第139回芥川賞受賞作『時が滲む朝』、楊逸著
二冊を手に入れて読んでみた。
わざわざハードカバーの最新刊にお金を出して取り寄せるなどめったにしない私なのだが、作者が中国人であるという点に惹かれてしまった。
* * *
『ワンちゃん』は、日本人の男性と中国人の女性のお見合いツアーのコーディネーター。
このツアーに申し込みを入れてくる人たちは、みな切実な悩みを抱えている。
離婚経験がある人が多く、なおかつ家族や自分自身の今後のためにどうしても配偶者が欲しいという切実な理由・・・
面白かったのは、大都市(北京や上海)出身の中国人女性たちは、大抵日本の恋愛ドラマを見すぎていて、日本ならばどこでもにぎやかで現代的な町で、高級マンションに住んで、旦那が仕事に行っている間に、自分が高級アクセサリーやお洒落な服を身にまとい、カフェなどで友人とお茶したり出来ると思い込んでいるらしいということ。
日本人と結婚すればそんな優雅な生活ができるものと憧れてやってくるが、いざ現実は、住む場所は辺ぴな田舎で、旦那の年老いた親と同居して、日の出と共に畑に出て、日が暮れて家に帰れば、炊事片付けなどが待っている。
都会育ちの女の子には到底耐えられるはずもなく、失意の中で離婚して帰国するなり逃亡してしまうなりして、問題が起きる。
そこで、ワンちゃんは、見合いツアーのターゲットを、田舎育ちの女性に絞っている。
ワンちゃん自身も、ワケありで日本人男性と国際結婚している身だった。
コーディネーターの仕事も順調に進み、ワンちゃんはツアーに参加したある男性と頻繁に連絡を取り合うことになるのだが・・・
* * *
『時が滲む朝』は、1989年6月4日の天安門事件の民主化デモに参加した学生の青春物語。
民主化運動に参加した大学生や大学教諭等指導者達の、青春、そして挫折、海外逃亡・・・そして現代につながる彼らの生活に対して、作者は温かな眼差しを注いでいる。
その一方で、ある登場人物には
「親から仕送りをしてもらって、何の心配もしないで、民主だの自由だの選挙だのと格好の良いことばかり言ってさ。女房も子供も養わなければならない俺らは愛国心だけじゃ生きていけないんだよ。」
などと言わせ、現代中国の悩みを描く。
ひところ流行った『発毛剤「101」』は、民主化勢力の資金源だったらしい事も書かれている。
「6.4・天安門事件」は現代中国を解く重要なキーワードなのだと再認識した。
中国本土では今でもこの事件の詳細に言及する事は憚られているようだ。
が、オリンピックの開催地になったり、世界経済に対して大きな発言力を持ったこの国において、もはやタブーで通せる事はできないだろう。
中国人作家の芥川賞受賞というのも、この賞の懐の深さを表しているようだ。
はっきり言って、前回紹介した138回受賞作『乳と卵』に比べたら
格段に読み応えがあった。
作中、尾崎豊の歌詞や
漢詩もいくつか登場する。たとえば甘先生作・・・
東西柏林一垣横
八九春風乱石平
民主十歳今何痛
連連紛争幾時寧
一つの壁でベルリンは東西に隔たれ
その壁は89年の春風に吹き飛んだ
にも拘らず十年後の今何か痛む
次々起こる紛争はいつ治まることやら
* * *
私の診療区域でも、メガファームなどを中心に中国人の労働者によく会うようになった。
日本の牧場で働く中国人は多い。
それも女性のほうが多いのではなかろうか。
しかも私の知る限り、彼女達のほとんどが、うら若い20歳代の娘達。
まさか、日本人の男性との結婚を狙ってやってくるのではあるまいが(笑)
彼女達一人一人には、それぞれいろいろな事情を抱えているのかもしれない。
今度、時間があったらいろいろ聞いてみようか。
中国語で、「あなたはどこから来たの?出身は?」ぐらい、言えるようにしておこうかな・・・
もし私の娘が、外国の牧場で働きたい、なんて言い出したら・・・
私はたぶん賛成しないだろうなぁ・・・











馬牧場の外人獣医師やマネージャーと話すときに英会話を必要とされることがありますが、そのうち中国語も必要となるのかもしれません。
介護されるようになったらインドネシア語も・・・・・