前回の記事は、

育児放棄された和牛の仔の下痢だったが、

今回の記事は、

孤児となった重種の仔馬の下痢である。

孤児になった原因は、

生後10日目で親馬が腸捻転で死亡してしまったことによる。

サラブレッドの生産地であれば

代用の母馬、すなわち乳母(うば)馬

が用意されて

孤児馬は乳母馬に育てられ

事無きを得ることが多いだろう。

ところが

繁殖牝馬が激減してしまった重種馬の生産地では

そう簡単には乳母馬が見つからない。

死産したり、生後の仔馬が死んでしまったりしする繁殖牝馬は

毎年現れるのだが

哺乳されなければ

その牝馬のお乳は1週間程度で出なくなってしまう。

また、タイミングよく乳母になれそうな馬がいたとしても

飼主さん同志が知り合いではなかったり

知っていても仲が悪かったりした時は

孤児馬に乳母馬に出会うことが難しく

非常にハードルの高い状況になっている。

今回の飼主の◎さんも

乳母馬を見つけることができなかった。

仕方なく、止むを得ず

生後10日の孤児馬を

人工哺育することになった。

馬の人工哺育は

牛の人工哺育よりも

はるかに体力を消耗する。

◎さんは朝6時から3時間おきに

馬用の人工ミルクを仔馬に与え続けた。

6時、9時、12時、15時、18時、21時、0時

の7回を毎日繰り返した。

毎日毎日の繰り返しだから 

午前3時だけはキツイのでパスをして 

奧さんと二人で毎日繰り返した。

途中、仔馬が熱を出したり

便がゆるくなったり

元気が無くなったりすると

診療所に電話がかかってきた。

そんなことを何度も繰り返しながら

生後5ヶ月が過ぎた。

仔馬はぐんぐん大きくなった。

5ヶ月が過ぎると

仔馬は共済の保険に加入する資格を得る。

保険に加入した後は治療代が安くなる。

先日、この仔馬の便がまたゆるくなった。

IMG_6024元気は良いのだが

下痢が治らない。

血液検査をしてみると

低タンパク、貧血が見られるものの

その他ミネラルバランスには異常がなかった。

◎さんに話を聞くと

すぐ便がゆるくなるので

離乳の餌としての配合飼料などを控えめにしていたという。

ここで、親がいる仔馬であれば

広い放牧地に親仔を放して

栄養のある青草をたっぷりと食べさせられるのだが

この孤児馬を同じ場所に放牧させるのは

色々な危険が伴うので

それは出来ず

制限された時間の中で放牧し

粗飼料の足りない分は乾草を与えていた。

当然のように粗飼料の摂取不足

配合飼料との給与バランスが崩れ

下痢気味となる。

加えて、放牧が制限されることによって

運動不足になる。

孤児の仔馬の

人工哺育と育成には

大変な苦労がつきまとう。

重種馬の生産地の

悩み事の一つである。


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