分娩予定日まであと3週間の乾乳牛が、パドックで起立不能になったという連絡が入った。

行ってみると、意識や活気はほぼ正常だが、体が持ち上がらない。

四肢に異常はなく、子宮や産道の異常もない。

T38.8 P98 R20 特に問題なし。

ただ、ボディコンディションが非常に低い。

どうよく見ても、BCS=3.25 程度。

「連動スタンチョン付けたばかりなんだけど・・・」

♭さんのパドックに連動スタンチョンが付いてから約ひと月だ。

「入らないの?」

「いや、何とか入るし、配合飼料もね、やれば食べるんだけど、ここ数日、あまり進んで食べには来てないかも・・・」

食べてはいるらしいが、このBCSから見ると、やはり栄養不足は間違いない。

とりあえずカルシウム+ブドウ糖製剤を投与。

しかし、戻って血液検査をしたら、血清Ca 10.0(mg/dl)、Mg 2.2(mg/dl) 

これはまったくの正常値だ。

その他、飢餓状態を示すような血液の変化は、その後の検査でもよく見えなかった。

「他の牛に乗られたんじゃないですか?」

♭さんの乾乳牛のパドックには、乾乳ではない牛も入っている。

「そうかもしれないね。」 

そして、治療を続けて、3日目。

「吊ったら一度立ったんだけど・・・また立てなくなっちゃった。餌は食べてるよ。」

さらに治療を続けて、7日目。

「吊ってもぜんぜんダメだね。痩せて来たし。でも、餌は食べてるよ。」

さらに治療を続けた。

しかし、この牛のBCSは、どんどん下がって行くように見えた。

♭さんとの話合いのなかで、この牛はたぶん助からないから、廃用にしよう、ということになった。

ただ、お腹の中の子牛がいるので、それが生まれてからにしよう、ということになった。

分娩予定日まで、2週間を切った日に、プロスタグランジンを打って、分娩を誘起した。

末広1その2日後の朝。

子牛が生まれた、という連絡が来た。

無事に生まれたようだ。

それも、双子。

しかも

♀♀、だった!

それを聞いたとき

「うーん・・・、そういうことだったのか。」

と、思った。

正直、もっと早く、それを察知できたらよかったな、と思った。

私は今まで何頭も、こういう牛を診てきたじゃないか

どうしてもっと早く、双子の可能性を考慮しなかったのか、と少し後悔した。

末広2昨日、母牛を

閉鎖神経麻痺という病名で

廃用にした。

下半身は、ほとんど動かない。

この牛は、最後の力を振り絞って

立派に、双子の子牛を出産したのだ。

BCSは、2.75以下に低下し

ぼろきれのように痩せてしまった・・・・ご苦労さん・・・。
末広3
乳房はまったく張っておらず

初乳はほとんど出なかった。

♭さんの家には

市販の初乳製剤がある。

母牛のがんばりに応えるためにも

この双子の2頭は

何としても、無事に育って

立派な乳牛になってほしい。