十勝地方は8月4日〜5日にかけて、

台風6号の影響を受けた停滞前線が上空に垂れこめて、

蒸し暑かった猛暑の気候から、

一気に、

涼しげな雨まじりの晩夏へと、

天気が激変した。 

最高気温が35℃以上だった日々から

最高気温が25℃を下回る日々へと

一晩で変わってしまうのだから驚きである。

そんな気温の変化に

自分の体がついて行けいてないことを

感じながらの仕事が続いている。

8月3日(木)の午後

往診を終えて事務所に戻ると

手術の予定が3頭入っていた。

そのうちの2頭が

帝王切開だった。

1頭目の帝王切開は

初産の過大児だった。

四位変位の手術を挟んで

2頭目の帝王切開は

やっとの事で運ばれてきた経産牛だった。

執刀医はT獣医師。

手慣れた手つきで1頭目を摘出した後

いつもとは違って

なかなか閉腹せずに

腹腔内をいつまでも探っていた。

「・・・もう1頭、います・・・」

と言いながら

1頭目を出した子宮の創口に手を入れていたのだが

そこから先かなかなか進まない様子だった。

「出てこない?・・・」

「・・・いるんだけど・・・」

「・・・?・・・」

「・・・直接触れない・・・」

「直接つかめない?・・・」

「・・・一旦ここを閉じて、2頭目は別に切って出します・・・」

「そんなことってあるんだ・・・」

「・・・はい、あるみたいですね。」

T獣医師はそう言って

1頭目を出した子宮角の創口を手早く縫い始めた。

2頭目は別の子宮角の中にいるらしいのだ。

縫い終わると再び手を入れて

腹腔の奥にある別の子宮角の2頭目の後足をつかんで

術創に露出させた。

「・・・これです・・・ここ切って下さい。」

私は2頭目が入っている子宮角にメスを入れた。

IMG_5962そして

チェーンブロックを使って

2頭目の胎児も

無事に摘出することができた。

私の経験では

帝王切開して双子の胎児を摘出したことは

IMG_5966未だかつてなく

たいへん貴重なものを見させてもらった。

帝王切開で双子を摘出する

というと

今まで抱いていたイメージは

切開した1つの子宮の創口から

2頭を出せるというイメージだったのだが

今回の実際の症例を目の当たりにして

IMG_59631つの創口からは

1頭の胎児を摘出するのみ。

2頭目の胎児は

もう一つの子宮角を切開して

別の創口から出さねばならない

ということを学んだ。

かつて

多くの獣医師から

帝王切開をして

胎児が双子だったことに気づかず

手術した数日後に

もう1頭の胎児を発見して

冷や汗をかいた

という話を聞いた。

双子の胎児を一度に摘出できず

閉腹してしまう

その原因が

今回の症例でよくわかった。

双子の胎児は

一頭ずつ別の子宮角にいることがあるのだ。

帝王切開をするときは

そこに気をつけなければならないのだ。

IMG_5964今回は

T獣医師の冷静な施術によって

双子の胎児を共に無事に

摘出することができた。

私は思わずつぶやいた

「帝王切開でも、双子の時は『一子増点分』の技術点数が欲しいね・・・」

T獣医師も

「・・・そうですね(笑)」

と言っていた。


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