牧場の乳房炎の牛の乳汁サンプルを回収し、

乳房炎軟膏を薬治するという仕事。

訪問した獣医師が1人で勝手にできる、

非常に簡単な仕事からのスタート、

のはずだった、

ところが、

♯牧場に着くと、

従業員のK君が、

私の車を見つけてやって来た。

「・・・あの、安田さん。」

「どうかした?」

「・・・牛がまた、カラスにやられたみたいで・・・」

「え?、また?」

「・・・乳房から出血してるんすよ。」

「またかい!」

「・・・はい、全く同じところから・・・縫って欲しいんすけど。」

「わかったよ、でもこれで何回目?」

「・・・春に3回たて続けにやって・・・」

「♯牧場さんは、これで4回目かな(笑)」

「・・・そーっすね。」

「それも、何でいつも、俺が来た時なの?」

「・・・4回とも全部、安田さんすよね(笑)・・・」

簡易パーラーへ牛を診に行くと

IMG_2207またしても乳房の

外側に走る乳静脈から

血液が吹き出して

牛の右の飛節と床を

赤く染めていた。

全く同じ所からの出血。

これはまたカラスの仕業に間違いはなかった。

「・・・春先に鉄砲で追い払ってから、しばらくなかったんすけど・・・」

「この間、またカラスの軍団がこの辺を飛び回ってたよね。」

「・・・そうなんすよ。」

「また鉄砲で、やってもらわないと、また繰り返すよ。」

「・・・はい。」

「俺の時ばっかり、もう勘弁してほしい・・・」

「・・・(笑)」

私は自分の引きの良さ(?!)に呆れながら

乳房の縫合の準備を始めた。

過去4回の経験から

こういう出血を止血するには

IMG_2216写真のようなサイズの角針と吸収糸が

縫いやすいことを学習した私は

出血部位をまず鉗子で挟み

ビルコン溶液で洗い

IMG_2209巾着縫合で止血した。

出血した直後だったらしく

牛はいたって元気。

貧血も全くなし。

IMG_2210縫合処置以外のことは何もせず

この牛の治療を終えた。

それにしても

うちの診療所には

IMG_2213現在7人の獣医師が交代で勤務しているが

今年度の半年間で

カラスによる牛の乳房からの出血の

治療をしたのは

IMG_2214すべて私。

私以外の6名の獣医師はこの症例に当たっていないのだ。

なぜ私ばかりがこんなに当たるのだろうか???

その確率をざっと計算してみると

IMG_22157分の1の確率が5回連続だから

35分の1という確率になる。

35年に1度訪れる当たり年(?!)

ここにまた

過去の4回の乳房出血の記録を

この記事に貼り付けておこう。


 2月24日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月8日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月17日の乳房からの出血(♯牧場にて) 


 8月20日の乳房からの出血(∩牧場にて)



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新生子牛の中手骨骨折・再び(4)

8月3日に生まれたこの仔牛は、

その日のうちに右中手骨を骨折し、

即日、

キャストを巻いて固定し、

その後、

8月23日にキャストを巻きなおし、

BlogPaintさらにその後、

9月4日に再びキャストを外し、

その日の患肢の状態を見て治癒と判断して

治療をめでたく終了した・・・

はずだったのだが・・・

翌日に

♯さんからまた電話がかかって来た。

その往診依頼の内容は

「昨日キャストを外した前肢が太く腫れている。」

というものだった。

もしや

まだ骨折部位がしっかりと融合しておらず

再び骨折してしまってのではないか

という不安が一瞬よぎったが

まずは実物を見なけれ始まらない。

♯さん宅へ、図らずも

昨日に引き続いて今日もまた

この仔牛の治療に来た私は

IMG_2203恐る恐る

仔牛の右前肢を覗いてみた。

体重は支えているが

肘付近から蹄冠まで太く腫れあがっていた。

「・・・これは・・・ずいぶん、腫れちゃったねぇ・・・」

「だいじょうぶでなんですか?」

私は子牛の前肢をつかんで

骨折部位を触診した。

IMG_2206「・・・これは・・・骨はきっと大丈夫だと思うけど・・・」

「こんなに腫れてるのは?」

「・・・昨日キャストを外すとき、傷つけたのかな・・・」

「傷ですか?」

「・・・うん、ギブスカッターで傷つけたのか、それともキャストの擦り傷なのか・・・」

「わからない?」

「・・・ばい菌が入ったみたい・・・」

「菌?」

「・・・だろうね、一晩でこんなに腫れたんだから、細菌感染だと思う・・・」

「注射か何か打ちます?」

「・・・うん、しばらく抗生物質(マイシリン)を毎日打って欲しいんだけど・・・」

私はこの仔牛にマイシリンを打ち

その後1週間♯さんに打ち続けてもらうように指示した。

それから1週間後の

9月13日には

BlogPaint左の写真のように

患肢の背側面からは腫れも引いた様に見えるが

掌側のちょうど骨折癒合の部分には

赤いびらんが残っているのが認められた。

さらにそれから10日経った

9月22日には

IMG_2376写真のような掌側のびらんは

少し縮まったが

そのやや遠位内側の位置にも

小さなびらんが見られた。

この部分のびらんは

ギブスカッターで傷つけられたとは考えにくいので

IMG_2377これはやはり

キャスト擦れによって細かい傷が出来

そこに細菌が感染して

前肢が腫れ上がった物と思われた。

という事は

キャストの巻き方に

あるいは

下巻きの材質などに

まだまだ問題があると

言えるのではないかと思った。



(この記事終わり)



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新生仔牛の中手骨骨折・再び(3)

今回の中手骨骨折の治療は成功しそうだ、

ようやくそんな気持になれたのは、

治療から2週間が経った時に撮った、

X線画像を見た時だった。

そしてその翌日、

早速私は、

♯さん宅へ往診に向かい、

キャストを巻き直すことにした。

IMG_2078前回のように

キャストを外して行くにしたがって

異臭が漂ってきたり

患肢が冷たくなっていたり

IMG_2079していないだろうかという不安は

今回は

昨日見たX線画像によってほぼ払拭されており

確実に治癒に向かっているという

IMG_2080安堵の心持ちでキャストを外すことができた。

キャストを外すと

蹄の先まで暖かく血が通い

骨折部位が癒合を始めている前肢が現われた。

化膿したり壊死していたりしていないことを確認し

IMG_2081私は再び患肢に

伸縮包帯と

アルミホイルと

キャストを

IMG_2084順に巻いて行った。

今のところ、私が行っている骨折の外固定は

こういう方法なのであるが

前回の記事のhig先生のコメントにあるように

IMG_2085もっと良く、もっと相応しい材質の下巻き

ストッキネット、エバーウールシート等、があるようなので

これをお読みの現役の獣医師の皆さんは

ぜひこれからは

IMG_2087hig先生のコメントを参考にして

より良い材質の下巻きを診療所に常備して

それを使えるよう努力して頂きたいと思う。

さて

2回目のキャスト固定が終わり

その日からまた

2週間が経過した。

IMG_2194私は再び♯牧場へ赴き

この仔牛の最後の治療をすべく

ギブスカッターで

キャストを外した。

BlogPaint患肢はほぼ完全に

骨融合をして

仔牛の中手骨骨折の治療は

これをもって終了の宣言をして

♯牧場を後にした。

ところが・・・

翌日

♯さんから

電話がかかってきた。



(この記事続く)



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新生子牛の中手骨骨折・再び(2)

産科チェーンによる牽引で、

仔牛の左右の中手骨を骨折させてしまった、

酪農家の♯さんは、

その後産科チェーンを使わず、

産科ロープを使って無理な牽引は止めている様であった。

ところが今回、またしても、

生まれたばかりの仔牛の右前肢の中手骨の骨折。

なんという不運であろうか。

そして、それを治療した獣医師の私は最初、

♯さんの稟告が嘘で、

本当はまた、チェーンの牽引によって骨折させたのではないかと疑っていた。

それも♯さんにとってはまことに不本意なことであったに違いない。

しかし

エックス線画像を診ることによって、

今回は、牽引による骨折ではなく、

親牛に踏まれたことによる骨折である可能性が高いことがわかった。

ということは

今回の骨折部位周辺の軟部組織のダメージは

前回の骨折部位周辺のダメージよりは軽度であろう

と推測することが出来た。

私も、♯さんも

今度こそは

骨がちゃんと癒合して

仔牛が助かってくれることを

心から願っていた。

そんな思いを抱きつつ

2週間が経過した。

♯さんの仔牛はとても元気だった。

BlogPaint前回の失敗したときの仔牛も元気だったから

子牛の外見からは

中手骨がちゃんと癒合しているかどうかは

全くわからない。

仔牛を寝かせて

子牛の前肢のエックス線撮影をした。

そしてその足で東部診療所へ走り

エックス線フィルムのカセッテを

現像機械へ挿入した。

祈るような気持ちで画面を見る私の

目の前のモニターに現れた画像は

左のような画像だった。

IMG_2072「・・・。」

「癒合してるんじゃないですか?」

一緒に画面を覗いていた後輩のM獣医師がそう言った。

「・・・そう?」

「大丈夫ですよ。」

IMG_2071「・・・そう、・・・だといいんだけど。」

「いいんじゃないすか。」

「・・・これがね、骨折した翌日に撮った写真なんだけど。」

私は、携帯電話に保存されている2週間前の

この子牛の骨折部位の画像をM獣医師に見せながら

それを、目の前のモニターに映し出された今日の画像と

IMG_2074比較してみた。

上が2週間前の画像で

下が今日の画像。

「・・・白い部分が出てきているみたいなんだけど。」

IMG_2075「あー、比べてみるとよくわかりますね。」

私は、今回の骨折が

何とか治癒に向かいつつあるとを確認し

胸をなでおろしたのだった。

ちなみに

最後の2枚のエックス線画像は

IMG_1843今回の症例ではなく

前回の失敗例すなわち

左右の中手骨がどちらも癒合しなかった症例の画像である。

今回のものと比べて明らかなのは

2週間たっても

IMG_1844骨折部位には

白い化骨細胞の出現が

全く見られず

むしろ黒く変化して

壊死していることである。



(この記事続く)



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新生子牛の中手骨骨折・再び(1)

「生まれたばかりの仔牛の足がおかしい・・・」

酪農家の♯さんからの電話だった。

♯さんといえば、

つい最近の1ヶ月ほど前に、

産科チェーンで仔牛の前肢を牽引し、

両前肢の中手骨を骨折させて、

結局治せずに処分したばかりの酪農家である。

なんと・・・また仔牛の骨折か・・・、

到着して、仔牛の右前足を診ると

着地不能でひどく腫れている。

「・・・これは、折れてるよ。」

IMG_2006「ほんとに?」

「・・・また助産で引っ張ったの?」

「いや、引っ張ってない。」

「・・・ほんとに?」

IMG_1996「ほんとに引っ張ってないよ、自然に生まれてたんだ。」

「・・・ほんとに?」

「ほんとだって。」

「・・・とにかく、またキャスト巻かなきゃダメだね。」

IMG_2008「よろしく頼みます。」

「・・・とにかく、今度こそ、治さないとね。」

あらためて触診してみても

仔牛の右前肢は間違いなく骨折していた。

IMG_2010それも、中手骨の遠位の

ちょうど産科チェーンをかけて牽引する位置である。

私は♯さんが嘘をついているのではないかと

ずっと疑っていた。

IMG_2011本当はまた産科チェーンをかけて牽引して

また仔牛の前肢を骨折させてしまったけれども

私に呆れられることが恥ずかしくて

咄嗟に嘘がついて出たのではないかと

IMG_2012ずっと疑いつつも

♯さんをそれ以上は追求せずに

前回と同じような方法で

前肢を牽引して

IMG_2017下巻きはバンデージのみ

その上にアルミホイルを巻き

その上からキャストを巻いた。

抗生物質を投与し

翌日

エックス線撮影をした。

IMG_2018その画像が

下の写真である。

骨折部位が真っ直ぐではなく

前方向に屈折したまま

キャストを巻いてしまっている。

前肢の牽引方向が悪かったことを示している。

牽引する包帯の結び目を

仔牛の前肢の掌側ではなく背側にすべきだったのだ。

そのご指摘は甘んじて受けることにして

骨折した部分をさらによく見ると

IMG_2022この骨折は

中手骨の掌側よりも背側の方に

ダメージの大きい折れ方をしていた。

これは

何か大きな圧力が

IMG_2020背側から掌側の方向へ掛って

その圧力によって骨折をしたような折れ方をしていた。

すなわち、これは

産科チェーンの牽引による骨折ではなく

親に踏まれたことによる骨折ではないか

と想像される骨折の画像だった。

♯さんは

つまらぬ嘘をついていたわけではない・・・と

この画像を見た私は

そう思い

♯さんの発言を

やっと信用することができた。


(この記事続く)



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重種馬の蹄病治療用ドリル

重種馬の蹄病を治療する機会は減ってしまった、

しかし、減ったとはいっても、

我が診療地区に重種馬が飼われている限り、

ゼロになることは無い。

1年に数回くらいの頻度ではあるが、

重種馬の蹄病治療の依頼が、

忘れそうになる頃にやってくる。

それに備えて私なりの準備をしていることは

以前の記事にも書いている。

約8年前の私のブログに書いた

電動ドリルを使った蹄病の治療法である。


その記事には

当時の私の蹄病治療の考え方と

IMG_2217手動ドリルではなくて

電動ドリルを使った治療法が書いてある。

基本的な考え方は当時と今と変わっていないのだが

8年前に比べて

重種馬の蹄病治療の機会は

明らかに減ってしまい

そして

私は8年前から比べて8歳年をとった(当たり前だ)。

その間

私の蹄病治療の考えや方法を

私よりも若い獣医師たちに

どれだけ伝達することが出来たのか・・・

と、考えると

これが大変お寒い状況であることに

今更ながら気付いた。

今もし

重種馬の蹄病の治療の依頼があったとき

私が出勤していれば私が対応することになるが

それだけでは若い獣医師たちに伝達することができないので

若い獣医師たちと一緒に往診へ向かい

彼らと一緒に治療の場に臨まなければならない。

そこで実際に治療をやって見せなければならない。

しかしそれだけではまだダメで

やって見せた手技を

こんどは彼らが実際にやってみなければ

本当の技術の伝達ができたことにはならない。

さらにそのためには

私の使っている道具を

いちいち私から借りて使うのではなく

私の使っている道具と同じ道具を

若い獣医師たちにも常に持っていてもらわなければならない。

ここでちょっと思案をした。

重種馬の蹄病治療のポイントは

蹄の炎症箇所を特定することであり

さらに特定した箇所に向けて

蹄底からドリルで穴を開けることが重要になる。

そのために必要な道具が

治療用のドリルである。

しかし

若い獣医師たちにいきなり

私が使っている電動ドリルを勧めるには

技術の取得の流れとしてはちょっと無理がある。

まずは手動ドリルを持ち歩き

それを使いこなせるだけの経験を

ある程度積んでからでないと

この技術を伝達することは難しいと考えた。

そこで

いつも懇意にしている重種馬の削蹄師

N坂氏に電話をして

手動のドリルを作ってもらうことにした。

自分でドリルを作れない私は情けないが

こういう事はその道のスペシャリストに頼んだ方が

良いものを作ってくれるものである。

IMG_2185左の写真は

そのN坂削蹄師に作ってもらった

重種馬の蹄病治療用の

手動ドリルの3点セットである。

IMG_21843点セットを3人分

我々獣医師のために

作ってくれた

削蹄氏のN坂氏に感謝!



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臍ヘルニア + 臍膿瘍 (2)

初診時は明らかなヘルニアだった子牛の臍が、

数週間後にはヘルニア輪が判らなくなり、

その代わりに臍帯の膿瘍が、

急激に大きくなって、

ヘルニア輪を埋めている。

今回の子牛の臍がそういう状態になっていたことが

手術を進めているうちに

明らかになってきた。

理想を言うならば

手術のメスを入れる前に

より詳細な超音波検査などで状態を十分に把握し

それに適した術式を選択して

手術に臨むべきところだったのだろう。

しかし

我々の診断力と経験の蓄積は

そのレベルまで至らず

臍ヘルニアと膿瘍とが

どのような具合になっているのかは

半信半疑のままで

いわゆる試験的な開腹という意味を含んだ手術だった。

IMG_2125その結果

膿瘍らしき部分を

丸ごとそっくり衛生的に摘出する事はできず

腫瘤物の腹腔側の根本にメスを入れたとき

化膿汁が吹き出るという事態になった。

IMG_2127そうなってしまったからには

そのままとにかくも切り進み

摘出できるものは出来るだけ摘出し

噴出した化膿汁は出来るだけ排除し

摘出した後の腹膜から

IMG_2128臍帯につながっている

いろいろな腹腔内の構造物を

ともかくも出来る限り洗浄した。

洗浄してからは

腹膜、僅かな筋層と皮下組織、皮膚

IMG_2131と縫い進み

閉腹して

手術を終了した。

飼主さん宅に帰ってからは

この牛には毎日

IMG_2132抗生物質の投与が行われている。

現在もまだ

抗生物質の投与を続けているが

今ところ

この仔牛はたいへん元気である。

IMG_2134気になっていた下腹術部の熱感と腫脹は

非常にゆっくりではあるが

すこしづづ治まって

正常な腹壁に戻りつつあるようだ。

そして先日

IMG_2162この牛を最後に診た同僚の獣医師も

熱感と腫脹は確実に治りつつある

という判断をしたが

念には念を入れて

さらに10日間

抗生物質だけは打ち続けてもらうように指示して

この子牛の治療を

終了した。


(この記事終了)


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臍ヘルニア + 臍膿瘍 (1)

「へそが腫れている」、

という稟告で診たホルスタインの仔牛の、

症状は少し複雑だった。

初診時の症状は臍ヘルニア、

腹壁には明瞭なヘルニア輪が触知でき、

そのヘルニア輪はまだ小さかったので、

しばらく様子を見ていたところ、

「へその腫れがだんだん大きくなってきた」

ということで再診をした。

IMG_2091すると

あったはずのヘルニア輪が触知出来ずに

腹壁に腫れた部分の根元は

太い臍帯で埋まっていて

可動性が無く

臍の部分は硬くて丸みを帯びた腫瘤物となっていた。

その日に往診したT獣医師が

腫れた部分を穿刺してみたら

最初は硬い漿液が少々

場所と角度を変えて再び穿刺すると

今度は茶色い腸管内容物が採取されたという。

腫れた部分を穿刺した時の内容が変化するとは

いったいどのような腫れ物なのか

これは一筋縄では行かない

複雑な症例のような気がする。

様子を見ていると腫れはどんどん大きくなってしまうようだ。

こうなってしまった以上、出来るだけ早いうちに

外科的処置を施したほうが良いだろう。

我々獣医師はそういう判断に至った。

翌日

IMG_2094午後一番にこの仔牛が運ばれてきた

一般症状が悪いわけではないので

元気一杯だったが

手術台に寝かせて

まずは超音波検査の端子を当ててみた。

IMG_2095腹壁から前後方向斜めに切り取った画像には

黒く抜けた部分にキラキラと白く光る模様が見えた。

これは典型的な膿瘍の画像だった。

そ例外の部分にも丁寧に端子を当ててみたが

結合組織ばかりで他に特徴的な画像は見えなかった。

IMG_2106腸管のヘルニアと思われた部分は

腹腔の中へ

落ちているのだろうと推測できた。

しかし、ヘルニア輪とおぼしき穴は

どこにも開いてはいなかった。

IMG_2114次に、毛刈りをして

切皮して

結合組織を剥がしつつ

腫瘤物を出来る限り

術創から独立させて

IMG_2113それを手でつかみ

もう一度穿刺を試みた。

すると、

漿液と化膿汁の混ざったものが採取された。

これはやはり膿瘍なのか。

IMG_2122根元の部分を糸で縛り

腫瘤の根元の臍帯移行部にメスを入れて

根本を切断し

膿瘍と思われる部分を

丸ごと摘出しようと取り掛かった

IMG_2124すると

メスを入れた臍帯部から

クリーム色の硬めの農汁がはみ出してきた。

「あー、やっぱり膿瘍だね。」

これは予想通りの事だったが

IMG_2125その部分から臍帯を通じて

腹腔内へ

クリーム色の農汁が

こぼれないように注意をしながら

腫瘤物を摘出するという

少々緊張する手技が必要になった。


(この記事続く)


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乳熱 + 乳頭損傷

前々日の深夜、

同僚のT獣医師が当直の時、

産後起立不能症で診た☆さんの乳牛は、

血液検査の結果低カルシウム血症だった。

立てることは立てるのだが、

まだ足元がふらついているということで、

通常時の往診でまた☆さんの牛を診ることになった。

その牛は繋ぎ牛舎の一角でうずくまっていた。

「あれから立ち上がったんで、足場の良いところに移動したんですが・・・」

浮かない顔の☆さんは話を続けた。

「またすぐ寝て、その後また立ったんですが、同居の牛に乳頭を踏まれたみたいで・・・」

「あらま・・・どこの乳頭?、寝たままじゃあ分からないけど、今は立てるの?」

「なんか、また立てないんです。」

「じゃあ、まず吊って立たせて。」

「はい。」

私はカルシウム剤とリンゲルと抗生物質を用意

その間に☆さんはこの牛の吊起の準備をした。

吊ればなんとか立つらしいので

IMG_2145まずは吊起をして立たせて

踏まれたという乳頭を診察した。

踏まれた乳頭は左前の乳頭の先端部だった。

先端から約3センチ程度が黒く変色し

皮膚が剥がれ乳管が挫滅して
IMG_2142
泌乳することができなくなっていた。

「あー・・・これは、この部分は切って落としたほうがいいね。」

「はい。」

「今、注射セットしてから、切る準備するから。」

「お願いします。」

IMG_2155私は抗生物質を打ち

カルシウム剤などの補液を開始して

再び診療車に戻り

消毒液とハサミと輪ゴムを準備した。

再び吊起ハンガーで腰を挟んだままの牛の元へ戻り

IMG_2156やっと自力で立っている牛の

左前の乳頭を掴んで洗浄し

その先端の挫滅部位がすべて取れる長さを

切断した。

IMG_2146牛はほとんど動かなかった。

痛みもあっただろうが

それよりも全身症状によって

痛がる余裕もなかったのだろう。

IMG_2149切断した乳頭の先端からは

溜まっていた乳汁が噴き出してきた。

しばらくその乳汁の勢いが続き

次第にその勢いが衰え

IMG_2152ほとんど出なくなったところで

こんどは輪ゴムを三重にして

乳頭の切断面ら1センチ程度のところに掛けて

切断面の止血をした。

IMG_2151この処置はいつもの方法と全く同じである。

「取り合えず、これでよし、注射が終わったら外してね。」

「はい。」

「乳頭に付けた輪ゴムは搾乳の時に外してね。」

IMG_2154「はい。」

私はすべての処置を終えて帰路に着いた。

翌日

同僚のK獣医師に診察してもらった時

この牛はもう立って歩くようになっていたので

その時点でこの牛の治療は終了した。

その後☆さんからは何も連絡はないので

経過は順調のようだ。


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顔の高さの大膿瘍

「腰角(ようかく)の辺りが腫れている・・・。」

そんな稟告だった★さんの搾乳牛。

IMG_2060腫れた部分を触診すると、

波動感があった。

こういう場合は、

ほとんどが膿瘍、

あるいは血腫である。

「針を刺してみましょう。」

IMG_2061空の注射器で穿刺すると、

クリーム色の膿汁が、

穿刺部分から溢れて来た。

「切開しましょう。」

腰角の大膿瘍であることが確定したので

メスで切開することにした。

汚い膿汁が床にこぼれても良い場所へ

牛を移動させて切開することになった。

最も良いのは

牛を枠場に入れることなのだが

★さんの家の枠場はもうほとんど使われておらず

土間の片隅に埃をかぶって仕舞い込まれていて

引き出して使うのも大変なので

土間の一角に頭を結んで保定して

そのまま切開をすることにした。

結果的に

これがマチガイの大元だった。

枠場に保定しておけば

牛のお尻は自由がきかない。

しかし

頭だけ繋いだ状態では

牛のお尻は扇状に

いくらでも横振りすることができる。

私はそれを甘くみていた。

さらに

この牛の膿瘍の大きさと

それが目の高さにあるということを

あまり考慮せずに

いつものように

長い手袋を履いただけで

切開手術を行ってしまった。

すなわち

カッパを着用しなかったのだ。

これもまた大きなマチガイだった。

顔の高さにある牛の大膿瘍を

枠場に保定せずに頭を繋いだだけで

カッパも着ないで

切開手術をするとどうなるか。

IMG_2062結果は

写真のごとく

切開のメスを入れた瞬間に

牛は驚いて尻を振り

私の胸から下の着衣は

嫌な匂いの膿汁を

大量にかぶり

IMG_2063カッパを着ていなかったおかげで

悲惨な状態になってしまった。

生ぬるい膿汁にまみれた私は

自分の着衣を洗いながら

30年以上

牛の臨床獣医師として仕事をして来た

自分の技術の

全く成っていないこを

大反省・・・

下手クソ・・・

ああ恥ずかしい・・・

膿汁が噴き出す写真などを撮ろうとして

肝心なことを忘れていた自分を恥じた。


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乳房からの出血(四たび!)

「乳房から血が出て止まらないんだけど・・・」

緊急用の携帯に、酪農家の∩さんの声が響いた。 

「とりあえず、押さえるかつまむかして、止めておいて・・・」

私はそう言って、∩さん宅へ診療車を走らせた。 

出血をしている牛は乾乳牛だった。

パドックの連動スタンチョンに1頭だけ繋がれた牛の

腹の横にしゃがみ込んで

IMG_2036∩さんの息子が

乳房の出血部位を布で押さえていた。

「ちょっと出血しているところを見せてくれる?」

∩さんの息子が押さえている布を少し離すと

乳房の血管から血液が勢いよく吹き出て来た。

IMG_2037「あー、了解、ここだね。縫って止血する準備するから、もう少し押さえててね。」

私は縫合の準備をし

出血部位をまず鉗子で挟み

止血縫合してから

止血剤を投与して

IMG_2038治療を終えた。

しかし

また

乳房の左右に浮き出ている乳静脈からの出血!

「これは、カラスのしわざに違いないね。」

IMG_2039「カラスっすか?」

「うん、間違いないね。」

私は傷を見たときから

そう確信していた。

それは

IMG_2040約半年前

♯牧場で

わずか3週間の間に

3頭がまったく同じ部位から

出血しているのを

IMG_2041立て続けに治療した経験に基づいた確信だった。

参考のために

過去の3回の出血の記録を

この記事に貼り付けておこう。


 2月24日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月8日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月17日の乳房からの出血(♯牧場にて) 


このとき

♯牧場には

カラスの大群が

牛舎の周りを取り囲み

大きな声で鳴いていた。

その後♯牧場では

ハンターを呼んでカラスの大群を追い払って 

乳房からの出血事故は

ぱったりと無くなった。

あれから半年

♯牧場で追い払われた吸血カラスの1羽が

今度は∩牧場にやって来て

また悪さを始めたのではないか

などと

心配してしまう症例だった。

∩牧場の乾乳パドックの

傍で

数羽のカラスが鳴いていた。 


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重種1才馬の鼻梁の外傷(2)

「安田君、@さんの馬の傷、化膿してるよ。」

私が初診してから4日目、

@さんに往診に行って来た同僚のK獣医師がそう言った。

「・・・そうですか。」

「あれじゃあ、共進会は出られないな。」

「・・・そう・・・ですか。」

今回の馬の外傷の処置について、

私はきれいに治せる「強い自信」は持ってはいなかったものの

なんとか治ってくれるだろうという「普通の自信」はあり

その漠然とした期待の中で

この馬の傷についてさほど気にかけていなかった。

しかし、同僚の獣医師からそう言われると

これは、失敗してしまったか・・・

という反省の気持ちが急に膨らんできた。

それから3日後

私が今度は@さんの馬を診た。

枠馬に入れて傷をよく見ると

IMG_1901なるほど、傷口は

きれいに縫い合わさってはおらず

10cmほどに渡って

腫脹して肉芽が盛り上がり

痛々しい状態になっていた。

「・・・化膿させてしまって、申し訳ない。」

「・・・。」

「・・・縫った糸は、ほどけちゃった?」

「取れてはいないようだ。」

「・・・でも、共進会は出せないか。」

「いや、出すよ。」

「・・・そうなの?」

「だから治してくれって言ってるべや。」

私は@さんがまだ

この馬の共進会出場を諦めていないことを確認した。

しかし、こうなってしまった以上

あとは、抗生物質を注射し続けて

この馬の傷口が早く

目立たなくなるのを待つことしかできなかった。

その次の@さんの診療日は

同僚のS獣医師に行ってもらった。

「安田君、@さん、共進会に出すの断念したよ。」

帰ってきたS獣医師がそう言った。

「・・・そうですか。」

「結構、傷が深かったみたいだね。」

「・・・ええ、上手く縫えたかと思ったんですけど。」

「あの腫れはなかなか引かないね。」

それから3日後

私は再び@さんの馬を診に行った。

やはり傷はきれいに治っていはなかった。

IMG_1906「・・・共進会、出すのやめたの?」

「ああ。」

「・・・そうなの?」

「これじゃお前、カッコ悪いべや。」

「・・・。」

私は@さんに

きれいに治すことができなかったことを詫びた。

最善を尽くしたつもりだったが

創口を縫合する前に

もっと清潔に洗い

メスなどで新鮮な創面を作ってから

もっと慎重に縫合すべきだったと

反省点を挙げた。

それから

数日後

共進会が終わり

この馬を治療する予定だった日に

@さんから連絡があった。

この馬を、育成屋さんに売ったので

もう治療に来なくても良いという連絡だった。

私は、売れてよかったという気持ちもあったが

無事に売れたというわけではない、と思った。

本当であれば

@さんは、この馬を共進会に出品し

商品価値が最も高くなったところで

高い値段で売りたいと思っていたに違いない。

しかし、それはできなかった。

いろいろと

反省点の多い症例となってしまった。

買われて行った先がどこかわからないので

この馬の傷の状態は

もはや確認するすべも無くなってしまった。

あとはこの馬の鼻の腫れが引いて

きれいに治ってくれることを

祈るのみとなってしまった。

反省点の多い症例だった。


(この記事終わり)


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重種1才馬の鼻梁の外傷(1)

「・・・共進会に出す馬が、顔に怪我をした・・・」

そんな電話が、

馬産家の@さんからかかって来たのは、

夜間当番の早朝だった。

IMG_1866馬を枠場に入れて顔を診ると、

馬の長い鼻梁に約15cm程度の切り傷があった。

よくみると、ヨードチンキを塗布した後の色が付いており、

傷口からは出血と漿(しょう)液が垂れた後のような汚れがあった。

「これは・・・何時頃、怪我したの?」

「・・・きのうの晩。」

「ヨーチン付けてあるね。」

「・・・ああ。でも治りそうもないから、縫ってくれ。」

「たしかこの馬、共進会に出すやつだったよね。」

IMG_1862「・・・そう。」

「共進会は何日だっけ?」

「・・・あと2週間。」

「そっかー、うーん。」

「・・・縫って治してくれ。」

「まぁ、やれるだけやってみるか。」

「・・・きれいに治してくれよ。」

「うーん、まぁやってみるか。」

IMG_1869馬に鎮静剤を投与し

鼻捻をかけて保定し

傷の周囲を

ビルコン液を染み込ませたスポンジで

ジャブジャブと洗い

汚れを落として

再び傷を良く見ると

何か鋭利なもので

鼻梁をザクッと切ってしまったような傷だった。

IMG_1876長さは上下に15cm程度

頭部に近いところの傷がもっとも深く

その深さは2cmほどあった。

出血は無く

薄いピンク色の創の断面は

皮下組織がほとんどで

奥のほうは骨に達しているようだった。

私は過去に

こういう筋肉の無い鼻梁の切創を縫合した経験を

思い出せなかったので

行き当たりばったりの処置となった。

IMG_1877洗浄した創口の頭側の深い部分に

角針を刺して、吸収糸をかけて

そこを起点に連続で皮内縫合をしてゆく。

この方法は

牛の開腹手術の最後の

皮膚を皮内縫合する方法と同じだった。

熟慮してそういう縫合法を選択したのではなく

とっさに思い浮かんだのが、この縫合方法だった。

しかし、いつも牛の手術で慣れている方法なので

スムーズに縫いすすみ

縫合処置は数分で終わった。

IMG_1879縫合処置をした切創は

手で広げようとしても広がらないように

針の縫い目もわからないように

皮内縫合された。

この縫合処置によって

なんとかこの1才馬を

十勝共進会に出品させたいという

@さんの願いが叶えられるかどうか。

私は、きっとこれで何とかなるだろうと

抗生物質を投与し

あと三日間の抗生物質の投与を指示して

帰路についた。


(この記事続く)


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大忙しの星の下(2)

帝王切開によって、

側頭位の胎児を無事に摘出したまでは良かったが、

IMG_1949親牛の状態がどうも良くなかった。

それは、手術中に輸液をしようと、

頸静脈に針を刺した時、

留置針がなかなか血管に入らず

結局乳静脈に切り替えたことからも感じていた。

IMG_1950親牛は血圧が下がっているようだった。

血圧が下がっているから

頸静脈を圧迫してもなかなか血管が浮き出ず

針を血管に入れることが難しかったのだ。

IMG_1951その理由はよくわからないが

そのために

前肢の血流も弱くなり

手術台で下になっていた右肩付近の圧迫により

右前肢の神経麻痺が生じてしまったものと思われた。

IMG_1952麻痺によって右腕節(前膝)に力が入らず

カックン、と曲がってしまう。

「キャスト・・・しますか・・・。」

とにかく、この牛には

ちゃんと4本足で立って

IMG_1953家畜車の荷台に乗ってもらわないと困るので

応急的な処置として

右前肢の腕節がカックンとならぬようにキャストを巻くことにした。

キャストを巻き終わった牛は

ぎこちなくも、なんとか歩行して

IMG_1955家畜車の荷台に乗ることができた。

家畜車を見送り

手術室を片付けていると

診療所の職員達が

次々と出勤してくる時刻になっていた。

翌日

この牛が無事でいるかどうか

ちゃんと自力で起立できているかどうか

心配だった。

この牛の飼主さんは

搾乳牛たちを昼夜

繋ぎっぱなしで飼っている酪農家で

敷きわらをたっぷりと敷いた独房というものがない。

そういう独房がないところで飼われている牛は

足腰が弱ると、立ちたくてもうまく立てずに

そのままダメになってしまうリスクが高い。

さらに

牛の前肢にかかる体重というのは

後肢にかかる体重よりもはるかに大きく

特性樹脂のキャストを厚く巻いても

割れてしまうことがあり

この牛に巻いたキャストも簡単に割れて

キャストの効果が無くなってしまうのではないかという

心配があった。

しかし

IMG_1957往診した同僚獣医師の話によれば

牛の前脚の状態は良く

神経麻痺は消失し

寝起きは普通で食欲もあるということだった。

その翌日

IMG_1956牛の状態はさらに改善して

寝起きも食欲も良好だということで

キャストを外すことにした。

この日のキャストは

案の定、腕節から近位の部分が

IMG_1960割れてしまっていた。

しかしそれは

この牛の前肢の神経麻痺が完全に消失し

寝起きが自由にできるようになり

右前肢の機能が

完全に回復した証拠でもあった。

(この記事終わり)


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大忙しの星の下(1)

複数の獣医師がチームを組んで、

仕事についているNOSAIの家畜診療所では、

夜間の当番はその人数によって、

均等に割り振られて、

仕事量の偏りがないようにしているのが普通である。

夜間の往診の数は、

1年間の平均件数を計算してみると、

診療所チーム内のどの獣医師も、

だいたい1件〜2件の間に均等に収まるものらしい。

ところが

1ヶ月程度の短い期間でこれをみると

それぞれの獣医師によって

夜間往診の数が極端に偏ることがある。

ある獣医師は、往診が全くない0件の夜が何回も続くのに

ある獣医師は、毎回深夜まで何件もの往診に呼ばれて睡眠不足になる

という現象が起こる。

夜の往診の忙しさには波があるのだ。

その波は、診療所内の獣医師の仕事内容を

支配下に置く「大忙しの星」の気まぐれなパワーの現れのようである。

先日の

早朝5時頃

私の個人携帯に

その日の夜間当番用の携帯から

電話がかかって来た。

最近、夜間当番で大当たりが続いているS獣医師からだった。

乳牛のお産で、胎児の頭が後ろを向いた側頭位らしい。

緊急の帝王切開をすることになり

私は手術の助手をするべく診療所へ向かった。

診療所へ着くと

手術室にはすでに帝王切開の準備がされていた。

「最近よく当たるね。」

「そうですねー(笑)」

S獣医師は、前回の夜間当番の時も

深夜に乳牛の帝王切開と、早朝の和牛の難産介助をしていた。

その後数日、別の獣医師が当番をした夜は

特に難産や深夜の往診はなかったのだが

昨夜からのS獣医師の当番でまた難産が発生した。

(大忙しの星の下に完全に入っているのだ・・・)

親牛を手術台に寝かせて

術野の毛刈りと洗浄消毒を終えて

さぁこれからメスを入れて

帝王切開を始めようとした時

当番用の携帯電話が鳴った。

和牛の難産で逆子のようなので来てほしい、という往診の依頼だった。

手術に取り掛かろうとしていた私たちは

その往診依頼に対して、事情を説明し

手術をある程度終えるまで、今しばらく待ってもらうように伝えた。

IMG_1947そしてまた帝王切開に取り掛かった。

ホルスタインの母親の子宮の中で側頭位になっていた大きな♂ホル仔牛を

無事に生きて出すことができた。

「あとは、縫うだけなんで、安田さん和牛の往診に行ってください。」

「わかりました、じゃ、後はよろしく。」

私は手術から離れ

診療車に乗って和牛の難産介助に向かった。

(大忙しの星の下に私も入ってしまった・・・)

和牛繁殖農家の◯さん宅は診療所から車で5分程度の近い家だった。

手を入れてみると

確かに逆子だったが

その胎児の後肢の隣に前肢があり

その前肢の隣に頭が来ているという状態

すなわちそれは双子の難産だった。

後肢を押し戻すと

もう片方の前肢がその奥に現れたので

前肢2本と頭が同じ胎児のものであることを確認して

IMG_1946まず正常位の1仔目の胎児を牽引娩出

次に尾位の2仔目の胎児を牽引娩出

無事に介助が終わり

私は再び診療所へと車を走らせた。

診療所の手術室では

S獣医師が術創の最後の皮膚を縫い始めたところだった。

IMG_1948術野の縫合が終わり

牛が手術台から降ろされた。

ところが

この母牛が、今度は

IMG_1949なかなか立つことができない。

カルシウム剤を注射して

気合を入れて起立を促しても

立てなくなってしまったので

仕方なくハンガーで吊起することにした。

IMG_1950ハンガーにてなんとか吊り上げて

立たせたものの

右の前肢の負重ができず

3本足でようやく体を支えるのみ。

どうやら

右前肢の橈骨神経が麻痺してしまったようだ。

これでは歩行することもままならず

家畜車の荷台までどうやって歩かせるのか

(大忙しの星のバワーは容赦がない・・・)

さて、どうするか・・・

(この記事続く)

 

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新生子牛の「左右」中手骨骨折(3)

難産で牽引した直後に、

左右の中手骨遠位の骨折を確認し、

左右前肢にキャストを巻き、

その後、3日目にエックス線を撮影し、

それから、さらに11日が経過した。

骨折してから2週間目、

この子牛のキャストを交換する日がやってきた。

今回、私は

今まで経験してきた牛の新生児の

中手骨骨折の治療の中でも

もっとも

いろいろと気を配り

過去の失敗での反省点や

同僚獣医師の意見などを参考にして

自分の技術としては最もレベルの高い

最新の骨折整復法を施すことができたという自負があった。

そういうわけなので

この日が来るのをとても楽しみにしていた。

ギブスカッターと、エックス線装置と

撮影の防護服などを、そそくさと診療車に詰め込み

飼主の#さん宅に到着。

IMG_1837子牛はあいかわらず

非常に元気がよかったので

鎮静剤をかけて寝かせて

まずは

患部のエックス線の写真を

3方向から撮影した。

撮り終わってから

撮影装置をいったん片付けて

今度はギブスカッターによって

キャストを外してゆく

飼主の#さんと

手伝ってくれたS獣医師が

保定しながら見守る中で

私はまず左前肢のキャストを外していった。

ギブスカッターで

キャストを縦半分切り落としたとき

骨折部位の毛色が

なんとなく

暗赤色の滲みが付いているのを確認した。

その部分から遠位を手で触ってみると

なんとなく

温度が低く

子牛の体温ではないような

冷たさを感じた。

「・・・。」

私は、さらにキャストを外していった

「・・・。」

「・・・。」

#さんとS獣医師もまだ無言だった。

「・・・、あ・・・これは・・・」

「・・・。」

「・・・着いて・・・ない・・・のか。」

「・・・。」

「・・・全然・・・融合してない・・・。」

「・・・ダメですか・・・。」

「・・・ショックだぁ・・・。」

BlogPaintキャストを全て外し終わったとき

私たちは

ガックリと

失望感に包まれていた。

左右の中手骨は

両方とも、まったく骨融合しておらず

骨折部位は2週間前と全く同じように

IMG_1840クニャッと曲がってしまった。

骨折部位と外したキャストからは

ほんのりと厭な匂い(壊死臭)が漂ってきた。

治療は完全に失敗に終わった。

子牛は、残念ながら

病畜処理場へ搬入することになってしまった。

その後、私は

悔しい気持ちをずっしりと抱えたまま

隣町の診療センターへ行き

最後に撮影したエックス線画像を見た。

参考のために

IMG_1843IMG_1844






第3病日の画像を左に

第14病日の画像を右に

比較できるように並べてみた。

IMG_1845IMG_1846







骨折部位に望まれるはずの

白く濁ってゆく骨融合の変化は全く見られず

むしろ

3日目(左)よりも14日目(右)のほうが

骨折部位は黒っぽく変化し

壊死が進んでいるように見えた。

(この記事終わり)

と・・・

したいのだが・・・

私は今でも

悔しい気持ちが消えずに続いている。

今回なぜ

骨折整復がうまく行かなかったのか

ちゃんと検証して

何とか今後につながるヒントを得たいと思う。

この記事をお読みの皆さんの

ご指摘やご意見を

ぜひ伺いたいと思う。

どうか忌憚のないコメントを

よろしくお願い致します。


(この記事終わり)


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