子牛のいわゆるデベソを、

大きく分けると

�� 臍帯炎

�� 臍ヘルニア

の2つではないかと思う。

我々臨床現場で遭遇するデベソは

ほとんどがこの2つの範疇に入るだろう。

私の約40年の臨床経験の記憶を辿っても

子牛のデベソは

この2つに集約される気がする。

�� 臍帯炎は・・・細菌感染

�� 臍ヘルニアは・・・先天的な形成不全

がそれぞれの原因である。

�� の治療のは主役は抗生物質だが

炎症が治まらずに膿瘍を形成することも多く

その場合は切開手術を施して排膿する。

�� の治療はヘルニア輪を塞ぐことで

小さい穴であればベルトやバンドで塞げば

成長につれて相対的に小さくなり

ヘルニアは解消する。

大きな穴の場合は

外科的処置が色々考案されている。

私が愛用しているヘルニア整復法は

以前にもブログで紹介した

腹壁のベストオーバーパンツ縫合である。

子牛のデベソを

大きく分けて２つと言ったが

もちろん

この２つが絡んだ合併症もある。

臍帯炎＋臍ヘルニア

はそれほど頻度は高くないが

私はかつて

ヘルニアに加えて

尿膜管遺残があり

そこへ細菌が感染して

腹腔内に巨大な膿瘍が形成されていた症例を

経験したことがある。

この時は大手術になったが

そんな症例も

原因としては結局

�� 細菌感染

�� 先天的な形成不全

の2つに集約されるだろう。

子牛のデベソについて

私は今まで

およそ以上のような理解で

仕事をしていた・・・のだが

先日経験した

酪農家の※さんの

子牛のデベソは

�� 臍帯炎（細菌感染）

�� ヘルニア（形成不全）

のどちらに入るのか

解らずに思い悩む

不可解な症例だった。

3ヶ月齢のホルスタイン♀

元気がよく食欲正常

見た目はヘルニアである。

しかし触診をすると

ヘルニア輪が見つからない。

IMG_7635手術台に仰向けに寝かせて

触診して

ヘルニアではないことがわかった。

ならば

膿瘍なのか

と超音波検査をしてみると

IMG_7633膿瘍に特徴的な

キラキラした画像は

確認できなかったので

膿瘍でもなかった。

元気も食欲も普通にあり

臍帯炎（細菌感染）の名残りなのか

ヘルニア（形成不全）の名残りなのか

IMG_7634よくわからない。

ただのデベソになっている

組織の塊のようだった。

うーん・・・

それならば

IMG_7640メスなど入れて

炎症を促すような事は

すべきではないだろう。

そう思って

頭に浮かんだのが

イージーカット（ゴムリング）の装着である。

イージーカットを装着できれば

IMG_7631それだけでデベソは解消できそうだ。

結局そんな診断に至って

イージーカット装着のみの

簡単な処置へ

方針を変更し

IMG_7632数週間

様子を見ることにした。

そして・・・

その2週間後

※さんから

「この前の子牛の臍、もう一度見て欲しい、少し腫れてきた」

という電話がかかってきた。

・・・うまく行かなかったのかな・・・

そんな不安を抱えて

子牛の腹の下を覗いて診ると

IMG_7619イージーカットを装着した部分の

先は完全に干からびて

扁平な壊死した組織がくっついていた。

イージーカットを装着した腹腔側が

ぷっくりと腫れており

それがまた再びデベソのようになっていた。

IMG_7618しかし・・・

これは

イージーカットの絞扼による

一時的な炎症であり

新たな細菌感染でもなく

新たなヘルニアでもない

と診断した。

そこで私は※さんに

「これ以上大きくなることないだろうし、もうしばらく抗生物質を打って様子を見ましょう。」

と言ってた抗生剤を薬治しただけにした。

その後

※さんからはまだ何の連絡もないが

私の予想では

このデベソは

これ以上何もしなくても

子牛の成長とともに

目立たなくなって

治癒してくれるだろう

と考えている。

安易な予測だが

もう

打つ手は

それ以外にはないのだった。


　※ 　　　　※  　　　　※


豆作の「のったり俳句ひねもーすチャンネル」で

IMG_6056IMG_6058







句会の動画をアップしています♪

どうぞご覧ください！↓

YouTube動画「第1回くしろ元町フットパス句会」


よろしければ

チャンネル登録や評価なども

どうぞ、お願いします！(^^


IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画をYouTubeにアップしています。

ここを→クリックして

見ることが出来ます。    
  
このチャンネルもどうぞ宜しく（^^）