牛の子宮蓄膿症というのは、文字通り

子宮の中に化膿汁が溜まってしまう症状を言う。

しかし、体表や肺や肝臓などに出来る膿瘍の中の膿汁とはちがって

その化膿汁は子宮腺からの粘液に薄められて、悪臭は少ないようである。

分娩後、さまざまなステージでの発症がありうるが

厄介なのは

妊娠子宮との鑑別である。

先日の子宮蓄膿症も、妊娠鑑定をしている時に見つけた。

分娩は平成23年8月、特に難産でもない普通分娩。

その後普通に3回の授精を行い、最終授精が24年2月19日。

子宮の大きさは、約70日の妊娠子宮様。

しかし、胎膜反応がどうしても得られない。

右の子宮角のほうが大きくて、左右不対称ではあるのだが

胎膜反応を求めて子宮を握っているうちに、その大きさが少し変わるような感覚があった。

これはおかしいぞ、と疑ってもう一度全体を触診すると

子宮の中の液体は、尿膜に包まれたものよりも、かなり流動性の高いものであることが判ってきた。

「あー、これは、蓄膿症だね。注射しますから。」

私は、子宮蓄膿症を確信して、PG製剤を注射した。

数日後には、おりものが出て、子宮は収縮してくるであろうが

次回の検診時までに、貯液感が消えているとは限らず

これを数回繰り返すことも少なくない。

子宮蓄膿症の多くが

こうやって発見され、治療され、回復して、また授精され、治癒したり、再発したり

そういうことを繰り返して

私の仕事の中で、通り過ぎてゆく。

「だが、まてよ・・・。」

と、ふと思った。

子宮内貯留物の性状を記録すべきなんじゃないか・・・

貯留物の細菌検査をしてみるべきなんじゃないか・・・

超音波画像も撮ってみるべきなんじゃないか・・・

そういう検査をすることで、予後診断に役立てられるのではないか・・・

そんなことを、ふと思った。

私の頭の中の、バカの壁は

知らず知らずのうちに、構築されていたのである。

まだまだ、勉強が足りないのである。

    *   *   *

   
直腸検査によるウシの妊娠と子宮蓄膿症との鑑別点
鑑別点妊娠子宮蓄膿症
子宮の膨満左右不対称左右対称
子宮の収縮性妊娠3か月までありなし・弛緩
子宮の波動感水様性粘稠性
子宮壁柔軟で弾力あり菲薄または肥厚、弾力なし
子宮動脈妊角側が発達肥大左右同等
胎子触知可触知不可

(ウィキペディアより)

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