「今朝、子馬が生まれてたんだけど・・・親の子宮が出ているみたい・・・」

朝の往診準備をしている時にそんな電話がかかってきた。

急いで�鵑気鸞陲惷遒韻弔韻匿任襪�

母馬が馬小屋で座ったままで

壁ぎわのお尻から赤いものが現れていた。

「これって・・・後産ではないよね・・・」

「・・・うん、間違いなく・・・子宮、何時頃生まれたの?」

「朝来たら生まれてて・・・わからんけど・・・まだ予定日まで1週間以上あったし・・・」

「・・・親、立てない・・・か・・・」

「立てんみたいだな・・・」

体重が800kg以上はある重種馬が起立不能になってしまうと

子宮脱を整復しようにも手の打ちようがない。

IMG_8571母馬の意識ははっきりしていて

立とうとする意思はあるものの

前肢を二本伸ばすだけで

すぐ諦めてしまう。

お尻は壁に向いているので

出てしまっている大きな子宮を

人力で操作するスペースがない。

「・・・うーん、とりあえず、栄養剤の補液しますか・・・」

母親の体力の消耗を抑えるために

とりあえずリンゲルやブドウ糖の大量補液を始めた。

酢酸リンゲルを1本・・・2本・・3本・・4本・・・

その間にブドウ糖1本・・・2本・・・重曹・・・1本・・・2本・・・

リンゲルが8本近く入った頃

母親に起立を促してみた。

母馬は前肢を踏ん張って

IMG_8576首をあげた・・・

が・・・

そのまままた倒れ込んでしまった。

「立つてくれんか・・・」

「・・・うーん、ダメだね・・・」

重苦しい雰囲気の中で

補液のリンゲルの空ボトルがたまってゆく。

生まれた子馬は

大きな雄だった。

子馬は元気で

狭い小屋の中で

今にも立ちそうに

立ち上がろうとして

何度も四肢を動かしていた。

子馬の方は手伝いに来てくれた▽さんの従業員がケアをしてくれていた。

さて、母馬に視線を戻して

長い首を投げ出して横臥している母馬を

聴診をすると・・・

心拍数は120以上に達していた。

「・・・うーん、立たせるのは無理か・・・寝たままで子宮を戻せるかな・・・尻尾を吊り上げてこちらを向かせますか」

飼い主の�鵑気鷽道劼�

応援に来てくれた▽さんが

ロープと滑車を使って

体重800kgの母親の体勢を変えて

お尻を外へ向けようと動かし始めた。

リンゲルの補液はなおも続けられた

が・・・

その頃から・・・

母馬の息が荒くなって来た・・・

その息はさらに早くなり・・・

大きなイビキのような呻り声に変わってきた・・・

そして

視線が定まらぬように宙を泳ぎ始めた・・・

と思うまもなく

四肢が痙攣をし始めた・・・

「・・・。」

「・・・あぁ・・・ダメか・・・」

皆、作業を止めて

母馬の様子を見守った。

母馬の眼はさらに宙をまさぐり

視線を定めずに

瞳孔が開いたまま

動かなくなった。

「・・・、・・・、・・・。」

「・・・心臓がもたなかった・・・みたいだね・・・。」

息を引き取った母馬のそばで

子馬は相変わらず

立とうとしてもがいていた。

�鵑気鵑梁�子さんが

哺乳瓶を持って来たので

IMG_8574その哺乳瓶に

母馬の乳を200mlほど搾り

子馬の口へ当てると

子馬は勢いよく乳を吸い始め

哺乳瓶の母乳を一気に飲み干した。

IMG_8572これからしばらく

�鵑気鷽道劼�

この子馬の

乳母となることになった。


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